2016年3月発売
すれ違う子供が泣きだすほどの醜男の、愚直な恋のゆくえ(「甚三郎始末記」)。騙されていると知りながら待ち続ける遊女の哀しき運命(「風を待つ」)。自ら始末をつけるべく散り急ぐ男に、残された妻の覚悟を描く表題作など、心に染み通る5篇。四季の彩り溢れる情景と、男女の一途な愛を細やかに綴る傑作時代小説。
殺し屋・月影を追う北町奉行所筆頭与力・仙波一之進・仙波は平賀源内に依頼して、事件のカギを握る記憶喪失の娘をエレキテルで治療するが、娘が思いだしたのはただひとつ、「おとっつぁんは歌麿」!?表題作などテレビドラマ「だましゑ歌麿」シリーズの原作2篇を含む中篇集。巻末座談会・水谷豊、岸部一徳、中村橋之助。
うちの塾の生徒が誘拐された?小学6年の山下愛子を誘拐したという奇妙なメール。身代金は何と5000円、それを1円玉にして1000円ずつ塾の講師5人が持ってこいというのだ。国語、数学、理科、社会、それぞれに個性的な講師たちが愛する教え子のために謎に挑む!読むと勉強が好きになる、心優しい塾ミステリー。
豊後国森藩から奉公を解かれ、浪々の身となった赤目小籐次、四十九歳。彼には胸に秘する決意があった。旧主・久留島通嘉の受けた恥辱をすすぐこと。相手は大名四藩。備中次直二尺一寸三分を手に、小籐次独りの闘いが今、幕を開ける。時代小説ファンを驚喜させた小籐次シリーズが一層の鋭さを増し、“決定版”として帰ってきた!
何度も郷里に引き戻されながら、江戸で学問と剣術を極めていく元司。二十五歳で清河八郎と改名、自ら塾を開くも、やがて学問の世界を離れ虎尾の会を結成、尊皇攘夷の急先鋒となっていく。しかし倒幕の機いまだ熟さず、早すぎた志士として凶刃に倒れるー悲劇の孤士の生涯をあますところなく描いた傑作長篇。
札幌で暮らす小学六年生の瀬川大介には、自らの鬱屈を晴らす、ささやかな楽しみがあった。それは隣家に住む、指が二本ない謎の老人佐藤北海が見守る貧弱な樹がつける花芽を削り取ること。開花を待つ北海の喜びを奪うことで、不満を溜めた老人が“暴発”することを願っていた。だが、夏休みに入ったある日、大介の油断を衝いてその樹が白い花を咲かせる。それを見た北海は突如ボストンバッグを抱えて旅に出発、両親と喧嘩して家出をするつもりだった大介は、急遽彼を追うことに…。一人の少年の好奇心と冒険心が生んだ心に沁みわたる感動の物語。
戦勝の歓声が上がる中、会戦から帰還したマナスは戦場での恐るべき死の光景を嘆き、自ら死を求めて亡者が原へと赴く。彼はそこで悲惨・非道の様々な亡霊を目撃する。シヴァ神配下の三悪鬼などとの闘争の末に死んだマナスは、愛妻サーヴィトリーによって甦るが、最終的に彼が見出したものは…。
男爵未亡人カッサンドラは、ある罪に問われて家を追い出され、かつての使用人たちを引き連れて困窮極まっていた。つらい過去を陰で支えてくれた家族同然の彼らを守るため、彼女に残された唯一の方法は、大金持ちの貴族の愛人になること。決意を胸に秘め、カッサンドラは招かれてもいない舞踏会をひとり訪れる。ほかの招待客がみな、悪評がつきまとうカッサンドラと距離を置こうとするなか、ハクスタブル家の長男である伯爵スティーヴンは謎めいたその女性が気にかかり、周囲の視線も気にせず彼女を誠実にもてなした。社交界でも“理想の結婚相手”として評判が高い、清廉潔白なスティーヴンは、何かに導かれるようにしてカッサンドラとそのまま一夜を過ごす。翌朝、彼女の真実を知ったスティーヴンは、「きみを守る」と宣言するが…。
ハイランド地方最大勢力の氏族の次男アランは、氏族間の同盟のために政略結婚をさせられることが決まっていた。そんななか、アランは仮面舞踏会で出逢った聡明な女性メアリーに魅了される。ところが、メアリーはアランにとって宿敵の一族の娘だった。彼女にもまた、望まぬ結婚話がすすんでおり、ふたりは互いの家族の厳命によって近づくことさえ禁じられる。それでも、あの出逢いのときめきを忘れられないふたり。想いあふれるまま、人目を忍んで逢瀬を重ねていたところを、ついに両家に見つかってしまう。強引に引き離された翌日、メアリーの結婚が2週間後に決まったことを知ったアランは…。ハイランダーとしての誇りを胸に領地を守ってきたマクローリー3兄弟が、イングランドの上流社会へ乗りこむ“スキャンダラス・ハイランダー”シリーズ、第2弾!
シンガポールでカフェを営むアンティ・リーは、大豪邸で開かれるビュッフェパーティの注文を受け自慢の腕を振るった。 ところが、メイン料理で主催者の家族が絶命。 アンティ・リーは、何者かが巧妙に仕組んだ殺人事件だと確信する。 けれど、カフェは無情にも営業停止に追いこまれてしまい……!?
男手ひとつで育てた一人娘が結婚相手を連れてきた日に父親がとった行動。自身の再婚と息子の問題で揺れる母親の微妙な心理。年上の女性に恋した少年の10年後の姿…。『珈琲屋の人々』シリーズの著者が、様々な家族の情景を丁寧に切り取った8編を収録。もう一度、家族というものをゆっくりと考えたくなる短編集。
「次は女の子を産むわ」そう宣言して産み分けに躍起になる妻。そんな妻の決断に淡い違和感を抱く夫。互いに心揺れる日々を経て、夫婦がたどり着いた先はー。思いがけないラストが深い感動を呼び起こす表題作「憧れの女の子」。男女の心の行き違いから浮かびあがる人間の本質を鮮やかに掬いとった物語、全5編収録。
オカルトサークルのメンバー6人が、夏休みに廃墟のラブホテルで合宿を行うことになった。先に侵入していた若者2人も加わって合宿は始まったが、2日目の朝、メンバーの女性が全裸で拘束されているのが見つかる。さらに出口が何者かに施錠され、建物内は完全な封鎖空間となった。8人の中に、3年前の事件の生き残り、レイジがいるのか?蠱毒の狂気が再び始まった!
昭和二十年、敗戦色濃い横須賀。十九歳の島田紘治は徴兵検査を目前に控えて悶々としていた。脳裏に浮かぶのは女学校を出たての清楚な美少女、咲子の姿。なかなか想いを告げられぬ純情な紘治だったが、血気盛んな若い肉体は出征した夫の留守を守る貞淑な人妻たちを否応なく惹きつける。やがて訪れた恍惚の初体験。紘治は熟れた柔肌に己の全てを委ねる。エロスの巨星による渾身の性春賛歌!長編書き下ろし。
春と言えば、桜の季節。睦月に固い蕾であったものが、如月に梅の香を愛でた後、弥生から卯月にかけての短い時期に満開を迎える。22歳でいまだにバージンの桜子、25歳でとりたてて美人でもないのにモテてしまう小梅、27歳で出逢いがないのに悩む咲良、三十路を越えて日々セックスの快感を追求している八重。性に悩む4人の乙女たちが経験する、時には苦く時には甘い体験を描いた、オリジナル長編性春エロス。
大吉旅行社の社長・安西宏幸は倒産の危機を回避すべく、百年に一度だけ行われるという、栗戸神社の秘宝「満澄」御開帳見学ツアーを企画する。思わず声に出したくなる、その淫猥な言葉の響きのおかげか、あっという間にツアーは満席に。ツアー初日、集合場所に現れたのは、熟年カップル、不倫OL、エログッズ会社の営業部長、ラブホテル経営者夫人といった、ワケありのエッチな客ばかりだった。書き下ろし艶笑エロス。
幾人もの侍に追われていたところを豊之助が救った常太郎と名のる若侍は、いかにもいわくありげな様子。素性も事情もいっさい語らず、帰る家もないという。豊之助は常太郎を来栖道場に居候させてやることにしたのだが、これがとんでもない騒動へ巻き込まれるきっかけとなった…。好評シリーズ第三弾!
正義漢だが無学単細胞の安藤新次郎は、旗本の次男坊。急死した叔父の末期養子として、母の実家の家督を継ぐことになった。その榊原家、家禄一八〇俵の小普請ながら、なぜかとても裕福。それもそのはず、実は榊原家は「義理欠く、見栄欠く、情け欠く」を座右の銘とする祖父源兵衛の指揮のもと、裏稼業で「金貸し」を手広く行っていたのだ。果たして新次郎に金貸しの親分が務まるのか!?勇往邁進、痛快無比の新シリーズ登場!