2016年8月発売
「ぼくはきみが憎い」マットの緑色の瞳がぎらりと光った。「きみに、ぼくが味わったのと同じ苦しみを味わわせてやる」憎しみに満ちた義兄の言葉に、フランセスカは震えあがった。ロンドンからはるばるカリブ海までやってきたのに、8年ぶりの邂逅はぞっとするほど残酷で、禍々しい。フランセスカは、静かに悲しみにうち沈んだ。8年前のあの夜、たしかに義兄と義妹は過ちを犯した。だがあれはもう、過去の記憶に埋めたのではなかったのか。フランセスカの脳裏に、15歳の禁断の夜がありありと甦った。
世界的に名だたるトレジャーハンター、ファーゴ夫妻。二人は地球温暖化の氷河への影響を調べるため、北極圏へ調査に訪れた。作業は順調に進んでいたが、ある地点で磁気探知機が激しい反応を示した。氷の下に、自然ではありえない巨大な人工物があるのだ。氷の層を掘り進むうち、木造の物体が見えてくる。やがて目の前に全貌を現わしたものは、中世の北欧ヴァイキングが使っていたロングシップと呼ばれる木造船だった。しかも長いあいだ氷の中にあったため、船はほぼ完全な状態で保存されていた!
北極圏の氷の下から姿を現わしたヴァイキング船。その船内からは、驚くべき積み荷が発見される。それはヨーロッパのものではなく、アメリカ大陸のものと思われる遺物ーアステカやマヤなど、中米の滅び去った文明の品々だった。ヴァイキングは、アメリカ大陸と交流があったのか?調査を進めるファーゴ夫妻は、メキシコで栄えた都市国家トルテカの存在にたどり着く。だがそこには、二人への復讐に燃える仇敵の罠が迫っていた!葬られた歴史の謎を解き明かす、巨匠の歴史冒険ミステリー。
ふたつ目の星を求めて仲間たちとカプリ島へ向かったアニカ。人魚である自分が陸に留まることのできる時間はあと僅かだと悟った彼女は、ソーヤーへの恋心に身を焦がしていた。一方ソーヤーは、お転婆で純真なアニカを眩しく思いながらも、心を動かされないよう自分を戒めてしまう。宿敵の女神ネレイザが新たな武器を解き放ち、星探しをめぐる戦いが苛烈さを増していく中、ふたりの距離は急速に近づいていくのだが…。“幸運の星”を守る使命を負った勇者たちの愛と闘いの物語、待望の第二弾!
出版社勤務の柳楽尚登(27)は、社命で足を運んだ吉祥寺の家族経営の立ち飲み屋が、自分の新しい職場だと知り愕然とする。しかも長男で“ぐるぐる”モチーフを偏愛する写真家・雨野秋彦(28)は、店の無謀なリニューアルを推し進めていた。彼の妹・梓の「上手く行くわけないじゃん」という嘲笑、看板娘・剛さんの「来ないで」という請願、そして三重の養殖場で味わう“本物のエスカルゴ”に、青年の律儀な思考は螺旋形を描く。心の支えは伊勢で出逢ったうどん屋の娘・桜だが、尚登の実家は宿敵、讃岐のうどん屋でー。
京都でテーラーを営む曽根俊也は、ある日父の遺品の中からカセットテープと黒革のノートを見つける。ノートには英文に混じって製菓メーカーの「ギンガ」と「萬堂」の文字。テープを再生すると、自分の幼いころの声が聞こえてくる。それは、31年前に発生して未解決のままの「ギン萬事件」で恐喝に使われた録音テープの音声とまったく同じものだったー。
最愛の父、祖父、許婚が殺された。幸せな家庭を築くという少女時代の淡い夢を無惨に叩き壊された女が選んだ道。それは男(直虎)となって愛する男達が作った「井伊家」を守り、繁栄させることだった!そして、直虎に見守られ小牧・長久手の戦い、関ヶ原大戦で活躍し、家康の天下取りを支えた名将・井伊直政。二人の奮闘の軌跡を描く長編小説。
過酷な労働を強いられ、辞めることもできない。若者を使い潰すブラック経営者に、Gボーイズが怒りの声をあげる!多くの飲食店を経営するOKグループが若者を使い潰す方法は、“憲兵”が脅し、“腐った五人”が痛めつけること。池袋にはびこるブラック企業に、マコトとタカシが立ち向かう。
伊勢志摩サミット警備で緊迫する志摩半島の英虞湾で緊急事態発生!真珠養殖が盛んな“宝の海”から引き揚げられた死体は、闇経済を疾駆するブラックジャーナリストだった。汚職事件、テロリストの国際力学、ヤクザの世界ー暗部を抉るべく、公安のエース・青山望の才気が炸裂する。リアルすぎる公安警察シリーズ第8弾!
新兵衛長屋界隈で、赤目小籐次を尋ねまわる怪しい輩がいるという。小籐次ネタを他所の読売屋にかすめ取られていた空蔵は、これは大ネタに化けるかもしれないと探索を引き受けた。そして小籐次と因縁のある秩父の雷右衛門が絡んでいると調べ上げたが、そこで空蔵は行方を絶った。空蔵の身に一体なにが?好調のシリーズ第5弾!
人気作家の津村啓こと衣笠幸夫は、妻が旅先で不慮の事故に遭い、親友とともに亡くなったと知らせを受ける。悲劇の主人公を装うことしかできない幸夫は、妻の親友の夫・陽一に、子供たちの世話を申し出た。妻を亡くした男と、母を亡くした子供たち。その不思議な出会いから、「新しい家族」の物語が動きはじめる。
故郷に戻り、深夜バスの運転手として働く利一。子供たちも独立し、恋人との将来を考え始めた矢先、バスに乗車してきたのは、16年前に別れた妻だった。会社を辞めた長男、結婚と仕事で揺れる長女。人生の岐路で、忘れていた傷と向き合う家族たち。バスの乗客の人間模様を絡めながら、家族の再出発を描いた感動長篇。
志摩水軍の若き継嗣・九鬼守隆。水平線の彼方を眺めつつ戦国の世に育つ。父・嘉隆に連れられ安土城で「天魔」と懼れられた信長に会い、この覇者が頑迷な京の暦学者達に苛立っていることを知る。やがて本能寺の変。羽柴秀吉が巧妙に信長の後継ポジションを掴んでいく。資史料を徹底検討し「真の戦国時代」を鷲掴みにした傑作。
朝鮮出兵で九鬼水軍の大型鉄甲船は苦戦する。父・嘉隆は戦功をあげられず怯えるが秀吉は「夢のまた夢」の辞世を遺し病没。趨勢は一気に家康に傾く。関ヶ原で東西に別れた嘉隆と子・守隆。父は敗れ、子は家康の海外進出の青写真を知る。実現されなかった天下人たちの夢に寄り添った九鬼守隆の生涯を描く戦国長篇。
ひき逃げで息子に重傷を負わせた男の素行調査。疎遠になっている従妹の消息。依頼が順調に解決する真夏の日。晶はある疑問を抱く(「静かな炎天」)。イブのイベントの目玉である初版サイン本を入手するため、翻弄される晶の過酷な一日(「聖夜プラス1」)。タフで不運な女探偵・葉村晶の魅力満載の短編集。
北海道のある町で運命的に出会った中学生「ニコ」と「弥子」。ふたりはそれぞれ「ここではないどこか」に行くため、共同で仕事をして有名になることにした。目指すは史上最年少の芥川賞受賞!周到かつ秘密の方法で作品は見事に候補となるがー。女子の抱く夢と現実、そして自意識を鋭く描いた傑作長編小説。