2016年8月発売
『赤蝦夷風説考』を上申した伊達藩藩医・工藤平助を父に持つあや子。最初の結婚は失敗し、その後、家の没落などの苦難を乗り越え、二度目の夫のもとで「書く」喜びに出会い、只野真葛を名乗る。封建社会の中、誰にも束縛されない自由闊達な文章、社会批判で滝沢馬琴も驚かせたその半生を生き生きと描いた歴史長篇。
おれが必ず燦に逢わせてやるー遊女に堕ちた身を恥じながらも燦への想いを募らせる篠音に、伊月は誓う。遊里からの帰り道、星月夜に轟く鳥の声に不吉な胸騒ぎがし、城へと急ぐ。正に刺客が薄主・圭寿に放たれていた。その頃、静門院とお吉は田鶴に向かって道を急いでいたが…。文庫オリジナルシリーズ、ついに感動の最終巻!
十年前、貧乏浪人の娘と所帯を持とうとして勘当され、出奔した袋物問屋の若旦那が、江戸に戻ってきているらしい。隠居した父親は勘当したことを侮い、弥平次に息子を捜すよう依頼した。同じ頃、袋物問屋を窺っている男たちの姿があった。若旦那と何か拘わりがあるのか…。“剃刀”久蔵の裁きが冴える、好評シリーズ第27弾!
浅草寺の参道にじっと佇む裃姿の侍。容貌魁偉にして怪力のこの男、過去の記憶がないというが、なぜか駒形の小さな長屋に住み着いた。道中手形にある名前は与多寅右衛門。上杉家の流れを汲む名門出身のようだが、果たしてその正体はー。古典落語に材を取り、江戸の事件を寅右衛門が次々に解決する痛快新シリーズ、ここに開幕!
文化人を弾圧し悪名高い「天保の改革」。瓢六は弥左衛門やお奈緒らと陰に陽に立ち向かうが、やがて圧政者たちも決して一枚岩ではないことに気付く。「妖怪」こと鳥居耀蔵の裏切り、それによる水野越前守の失脚と復活。一方瓢六は勝家の若き当主・麟太郎と親交を深める。時代はうねり、活劇シリーズいよいよ佳境へ。
警視庁強行犯係・樋口顕のもとに殺人事件の一報が入る。被害者は、キャバクラ嬢の南田麻里。彼女は、警察にストーカー被害の相談をしていた。ストーカーによる犯行だとしたら、警察の責任は免れない。被疑者の身柄確保に奔走する中、樋口の娘・照美にある事件の疑惑が…。警察組織と家庭の間で揺れ動く刑事の奮闘をリアルに描く、傑作警察小説。
こんなはずでなかった結婚。捨て去れない華やいだ過去。拭いきれない姉への劣等感。夫から切り出された別離。いつの間にか心が離れた恋人。…真面目に、正直に、懸命に生きてきた。なのに、なぜ?誰にも言えない思いを抱え、山を登る彼女たちは、やがて自分なりの小さな光を見いだしていく。新しい景色が背中を押してくれる、感動の連作長篇。
青山墓地で発生した幼女惨殺事件。その被告人は、独房で奇妙な独白を始めた。事件は40年前の東京にさかのぼる。戦前の公使館で、金髪碧眼の兄妹と交遊した非日常の想い出。戦時下の青年期、浮かび上がる魔性と狂気。そして明らかになる、長い回想と幼女惨殺事件の接点。ミステリーとホラーが巧みに絡み合い、世界は一挙に姿を変える。1982年発表。復刊希望が相次いだ、幻の名作がついに復刊。
幽霊が視えるようになったぼくは地縛霊の館川小梅さんと出会う。娘が今どうしているのか知りたいけどここから動けない…そんな小梅さんに頼まれ、代わりに会いに行く。そしてぼくは知ることになる。娘の鴬さんがずっと母親を憎んでいること。そこには、娘を想う母の愛が隠されていることを。少年が幽霊たちの魂を救う人気シリーズ第2弾。せつなくて、心が温まる。
ゲーム『幻想学園』の世界の転生した俺、クルリ・ヘラン。未来の没落に備えて鍛冶職人を目指したはずが、なぜか故郷を国有数の観光地に変え、学園でも順調に友人を増やし…。そうして、やってきた初めての夏休み。「本来の主人公」アイリスや生真面目な親友ヴァインを誘い、俺は故郷のヘラン領に帰省していた。早速舞い込む領内のトラブルに皆で立ち向かう中、なんとアイリスがダンディなヘラン家の使用人に恋をしてしまいー!?俺の未来、一体どうなっちゃうのっ!!??
田舎町のおんぼろな自動販売機、そのそばにはいつも着物姿の女がいる。軽やかに歌う彼女は「人ならぬもの」。なぜか“ぼく”にしか見えない女を幽霊と勘違いし、塩を投げつけた…それが、出会いだった。年月が過ぎ、気がつけば“ぼく”は、大人な見た目に反して子どもっぽく純粋な「自動販売機の精」に、恋をしていた。だけど“ぼく”は知らなかったんだ。彼女の本体であるおんぼろ自動販売機に「おしまいのとき」が迫っていることをー。
貴族令嬢として生まれながら、なぜか社交界ではなく戦場に身を置き、恋愛など見向きもせずに鍛練一筋の人生を送ってきたヘレナ。そんな彼女が正妃候補に選ばれ後宮入り!?宰相である父親に“自分の役割を全うせよ”と、正妃の座の争奪戦が巻き起こる後宮に放り込まれたヘレナだがー。「…私の役割。ええと、陛下に剣を教えるとか、か?」28歳、侯爵令嬢(脳筋)。女の欲望&陰謀渦巻く後宮で年下皇帝の心を射止められるか!?
ロンドン南東部の下町で、冬の朝、四歳の少年ダニエルは突然姿を消した。目撃者も身代金要求もないまま四カ月が過ぎ、心を病んだ母親アナは列車に飛びこもうとしたところを刑事マーヴェルに救われる。彼もまた一年前に消えた少女を捜していた。そんな折、アナは以前警察に協力した霊能者の交霊会に参加する。刑事は捜査の助けにもならず金だけもらった男の力を疑うが、その夜を境にアナはふしぎな声や光景を視るようになる。異常の兆候なのか、何らかのメッセージなのか。奇妙な接点で結ばれた失踪事件の行き着く先はー。CWAゴールド・ダガー賞最終候補作。
大英博物館に勤務する矢島剛は、大学の同級生ジミーから龍の像の鑑定を依頼される。像は清朝時代の庭園「円明園」から失われた十二支像ではないかと見られていた。矢島は像のデータを収集するが、その直後に像は忽然と消え去る。残されたデータを携え、矢島はかつての教え子で美術品を見抜く特別な才能を持つ段燕霞をパリに訪ねる。かねてから段に好意を寄せていた矢島だったが、ふたりの身には姿無き脅迫者の影が忍び寄る。一方、中国では政権内部の権力闘争に端を発する巨大な陰謀が進行していた。龍の像の真贋を確かめるべく香港に渡った矢島と段だったがー。
累計百二十万部突破の大人気コミックス「せいせいするほど、愛してる」をノベライズ!化粧品会社ロワール広報部で働くバリバリのキャリア栗原未亜がたまたま出会ってしまった男・三好海里は、自分の勤める会社の副社長だった。そして彼に惹かれ、思いを寄せたときに知った、彼が結婚しているという事実。諦めなければいけない恋に未亜は、もがき苦しむ。純愛のままでいたい、だけど一歩踏み出したい。揺れ動く心をもてあました未亜は、とうとう海里に「愛人にしてください」と告白するが…。TBS系火曜夜十時より出演・武井咲、滝沢秀明でテレビドラマ化。
今日も妻ギャビーの眠る病室を訪れ、手を握って語り掛ける夫トラヴィス。十一年前に運命の出逢いをして結ばれた二人を待ち受けていた、あまりにも残酷な運命。選択を迫られた夫は、愛する人のために、どこまでできるのだろうかー。『きみに読む物語』の著者であり、累計一億冊といま世界で最も読まれている恋愛小説家ニコラス・スパークスが、「自身の最高傑作」と謳うベストセラーが文庫化。二〇一六年夏に公開の映画『きみがくれた物語』の原作小説です。「スパークスのファン」を自認する作家・市川拓司さんによる解説「もうひとつの『きみに読む物語』」も必読!
戦国時代、山陰地方を治めていた尼子氏には、「楠木正成にも勝る」と謳われた武将がいた。その勇猛さと才智を頼山陽や勝海舟にも激賞された山中鹿之助幸盛は、天文十四年(一五四五年)、出雲国富田に生まれた。幼少期を山野で過ごした鹿之助は、三日月の前立てと鹿の双角を備えた兜を被り、一騎打ちに抜群の強さを発揮した。しかし尼子氏は幾多の戦いを繰り返した後、強敵毛利元就の軍門に下ってしまう。それでも鹿之助だけは、百回打ちのめされても千回挫折を味わっても、尼子家再興を諦めなかった。清張歴史文学の頂点を極めた伝説の名作、ついに文庫化!