2016年発売
未発表短篇「犬がこわい」「鬼ごっこ」「精霊もどし」にデビュー作『ハサミ男』刊行に関して友人宛てに綴った「ハサミ男の秘密の日記」を収録。 デビュー後、編集部の要請で送られていた習作短篇3篇とデビュー当時の様子を友人に書き送った「ハサミ男の秘密の日記」を収録。独特の笑いとセンス、ペーソスを湛えた殊能将之初期作品集。 犬がこわい 鬼ごっこ 精霊もどし ハサミ男の秘密の日記 解説 大森 望
官僚支配の霞が関、彼女はひとり正義を貫く!文科省・不正研究調査タスクフォース(特別チーム)水鏡瑞希の名推理!「人の死なないミステリ」の最高傑作。
昭和二十年、長崎の兵器工場動員で奪われた女学生達の青春。やがて作られた報告書には「不明」の文字がならんでいた。消えてしまった「生」の記録を日記・資料を基に綿密に綴った事実の被爆体験。無数の嘆きと理不尽さ。その年の五月から原爆投下の八月九日までの日々を、忘れないように、繰り返さないように、という鎮魂の願い。林京子の原点でもある谷崎潤一郎賞受賞作。他「道」を収録。
多忙を極める南町奉行所は、増え続ける未解決事件に対処するため、元定町廻りの二ッ森伝次郎に再出仕を要請した。御年六十八歳のこの男、隠居暮らしは御免と市中の揉め事に首を突っ込む毎日だ。伝次郎は早速、一癖も二癖もある往年の腕利き連中を集める。そして、ついた仇名が“戻り舟”だった。そんな折、九年前、商家の娘殺しを疑われた男の探索を依頼され…。
有名電機メーカーに勤める菊池沙里は、大学時代にゼミで同期だった宇藤輝良と再会する。卒業して五年、宇藤は「ねこみち横丁振興会」の管理人をしながら、脚本家になる夢を追い続けているという。数日後、友人の結婚式の二次会後に、宇藤がよくいるというねこみち横丁のBAR追分に顔を出した沙里だったが…(「オムライス日和」より)。昼はバールで夜はバーー二つの顔を持つBAR追分で繰り広げられる人間ドラマが温かく胸に沁みる人気シリーズ、書き下ろしで贈る待望の第二弾。
岸峰子、三〇歳。シングルマザー。幸田生命女子陸上競技部所属。自己ベストは、二〇一二年の名古屋で出した二時間二四分一二秒。ロンドン五輪女子マラソン代表選出という栄誉を手に入れた彼女は、人生のピークに立っていた。だが、あるアクシデントによって辞退を余儀なくされてしまい…。そして今、二年以上のブランクを経て、復活へのラストチャンスを掴むため、リオ五輪を目指し闘い続ける。このままじゃ、次に進めないからー。一人の女性の強く切なく美しい人生を描く、感動の人間ドラマ。
物がさっぱり売れない享保期に、摂津の津門村に学者の子として生を受けた幸。父から「商は詐なり」と教えられて育ったはずが、享保の大飢饉や家族との別離を経て、齢九つで大坂天満にある呉服商「五鈴屋」に奉公へ出されることになる。慣れない商家で「一生、鍋の底を磨いて過ごす」女衆でありながら、番頭・治兵衛に才を認められ、徐々に商いに心を惹かれていく。果たして、商いは詐なのか。あるいは、ひとが生涯を賭けて歩むべき道かー大ベストセラー「みをつくし料理帖」の著者が贈る、商道を見据える新シリーズ、ついに開幕!
一膳飯屋の看板娘・お糸は悩んでいた。長年、自分が想いを寄せている着物の始末を生業とする職人・余一にはきっぱりと振られてしまった一方で、浅草田原町にある紙問屋の若旦那・礼治郎からは嫁にきてほしいと言われたからだ。想い人を忘れることが出来ず、悶心とした毎日を過ごすお糸の姿をみて、長屋に住む達平が強引にお糸を余一のもとに連れて行った。余一はそこで自分の壮絶な過去を打ち明け、お糸とは夫婦になれない理由を告げる…。果たして二人の恋の行方は!?話題沸騰の大人気シリーズ、待望の大六弾!!
お庭番として日々活躍する蒼司朗には、頼りになる従兄弟の清志朗がいる。ある日、女生徒の後をつける不審者を発見するも、清志朗の機転で追い払うことに成功。蒼司朗にとって清志朗は憧れの存在だ。そんな帝都では近頃、謎のつけまわし事件が発生していた。怪しい気配を感じ、振り返っても誰もいないー幻獣の仕業かと、蒼司朗は調査に乗りだすが…!?少年の運命が花開く、お庭番第三弾!
「先輩、オレとつき合いませんか?」 前任の佐久間先輩から、美化委員会の委員長に任命された二年の美和風子。ある日、同じ美化委員の一年・伊野柊真から告白された! どうして私に……? と思いながらも、つき合うことになった二人。親友の由利に心配されつつ、カレシって何だろうと戸惑う風子だったが、時に強引で時に可愛い後輩彼氏の伊野くんにドキドキしっぱなしでーー!?
二十代後半にして代表作がない崖っぷち声優の結城勇樹。背水の陣で臨んだ野球アニメ「センターライン」のオーディションで出会ったのは、同世代の人気声優、大島啓吾だった。現場で顔を合わせたことのない結城と、いっしょに仕事がしたいという大島。その理由は、二人の過去にあった。声優たちの世界に光をあてたリアルな青春お仕事小説。
杉並中央署生活安全課「何でも相談室」、通称0係に小学生から相談事が持ち込まれた。少年の祖母宅に大金が投げ込まれたのだという。しかも、0係の変人キャリア刑事の冬彦と相棒の高虎が調査するうちに、同じマンションの他の部屋も違う額の金を受け取っていたと判明する。お札を調べ始めた冬彦は、あることに気付くが…。KY刑事の鋭い観察眼が光るシリーズ第三弾!
「警察の警察」と呼ばれる警視庁監察係の係長刺殺事件。その容疑者も銃殺されて二年近くが過ぎ、捜査は早くも迷宮入りの様相を呈していた。そこで刑事部長は捜査一課特命捜査対策室の秘密別働隊“シャドー”を投入する。岩城譲司警部の許、癖のある連中が、偽造、脅迫、なりすましと違法捜査で警察の暗部に切り込むが…。権力の腐敗を痛快に暴いた、野心的な警察小説。
「あんた…もしかして、最悪の刑事と言われた、あの」ヤクザが絶句した。あの最低最悪の刑事佐脇が帰ってきたのだ。だが古巣鳴海署は美人署長の下、人心一新、すべて変わっていた。酒に煙草、昔の遣り方をごり押しした佐脇は、山間の寒村で起きた連続殺人の再捜査を命じられる。現場に向かう佐脇を待っていたのは…。やりたい放題、傍若無人の横暴捜査が炸裂する!
「夫が髷に白粉をつけてきたり、隠れて踊りの稽古をしているんです」易者姿の鬼堂民斎は旗本の奥方を観ていた。芸者絡みの浮気とにらんだ民斎は、画数占いで仰天した。夫とは南町奉行矢部駿河守定謙だったのだ。真面目一徹の駿河守がなぜ?夕刻、白塗りの若衆の割腹死体が発見された。脇差には“やべ様命”とあり…(お奉行を占う)。人情てんこ盛りの時代推理。
敷地内に洞窟がある気まぐれな金持ち夫婦に雇われ、“隠者”となった男(「隠者求む」)。古物店で見つけた手術道具を使って、博物館に展示された標本の蝶を蘇らせようとする少年(「蝶の修理屋」)。襲来した宇宙人に先生がさらわれたと信じて役所に押しかけ、調査を要求する子供たち(「宇宙人にさらわれた」)。あるきっかけで日常と異常の境界線を越えてしまった人々。ブッカー賞最終候補の著者が描く切なさと愛しさに満ちた10の物語。各短編ごとに『モンタギューおじさんの怖い話』のデイヴィッド・ロバーツのイラスト収録!