2017年6月14日発売
一九九〇年。前年秋にベルリンの壁が崩壊し、愛犬のジョンが死んだ。平林健太、フリーター、30歳。逃げとごまかしが連続の人生だった。このままでいいのか?健太は一念発起し、小さな編集プロダクションを皮切りに、憧れ続けた「ギョーカイ」の門を叩く。90年代の広告・雑誌業界を舞台にした半自伝的小説。
高校3年生の千紗は、横浜のタウン誌「ハマペコ」編集部でアルバイト中。初恋の相手、善正と働きたかったからだ。用事で元町の洋装店へ行った千紗は、そこのマダムが以前あった元町百段をよく利用していたと聞く。けれども善正によると元町百段は、マダムが生まれる前に崩壊したという。マダムは幻を見ていた?それともわざと嘘をついた?「元町ロンリネス」「山手ラビリンス」など珠玉の連作短編集。
新番組のレギュラー獲得を目指すオーディションが終了してから一ヵ月。“敗退”という現実は、メリーランドに重くのしかかる。先を行くライバルや先輩芸人。大学卒業後、それぞれの道を歩み始める恋人や友人。みんな進んでいるのに、自分達だけ進めずにいる…。夢にまで見た舞台の先、新城と溝口が見つけた未来とはー。このままじゃ終われない。どん底からの再スタートだ!シリーズ完結の第5弾!
小さな出版社で校正の仕事をしている森星太朗は、幼いころ他界した作家で母の文子が残してくれたコアラのぬいぐるみを大事にしていた。そのぬいぐるみは、母が亡くなったその日、しゃべりだし、以来、無二の親友になっていたのだ(もちろん、世間には内緒にして)。そんなある日、しゃっくりがとまらなくなった星太朗に大きな転機が訪れる。コアラのぬいぐるみと出版社校正男子の切なさMAXの友情物語。
ある夜、庭の暗闇からふいに現れた一匹の猫。壁を抜けて出現と消失を繰り返す猫は、パラレル・ワールドを自在に行き来しているのか。愛娘を失った痛みに対峙しつつ、量子力学と文学との接点を紡ぐ傑作。
近隣住民から信頼厚い第七明和銀行高田通り支店の庶務行員・多加賀主水のもとには、相談事が絶えない。商店街のシャッター街化問題、保育園の騒音問題、祭事の協賛金問題…。一方、世間では矢部内閣による「ヤベノミクス」が推し進められる中、国債の危機を訴える一派が何事かを企んでいた。第七明和銀行も吉川新頭取の息子が誘拐されるに及び、国家の危機に巻き込まれる!
GHQ占領下の昭和二四年、後に“昭和史最大の謎”といわれる事件が起きた。七月五日早朝、下山定則初代国鉄総裁が失踪。翌日未明、線路上で礫死体が発見された「下山事件」である。あの時、何が起きたのか…。政財界の大物、日米の諜報員と特務機関員、警察と検察。当時の関係者の動きを小説という形で追跡し、ノンフィクションでは描ききれない真相に迫った衝撃作!
「ゆっくりしてこい。休みたいだけ休ませてやる」鳴海署あげての大歓迎で休暇を得た刑事佐脇は、“社長”こと輝本に依頼された身辺警護の名目で、愛人・千紗とともに豪華客船「パシフィック・プリンセス」に招待される。食い放題飲み放題、金持ちの客をおちょくり放題とお構いなしの佐脇。ところが平和なはずのクルーズで、諍い、痴情のもつれ、遂には殺人も発生し…!?
殺人犯どころか、テロリストが同乗しているかもしれない!?突然の爆発で騒然とする豪華客船「パシフィック・プリンセス」。監視カメラが壊され、鑑識もおらず、殺人捜査は難航。おまけに偶然乗り合わせたTVリポーター・磯部ひかるが追うマネーロンダリングの噂が、思わぬ巨悪を炙り出し…!?洋上の孤島と化した豪華客船で、佐脇がテロリストたちと対峙する!
「巨大シーラカンス日本へ!」大東新聞に独占掲載されるはずのスクープがライバル紙の一面を飾った。“生きる化石”捕獲プロジェクトを後援する大東の一条記者が学術調査隊に同行しコモロ共和国へ特派されていたのになぜ?やがて帰国した調査隊員を狙った連続殺人が発生。姿をくらました一条に容疑がかかるが…。警視庁きっての名警部・岡部和雄の推理が冴える!
死体の足元に落ちた「黒い天使」のトランプー。カジノで借金漬けだった老人の死亡事故を探っていた刑事・諏訪光介は、その日本初のカジノを管轄下に置く聖洲署に異動になる。煌びやかな街の中を謎の自警団が跋扈し、警官は汚賄塗れ。だが、諏訪がその闇に踏み込んだ時、潜んでいた巨大な敵が牙を剥いた!未来を予測する、新警察ミステリー。
「手紙に描かれた風景を探してほしい」旅行作家・茶屋次郎が受け取った一通の依頼状。依頼人・朝波貴士は十年前に突然姿を消した元恋人の行方を捜していた。茶屋はその風景を、歌にもなった神田川とみて調査をはじめる。しかし、そこで見つかったのは朝波の他殺体だったー。過去の失踪と依頼人の死。茶屋が辿りついたのは、静かに深く、人の奥底に流れる心の闇だった。
「あたし、あの人がこんなにも好きなんだ」太物問屋『あたご屋』の一人娘・お八重はごろつきから助けてくれた“川獺”と名乗る男に想いを寄せている。もう一度逢いたい一心で江戸をさまようお八重は、裏長屋で川獺といた女の死体を発見してしまう。殺していないと言う川獺を信じるお八重は…。恋を知った少女が大人になっていく姿を描いた感動の時代小説。
「風神の子」と恐れられ、北条氏に仕える忍びの中でも、風魔の小太郎は、桁外れの巨躯と相まってその能力は抜きんでていた。その小太郎が武田を滅亡に追いやった織田信長より名指しで呼び出される。待ち構えた信長は、進上馬に乗り小太郎に銃口を向ける。そして、発射された銃弾の行方はー。戦国の猛将らと闘った希代の忍び『風魔』、その知られざる物語。
お園は芋を剥き、鮎を捌く。あの人を思ってー。夜道を襲われたお園を助けに現われた男が落とした紙片。そこには謎の食材が書かれていた。それが元夫・清次との思い出に符合すると気づいたお園は、矢も楯もたまらず旅に出る。食材に導かれるように、旅の途上で邂逅する清次とその父の過去。やがて意外な形で旅が終わり…。健気なお園の姿が胸を打つ江戸料理帖。
飛鳥山の菊屋敷で、剣術家が独り稽古を続けていた。いくつもの死地を乗り越えた疵を負いながら、どこか清らかにして爽やかな印象を与える不思議な青年ー昇平が盗み見たのは、五年ぶりに帰着した金杉清之助の泰然たる姿だった。剣術大試合開催まで十日余り。その出場権を奪うべく、惣三郎と神保桂次郎は、尾張柳生の剣術家二人を追って中山道をひた走っていた。
子供には武器のおもちゃや兵隊人形ではなく平和的な玩具を、という記事に感化された母親が早速それを実践にうつすが…「平和の玩具」。その城には一族の者が死ぬとき近隣の狼が集まって一晩中吠えたてるという伝説があった…「セルノグラツの狼」他、全33篇。ショートショートの異才サキの没後出版の短篇集を初の完訳。
小さな村に暮らす準男爵の娘ルイーザは、名付け親の遺言によって社交界デビューをすることに。とはいえ愛ゆえに悲しい最期を遂げた母の影響で結婚に興味はなく、ロンドンへも渋々赴いたのだが、そこで滞在先の隣の豪邸に暮らすウェイクフィールド子爵と出会う。彼は、もう何年も公の場に姿を現していない隠遁貴族ーこの世のすべてに背を向け、本来は見目麗しいであろう容貌もすっかり陰を帯びている。なぜこの人はここまで心を閉ざしてしまったの?ルイーザはいてもたってもいられず、子爵の力になりたいと奮闘するが…。