2015年発売
死を覚悟したのではなく、死を忘れた。そういう腹の決め方もあるのだ。果たしてこれは戦争だろうか。我々は誰と戦うでもなく、一人、また一人と倒れ、朽ちていく。これは戦争なのだ、呟きながら歩いた。これも戦争なのだ。しかしいくら呟いてみても、その言葉は私に沁みてこなかった──。34歳の新鋭が戦争を描き、全選考委員絶賛で決まった新潮新人賞受賞作にして芥川賞候補作となった話題作。
日本国債ついに暴落。運命の日は突如訪れたー。売国奴の陰謀が渦巻く中で、巨大銀行の存亡をかけた決戦の火蓋が切られる!敵は売国奴官僚+謎の外資ファンド。破綻寸前の巨大銀行に生き残る道はあるか?仕事とは何か?誰のために何と闘うのか?全サラリーマン必読の新世代経済小説!
ひとたび存在したものは、誰かの中で生きつづけるー。拍手もほとんどない中、「ソラシドです」と二人組が現れた。ギターを弾きながら歌う彼女と、ひたすら黙々とダブル・ベースを弾く彼女。二人とも男の子みたいな女の子だった。消えゆくものと、「冬の音楽」をめぐる長編小説ー。
風の吹きすさぶ赤い丘に暮らす一家の、四代にわたる物語。カンピエッロ賞受賞作。イタリア半島最南端、赤い花の咲き乱れる丘に根を下ろして暮らすアルクーリ家の人々。ときに横暴な地主に、ファシズム政権に、悪質な開発業者に脅かされながらも、彼らは美しい丘での生活を誇り高く守り続ける。そしてその丘には、古代遺跡のロマンと一族の秘密が埋もれていた。権威あるイタリア・カンピエッロ賞受賞作。
ステラの部屋に招かれざる客、ハリソンが押し入ってきた。彼女の愛するロバートが、敵国のスパイであることをほのめかし、黙っていてほしければ…とステラに関係を迫ってくる。ロバートがスパイなのかどうか、本人に聞けばわかるはず。でも、もし本当にスパイだとしたら、このままふたりの関係を続けていくのは難しい…。恋人どうしであっても詰め寄れない難問をかかえ、ステラは戦時下のロンドンを彷徨う。先行きのない人々の倦怠が、夕暮れに漂っている。この厄介な状況は戦争のせいなのか、それとも、この現実があってこそのふたりなのか。第二次大戦下のロンドンの実相を描き、ボウエンの哲学的ともいえる人間考察が、その深淵をみせる傑作長編。
ライラはハウスシッターをしながら、傍ら若い読者に好評の小説を書く作家でもある。定住所がない生活だが彼女は満足していた。今回はニューヨークで有名な歴史的建造物での三週間の留守番。好奇心旺盛な彼女はさっそく向かいの部屋の観察を楽しむが、ある夜、十四階の部屋から女性が突き落とされる現場を目撃する。すぐに警察に通報するが女性は即死、さらに部屋にはもう一人、男の死体が残されていた。そして彼女は翌日、立ち寄った警察署で、死んだ男の兄アッシュと出逢うことになった…。
アッシュはイタリア系の富豪で大家族の御曹司だった。職業は画家。彼はライラに絵のモデルになって欲しいと語る。彼女の自由奔放な眼を自らの絵筆で表現したいと言うのだ。次第に親密度を増してゆくふたりの関係。一方殺害された男女は、冷血な女殺し屋の手にかかったことが判明する。ふたりの身辺を徘徊し始める女殺し屋。そしてアッシュの親類が殺害されるにおよんで事件は新たな相貌を呈することになる…。ページを繰るにつれて緊張感がたかまるロバーツの傑作ロマンティック・サスペンス!
「○○○○○○○○殺人事件」で鮮烈デビューした「奇才」の新作! 上木らいちは多くの客と援交している高校生で、優秀な探偵でもある。殺人現場に残された十二枚の遺体のカラーコピー、密室内で腕を切断されて殺害された教祖、らいちをどこからか監視する謎の視線ーー数々の難事件をセクシーに解決するらいち。その驚くべき秘密が明かされる時、本格ミステリはまた一つ新たな扉を開く! さらに高度で、さらに過激な快作誕生!! 「史上最もHな探偵」再臨! 「タイトル当て」を凌ぐ驚愕の企て!! 「ミステリが読みたい! 2015年版」(早川書房)新人賞受賞 「2015 本格ミステリ・ベスト10」(原書房)第6位 『○○○○○○○○殺人事件』で 鮮烈デビューした「奇才」による待望のメフィスト賞受賞第1作! 上木らいちは様々な客と援交している高校生で、名探偵でもある。 殺人現場に残された12枚の遺体のカラーコピー、 密室内で腕を切断され殺された教祖、 隣人のストーカーによる盲点をつく手口ーー 数々の難事件を自由奔放に解決するらいち。 その驚くべき秘密が明かされる時、本格ミステリはまた新たな扉を開く! さらに過激で、さらに斬新な、傑作誕生!! またしても書店員さん驚嘆! 本格としての趣向が凝らされ、そして………え!? 参りました。 紀伊國屋書店 ゆめタウン徳島店 朝加昌良さん 惚れ惚れするような「本格」ですがR指定です。 「オトナ」の貴方は読みましょう。ぜひ読みましょう! ジュンク堂書店 池袋本店 矢部公美子さん 前作を凌駕する仕掛けの多彩さと 愛すべき狼藉ぶりを存分に堪能しました! ときわ書房本店 宇田川拓也さん Hな物語に目を奪われていると、真実を見失うぞ! 紀伊國屋書店 渋谷店 竹村真志さん らいちがとってもキュート! その魅力が最大限に表れている!! 書泉ブックタワー 江連聡美さん
溝端さんと会わなくなってから、人肌の温度を深く味わう機会はほとんどなかった。準君の気配を感じようとすると、高校生の頃初めてできた彼氏の穏やかな声を思い出した。痣があるはずの腕の温もりを思うと、大学時代に随分長いこと付き合った、一つ年上の先輩の部屋の匂いを思い出した。付き合いそうで付き合わず、何となく疎遠になった男の人たちの肌の記憶が、私の中で蘇る。けれどこの部屋には誰もいない。卓上ライトの光が青白さを孕んでゆくように思い、私は無性に寂しくなったー。第27回小説すばる新人賞受賞作。
17年前の誘拐殺人事件で容疑者有罪の決め手となった証拠は偽造されていた。捜査を指揮した刑事ヴィスティングは責任を問われて停職処分を受ける。自分の知らないところで何が行なわれたのか?そして真犯人は誰なのか?世間から白眼視されるなか、新聞記者の娘リーネに助けられながら、ヴィスティングはひとり真相を追う。しかしそのとき、新たな事件が起きていた…。北欧ミステリの最高峰「ガラスの鍵」賞をはじめ、マルティン・ベック賞、ゴールデン・リボルバー賞の三冠に輝いたノルウェーの傑作警察小説。
高嵐のさなか、アレスカルの名将ダリナルは、やがて人類を襲う恐るべき死の嵐がやってくることを幻視した。同時に何者かに「団結せよ!」と告げられた彼は、パルシェンディとの戦いを終わらせ、嵐の襲来に備えるべく、奔走する。一方、破砕平原で味方の軍勢を通すために敵の矢面に立って谷間に橋を渡すブリッジ隊の隊長となったカラディンは、あるときハイプリンス・サデアスの逆鱗に触れ、罰として高嵐が襲来する夜に宿舎の外に吊るされる。恐るべき嵐に半死半生になりながらも、カラディンもまた人類に死をもたらす嵐の到来を幻視したのだ!傑作ファンタジイ巨篇、待望の第2弾、登場。
中東で起こった戦争をきっかけに世界各地で核爆弾が爆発。避難したシェルターの中でひとり生き残った少年は(表題作)。卒園6年後に行われた幼稚園の同窓会で、だんだん全員が思い出しはじめた死んだあの子のこと(「約束」)。30年前に書かれた鮮烈な短編10篇がよみがえる。
柔道が大好きな小学4年生のまどかと、プロのミュージシャンを目指す高校生2年生の由一は、仲のよい家庭で暮らす兄妹。だが、ある電話がかかってきたことで、2人の知らない秘密があることに気づきー人気作家2人が兄妹の視点で交互に描く、ハートウォーミングストーリー。
みつば郵便局の配達員・平本秋宏は、ある日、配達先のマンションで不思議な女の子と出会う。不登校の少女とのやりとりが温かい「シバザキミゾレ」、転校した教え子との約束を描いた「先生が待つ手紙」など4話を収録。季節を駆けぬける郵便屋さんがはこぶ、小さな奇蹟の物語、第2弾!
五年前に失意の美星を救ったのは、いまは亡き大叔母が仕掛けた小さな“謎”だったー。京都にひっそりとたたずむ珈琲店“タレーラン”の庭に植えられたレモンの樹の秘密を描いた「純喫茶タレーランの庭で」をはじめ、五つの事件と書き下ろしショート・ショートを特別収録したミステリー短編集。
京都の魔界の闇に人妻料理人が迫るミステリ 京都御所の近くにある「ビストロ青猫」ではフランスの家庭料理を手軽に楽しめ、ケータリングサービスも評判だ。37歳の辻村凪子ももともとは夫の公輔と足繁く通う常連客だったが、三年前からこの店で働きはじめた。三年前、取材に出たまま行方がわからなくなった新聞記者の夫が、いつかここに姿を現すかもしれないという淡い期待もあったからだ。 貴船の南3キロほどにある溝口家を凪子がケータリングに訪れたその日。料理の準備を進めていると、ときどき店の手伝いをしている大学生の準平が声をひそめて言った。「あの人、もしかして『キミーK』じゃないですか?」神社仏閣巡りが趣味で“魔界”に詳しい準平によれば、溝口家のリビングでくつろぐ年齢不詳の女性は、いかがわしい噂もある呪術研究家だという。 そのキミーKこと桂喜美恵の死体が、翌朝「鐵輪の井戸」近くで見つかる。井戸は貴船神社丑の刻参りの出発点といえる“魔界”スポットだった。凪子はこの出来事を発端に、やがて続発する事件に関わっていく。それが夫・公輔の危険な“居場所”へと近づくことも知らずにーー。 呪いか、祟りか、トリックか?「髑髏本尊殺人事件」の謎に人妻料理人が迫るミステリ小説。 【編集担当からのおすすめ情報】 静岡新聞で連載された同名小説を改稿した文庫オリジナル作品です。
珠城学院高校の体育教師・桐野一寛(イッカン)は、「スクールセイバー」の一員でもあった。メンバーは、教頭の魚塚(ウオッカ)、国語教諭の範田、数学教諭の尾根、英語教諭のジョー・ラベリス、用務員で、もつ焼き「あらい」の店主・荒井二郎(あらじい)の六名。その任務とは、学校で起きた不祥事を表に出ないように上手く収めることだった。生徒の賭け麻雀や競馬、教師による体罰、果ては卒業式の爆破予告まで!生徒の将来と学内の平和をどう守るのか。そして、イッカンと小宮知子との仲はどこまで進展するのか。読めばもつ焼きが食べたくなる、シリーズ第二弾。
とびきりピュアでキュートな初恋純情小説! 毎朝六時半のラジオ体操ではじまり、「いただきます」の声を合図に、ほかほかの朝食が食堂のテーブルに並ぶ。京都の左京区の学生寮で四年間なじんだ生活は、山根が大学院生になった春からもつづいている。寮には、生物学科の安藤や電気電子工学科の寺田、たまに顔を出す数学科の龍彦も含め、趣味と研究を偏愛しすぎるゆかいな仲間ばかり。山根も例外ではない。工業化学科でエネルギーを研究しつつも、花火をはじめ何かが燃える様子を見ているだけで気持ちがたかぶり、「爆薬担当」とからかわれるほどだ。当然、異性のことなんて頭の片隅にもなかったのだがーー。 糺の森を訪れたその日、突然の雷雨に浮かび上がる満開の山桜の向こうに、白いワンピースを着た女のひとがいた。ずぶ濡れになった山根は熱を出し、熱が下がってからもなにやら調子がおかしい。そして、龍彦のガールフレンドの花にたやすく言い当てられる。「山根くん、もしかして好きなひと、できた?」。花は言う、もう一度“姫”に会いたければ、下鴨神社に毎日参拝すべしーーと。 葵祭や五山送り火、京都ならではの風物を背景に、不器用な理系男子のみずみずしい恋のときめきを愛おしく描いた長編、初恋純情小説の決定版! 【編集担当からのおすすめ情報】 好きになった相手の一挙一動に心が大きく揺さぶられ、頭のなかのすべてがそれで満たされたあのときの記憶。初めて恋をしてしまった主人公・山根のぎこちなさは、きっと誰もが身に覚えのある初恋の記憶と重なるはずです。ぜひ山根くんのまっすぐな恋に、あたたかなエールを送ってください! *本作は、「ダカーポ最高の本!2010」で“女子読み恋愛小説”第1位に選出された『左京区七夕通東入ル』の姉妹編で、どちらの作品からでもお愉しみいただけます。