2016年3月発売
両国広小路に流れ着いた新任の木戸番、杢之助。仕事熱心と評判の彼は、古巣の四ツ谷左門町をある事情から逃げ出した過去を持つ。ある日、両国界隈で神隠しの噂が流れ、八百屋の息子、留吉が消えてしまう。天狗の仕業だと町の面々が怯える中、杢之助は留吉の捜索を買って出るのだが…。己の過去を隠しつつ、町の平穏のために奔走する男、杢之助の新シリーズ始動!
大地震の悲しみも癒えつつあった安政三年秋、大あらしが江戸を襲った。強風に高波、そして火事。おたねが夫とともに逃げ込んだ寺の境内は、悲嘆に暮れる人々であふれていた。家を失った者、家族と生き別れになった者。おたねの作る料理が、皆の心にぬくもりを与えてゆく。打ちのめされても再び立ち上がる人々の営みを温かい眼差しで描く、好評シリーズ第二弾。
年老いた母を種付け馬・花雲の背中に乗せ、嘘を封じる百ヵ所まいりに出た若者。馬の名産地・桜七牧で、真実を述べたばかりに八十八回叩かれた腹いせに、同じ数の嘘をつき生きることを決意、自ら八十八と名乗る。悪代官に野盗の頭目、一癖も二癖もある相手に、嘘つきの天才八十八が言葉巧みに勝負を仕掛ける。恋あり、オゲレツあり、爆笑必至、痛快な男の出世物語。
中学一年の夏に引っ越すことになった井嶋杏里。転校でなじめない中学の校舎で、使われなくなった教室『1-4』に入った杏里は、市居一真と出会う。杏里に出会った一真は、杏里に絵のモデルになって欲しいと頼む。そこから物語は始まったー。杏里、一真、そして、かけがえのない友だちと家族。悩みながらも成長する十四歳を描いた、あさのあつこの青春傑作小説。
貧しい御家人の次男坊の善吉に、願ってもない婿養子の口が舞い込んだ。相手は黒門町の馬具屋で、蔵には千両箱が唸っているという。娘の器量も申し分なく、あっさりと二本差しを捨てて町人に鞍替えした善吉だったが、家中にはどろどろの男女男係が渦巻き、果たは刃傷沙汰まで…。作者の小説巧者ぶりを存分に発揮した諧謔と機知溢れる表題作をはじめ全七編収録。
東京・赤羽の巨大団地葵ヶ丘に住む北原美紗子の娘・奈月が失踪した。赤羽中央署生活安全課の疋田務は部下の小宮真子らとともに懸命な捜査を続けるが、一向に消息は掴めなかった。奈月はいったいどこへ。やがて誘拐犯を名乗る人物から身代金要求の電話がかかったとき、事件は予想もしない方向に暴走を始めたー正統派、かつ、斬新。心を鷲掴みにする新警察小説、誕生!
横浜にある女子高に通うわたし、上杉小春には碓氷優佳という自慢の親友がいる。美しく聡明な彼女はいつも、日常の謎に隠された真実を見出し、そっと教えてくれた。赤信号のジンクス、危険な初恋、委員長の飲酒癖、跡継ぎ娘の禁じられた夢、受験直前の怪我、密かな失恋…。教室では少女たちの秘密が生まれては消えてゆく。名探偵誕生の瞬間を描く青春ミステリーの傑作。
硬派のニュースキャスターが浴室で変死した。自殺と思われたが、奇妙な遺留品が現場から発見され、他殺の線が強くなる。臨場した加門昌也警部補率いる警視庁捜査一課第五係は、彼に裏献金を糾弾された大物政治家に疑いの目を向けるが…。捜査一課、組織犯罪対策部第二課ーそれぞれの刑事たちが、足を棒にする捜査の先に辿り着く真実とは!熱血の警察小説集。
「ねえ、エッチしようよ」-学生時代、事あるごとに甘い声でねだってきた、元彼女、早月。社会人三年目の今、克彦は奔放だった早月とは正反対の、清楚で家庭的な梨子と同棲を始め、仕事も正念場を迎えていた。しかし今になって、あの日夢中で抱き締めた早月の肢体が生々しく甦る。裏切られ、さんざんな形で別れたはずなのに…過去と現在が狂おしく交差する青春官能の傑作。
幕末の名君松平春嶽の師に、と請われるも固辞、俗世を捨て和歌にすべてを捧げた橘曙覧の生涯。年番方与力宇野清左衛門は、詮議所にいた男にある面影を見て、疑念を抱く。長谷川平蔵の幼馴染で南町奉行となった男の矜持と心意気ー。小説好き必読!書下ろし時代文庫の人気執筆陣が、人の世を彩る感情“喜怒哀楽”を描き切る特別企画。第一弾は、三つの“喜び”が溢れる。
奉公先から大金を盗んだ女が、斬首の間際、首斬り浅右衛門の直弟子に託した悲痛な願い。名作落語「らくだ」をモチーフに描く、極限状態に追い込まれた人間の本性。素浪人矢吹平八郎が知り合った、幼子のため必死に働く女に忍び寄る不穏な影ーときに己を奮い立たせ、ときに誰かを救う力となる、たぎる“怒り”を三人の名手が活写した、豪華アンソロジー第二弾。
境界ーー異界、狭間の空間、異種が棲まう場所。 それは、現界ーーこちら側とは違う場所。 探偵・狭間ナルキヤには友がいる。 元警官、教授、ゲーマー、組の若頭、その子分、自称・愛の伝道師、風俗マエストロ、人気高級風俗嬢、インド人ナンパ師、釣り名人、淫魔、半吸血鬼。 総じてクズで、総じて最高なヤツらだーー。 狭間探偵事務所を、ある日一人の客が訪れる。 彼女の依頼は男とともに消えた妹の捜索。いわゆる人捜し。--だが。 新興暴力団や民警による拉致・監禁・暴行。不法移民。人身売買の国際組織。そしてーー“異種”の痕跡。 「きみの妹さんは人間か?」 事件は“彼ら”に纏わる様相を帯び、物語は加速をはじめるーー。
十年前、世界を救うため人知れず犠牲になった月白カノ。 死んだはずの彼女がある日、英雄の一人・黒羽園の前に現れる。 彼は知る、今の世界が“真っ黒な英雄譚”の上にあるということを。 かつての恋人、月白カノが自ら望んで犠牲になったのではない、ということを。 そして彼は、復讐者と、化すーー。
“あの日”からこの国は変わったーー金こそがすべてという絶対の価値観に支配され、誰も綺麗事は言わなくなった。そんなこの国へ十三年ぶりに帰ってきた禅十郎は、ひょんなことから裏組織《百鬼夜行》を通じて、おかしな女子高生・闇神閻麻に買われ《奴隷》にされてしまう。奴隷となった禅十郎は、閻麻の望む大金を稼ぐため、《グラディエート・システム》による殺し合いゲームへと身を投じることとなりーー。 奴隷が金を求めて進む未来には、いったい何が待ち構えているのか。
幼少期に「誰よりも速く駆ける」能力を与えられた飛脚の熊八。江戸を戦火から救うべく天の声に導かれ、坂本龍馬らと出会い、激動の幕末日本を駆け抜けていく。最速の男と幕末の偉人たちが交錯する疾走型エンタメ!
とある地方都市で、「将来的に、詩を書いて生きていきたい人」が参加条件のSNSコミュニティ、『現代詩人卵の会』のオフ会が開かれた。互いの詩の合評を行い、現代詩について存分に語り合った九人の参加者は、別れ際に約束を交わした。「詩を書いて生きる志をもって、それぞれが創作に励み、十年後に詩人として再会しよう」と。しかし約束の日、集まったのは五人。ほぼ半数が自殺などの不審死を遂げていた。なぜ彼らは死ななければならなかったのか。細々と創作を続けながらも、詩を書いて生きていくことに疑問を抱き始めていた僕は、彼らの死にまつわる事情を探り始めるが…。生きることと詩作の両立に悩む孤独な探偵が、創作に取り憑かれた人々の生きた軌跡を辿り、見た光景とは?気鋭の著者が描く初のミステリ長編。
読むほどに心がほっこりする相良ワールド。脚本や児童文学でお馴染みの相良敦子による初の短編小説集です。俳句を愛する父の最期の病床を俳人・一茶の幻影との心の交信をまじえてえがいた「せうじの穴の天の川」。中国古代を舞台に、あたかも兵馬俑の遺跡から生き返ったかのような二人の男を活写した「掘る」。明治の近代化への庶民のとまどいとたくましさを、商家を舞台に女主人の目線で明るくユニークに描いた「瓜提灯とピクルス」。NHK朝の連続テレビ小説「ウエルかめ」のスピンオフ作品でNHK徳島放送局のweb上で好評連載された「アデリータの背中」、の四編を収載。脚本家・相良敦子ならではの軽妙でユーモアある会話術が、小説の筆でもきらきら光を放ち、読者を小説世界へと導きます。日常の喧騒からちょっと小休止したい時、きっと心のビタミン剤になる、四つの愛すべき短編小説集です。