2017年10月27日発売
ドミニの美貌に目をつけた、社長ポール・ステファノスが 秘密裏に、ある取り引きを持ちかけてきた。 ぼくと結婚すれば、きみの従兄が横領した証である 小切手を燃やし、すべてをなかったことにしよう。 代わりに純潔を差しだすように、とギリシア人は囁いたのだ。 両親を亡くしたドミニを、伯父は娘のように愛してくれた。 その息子の罪を自分が贖わなければ、優しい伯父が窮地に陥る。 「ぼくがきみを買うんだ」熱を孕む瞳で男に見つめられて、 ドミニはただ身をふるわせ、頷くことしかできなかった。
依頼を受け、社長との面会に赴いたジョセフィンは凍りついた。 マイケル・ハンター。かたときも忘れることなどできない人。 3年前のあの日、妹は、彼のいとこの子を宿してしまっていた。 マイケルは、いとこと話をつけると約束してくれたが、 翌日、突然てのひらを返し、妹の落ち度だとなじったのだ。 去っていくマイケルに追いすがり、妹は車に轢かれて死んだーー いっときでも、彼を信じた自分が呪わしい。 ジョセフィンは激しく動揺しながら、立ち尽くしていた。 やがて彼への愛の狭間で、悶え苦しむことになるとも知らずに。
熱い視線を感じて目をやり、ウィローは釘づけになった。そこには、彼女の運命を狂わせたギリシア人富豪テオがいた。女性なら誰もが夢中になるような男性に、情熱的に求められては、未経験の娘などひとたまりもなかった。まだ18歳だったのだ。だが、純潔を捧げたすぐあとに、テオに婚約者がいると知らされ、屈辱に震えながら、逃げるように彼のもとを去ったー今、テオは目をきらめかせ、自信に満ちた足取りで近づいてくる。あの日にできた、子どもの存在だけは知られたくない。ウィローは内心の動揺を気取られないよう、視線を引きはがした。
幼い頃から勉強はトップクラス、ピアノのコンクールでは何度も入賞を果たすなど<絶対優等生>であり続ける高2の理穂子。彼女は、間もなく取り壊しになる旧音楽室で、コンクールに向けピアノの練習を始めることにした。そこへ不意に現れたのが、謎の転校生・相良。自由でしなやかな感性を持つ彼に、自分の旋律を「表面的」と酷評されるも、以来、理穂子の中で何かが変わっていくー。相良が抱える切ない過去、恋が生まれる瑞々しい日々にに胸が熱くなる!