2017年11月9日発売
=== 第24回日本ホラー小説大賞 優秀賞受賞作 (選考委員:綾辻行人、貴志祐介、宮部みゆき) 綾辻行人「作品に強烈な“圧”がみなぎっている」 貴志祐介「エンタメ=壮大な虚構の極北として感動すら覚えた」 宮部みゆき「作者の物怪に対する愛情と、この分野の先達へのリスペクトが感じられた」 (選評より) ここは迷い家。妖と霊宝を隠世(かくりよ)に閉じ込める屋敷ーー 昭和20年。火の雨降る東京大空襲から生き残った少年・冬野心造は、遅れて母校の集団疎開に合流した。 民話が息づく地・古森塚で、妹の真那子が行方不明となる。 妹と一緒に脱走を図った香苗の証言を基に山に分け入った心造の前に忽然と現れたのは、見渡す限りの蕗の原にたたずむ巨大な屋敷だった。 妹を捜して屋敷を探索するが、妖怪とでも言うべき怪物に次々と襲撃される心造。彼を助けたのは、老犬「しっぺい太郎」だった。 しっぺい太郎が語るには、屋敷は現世を追われた妖や、霊宝と言われる道具を封じるための異界で、稀に人も閉じ込められるという。 妹探しに協力してくれるという太郎だったが、そこにはあるたくらみがあった。 そして、脱出を図り様々な霊宝を使ううちに、大日本帝国の勝利を願う軍国少年としての紅蓮の野望が、心造の心に芽生えてくる。果たして心造が試みたことは、その結末は……。 ◆ 時代は下り、古森塚で教師になった香苗。街は、東京オリンピック決定で浮かれている。 香苗には、どうしてもぼやけてしまう疎開時代の記憶があった。 ある日、病院から姿を消した義父の後を追い山に入った香苗は、山中で巨大な屋敷を発見し……。 少年の哀しき紅蓮の野望が怪異まみれの「お屋敷」と共振する、新時代の怪奇冒険小説! 『遠野物語』はじめ様々な民話伝承を壮大な物語に取り込み、 清濁と、今昔と、栄枯と、虚実と、人と怪とを併せ呑んだ規格外の山怪譚。 装画=漆原友紀(『蟲師』『水域』ほか)
結婚直前の会社員・廉次の前に現れた女は、突然のキスと、謎の言葉を残して消える。直後に、婚約者に目の前で別の男と駆け落ちをされた廉次は謎の女と再会。婚約者の行方をある手段で探し出そうとする。奪われて、失った、その先にあるものはー。過去と向き合い、抱え続けた痛みからの再生を描く書き下ろし長篇小説。
世界を揺るがす秘密は蔵王に隠されている! 大陰謀に巻き込まれた小学校以来の友人コンビ。 異常に強い謎の殺し屋と警察に追われるふたり(と犬一匹)は逃げ切れるか。 上巻には本編の一時間前を描く書き下ろし掌編小説をボーナストラックとして収録! 現代を代表する人気作家コンビが本気でタッグを組んで生み出された、このふたりにしか書けない一気読み必至のノンストップ・エンタテインメント。 女友達を助けたばかりに多額の借金を背負う羽目になった相葉の手にひょんなことから転がり込んだ「五色沼水」。それを狙う不死身の(ように見える)冷酷非情な謎の白人が、死体の山を築きながら彼を追ってくる。五色沼といえば蔵王の火口湖、そこは戦後にパンデミックを起こしかけた「村上病」のウィルスで汚染されていて、立ち入り禁止地域になっていた。この水はいったい何なのか。逃亡する相葉は、中学時代の野球部の悪友・井ノ原と再会、ふたりは事態打開のために共闘することに…… 東京大空襲の夜に東北をめざし消息を絶った米軍機。封印された映画に映っていたもの。謎が謎を呼ぶ100%ノンストップエンタメ。
俺とおまえで世界を救いに行こうじゃないかーー 稀代の人気作家ふたりが合作、その化学反応が生み出した問答無用のノンストップ・サスペンス。 下巻には本編の後日譚となる書き下ろし掌編小説をボーナストラックとして収録! 少年時代の悪友ふたりと一匹の犬が、世界を破滅から救うために大博打を決意する。 逃走する相葉と井ノ原、そしてポンセと呼ばれる一匹の犬。二人と一匹を追撃する銀髪のテロリスト。すべての背後にあるのは「村上病」をめぐる秘密らしかった。ウィルスの発生源とされる蔵王の火口湖「お釜」に何があるのか? そして主演男優のスキャンダルを理由に封印された戦隊ヒーロー映画に何が映っていたのか? 太平洋戦争末期に蔵王山中に墜落した米軍機の謎を追う女性・桃沢瞳の助けも借りて謎に挑む二人(と一匹)。だが事態を解決するためには、あの銀髪の破壊者との直接対決は避けられないーー 平凡な男ふたりが世界を救うために命をかける。その胸にあるのは少年時代の思い出。ちりばめられた伏線たちが反撃のために収束、破滅へのカウントダウンが点滅する中で、人気作家コンビが腕によりをかけて紡ぐノンストップ・エンタテインメントは白熱のクライマックスに突入する!
霧たちこめる釧路で生まれ、貧しく苛烈な少年時代を経て、男は、自らの過剰な指を切り落として、夜の支配者へとのし上がる──。 男の名は、影山博人。 最初の物語は、没落した社長夫人が、かつて焦がれた6本指の少年の訃報を新聞に見つけるところから始まる。 同衾した女をみな翻弄し、不意に姿を消してしまう正体不明の男であり、故郷に戻った後、暴力で容赦なく人を支配する黒い権力者。 不思議な魅力あふれる影山の、15歳、19歳、27歳、32歳、そして、40手前から52歳までの8つの時期を、時々に出会った女による語りで構成。 ーーはたして、影山博人は、外道を生きる孤独な男なのか? それとも、女たちの「夢」の男なのか? 影山と関係するそれぞれの女たちは皆何かしら困窮している。死別で、離婚で、借金で……誰かや何かにすり減らされてひりひりと痛むような乾いた心を持っている。(中略)そこにある程度の「まっとう」を手に入れ、今もなお貪欲に模索している影山が現れる。ひかれない訳がない。(中略)もしかすると、影山の指が六本なのは、より多くの困窮にあえぐ者にチャンスを与えるために余分に備わったのではないかとすら思う。 (壇蜜・解説より) デビュー10周年の著者による、新境地にして、釧路ノワールの傑作! 「謎」の男をめぐる、八人の女たちの物語。 ──俺には、白と黒しか要らないんだ
中国の山奥からきた吸血種族バンブーは人間そっくりだが若い姿のまま歳を取らない。マフィアによる一家皆殺しから命を救われた少年は、バンブーとその相棒の3人で暮らし始めるも、人間との同居は彼らの掟では大罪だった。禁断の、だが掛けがえのない日々-。郷愁を誘う計3篇からなる大河的青春吸血鬼小説。
歴史に残るような戦国武将は、戦いに勝つべくして勝つのみにあらず。時として味方は寡勢、敵は数倍という絶対絶命の場面を潜り抜けて来て、世に名を残したのだ。織田信長、伊達政宗、浅井長政、島津義弘など七人の武将たちの驚愕の逆転の打開策を、当代きっての名手七人が描く、珠玉の短編アンソロジー。
時は幕末。江戸には、死体から手首を斬りおとす残虐な手口の殺人“手首斬り”が横行していた。その犯行を目撃した南町奉行所の同心・平四郎の命が狙われることに!?そして平四郎の飼い猫である、もののけ仕事人・まるは胸にある決意を抱えていたー。もののけ仕事人とその飼い主たちを描く書き下ろしシリーズ、完結篇。
ビジネスマンの命運は、たった1枚の紙切れに左右される! 大手エレクトロニクスメーカーの宣伝部副部長・広岡修平に、突然、辞令が突きつけられた。異動先は「人事部付」。有能で人柄も良く、大きなミスもせずに社内の出世レースのトップを走っていた広岡に、左遷される節は思い当たらない。仕事に対する情熱と正義感では引けをとらず、自他共に認める同期の第一選抜だった広岡が脱落したのは、なぜか? その内実を自ら調査し始めると、会社内に蔓延する思惑とファミリー企業ならではの病巣が次々と明らかになる。敵は誰か? 同期か、茶坊主上司か、それとも……? ビジネスマンの人生を左右する「辞令」のカラクリを暴き出すビジネス小説界の「現代の新古典」! 「サラリーマンならだれしも経験する人事異動の際の一場面。本作は1988年の刊行だが、30年たっても古びた印象がしないのは、企業社会の本質である『組織と人間』の問題を、『辞令』というそのものずばりのモチーフで活写しているからにほかならない」--解説・加藤正文
かつて仕えた森藩の呼び出しに応じ、旧主・久留島通嘉と面会した小籐次は、思いがけず若き日の悪さ仲間だった松野藩藩主・松平保雅の窮地を救うよう依頼された。保雅と再会した小籐次は、保雅がお家騒動に巻き込まれ、嫡男が人質になっていることを知る。旧主と旧友の信頼に応えるべく松野へと急ぐ小籐次を、敵が迎え撃つ。
「おもしろいものを、見せてつかわそう」と、筆頭与力・佐嶋忠介を伴い市中見廻りへ出た平蔵だが、変事の予感を覚える。翌日、宿直明けの与力・秋本源蔵が半弓で射殺され、平蔵の周辺と身内が連日で命を狙われる。敵は何者か?火盗改方への怨みなら、なぜ下僕まで襲うのか。苦悩の果てに、平蔵は行方知れずとなる。傑作長篇!
謹厳実直な亡父・長谷川宣雄の隠し子出現に、平蔵は苦笑い(「隠し子」)。夜鴉がしきりに鳴いた翌日、おまさは旧知の盗賊・峰山の初蔵に声をかけられる。「新しい荒神のお頭を手伝ってもらいたい。二代目は女だ。先代の隠し子さ」。先代の助太郎親分を思い、おまさの心が騒ぐ(「炎の色」)。二人の隠し子登場で、新たなる物語が始まる。
バハマで反米活動家の男が殺害された。神業と言うべき超長距離狙撃による暗殺だった。直後、リンカーン・ライムのもとを地方検事補ローレルが訪ねてきた。その暗殺は米国政府諜報機関の仕業で、テロリストとして射殺された男は無実だったというー。非合法の暗殺事件を訴追すべく、ライムとサックスたちは捜査を開始する!
無実の男を暗殺した“影なきスナイパー”を追う捜査班。だが証拠が少なすぎる。ライムたちの前に立ちはだかったのは、敵の暗殺者による巧妙な隠蔽工作だった。現場は汚染され、証人は次々と消されていくー。痺れを切らしたライムは、自ら現場のバハマに乗り込むことを決意する!大人気シリーズ第10作。
十津川班の西本刑事が、少し古風な感じのするOL早川ゆう子に恋をした。箱根への日帰り旅行に出かけることになり、新宿発の小田急ロマンスカーに乗車した。ゆう子の高校時代の友人で車内サービス係として忙しく働く前田千加と偶然再会するが、千加が突如車内から消えたのだ!?途中下車する駅もない。その夜、千加は調布市内の自宅マンションから他殺体で発見される。死亡推定時刻は、ゆう子が会った数時間後だというのだが、どうやって帰宅したのかも不明だった…。「行楽特急殺人事件」他、傑作旅情ミステリー集。
明大前駅から徒歩18分のところにある「ティラミスハウス」。その名にまったく似合わない古い木造長屋のシェアハウスに住む女たちは、それぞれ事情を抱えていた。貧困、生活保護、シングルマザー、ネグレクト、外国人実習制度ーー。ひっそりと息を詰めながらも、懸命に生きる彼女たちの本音とは。持たざる者たちの生きづらい現状と、その先にある希望を描いた問題作。R-18文学賞出身の気鋭が、現代社会のリアルに迫る。
戦乱に揺れる奥州の名家、伊達家の長男に生まれた藤次郎。孤独な少年期を過ごしていたが、父から家督を譲られる。伊達の頭領となった藤次郎政宗は、奥州統一を目指し腹心片倉小十郎とともに走り始めたが、最大の窮地が訪れるー。壮絶な戦闘、感涙のシーンを満載した“独眼竜”政宗。オリジナル原稿に大幅加筆した著者渾身の作品。上中下巻同時刊行。激闘の上巻。