2016年4月15日発売
江戸時代の初期から、各藩で発生したさまざまな「お家騒動」。原因となったのは、金銭をめぐる対立や父子の不和、家臣による派閥争いなど、現代に通じるものばかりだった。島津、伊達、黒田、加賀、秋田、越前で起きた各騒動の真相を、説得力あふれる筆致で描き出す。人間の本質に迫る、海音寺史伝文学の真骨頂。
お家騒動の原因は、継嗣問題そのものよりも、党派の抗争、主人と家老の抗争、新進の権力者と門閥重臣の抗争などであったー。越後、仙石、生駒、桧山、宇都宮、阿波。各藩内の諍いを、史実と知見を結集して鮮やかに再現する。著者独自の解釈も随所に展開し、武士の気質を浮き彫りにした史伝文学の名作。
かつて貿易港として栄えた水上都市・海市。街の景観を守るために作られた海市協会には、古い建物に新しい住人を探し出す空き家課という部署があった。ここで働く間宮明はある日、上司の娘・五年生の三上汀とともに空き家を訪れる。建物に残された“写真”が呼び起こすのは、忘れてはならない大切なものー。
暴力団・獅靭会の罠に玲奈たちが気づいた時はもう遅く、莉子は鑑定店から誘拐されていた。古巣の獅靭会に敢然と立ち向かう須磨。莉子も人の死なない世界から、玲奈と同じ正義も悪もない世界に引きずり込まれてしまうのか。『万能鑑定士Q』と『探偵の探偵』、松岡圭祐の二大シリーズ、ここに完結。書下ろし。
信州飯田のダム湖に、腐乱したバラバラ死体が浮かんだ。飯田署の巡査部長・竹村岩男は、単純な親族の借金トラブルとされた捜査結果に、一人異を唱える。東京・青森・鳥羽ー、わずかな目撃証言を頼りに、執拗な追跡が始まる。圧倒的な筆力でミステリー界に旋風を巻き起こした、著者・伝説のデビュー作!
転校した中学で、クラスメイトとは距離をおく多感な少女・七緒と出会った雪子。両親の離婚危機に不安を抱える雪子は、奔放な七緒の言動に振りまわされつつ、そこに居場所を見つけていた。恋よりも特別で濃密な友情が、人生のすべてを染めていた「あの頃」を描く、清冽な救いの物語。他に「水の花火」収録。
男手ひとつで、心を込めて娘を育ててきたはずだった。そこに突然届いた「お父さん検定」。合格しなければ親権を奪われる。差出人は亡き妻の母だ。健康か。家事はできるか。娘の気持ちをわかっているか。数々の審査項目に細野一郎は七転八倒。「そうだ、夏休みに旅行に行かないか?」「私、留学したいんだ」「今なんて言った?」期間は二ヵ月、娘に相応しい父への道のりは遠い。『ボク妻』著者が描く、一風変わった家族の物語。 第一章 お父さん検定が来た 第二章 失敗屋 第三章 父として 第四章 段々、父親と娘 第五章 お父さん検定 エピローグ 子別れ
「この文庫書き下ろし時代小説がすごい!」に二度にわたり第一位に輝くなど、平成時代小説文庫を代表する人気シリーズ「奥右筆秘帳」。幕政の闇を知り、命を狙われる奥右筆組頭の立花併右衛門。併右衛門と愛娘瑞紀を護るのは、厄介者となっていた隣家の次男柊衛悟。「筆」と「剣」の力で闇と闘う彼らの前に立ちはだかるのは無敵の甲賀忍・冥府防人、そして権の亡者と化す一橋民部卿治済。物語前夜の彼らの葛藤と謎を描く銘々伝。 第一話 立花併右衛門の章 第二話 冥府防人の章 第三話 一橋民部卿治済の章 第四話 柊衛悟の章 あとがき
下士上がりで執政に昇り詰めた桐谷主水。執政となり初登城した日から、忌まわしい事件が蒸し返され、人生は暗転する。己は友を見捨て出世した卑怯者なのか。三十半ばにして娶った妻・由布は、己の手で介錯した親友の娘だった。自らの手で介錯した親友の息子・喬之助が仇討ちに現れて窮地に至る主水。事件の鍵となる不可解な落書の真相とはーー武士の挫折と再生を切々と訴える傑作。 (解説・大矢博子) 著者史上、最上の哀切と感動が押し寄せる、直木賞作家・葉室麟の傑作! 峻烈な筆で武士の矜持を描き出す渾身の時代長編。 下士上がりで執政に昇り詰めた桐谷主水。執政となり初登城した日から、忌まわしい事件が蒸し返され、人生は暗転する。己は友を見捨て出世した卑怯者なのか。三十半ばにして娶った妻・由布は、己の手で介錯した親友の娘だった。自らの手で介錯した親友の息子・喬之助が仇討ちに現れて窮地に至る主水。事件の鍵となる不可解な落書の真相とはーー武士の挫折と再生を切々と訴える傑作。 序盤から畳み掛けるような波乱の展開である。喬之助が差し出した証拠はとても明白なもので、ではなぜ当時それに気づけなかったのか。そして真犯人は誰だったのか。もしも当時の主水の証言が間違っていた場合、藩としても喬之助の仇討ちを妨げられないと家老に言われ、主水はもう一度事件を調べなおそうとする。そこで手がかりになりそうな過去の事件が浮かび上がるが、なぜか邪魔が入り……。(中略)執政の上役たちは皆何かを知って隠しているようだし、主水の監視役に付けられた小姓組の早瀬与十郎も敵か味方かわからないし。そして、犯人につながる手がかりを目の当たりにしたときのサプライズ! さらにそこから……いや、それは書かないでおこう。落書事件の真相探しが、思いもよらぬ大事件に発展するとだけ申し上げておく。(大矢博子・解説より)
鍛冶の里に生まれ育った少年キリヒトは、王宮の命により、史上最古の図書館に暮らす「高い塔の魔女(ソルシエール)」マツリカに仕えることになる。古今の書物を繙き、数多の言語を操って策を巡らせるがゆえ、「魔女」と恐れられる彼女は、自分の声を持たないうら若き少女だった。超弩級異世界ファンタジー全四巻、ここに始まる! 第一部 山賤ノ里、一ノ谷 図書館の魔女と手の中の言葉 1 やまざとでのさいごのいちにち 2 しゅったつのときはちかづく 3 ここからさきはひとりでいきなさい 4 ほんをよんでいるときにはなしかけては 5 わたしのいっていることがわかっているか 6 それにきがついていたのはまじょのほう 7 とけいまわりにおりていくこと 8 かすかなそけいのかおり 9 うえにみつくびがまっています 10 みつくびはめをほそめてねめつけていた 11 まじょのすまいはまるでろうごくかとりでか 12 まじょがてがみをかいているところをみる 13 きりひとのてならいがはじまった 14 あたらしいしゅわをつくる 15 あらゆることがぶんけんにのっている 16 すーくにおりるみちじゅんがちがう 17 なかにわのいどにはいらせてもらう
図書館のある一ノ谷は、海を挟んで接する大国ニザマの剥き出しの覇権意識により、重大な危機に晒されていた。マツリカ率いる図書館は、軍縮を提案するも、ニザマ側は一ノ谷政界を混乱させるべく、重鎮政治家に刺客を放つ。マツリカはその智慧と機転で暗殺計画を蹉跌に追い込むが、次の凶刃は自身に及ぶ! 第二部 一ノ谷 地下の覊旅と暗殺者の所在 18 ほんとうにひみつをまもるのは 19 はなれのなかにわのいどから 20 まつりかはきりひとのみちびきで 21 まつりかがきりひとをたよりにしすぎる 22 はるかぜはかくごをきめたという 23 かしらのなまえはおしえてもらえなかった 24 しゅくえんのさなか、かくれるように 25 たったひとことのせりふから 26 へきえんにけぶりたつのびのごとく 27 われにかえってしんそこしまったとおもった 28 てにもっているのはなに? 29 むしろこんごのことをはなしあっておこう
化粧品メーカーの研究部に勤める秋山箱理、27歳。箱理の祖母は常に真白な化粧をしており、素顔は誰も見たことがないため、「妖怪シロシロクビハダ」と言われている。ある日、弟が婚約者を連れてくるが、祖母だけは猛反対! それをめぐり、祖母の“白塗り顔”の秘密がついに解き明かされる! 登場人物のドラマを温かく、切なく描きながら、女心と化粧の切ってもきれない関係を鮮やかに描く成長物語。
あのとき、ふたりが世界のすべてになったーー。 ピアノの音に誘われて始まった女どうしの交流を描く表題作「愛の夢とか」。別れた恋人との約束の植物園に向かう「日曜日はどこへ」他、なにげない日常の中でささやかな光を放つ瞬間を美しい言葉で綴る。谷崎潤一郎賞受賞作。 収録作:アイスクリーム熱/愛の夢とか/いちご畑が永遠につづいてゆくのだから/日曜日はどこへ/三月の毛糸/お花畑自身/十三月怪談 。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。 「アイスクリーム熱」、映画化決定! ☆映画「アイスクリームフィーバー」 2023年夏公開 吉岡里帆、モトローラ世里奈、詩羽、松本まりか 千原徹也 初監督作品 アイスクリーム熱 愛の夢とか いちご畑が永遠につづいてゆくのだから 日曜日はどこへ 三月の毛糸 お花畑自身 十三月怪談
名探偵とは何者か? 洋の東西を問わず、読者の心をとらえて離さない名探偵の魅力とは? それが推理小説最大の謎! 帆村荘六、半七、フェリシティ、明智小五郎、鬼平、三毛猫ホームズ、金田一耕助、ミス・マープル……。誰もが大好きな名探偵たちが、現代文学の名手13名の筆によって新たな息を吹き込まれた。古今東西の難事件が解決されるばかりではなく、ミステリーのあらゆる楽しみ方を存分に堪能できるアンソロジー。 豪華執筆陣による夢の競演!
たまたま見た「南部芸能事務所」のお笑いライブに魅了され、事務所の研修生になった新城。コンビを組んだ溝口との厳しい稽古を経て初舞台に立ち、社長からギャラとして「千円」を渡されるが……。弱小お笑いプロダクションを巡る面白き人々の人間模様を、誰にも書けない筆致で描く連作短編集、第2弾! ギャラ ファンシー トリオ インターバル シフト 相方 二人の名前
関ケ原の戦いで敗北した真田昌幸・幸村父子は、信州上田を追われ高野山に蟄居となる。だが高野山は女人禁制の地、妻子は高野山口の九度山に居を構える。妻の眼から見た閑居の日々、やがて迎える凄惨な大坂の陣ー綿密な取材と膨大な史料をもとに、時代に翻弄された正室・竹林院を活写する長編歴史小説。
二〇一一年八月、出版社取締役の菊池は、膵臓がんで余命一年、と宣告された。もはや治療の術もない。妻とは五年前に離婚、娘二人も独立し、海外で暮らしている。生きるも死ぬも一人の身の上の菊池は、運命を受け入れつつも、思索の末に神戸に移り住む。二十年前に知った、ある不思議な女性を探すために。 (第一部) 歴史は生者を求めない 祝福された男 未知の治療法 かくのごとき衝動 一匹の子羊 痛みは嘘のように消えてしまった 出版局長のメール 新田内科医院 もうこの国は駄目だろう アストラルタワー 暗い穴に落ちていく 輪廻転生 女神さま メルカロード宇治川 東門街 すごい覚醒 新生物 城崎にて 真尋 おかあさん 医者の家 個人的依頼 山村はるか 谷口里佳 (第二部) 自炊 一冊の本 あと一日の命 田園 イメージと流れ 二人の夢 野々宮 魔法のような考え方 直感が花ひらく 確かめて、助ける 花婿はゾウに乗って 静かに死んでいきたい
菊池は神戸の街で、山下やよいを探し続ける。彼女は「痛みを取り除く力」を持つ女性だった。二十年前に電話口で、菊池の足の怪我を瞬時に治し、さらにその力で若返り、十二歳年下の男と結婚した。その後に起こった、あらゆる力をねじ伏せる阪神・淡路大震災を経て、彼女は今どこで生きているのだろうか。 (第二部・承前) 教会巡り ノンフィクション選集 山下実雄 ストレスを切りぬける トゥルー・ストーリーズ 「奇跡の猫」 人と防災未来センター 阪神大震災全記録 新しい町 毎日新聞東灘販売所 「赤い服の青年」 (第三部) 理彩の手のひら 死者の目 奇妙な街角 雨の予感 山下やよい 忘れられない夜 受容 二種類の時間 男でも女でもないもの 谷口四兄弟 阿形一平 帰京 カメラの名前 手紙 「泣く男」 ”彼” パナマハットの老人 二十八年前の出来事 タイガースポーツ ネイプルズ 荒川線の町 ゆかり 最も小さい者のひとり 私たちの中の私 石巻の人 究極の死 昭和五十八年三月十四日 真相 再会 「神秘」 解説 読者を幸せに、担当記者も幸せに 栗原俊雄(毎日新聞学芸部記者)
妻が料理するあいだ風呂を入れようと思ったが(「カレーの話」)、部屋に住み着いた幽霊との10年越しの約束(「伊藤さん」=採点は各9.5点)。奇想天外なストーリーやどんでん返しだけじゃない。人生のしっとりした情感も味わえるキラリと輝く60編。発想方法や文章作法もよくわかる選評も必読!文庫オリジナル。