2015年7月10日発売
直木賞受賞! 私たちの心の奥底を静かに覗く傑作集 どこにでもある町に住む、盗癖のあるよそ者の女、婚期を逃した女の焦り、育児に悩む若い母親……彼女たちの疲れた心を待つ落とし穴。
蓮實重彦東大元総長の絶賛を浴びて早稲田文学新人賞を受賞。さらに史上最高齢の75歳で芥川賞を受賞。その記者会見では「生きているうちに見つけてくださいまして、本当にありがとうございました」と真摯に語り、話題となった衝撃の作品「abさんご」。若々しく成熟した美しい文章を、ご堪能ください。
還暦を迎えて既に先端医療の現場を離れた医師・江原陽子。ある日、彼女のもとに、研修医を介して奇妙な「病歴要約」が送られてくる。そこには過疎の村で終末期医療に奔走してきた元同僚・黒田の半生が記されていた。「医師は悪党」という黒田の言葉に込められた真意とは?人生を丁寧に生きようとする人たちの強さが息づく物語。
実母・土田御前に疎まれた記憶が、織田信長の心を歪ませた。寸土を求めて同族同士で殺しあう尾張の小領主を継いだ男が、桶狭間で今川義元を討ち取り、やがて天下を狙う戦国大名の一人へと成長していく…。社会現象にもなった『下天は夢か』からおよそ四半世紀を経て、まったく新しい視点から描いた巨匠津本陽「最後の信長伝」!
「今までの裁判員裁判の中では一番簡単そう」新人裁判官・久保珠実は物足りなさを感じていた。初老の男性が幼なじみの家に放火した事件。争点は動機のみのはずーしかしある証言により法廷は予想だにせぬ方向へ。裁判員に選ばれた一般市民の姿もリアルな、現代人が読むべきリーガル・サスペンス連作三篇。
「狼王ロボ」の異名を持つ巨大狼を追跡中の老人が、喉を裂かれて殺された。「犯人」は狼なのか?だが居合わせたシートンは、真犯人は他にいると断言するー名著『シートン動物記』の著者、シートン先生は名探偵でもあった!?動物たちを巻き込む怪事件をホームズばりの推理で解決する心優しい連作ミステリ。
「あの事件を、今更ほじくり返してどうするんです?」数十年ぶりにかつて大学生活を送った地方都市に舞い戻った大学教授の鹿野道夫は、全共闘運動のさなか起こったある「事故」を執拗に調べ始める。機動隊との衝突が招いた一人の高校生の死ー謎が謎を呼び、昭和の恩讐を呼び覚ます。骨太の人間ドラマ。
警視庁公安部外事第二課きってのスパイハンター・樋口一樹。“殺しのデカ”として捜査第一課のエースと称される西村康仁。全く接点のなかった二人が荒木町のバーで遭遇した夜、東京西部で白骨遺体が発見される。捜査手法も思想信条も水と油の二人が、それぞれの目的のため同じ事件を追って火花を散らすー。文庫オリジナル。
子どもができたら籍を入れるーその言葉を信じて、ミイは元気な男の子を産んだ。自分の人生を変えてくれる子だと。敏雄と名付けられた男の子は、父がいなくても母の愛情たっぷりにすくすくと大きくなっていく…。戦時下の昭和を舞台に、身を寄せ合って懸命に生きた母と子の絆を描いた半自伝的小説。
神聖ローマ帝国を追放され、新大陸に渡った“ラインの暴れ伯爵”グルムバッハは、アステカ国王に味方して、征服者コルテス率いるスペインの無敵軍に立ち向かった。グルムバッハは悪魔の力を借りて敵の狙撃兵ノバロの百発百中の銃を手に入れるが、その責を問われ絞首台に上ったノバロは、死に際に銃弾に呪いをかけた。「一発目はお前の異教の国王に。二発目は地獄の女に。そして三発目はー」騙し絵のように変幻する物語、幻想歴史小説の名作。
伯父の伯爵家で、使用人同然の不遇な毎日を送るエリーは、ある日、社交界の花形レディ・ミルフォードから赤い靴を受け取った。<br>ところが、社交シーズンが始まる前に、エリーは悪魔の王子と呼ばれるダミアンにさらわれてしまう。<br>幽閉された孤島の城で激しい嵐が何日も続き、エリーはダミアンが誘拐を企てた理由や秘めた孤独を知るうちに、<br>世間の評判とは全く違う彼の素顔にふれ、次第に惹かれていく。<br>そして嵐がやんだ朝、突然レディ・ミルフォードが城を訪れて……。
わずか四週間で結婚式を挙げることになったデレインのお相手は、地元で指折りの敏腕弁護士。ところが、人生で最良の日に最悪の事態が起きてしまった。新郎が式の時間を過ぎても姿を現さず、心配して控え室のスイートルームに迎えにいくと…そこには息絶えた新郎の姿が!他殺をにおわせる後頭部の傷跡を、セオドシアの鋭い目は見逃さなかった。犯人への復讐を誓う花嫁は、セオドシアに事件の捜査を依頼。事件当日、謎の宿泊客が隣室から姿を消していたこともわかった。なにせ式場は幽霊が出ると噂される不気味なホテル。うさん臭いゴーストハンターがセオドシアの店にまで押しかけてきて、なぜか彼女も一緒に幽霊探しに駆り出されてしまい…!?
家電メーカーに勤める菊地陽介は、妻と大学生の娘の三人家族。隣家の白井家とも仲は良好だ。白井家は、サラリーマンの恒平と専業主婦の智美たち夫婦と、恒平の父親である喜一が同居する三人住まい。何気ない交流のたびに、隣家の人妻を意識するようになった陽介だったが、ある日、ただならぬ様子で智美が訪ねてくる。妻と娘は旅行中で不在、よく見ると智美のブラウスはボタンが引きちぎれ、ひどく怯えていて…。幸せなふたつの家族を取り巻く、欲望と淫気を赤裸々に描いた衝撃作!