2016年3月発売
『憐憫の孤独』は二十の中・短編で構成されている。物語もあればエッセイもある。初期「牧神三部作」(『丘』『ボミューニュの男』『二番草』)のあとに書かれた作品で、ジオノ文学の重要な要素が見事に凝縮された内容豊かな傑作である。これ以降に出版される多種多様な作品群を予告するような物語が多く含まれており、ジオノ文学の扇の要にたとえられるような作品だといえよう。
舞台はアメリカのとある農場。のんびりと草を食んで暮らすお年頃の雌牛エルシーはある夜、雄牛との出会いを求め農場を抜け出した先で、自分の運命を知ってしまう。そして彼女は、自分が食べられない楽園・インドを目指す決意をする。同じ事情で国外脱出を望んだ七面鳥と豚を伴って。果たして彼らは、それぞれの楽園に辿り着けるのか!?『Xファイル』のモルダー捜査官ことデイヴィッド・ドゥカヴニーがまさかの作家デビュー。ふざけているようで大真面目、ほのぼの見えて実は毒がたっぷり。超常現象を超えたギャルウシの冒険物語!
“あのひとへの、あたしの愛/それから、あたしへの、あのひとの愛/あたしは、あたしたちが一緒に暮らした日々の思い出を/あのひとの胸のなかにちゃんと蒔いておいた。/あたしがいなくなったあともその思い出があのひとを、なぐさめてくれるようにね。/けっきょくのところ、もんだいなのは愛ということ…”「あたし」と「あたしの人間」の、出会いから「あたし」の死までの17年と4カ月にわたる濃密な時間を、猫の視点で描いた感動的な物語。江國香織のしなやかな日本語で贈る傑作、初の文庫化。ジュディー・キングの素晴らしいイラストレーション16点も完全収録!
大和新聞東京本社の遊軍記者である宮沢賢一郎は、東日本大震災後、志願して東北総局に復帰した。コラム「ここで生きる」を立ち上げ、沿岸被災地の取材を続ける宮沢のもとに、東松島市の仮設住宅で他殺死体が発見されたとの一報が入る。被害者の早坂順也は、宮城県庁震災復興企画部の特命課長。県の枠を飛び越えて復興に尽力してきた人物だった。早坂は亡くなる直前まで、各被災地の避難所の名簿を照合していたという。これは、本当にフィクションなのか?現代日本の黙示録『震える牛』『ガラパゴス』の著者が全霊を注いだ、鎮魂と慟哭の社会派ミステリー。
長年仕えた店主に気に入られ、日本橋の紙問屋で若き主となった勘七。その頃、小諸藩から藩札作りの大仕事が舞い込む。しかし、藩の内紛に巻き込まれ、店が襲われた。藩札が奪われ、父親の善五郎はその時のけがが元で亡くなり、二千両もの借金を背負ってしまう。そんななか勘七は、新三郎や紀之介といった親友や、祐筆を辞め町人となって実家に戻ってきたお京と付き合い、勝麟太郎や浜口儀兵衛から助言をもらい商いを学んでいく。巨額の借金をどう返済するのか。商人の心構えが詰まった、熱血時代小説!
江戸時代、世の中が停滞してくると、公儀は年号を改めた。天保二年初夏、付添い屋で生計を立てる浪人・秋月六平太は、同居していた妹・佐和の再婚を機に、浅草元鳥越の一軒家から近所の市兵衛店に移り住んでいた。付添いで知り合った訳ありの未亡人の世話を焼いたり、長屋の住人のごたごたに巻き込まれたりと、落ち着かない日々に変わりはない。市中では、荒っぱい押し込み強盗が頻発していた。そんなある日、六平太の隣の部屋に、座頭の杉の市という男が引っ越してきた。「この時代小説がすごい!」2016年版第4位にランクイン。日本一の王道時代劇第7弾!
瀬山カツ七十三歳は、街を歩けば毒舌をはき、トラブルばかり引き起こす厄介者。ある日、娘の幸恵と大喧嘩して家を飛び出し、行き着いた写真館で写真を撮ると、なんと心はそのままで二十歳の自分に変身。女手一つで娘を育てるために青春のすべてを犠牲に生きてきたカツは、節子と名前を変えて新しい人生を歩き始める。そんな中、のど自慢大会での熱唱が音楽プロデューサーの目にとまり、夢だった歌手になるチャンスが。ところが一緒に舞台に立つはずの孫の翼が事故に遭い…。全世界二〇〇〇万人が笑い涙した大ヒット映画をリメイク。『あやしい彼女』の小説版。
惑星アルカディアは人口減少の危機に直面。立ち往生した政府に代わって、超巨大企業へザリントン機構が実権を掌握、惑星復活へ向けた一大計画を開始する。地球で挫折した男ケヴィンは計画に巻き込まれるが、機構の美女スザンナと出会い、運命が変わり始める…多くの読者に愛された英国SF協会賞受賞の名作、完全新訳版。
研究所員として働く清史郎は、30歳を目前に恋人もおらず、将来への不安を抱いていた。仕事に追われ、眠れぬ日々を過ごしていたある日、マッサージ店に行くと、人妻・朝恵の腕の良さについ寝てしまう。しかし、いつの間にかあらぬところを揉みほぐされているようで…。終電で乗り合わせたOL、床屋の娘、美人歯科医と次から次へと寝ている間に誘惑が舞い込む。非社交的な同僚・紀香は淫夢に出てきてー?なぜか「可愛い」と言われる清史郎の魅惑の寝顔が彼女たちの心を揉みほぐす!?
手描き友禅の名匠である鴻一郎は、65歳。治療法が見つからない難病で手が震え、思うように作品を仕上げることができなくなっていた。そんな折、遠縁にあたる従兄弟甥夫妻が事故で亡くなり、ひとり娘の螢子が遺されてしまう。螢子の絵の才能と17歳という若さを買った鴻一郎は、後継者として育て上げることを決意する。しかし、日増しに美しさと妖しさを加速させる螢子との生活は、鴻一郎の理性を崩壊させていきー回春官能を超える霧原流『痴人の愛』ここに誕生!
『俺と一緒に、あの犬を誘拐しない?』家族の温かみを知らずに育った11歳の少年、宏夢は、移動図書館の館長をしているミツさんに、そんな提案をした。せまい物置の中で飼われている犬を救うべく、誘拐を計画する二人。犬にとって、本当の幸せとは?僕らにとって、本当の居場所とは?移動図書館を通じ、様々な人や事件と遭遇する11歳の少年と54歳の中年。それぞれの運命と向き合い、生きる意味を考えることとなる。
1950年、あるSF雑誌に無名の新人の短篇が掲載された。異様な設定、説明なしに使われる用語、なかば機械の体の登場人物が繰り広げる凄まじい物語…この「スキャナーに生きがいはない」以来、“人類補完機構”と名づけられた未来史に属する奇妙で美しく、グロテスクで可憐な物語群は、熱狂的な読者を獲得する。本書はシリーズ全中短篇を初訳・新訳を交え全3巻でお贈りする第1巻。20世紀から130世紀までの名品15篇を収録。
第二次世界大戦末期。中部イタリアのピアノーサ島にあるアメリカ空軍基地に所属するヨッサリアン大尉の願いはただ一つ、生きのびることだ。仮病を使って入院したり、狂気を装って戦闘任務の遂行不能を訴えたり、なんとかして出撃を免れようとする。しかしそのたびに巧妙な仕組みをもつ恐るべき軍規、キャッチ=22に阻まれるのだった。強烈なブラック・ユーモアで、戦争の狂気や現代社会の不条理を鋭く風刺する傑作小説。