2017年5月9日発売
純文学作家である福永武彦が加田伶太郎のペンネームで発表した「完全犯罪」「失踪事件」「赤い靴」などの探偵小説10編に、随筆「素人探偵誕生記」を併せた異色の一巻。大学助教授で自ら“安楽椅子探偵”を自認する伊丹英典は、助手・久木進を伴い、得意の分析力、想像力、論理力を駆使して、迷宮入りかと思われた難事件を次々と解決していく。また、船田学名義で書かれた未完のSF作品「地球を遠く離れて」も併録した、福永武彦の意外な一面が垣間見える異色作品集。
「奴とは、ばくち打ちであり、ばくち打ちの奥に至らんと五十年もすごしてきたような、顔をしている人物である」-色川武大は“阿佐田哲也”を冒頭でこう評している。阿佐田哲也なるばくち打ちは『麻雀放浪記』を書き、麻雀新撰組などを結成して世間を煙に巻いた。色川武大名義では『離婚』で直木賞を受賞した作家が、虚にして実、実にして虚の“阿佐田哲也”の素顔に迫った異色作。
冷戦時代、米ソは極秘の生物化学兵器を共同開発していた。「死霊の泉」なる猛毒物質はいまも大量に貯蔵されている。製造に関わった両国の元工作員が、この事実の隠蔽を画策。証拠もろともその存在を消し去るため、最高のプロフェッショナルを送りこむ。依頼を受けたゴルゴ13は、パラオ共和国コロール島に姿を見せる。だがそこには、ゴルゴとほぼ同じ足取りで秘密工場への侵入をもくろむもう一人の“プロ”がいたー。直木賞作家・船戸与一が、作家デビュー前、脚本に携わった『ゴルゴ13』作品群から、珠玉の三作を自ら小説に書き上げた。鼓動が早まる第一弾。
広島県在住の高校二年生、高木正広は、筋金入りのラジオ番組のハガキ投稿オタク。今日もネタ帳とにらめっこ。クラスの女子は気味悪がって近寄ってこないが、そんなことは全く(全くでもないが)気にならない。厳選したネタを、深夜のラジオ番組に投稿することが高木の使命だから。学校では地味だが、ラジオの世界では名の知れたハガキ職人。全国のリスナーにその名を轟かす。ある日東京のハガキ職人ライブに出演することになった高木に人生の転機が訪れる。高木の運命は?社会学者・古市憲寿さんの解説も必見。第15回小学館文庫賞小説賞を受賞した青春小説。
「この子はわたしたちの子よ」品川のタワーマンションを起点にレールガン・テロを試みていた妻・沙織から、通島武志は、千秋に関しての思いも寄らぬ話を聞いてしまう。その後、レールガンの発射を身を挺して止めたことで都内の病院に極秘搬送されていた千秋だったが、ある日、忽然と姿を消してしまった。沙織がポリスに深く関わっていることが拭いがたい事実となったことを受けて、武志は一度空中分解しそうになっていた未犯調査室の面々と共に彼女のルーツを辿り直す事を決意する。行方を眩ませた千秋は?そして、ポリスとは何だったのか?完結篇。
同棲中の谷村有子と葛西信は、売れない役者同士。ある日有子は偶然、人気女優の新藤美由紀の運転免許証を拾う。新藤の本名が「谷村侑子」なのを見て、免停中の谷村はその免許証で運転し警察に捕まってしまうが、新藤の計らいで、罪に問われることもなく済んだ。プロデューサーの推薦で、谷村と葛西に夫婦役での連続ドラマ出演が決まって、二人はロケ地に向かった。しかし、京阪宇治線沿いでの撮影初日に有子とドラマスタッフが行方不明となり、死体で発見されたのだ。そして、東京では国務大臣の白石幸次郎が爆殺される。十津川の捜査中に、さらなる被害者が!
新人警察官アリ=ソウルの赴任先は、アイスランド北端の小さな町、シグルフィヨルズル。「ここらじゃどうせ何も起きない」と、着任早々上司は言った。だが二か月後、老作家が劇場の階段から転落、死亡する事件が起きる。上司は事故を主張したが、アリ=ソウルは殺人を疑った。さらに雪の中で半裸の女性が倒れているとの通報がー彼女は瀕死の重傷を負っていた。捜査を進めるアリ=ソウルの耳に、住民の不穏な過去ばかりが届き始める。町の外へ通じる唯一の道は雪崩で塞がっている。犯人は町の中にいる!北欧ミステリの超大型新人、日本初上陸シリーズ第1弾。
女子学生が運転する車が起こした衝突事故。現場の不自然な状況に気づいたリーバスは、同乗者がいたことを突き止める。だが、当の女子学生は事故の状況について、頑とした口を開かない。事故の裏に、何かが潜んでいるようだが…いっぽう、組織改編で犯罪捜査部に送られることになったフォックスは、内部調査の最後の仕事としてリーバズが若き日に所属した署で起きた、隠蔽された事件の痕跡を追及する。彼の捜査は、リーバスの身におよぶのか?独立の是非に揺れるスコットランドで展開する。人気シリーズ最新刊。
ルーシー・バートンの入院は、予想外に長引いていた。幼い娘たちや夫に会えないのがつらかった。そんなとき、思いがけず母が田舎から出てきて、彼女を見舞うー。疎遠だった母と他愛ない会話を交わした五日間。それはルーシーにとって忘れがたい思い出となる。ピュリッツァー賞受賞作『オリーヴ・キタリッジの生活』の著者が描く、ある家族の物語。ニューヨーク・タイムズ・ベストセラー。
あなたを、助けたい。 学校での居場所をなくし、閉じこもっていたこころの目の前で、ある日突然部屋の鏡が光り始めた。輝く鏡をくぐり抜けた先にあったのは、城のような不思議な建物。そこにはちょうどこころと似た境遇の7人が集められていたーー なぜこの7人が、なぜこの場所に。すべてが明らかになるとき、驚きとともに大きな感動に包まれる。 生きづらさを感じているすべての人に贈る物語。一気読み必至の著者最高傑作。
加茂北高校音楽科に転入した岬洋介は、その卓越したピアノ演奏でたちまちクラスの面々を魅了する。しかしその才能は羨望と妬みをも集め、クラスメイトの岩倉にいじめられていた岬は、岩倉が他殺体で見つかったことで殺人の容疑をかけられる。憎悪を向けられる岬は自らの嫌疑を晴らすため、級友の鷹村とともに“最初の事件”に立ち向かう。その最中、岬のピアニスト人生を左右する悲運が…。
二十八年前、八百長疑惑をかけられてみずから命を絶った伝説の下手投げ投手K・M。行方不明になっていた千五百奪三振の記念ボールが発見されたのをきっかけに、彼を再評価する動きが起こる。作家の芹澤真一郎は、K・Mの伝記を書くべく関係者たちのもとを取材して回るが、彼にまつわる逸話にはいくつもの謎があったー。途絶した芹澤の原稿を引き継ぎ、野球嫌いの「あたし」が謎に迫る。
上州(群馬)見廻りの任についた関東取締出役(通称「八州廻り」)の藤掛右京は、ひそかに飼育された上州牛のすき焼き鍋の供応を受ける。獣肉を忌み嫌う時代に、この地にひそかに伝わるすき焼き鍋。上州沼田領を治め、また93歳まで生きて長命で知られた真田信之と、隣接する高崎領を治めた井伊直政に由来するのだという。このすき焼き鍋の秘密に気づいた右京は、凶賊捕縛に立ち上がる!書き下ろし。
保険調査員の仕事は、保険会社から支払われる保険金に関して、被保険者側に問題がないか調査・報告すること。しかし、江崎に回ってくるのは、大学教授の密室での突然死をはじめとした不審死ばかり。その死は果たして自殺か事故か、殺人かー。そんなとき、江崎は意中の研究者・友永久理子に相談を持ちかける。恋人より研究優先の熱血“理系女子”探偵が、化学を駆使し不審死の謎に迫る!
一年の半分近くが冬となる極寒の地を治める伯爵リツハルドは、夜会で出会った男装の麗人、元軍人のジークリンデに目を奪われ、思わず告げるー「自分と結婚してください!」と。一目惚れから始まった、オーロラが空を彩る地での、一年間のお試し婚。トナカイを狩り、解体&仕分け&熟成。摘んだベリーは保存食に。伝統工芸品を作る合間に、凍結湖で魚釣り。自給自足の狩猟民族的スローライフを通して、奥手な二人は無事、正式な夫婦となれるのか?