2017年10月28日発売
「どうぞお試しくださいませ。ブラック・オア・ホワイト?」スイスの湖畔のホテルで、バトラーが差し出した二つの枕。パラオ、ジャイプール、北京、そして京都。エリート商社マンに人生の転機が訪れる度に、黒と白の枕が現れる。悪夢、それとも美しい夢。それは、実現しなかった人生の一部分なのか。夢と現の境は曖昧になり、夢が現実を呑み込んでいく。現代日本の実像に迫る、渾身の長編小説。
「女の匂いをさせては、獣が来ます」山奥の宿坊。妖艶な僧が、手で舌で、私の体を清めていくー(「女禁高野」)妻よ、俺の顔に跨ってくれ。潤みに塗れたその尻で潰してくれ(「悦楽椅子」)先生は、私の髪で先をくすぐられるのが、たまらなく好きでしょう?(「みだら髪」)狂おしいほどに疼き、したたり、吐息が漏れる。団鬼六賞作家が男と女の心の秘部を押しひらく、文庫オリジナル欲情短編集。
路上を転がるボール、追う息子、叫ぶ父…。最愛の息子・考也を交通事故で亡くしたプロサッカーチームのベラテンGK灰沢考人。事故後、自責の念から自暴自棄になった灰沢は家庭を壊し、チームのレギュラーの座も失う。一方、事故を苦にし自ら命を絶った亡き父の願いを胸に、若き砂田佳之也もプロ選手への道を歩み出す。サッカー小説を超える感動の物語。
祠に隠した鼈甲の帯留めを見つけて欲しい──。それが売れない小説家のおじいちゃんが残した遺言だった。仕事にも恋にも破れて引きこもり生活を送る二十七歳の荊庭紅は、遺言に従って遠野を訪れ、この地の旧家で起こった八十年前の不可解な猟奇殺人事件を知る。それは祖父が書いた淫靡な怪奇小説『サナキの森』の「呪いによる殺人」に酷似していて……。第一回新潮ミステリー大賞受賞作。
また会おうよ。実現しないとわか っていても、言わずにはいられなかったーー。病弱な双子の弟と分かち合った唯一の秘密。二人の少女が燃える炎を眺めながら話した将来の夢。いじめられっ子からのケットウジョウを受け取った柔道部員の決断。会ったこともない少年少女のなかに、子どもの頃の自分が蘇る、奇跡のような読書体験。過ぎ去ってしまった時間をあざやかに瑞々しく描く、珠玉の作品集。
外相会談を狙うVXガス・テロを阻止せよ! いまだ昏睡状態が続く志乃の夢を可視化する〈クロノスシステム〉が次々と犠牲者を予知するなか、遂に想像を絶する未来が映し出された─。最悪の事態を回避するため、真田と黒野の最強バディが疾走する! だがそこに立ちはだかるのは、過激派の秘密結社〈愛国者〉、そして凶悪極まる白髪の闘神〈アレス〉。衝撃のアクション・エンタテインメント。
ある男は家族を捨て洞窟に棲み着き、やがて小さな塾を始める。またある男は選挙に落選し、雑木林を飛ぶムササビの幻影と恋の傷を抱えたまま、電鉄会社を興す。ふたつの破格の人生が交錯する高台の町を、大震災、敗戦、高度成長と、電車は何代もの人生を乗せて絶え間なく通い、町と世界を変容させる。東京近郊の私鉄沿線の百年の変転に、この国と私たちの人生の姿が立ち現れる魅惑の物語。
殺人鬼は、何者なのか。戦慄の医療ミステリー! 都内近郊で若い女性が次々と首を絞められ、惨殺された。警察は現場に残された血痕のDNA鑑定を行い、容疑者を割り出すが、それは四年前に死んだ男だった……。止まない殺人劇。メディアに送りつけられる犯行声明文。これは死者の復活か。あるいは、真犯人のトリックか。天医会総合病院の天才女医・天久鷹央は事件の裏に潜む“病”を解き明かし、シリアルキラーに“診断”を下す。
これまで恋愛と無縁に生きてきた、遺伝子研究者の柴山と松永。ある日、柴山は女子学生と恋に落ち、それを知った松永は、研究室から失踪した。松永は「愛は遺伝子が決定する」という自らの理論を証明すべく、柴山で人体実験を企む。一方、自らもまた、結ばれる確率が0%と判定された女性に、どうしようもなく心惹かれて…。愛と理論の狭間で苦悶する、純真でせつない“理系”恋愛小説。
ハリーはバッキンガム宮殿で爵位を授けられた。新首相マーガレット・サッチャーから閣僚に任命されたエマ。選挙では敗れたものの、遂に家庭の幸福を得たジャイルズ。彼らの人生は、それぞれに頂点を迎えようとしていた。一方で執拗に復讐を目論み、金に執着し続ける亡者たちの動きはやまないが、彼らにはそれぞれの陥穽が待ち受けていた。人間の美醜賢愚を描き抜いた空前の大河小説、最終巻。
ハリーは亡き母が望んでいた小説の執筆に着手する。それは畢生の傑作となるべき作品だった。エマも保守党内閣の中で頭角を現して、更なる要職に任命される。ハリーの出生の秘密が明らかになり、子や孫たちも幸福を みかけたとき、クリフトン家を悪夢のような病魔が襲う。悲嘆そして絶望と闘う一家に、やがて信じ難い結末が……稀代の物語作家が満を持して描き上げた衝撃と余韻消え去らぬ終幕。
大切な人を大切にすることが、こんなに苦しいなんてーー。 彼は私の人生の破壊者であり想造者だった。 異彩の少年に導かれた少女。その苦悩の先に見つけた確かな光。 執筆に5年の月日を費やした、SEKAI NO OWARI Saoriによる初小説、ついに刊行! 【著者紹介】 藤崎彩織(SEKAI NO OWARI) SEKAI NO OWARIでピアノ演奏とライブ演出を担当。研ぎ澄まされた感性を最大限に生かした演奏はデビュー以来絶大な支持を得ている。雑誌「文學界」でエッセイ「読書間奏文」を連載しており、その文筆活動にも注目が集まっている。 ー 激しく胸が震えました。 これは、絶対に書かれなければならなかったんだなとよくわかる小説でした。 自分のことや、好きな人のこと、好きだった人のことを思い出して、何度も泣きました。 とにかく、みんな、無事に生きのびてくれ、と叫びたい気分です。 宮下奈都(作家) 自分以外の誰かを信じ続けることの絶望と幸福が、泣きたいほどここにありました。 島本理生(作家)