2016年4月9日発売
30代作家が選ぶ太宰治30代作家が選ぶ太宰治
「ときどき何だか恋しくなって、うっかりページをひらいてしまう」(朝吹真理子選「親友交歓」)、「悲嘆にくれながら笑い、怒りながらおどける。背反を抱え、そのまま抱きしめ続ける人」(滝口悠生選「葉」)、「儚くて、かわいくて、切実で」(西加奈子選「皮膚と心」)-三十八歳で歿した太宰の短篇を、七人の現代作家が同世代の眼で選んだ作品選。
哀歌哀歌
肉体の恐怖の前には精神など全く意味を失ってしまう。臆病に生き臆病に埋もれて、自分がどんなに卑怯なのかどんなに弱いのか、たっぷり承知しているー弱者。弱者を凝視して聖書とキリストの意味を追究し、『沈黙』への展開を示唆した注目すべき短編集。人間の深層によどむ“哀しみの歌”を表題に据え、「その前日」「四十歳の男」「大部屋」「雲仙」など十二編を収める。
PREV1NEXT