2016年発売
「娘は預かった」高校生の娘を誘拐した犯人は父親・岡田亨に電話でそう告げた。犯人の要求は二千万円の身代金を娘の母親に持って来させること。猶予は約一週間。だが、日系ブラジル人の母は、日本での交通事故で人を死なせて故国に逃亡、行方不明になっていた。単身ブラジルへ渡った父は、妻を探し出し、彼女を説き伏せられるのかー。サスペンスフルな傑作ミステリー。
ミーコは、風俗と福祉の仕事を両立しながら娘のチーコを育てるシングルマザーだ。幼い頃に両親に見捨てられ、躾の厳しい祖母との関係に苦しんだ過去を持つ。苦労の絶えないミーコだが、彼女の特技は、毎日一つ、小さく光る宝物を見つけること。ミーコの宝箱に入っている、一番大切な宝物とは…。一人の女性の半生を通して、母と子、人と人の絆を温かく描き出す。
IT企業の最終面接に臨んだ河東俊介は、目を疑った。面接会場は無人で、テレビモニターとビデオカメラ、そしてスマホが置かれているだけだったのだ。スマホからの声は、彼にとんでもない指示を出し始めたー。(「見えない相手」)強烈すぎる面接官、思いがけないトラップ…。学生たちの就職活動で起こる驚くべきできごとをリアルに描く、映画『シュウカツ』原作!
洞口美矢子は夫の実家の隣家に移り住み、専業主婦となった。子供はおらず、仕事を望むも、ままならない毎日。地方都市での生活は、東京育ちの彼女には何ら満たされないものだった。ある日、同窓会で酔った夫が旧友の田伏を連れて帰る。垢抜けた田伏の振るまいに、惹きつけられてしまう美矢子。官能の喜びに自らを開き、男の腕のなかでたゆたう人妻の行き着く先は…。
将軍の毒味役、通称鬼役の矢背蔵人介は、毒味御用の一方で、江戸の悪を成敗してきた。そんな鬼役を支える家族がいる。養母で薙刀の達人の志乃、剣は不得手だが勉学熱心な息子の鐵太郎、成敗御用を支える用人の串部六郎太…。そんな家族たちの「もうひとつの物語」を綴った短編六編を収録。鬼役ファンならずともハマる一冊。
真葛が九百九十九匹の妖を捕らえねばならない期限は、ひと月後に迫っていた。そんな折、弟・太一の実の親だという夫婦が現れる。生まれてすぐに姿を消した我が子ではないかというのだ。亡き母・凛が赤子を連れ帰った嵐の夜、いったい何があったのか。太一の出生の秘密、うわんの正体ー数々の謎がとける時、真葛を待つ波乱の運命とは?人気シリーズ第一部完結編。
両国広小路に流れ着いた新任の木戸番、杢之助。仕事熱心と評判の彼は、古巣の四ツ谷左門町をある事情から逃げ出した過去を持つ。ある日、両国界隈で神隠しの噂が流れ、八百屋の息子、留吉が消えてしまう。天狗の仕業だと町の面々が怯える中、杢之助は留吉の捜索を買って出るのだが…。己の過去を隠しつつ、町の平穏のために奔走する男、杢之助の新シリーズ始動!
大地震の悲しみも癒えつつあった安政三年秋、大あらしが江戸を襲った。強風に高波、そして火事。おたねが夫とともに逃げ込んだ寺の境内は、悲嘆に暮れる人々であふれていた。家を失った者、家族と生き別れになった者。おたねの作る料理が、皆の心にぬくもりを与えてゆく。打ちのめされても再び立ち上がる人々の営みを温かい眼差しで描く、好評シリーズ第二弾。
年老いた母を種付け馬・花雲の背中に乗せ、嘘を封じる百ヵ所まいりに出た若者。馬の名産地・桜七牧で、真実を述べたばかりに八十八回叩かれた腹いせに、同じ数の嘘をつき生きることを決意、自ら八十八と名乗る。悪代官に野盗の頭目、一癖も二癖もある相手に、嘘つきの天才八十八が言葉巧みに勝負を仕掛ける。恋あり、オゲレツあり、爆笑必至、痛快な男の出世物語。
中学一年の夏に引っ越すことになった井嶋杏里。転校でなじめない中学の校舎で、使われなくなった教室『1-4』に入った杏里は、市居一真と出会う。杏里に出会った一真は、杏里に絵のモデルになって欲しいと頼む。そこから物語は始まったー。杏里、一真、そして、かけがえのない友だちと家族。悩みながらも成長する十四歳を描いた、あさのあつこの青春傑作小説。
貧しい御家人の次男坊の善吉に、願ってもない婿養子の口が舞い込んだ。相手は黒門町の馬具屋で、蔵には千両箱が唸っているという。娘の器量も申し分なく、あっさりと二本差しを捨てて町人に鞍替えした善吉だったが、家中にはどろどろの男女男係が渦巻き、果たは刃傷沙汰まで…。作者の小説巧者ぶりを存分に発揮した諧謔と機知溢れる表題作をはじめ全七編収録。
東京・赤羽の巨大団地葵ヶ丘に住む北原美紗子の娘・奈月が失踪した。赤羽中央署生活安全課の疋田務は部下の小宮真子らとともに懸命な捜査を続けるが、一向に消息は掴めなかった。奈月はいったいどこへ。やがて誘拐犯を名乗る人物から身代金要求の電話がかかったとき、事件は予想もしない方向に暴走を始めたー正統派、かつ、斬新。心を鷲掴みにする新警察小説、誕生!
横浜にある女子高に通うわたし、上杉小春には碓氷優佳という自慢の親友がいる。美しく聡明な彼女はいつも、日常の謎に隠された真実を見出し、そっと教えてくれた。赤信号のジンクス、危険な初恋、委員長の飲酒癖、跡継ぎ娘の禁じられた夢、受験直前の怪我、密かな失恋…。教室では少女たちの秘密が生まれては消えてゆく。名探偵誕生の瞬間を描く青春ミステリーの傑作。
硬派のニュースキャスターが浴室で変死した。自殺と思われたが、奇妙な遺留品が現場から発見され、他殺の線が強くなる。臨場した加門昌也警部補率いる警視庁捜査一課第五係は、彼に裏献金を糾弾された大物政治家に疑いの目を向けるが…。捜査一課、組織犯罪対策部第二課ーそれぞれの刑事たちが、足を棒にする捜査の先に辿り着く真実とは!熱血の警察小説集。
「ねえ、エッチしようよ」-学生時代、事あるごとに甘い声でねだってきた、元彼女、早月。社会人三年目の今、克彦は奔放だった早月とは正反対の、清楚で家庭的な梨子と同棲を始め、仕事も正念場を迎えていた。しかし今になって、あの日夢中で抱き締めた早月の肢体が生々しく甦る。裏切られ、さんざんな形で別れたはずなのに…過去と現在が狂おしく交差する青春官能の傑作。
幕末の名君松平春嶽の師に、と請われるも固辞、俗世を捨て和歌にすべてを捧げた橘曙覧の生涯。年番方与力宇野清左衛門は、詮議所にいた男にある面影を見て、疑念を抱く。長谷川平蔵の幼馴染で南町奉行となった男の矜持と心意気ー。小説好き必読!書下ろし時代文庫の人気執筆陣が、人の世を彩る感情“喜怒哀楽”を描き切る特別企画。第一弾は、三つの“喜び”が溢れる。
奉公先から大金を盗んだ女が、斬首の間際、首斬り浅右衛門の直弟子に託した悲痛な願い。名作落語「らくだ」をモチーフに描く、極限状態に追い込まれた人間の本性。素浪人矢吹平八郎が知り合った、幼子のため必死に働く女に忍び寄る不穏な影ーときに己を奮い立たせ、ときに誰かを救う力となる、たぎる“怒り”を三人の名手が活写した、豪華アンソロジー第二弾。