2016年3月25日発売
夏休みに入った刑事マルティン・ベックにかかってきた一本の電話。「これはきみにしかできない仕事だ」。上司の命で外務大臣側近に接触したベックは、ブダペストで消息を絶った男の捜索依頼を受ける。かつて防諜活動機関の調査対象となったスウェーデン人ジャーナリスト。手がかりのない中、「鉄のカーテンの向こう側」を訪れたベックの前に、現地警察を名乗る男が現れるー。警察小説の金字塔シリーズ・第二作。
御蔵前片町にある料亭の一人娘・お鶴。普段はひかえめだが、いざとなると男勝りになることから、おきゃんな蔵前小町と呼ばれている。ある時、向島の花見から帰ってくると、家に珍客があった。病を患う伯母を見舞にきた旗本の章二郎である。初対面からお転婆をたしなめる章二郎に反発を覚えるお鶴だったが、やがてその想いは恋に変わり…(「江戸の娘」)。厳しい冬を越え待っている別れと出会い。名手たちが紡ぐ傑作短編集。
江戸城台所人の鮎川惣介は、持ち前の嗅覚を頼りに、数々の難事件を解決してきた。ある日、幼馴染みの添番、片桐隼人とともに訪れたなじみの蕎麦屋で、酒に溺れ前後不覚になった旗本、二宮一矢に出会う。二宮が酒をやめる代わりに、惣介が腹回りを一尺減らす約束をしてしまい、不本意ながら食事制限を始める。一方、大奥の廁で赤子の骸が見つかった。内密に事が運ばれていたものの、惣介はまたも、事件に巻き込まれてしまう。
雪まだ深い春休み。大学生の森司は、来たるホワイトデイのことで気もそぞろ。とはいえ通常とは逆で、片想いのこよみからの、バレンタインのお返しについて。そんな森司に関係なく、オカ研には依頼が。SNSのオフ会に現れる、心中を強要する霊。恐怖の市松人形、はたまた友人の事故物件めぐりと、恐怖の波状攻撃に戦き、成人式を迎えたこよみの振袖姿にときめき…。新たな仲間も登場で加速する、青春オカルトミステリ第9弾!
殺しのお宮入りは許すな!警視庁捜査一課に異動し、特命捜査対策室7係の班長代理となった北郷の任務は、15年間未解決の女子大生殺人事件の捜査。班に集まったアクは強いが捜査の腕は確かな刑事たちと競うように捜査を進め、見落とされてきた被害者の男女関係をたどる中、犯行動機を持つ新たな容疑者が浮かび上がる。だが、彼にはアリバイがあった。犯罪の決定的証拠は見つかるのか?実力派作家による本格派警察小説。
牡丹こと天草四郎にさらわれた舞を救うため、大剣を背負った大男・万源九郎は飛騨へ向かっていた。時を同じくして、天空より、三種の神器=オリハルコンを求めて異星のものたちが現れ、各地で人の身体を乗っ取り始めていた。やがて宮本武蔵、佐々木小次郎、柳生十兵衛ら剣豪や、真田忍群と伊賀の土蜘蛛衆までもが天の命運をめぐる凄絶な争いに巻き込まれてゆく。はたして源九郎は、女と地球を守り抜くことができるのか!?
両親と離れて暮らす高校生の佳乃は、豆柴のカンタと、座敷わらしの暁星と同居中。最初は戸惑ったけれど、今では食いしん坊で癒し系な暁星との暮らしを大切に思っている。受験が近づき、緊張感も漂い始めたある日、佳乃は街で、不穏な気配をまとう同学年の宮崎と出会う。肩に妖鳥を乗せ、百鬼夜行を連れ歩く宮崎。しかし彼と対峙した暁星が記憶を失って…。暁星が消える?その時佳乃は…。少し怖くて心ぬくもる青春小説。
私は東京のD坂にある白梅軒という喫茶店で、明智小五郎という探偵小説好きの妙な男と話していた。すると向かいの古本屋の様子がおかしい。なんとその店の妻が首を絞められて死んでいたのだ。様々な状況証拠から、私は明智が犯人ではないかと推理するが…。(表題作より)国民的名探偵が初めて登場する記念すべき表題作を始め、推理・探偵小説を中心に収録。推理小説の大家・大乱歩の傑作の数々を、ご堪能あれ。
失恋した15歳の誕生日、ひろみは目が覚めたらアラビアンナイトの世界に飛び込んでいた!偶然出会った青年ハールーンにジャニと名付けられ2人は都を目指す。道中、次々と現れる追手たち。ハールーンは王宮から逃げ出した王太子だった。絶世の奴隷美少女、空飛ぶ木馬、魔法で鳩に変えられたジャニ。砂漠の行者が語る「王国のかぎ」とは?ファン待望大人気作家の初期作品が、書き下ろし短編とあとがきを収録して新たに登場!
「わすれたほうがいいことも、この世には、あるのだ」無名の温泉地を求める旅本作家の和泉蝋庵。荷物持ちとして旅に同行する耳彦は、蝋庵の悪癖ともいえる迷い癖のせいで常に災厄に見舞われている。幾度も輪廻を巡る少女や、湯煙のむこうに佇む死に別れた幼馴染み。そして“エムブリヲ”と呼ばれる哀しき胎児。出会いと別れを繰り返し、辿りついた先にあるものは、極楽かこの世の地獄か。哀しくも切ない道中記、ここに開幕。
当てもなく雑木林を歩き、道に迷えばそこに暮らす名も無き人々に尋ねる。独歩はこれに無上の幸福を感じた。人間の生活と自然の調和の美を詩情溢れる文体で描き出した随筆「武蔵野」。自然を愛し、同時にその厳しさと対峙し続けた作家の繊細な魅力を味わうことができる初期短編集。妻子を亡くした船頭と、母に捨てられた哀しき少年との奇妙な同居生活を描いたデビュー作「源叔父」ほか全18編を収録。
ニコラス・理人・リューディガーは金髪碧眼の美青年。見た目は異国の王子様だが、中身は傲岸不遜な“魔女の専門家”だ。旧友の臨床心理士・都月玲李を訪ねたリヒトは、レイがある殺人事件の捜査に関わっていると知る。被害者は占い師。犯人は、邪悪な魔女を殺したと話しているという。リヒトは専門家として、強引に協力を申し出るが!?現代の魔女の謎を解く、オカルト・ミステリ開幕!
長原あざみは樫乃木美術大学の1年生。立体造形科の所属だけれど、引っ込み思案な性格のせいで、いつもひとりぼっち。ある日学校へ来ると、同級生の橘が作ったアクリル造形が変形していた。犯人の疑いをかけられたあざみを救ってくれたのは、人好きのする雰囲気を持つ青年、梶谷七唯。同じ学科の研究生という彼は、真実を調べようと言いだして…。第1回角川文庫キャラクター小説大賞“大賞”受賞。日常の謎系青春ミステリ決定版。
寒さがしみる夜、熱い手打ちそばをすすっていた次郎吉と小袖のいる店に、旅装姿の若い男女が入ってきた。どうやらやくざ者に追われているらしい。咄嗟に二人を匿った次郎吉が事情を聞くと、娘はやくざの親分に手篭めにされ、同情した男が駆け落ち覚悟で連れ出したという。だが、男が勤めていた貸本屋が付け火で焼け落ちてしまう。二人の事情には何か裏があるのでは…。義理人情に篤い鼠小僧が、今宵も悪を盗み出す!
誰もが認める烏丸家の当主になるべく決意も新たに迎えた2回目の春。大学進学の準備を整えていた花穎に、忠実なる執事・衣更月から驚くべき相談がもたらされる。それは「通常業務から離れたい」というものだった。代理としてやってきたヴァズは、衣更月のバトラー養成学校の同期で穏やかな青年だった。ところがその夜、ヴァズが何者かに襲われる事件が発生し…!?半熟主従に新たな試練?新章突入の上流階級ミステリー!
妖怪嫌いなのになぜか「妖怪研究同好会」に所属中の皆人。変人美人のハル先輩に振り回されつつ初の文化祭の日を迎えるが、お祭り騒ぎの中、奇妙な事件が発生。生徒会長の倉吉から、実は文化祭の前に“犯行予告”めいたメールが届いており、その犯行を阻止してほしいと頼まれる。「水虎」「覚」など妖怪が絡んだ4つの事件を、皆人は解き明かすことができるのか。そしてその“犯人”の目的とは?切なさ残る、青春学園ミステリ第3弾!
高山竜司、二見馨という二人の男の人生を生きた記憶を持つ、予備校講師の柏田誠二は疑問を抱えていた。おれは何のためにこの世界にいるのか…。謎の病に伏した少女を介し受け取った暗号に導かれ、伊豆大島に渡った柏田は、『リング』という本に記された竜司の行動を追うことで、山村貞子の怨念の起源を知る。自らの使命を自覚する柏田だったが、時を越え転生した貞子の呪いに身体を蝕まれ…。新「リング」シリーズ第2章!
大阪府警を追われたかつてのマル暴担当刑事、堀内と伊達。競売専門の不動産会社で働く伊達に誘われ、東京で暇を持て余していた堀内は、大阪へと舞い戻る。再びコンビを組み、競売に出る巨大パチンコ店「ニューパルテノン」を調べるふたりは、利権をむさぼる悪党たちとシノギを削ることに。警察OB、ヤクザ、腐敗刑事を敵に回し、ふたりは大阪を駆け抜けるー。『破門』の直木賞作家による、警察ハードボイルドの最高峰。
関ヶ原の前哨戦、安濃津城の戦いにて、夫の身を案じ自ら敵中に入り槍をふるった女性がいた。富田信高の妻、苳姫の戦中での活躍を描いた表題作「いのち燃ゆ」。夫を殺した敵の正体についての手がかりを得るべく、吉原遊女として身を沈めた太夫・瀬川の決断を活描した「乱れ火」など、過酷な運命に翻弄されながらも、逞しく生きる女性を描いた時代小説短編集。文庫初収録となる3篇のほか、厳選した名作を所収。