2017年10月6日発売
元料理人のサトジが居酒屋で一目惚れした女性と、14年ぶりに再会する。彼女の名はマヨ。いまは離婚を経験し、一人娘のウフと二人で静かに暮らしていた。別れの理由は夫の横暴なふるまい。そのことがウフのこころの傷にもなっている。決して豊かとはいえない母娘の暮らしだが、ともに卵が好物で…。サトジの作る卵料理が二人に幸せの笑みをもたらしていく、芥川賞作家による初の料理小説!
北町奉行同心の夫を亡くしたうめは、堅苦しい武家の生活から抜け出して独り暮らしを始める。気ままな独身生活を楽しもうと考えていた矢先、甥っ子の隠し子騒動に巻き込まれ、ひと肌脱ぐことを決意決意するが…。遺作にして最後の長篇時代小説。
両国の川開きの日、船頭・多吉の屋根船に乗り移った浪人は、商家の旦那を殺して姿を消した。幼馴染みで同心の音之進と調べ進めるうち、その男は堂々と姿を現すが、それと呼応するように、多吉に想いを寄せる女中のお文が何者かに連れ去られ…。人気シリーズ第四弾。
ある女性の周辺で起きた不可解な死は事件か事故か、それとも“呪いによる殺人”なのか?杉下右京と冠城亘が隠された真相を追う「守護神」、煙のように消えた男の捜索依頼を受けた二人が、独特なシガーの香りを手掛かりに連鎖する事件を解き明かしていく「チェイン」、冴えない保険営業マンが余命宣告され、今までしたくてもできなかったことをしようと企む「人生のお会計」など6篇を収録。
老中だった父の横死に絡む御家騒動のため、公儀に病死と届けられ、居場所を失った大垣沖信。彼は月島真十郎と名を改め、用心棒稼業に身をやつすが、やがて幕府内に蠢く悪事に単身斬り込んでいく!父の復讐に燃える真十郎の剣が私腹を肥やす悪を薙ぐ、書き下ろし新シリーズ。
僕はこの世界に左足から登場したー。圷歩は、父の海外赴任先であるイランの病院で生を受けた。その後、父母、そして問題児の姉とともに、イラン革命のために帰国を余儀なくされた歩は、大阪での新生活を始める。幼稚園、小学校で周囲にすぐに溶け込めた歩と違って姉は「ご神木」と呼ばれ、孤立を深めていった。そんな折り、父の新たな赴任先がエジプトに決まる。メイド付きの豪華なマンション住まい。初めてのピラミッド。日本人学校に通うことになった歩は、ある日、ヤコブというエジプト人の少年と出会うことになる。
両親の離婚、そして帰国。母の実家のそばに住む母子三人は、次第にバラバラになっていった。母は頻繁に恋人をつくり、サッカーに興じる歩は高校で同級生の須玖に影響を受けていく。姉は、近所に住む矢田のおばちゃんが宗教団体の教祖のように祀り上げられていくなか、そこに出入りするようになった。そして、阪神神戸大震災が起こった。それは歩の生活にも暗い影を落とし、逃げるように東京へ向かう。脳が蕩けるような学生生活を経て、歩はライターになった。だが、その先で、ある取材を依頼される。そこには変わり果てた姉が絡んでいた。
姉・貴子は、矢田のおばちゃんの遺言を受け取り、海外放浪の旅に出る。一方、公私ともに順風満帆だった歩は、三十歳を過ぎ、あることを機に屈託を抱えていく。そんな時、ある芸人の取材で、思わぬ人物と再会する。懐かしい人物との旧交を温めた歩は、彼の来し方を聞いた。ある日放浪を続ける姉から一通のメールが届く。ついに帰国するという。しかもビッグニュースを伴って。歩と母の前に現れた姉は美しかった。反対に、歩にはよくないことが起こり続ける。大きなダメージを受けた歩だったが、衝動に駆られ、ある行動を起こすことになる。
シマザキセツナの自殺を発端とする被造物の現界。彼女を救えなかったことを悔やむ颯太は、世界を憎むアルタイルを阻止することを決意する。そして、アルタイルを閉じ込める“鳥籠”の作成、さらにセレジアたちの強化を図る大プロジェクトが始動。世界のため、自分の場所に帰るため、過去に向き合うためー各々の思いを胸に士気を高める被造物たち。しかし、観衆の“承認力”を糧に自らの力を増幅させるアルタイルに苦戦を強いられ、彼女の悲願である「大崩潰」は目前に迫る。現実VS物語。二つの世界の存亡をかけた戦いは、ついにクライマックスへ!!
受験を控えた岸本杏は、弓道部部長の座を超イケメンな後輩・三神曜太に譲ることにした。三神は学校中の女子を虜にする容姿を持ち、その上弓道ではインターハイへいくほどの実力者。そんな三神から一途に想われていたことを知った杏は戸惑うものの、自分の全てをぶつけて愛してしまう不器用な三神を、気付けば杏も好きになっていて…。加賀やっこ作、累計100万部突破の大人気恋愛コミックスを完全ノベライズ!互いに好きなのに素直になれない、史上最高の偏愛・ラブストーリー!
飛ぶ鳥を落とす勢いの新鋭作家・浜名湖安芸は、「ポリティカル・コレクトネス」をコンセプトにした警察小説という“意識高い”依頼を受けた。パワフルでエキセントリックな編集者を相手に、ハマナコは超大作を書き上げる!?(「政治的に正しい警察小説」)大学生の僕は、偶然通りかかったカレー店で思い出の味に再会した。幼いころに生き別れた母の味だ。女店主にその「秘密の隠し味」を訊ねると…。(「カレーの女神様」)そのほか、児童虐待、将棋、冤罪、尊厳死など、多彩なテーマの六編を収録するブラックユーモア・ミステリー集。著者初の文庫オリジナル作!
波瀾万丈な人生を送ってきたドラマの主人公のような人物ではなく、どこにでもいる普通の男子の物語を書いてみようー。作家との話し合いの末、編集者が連れてきたのは三十代前半の会社員。しかし、話を聞いてみると、彼の半生はちょっと普通とはいいがたいものだった。暗黒面に落ちた中学時代、悪友とのおバカな高校時代。美容師の女性と初めて交際をした大学時代を経て、紆余曲折の後、憧れの全国映画館チェーンに就職が決まる。しかし、そんなある日、彼は余命2か月、末期がんであることを告げられてしまう。
大手文具メーカー「あねちけ」に勤めるうだつが上がらないサラリーマン・富岡兼吾は、日頃から自分に厳しい絵に描いたような体育会系上司・下永良一に不満を抱いていた。ある日、珍しく下永から酒に誘われた兼吾は、酔った上司を家まで送る羽目に。しかし、兼吾はそこで憎き敵の妻とはとても思えない美しい女性、秀子と出逢ってしまう。「上司の妻を寝取ってやる!」兼吾の心に芽生えた復讐というにはあまりにも突飛な企み。その企みを実行に移す時、物語は誰も想像がつかなかった衝撃の結末に向け加速する。果たしてこの小説は、「官能」なのか、「純愛」なのかー。
二〇二一年、新宿。少年院帰りで、住む家も仕事もない沢村新次。吃音障害と赤面対人恐怖症に悩み、他者との関係を築くのが苦手な二木建二。ある日、対照的な二人の若者が、プロボクサーを目指し、さびれたジムで奇妙な共同生活を始める。やがて二人は友情を育み成長を遂げていくが、その一方で、母親との離別、父親からの暴力、仲間の裏切り…、それぞれが抱える問題に向き合うことになる。新宿という都会の荒野の真ん中で孤独と戦い、誰かと繋がりたいと渇望する人々を描いた、魂を揺さぶる青春物語。寺山修司唯一の長編小説を現代に甦らせた映画版をノベライズ。
三十九歳の千歳は、親しいわけでもなかった一俊から「結婚しませんか?」と言われ、広大な都営団地の一室に移り住む。その部屋で四十年以上暮らしてきた一俊の祖父から人捜しを頼まれ、いるかどうかも定かでない人物を追うなかで、出会う人たち、そして、出会うことのなかった人たちの過去と人生が交錯していく…。