2016年3月発売
「わたしはあなたを見ている」心理療法士のわたしは、不気味なメッセージを受け取った。それをきっかけに、家中の電気が突然切れたり、飼い猫が姿を消したり。誰かがわたしを監視しているのだろうか。そしてついに、家の近くで担当する患者が遺体で見つかる。わたしは警察に疑いをかけられたうえ、触れられたくない過去まで掘り起こされるー人の心を知り尽くした心理療法士が極限状態に追い込まれる迫真のサスペンス。
岡山発ひかり九八号が東京駅に到着。車掌長の安田は、グリーン車の洗面台に大金が入った財布と名刺入れ、高級腕時計が忘れられているのに気づいた。翌日、持ち主と思われる田島久一郎の他殺体が発見され、十津川と亀井の捜査が始まった。田島の妻・亜木子は田島の女癖の悪さに悩んで自殺していたのだ。続いて田島の浮気相手と思われる女の他殺体が阿武隈川の河原で発見され、容疑者が浮上するが、鉄壁のアリバイが…。(「ゆうづる5号殺人事件」)他、寝代特急富士、北斗星等を舞台に描いた傑作短篇5篇!!
気分屋で無気力な父親が、セキコは大嫌いだった。彼がいる家にはいたくない。塾の宿題は重く、母親はうざく、妹はテキトー。1週間以上ある長い盆休みをいったいどう過ごせばいいのか。怒れる中学3年生のひと夏を描く表題作のほか、セキコの同級生いつみの物語「サバイブ」を収録。14歳の目から見た不穏な日常から、大人と子供それぞれの事情と心情が浮かび上がる。
「でもわたしは美しい死体にはなりたくない」-“美しき死”へ少女たちを塗りこめ、観賞用の素材に変えようとするこの世界のあまたの罠から逃れるために、窓の外へと飛びだした“わたし”の行く末はいかにー。ことばの力で生きのびていく少女たちのためのもうひとつの“聖書”。著者の代表作にして性と生と聖をめぐる少女小説の傑作が、あらたに書き下ろされた外伝「声のおとずれ」を伴って、いま蘇る!
未発表の珠玉作品「美しい手」「“青”を売るお店」をはじめとする名短篇15篇を厳選。男たちが商店街でくりひろげる「日の出通り商店街いきいきデー」、椰子の実を40年頭上にのせる高僧の話「ココナッツ・クラッシュ」、ロックファンならずとも感涙の「ねたのよい」、親子の情愛を描く「お父さんのバックドロップ」など笑いとホラーと抒情の傑作集!
本所亀沢町にあるおけら長屋は、今日も騒がしい。密かにお染のあとをつける大工の又造。その意外な理由とは。花見で浮かれる長屋の連中をよそに、一人沈む万造。ひょんなことから五十年前の真実が明らかに。八百屋の金太に嫁取りの話が!?お糸と文七の祝言が近づく長屋のあちこちで難事が発生。折しも流行病が西方から江戸へ、そして本所にも…。笑って泣ける大人気連作時代小説、シリーズ第六弾。
すべては、一人の男が失踪したことから始まった。-関東の裏社会を二分する十四会の会長・今切の足取りが外出先が途絶えた。若頭補佐の君島から捜索の移頼を受けた裏社会専門の探偵・時園は、今切の行方を追う。会長・今切の失踪で得をするのは誰か。関係者らを洗う時園に「今切のものと思われる小指が十四会に届いた」との一報が入った。-男たちの矜持と憎悪、そして哀しき過去が激しく交錯する長編小説。
あれは、そういうことだったのか…。なぜか鮮明に刻まれたこどもの頃の記憶。大人になった今だからこそ、本当の意味に気づくことがある。-三歳の私は、なぜ欲しくもない「特急こだま号」の玩具をねだったのか。六歳の時の夏休み、「あの崖」の近くで過ごした情景は、たのしい記憶のはずなのになぜ私を苦しくするのか。まだ洗練されていなかった昭和と現在が交錯する短編集。
昭和の新宿。「雨の日だけ営業」と噂される、元神主・水上櫂の探偵社をめぐる物語ー。幼馴染の慎吾が「近ごろ、会社に間違って届く郵便物が多くて、受付の女性が困っている」と櫂に相談した数日後、その女性は失踪して…(表題作)。◎友の死を悼みつづける女の真意を見抜く「沈澄池のほとり」。◎破格の待遇で募集されたカメラマン採用試験の謎に迫る「好条件の求人」など、四作品を収録した連作短篇推理小説。
刑事だった父は、本当に冤罪を生んだのかー。京都府警捜査一課の川上祐介は、妻を殺したと自白しながら、黙秘に転じた被疑者に手を焼いていた。そこへ、京都地検から「不起訴」の連絡が届く。それを決めた担当検事は、父が違法捜査を疑われて失職した際に別の家の養子となった弟の真佐人だった。不起訴に怒る祐介に、真佐人は意外な一言を返す。刑事と検事の信念がぶつかる連作ミステリー。文庫書き下ろし。
蜘蛛の糸を駆使した魔物とのバトルにも慣れてきた「私」。危険な地下迷宮を目指し新エリア「中層」へと飛び出したはいいけどーそこはマグマ吹き出す灼熱の大地だった!立ってるだけでHPは減ってくし、唯一の武器の糸が片っ端から燃えるんですけど?瀕死状態に追い打ちをかけるのは、容赦なく炎の弾丸や魔法をぶつけてくる魔物たち。おまけに中層の主・火竜は奴らを従えるスキルまで持っていて…。蜘蛛子ちゃんの生存戦略、業火の獄炎迷宮で第二章開幕!
文芸編集者として忙しい日々を過ごす那波田空也は、あるきっかけで再びボクシングとの距離を縮める。初めての恋人・つた絵の存在、ジムに通う小学生ノンちゃんの抱える闇、トレーナー有田が振りまく無意識の悪意、脅威の新人選手・岸本修斗。リングという圧倒的空間に熱狂と感動を描ききる!傑作長編小説。
参事官の後山の指令で、完全黙秘を続ける連続窃盗犯の取り調べを行うことになった刑事総務課の大友鉄。その沈黙に手こずる中、めったに現場には来ないはずの後山と、事件担当の検事まで所轄に姿を現す。背後にはいったい何が?異色のシングルファーザー刑事の活躍を描き人気を博す「アナザーフェイス」シリーズ長編第七弾。
「俺、高校に受かったら、本とか読もうっと」。幼馴染みの慎也は無事合格したのに、卒業式の午後、浜で行方不明になった。分厚い小説を貸してあげていたのに、読めないままだったかな。彼のお母さんは、まだ息子の部屋を片付けられずにいる(「しおり」)。突然の喪失を前に、迷いながら、泣きながら、一歩を踏み出す私達の物語集。
死んだ男を囲む、二人の女の情念。ミッションスクールの女子たちの儚く優雅な昼休み。鉄砲薔薇散る中でホテルマンが見た幻。古い猫の毛皮みたいな臭いを放つ男の口笛。ダンボールに隠れていたぼくのひと夏の経験。日常に口を開く異界、奇怪を覗かせる深淵を鮮やかに切り取った桜庭一樹の新世界、6つの短編小説。