2017年6月21日発売
二等航海士として海へ。バートレット・アカデミー(航海術専門学校)を首席で卒業した万次郎。故郷や仲間に思いを寄せながら、1846年5月、ニューベッドフォードから出航。アフリカからアジアへと、緑したたる未知の大陸へと漕ぎ出でる。
私の誕生日の前日、おじいちゃんは危篤に陥った。肌身離さず持っていた写真は、私の生まれた日に撮影された心霊写真めいたものだった。しかも「五色の雨の降る朝に」という謎の書き込みが。かわいがられた記憶はないけれど、写真に込められたおじいちゃんの想いを知りたくて、雨の日にしか登校していない雨月先輩に相談を持ちかける。これは私が雨を好きになるまでの物語。
クライマーの滑落事故が発生。現場は地図にない山奥の瀑布で、近づく者に死をもたらすと言われる「首洗い滝」だった。広告代理店勤務の高沢春菜は、生存者から奇妙な証言を聞く。事故の瞬間、滝から女の顔が浮かび上がり、泣き声のような子守歌が聞こえたという。滝壺より顔面を抉り取られた新たな犠牲者が発見された時、哀しき業を祓うため因縁物件専門の曳き屋・仙龍が立つ。
オーロラ。北極基地に設置され、基地の閉鎖後、忘れさられたスーパ・コンピュータ。彼女は海底五千メートルで稼働し続けた。データを集積し、思考を重ね、そしていまジレンマに陥っていた。放置しておけば暴走の可能性もあるとして、オーロラの停止を依頼されるハギリだが、オーロラとは接触することも出来ない。孤独な人工知能が描く夢とは。知性が涵養する萌芽の物語。
海堂凛のもとに届けられた不吉な知らせー。それは生かさず殺さず眠らせたまま幽閉していたはずの、海堂グループ総帥である祖父・右近の誘拐事件だった。凛が一番恐れている右近がふたたび目覚めれば、間違いなく自分は報復として抹殺される。緊急事態に備え新しく採用したボディガード「限界を超えた男」の驚くべき正体、そして堅牢な研究所から右近を連れ去った人物とは!?
いくつもの仕事をやり遂げ、山猫傭兵団の事務長として認められたウィラード。しかし王立大学院に戻るのは遠い未来の話で、先の任務の影響は隣国パンジャリーを二分する事態にまで発展していた。そして、かつて命を救ったプロンダート殿下の配下、リリアレットが貝殻亭を訪れてきた。「戦いはすぐそこに迫っている」。軍資金とともに、山猫傭兵団には王太子陣営への参陣とビムラの傭兵の取りまとめが要請される。団長の安請け合いから丸投げされた仕事をこなし、ようやく漕ぎつけた出発前の壮行会。用意されたご馳走に沸き立つ団員たち。そこに侯爵家の三男坊を名乗る珍客、ディデューンが現れたー。
普段は仕事に追われ、余裕のない日々を送る、三十男。仕事も一段落し、久しぶりの連休に、特別な趣味ー道楽を見つけようとする。「例えば、旅なんていいよな」。その願いが通じたかのように、男は帰宅途中、地球と異なる世界に迷い込んでしまう。そこは、レベル、魔法、スキルといった特殊なルールが存在する、不思議な世界。そこで男は、労せずして大きな力を手に入れてしまう。素晴らしい力を得た男は迷わず、道楽を探す旅に出るのだった。
箱館戦争で敗残兵となり、深手を負った元幕府遊撃隊士の奥平八郎太は、実の兄・喜一郎と膝を撃たれ重傷の本多佐吉とともに、蝦夷地の深い森へと落ち延びる。犬死しても意味はないと、兄を一人逃がした八郎太であったが、残された瀕死の二人を待っていたものは人外の脅威だった。意識を失っていた八郎太が、再び目を覚ましたとき、そこにあったのは口元から顎にかけて真っ赤に血で染めた漆黒の大ヒグマであったー
ノスタルジーと夢魔を宿す遙かなるメルヘン群。ある日一郎君のところに届いたふしぎな手紙「どんぐりと山猫」。金色の輪の少年が導く死の世界「金の輪」。不条理なリンチの慣わしがある奇妙奇天烈な村の物語「鬼涙村」。憎むべき論敵・蛸博士への復讐がたくらまれるナンセンス物語「風博士」。他全59編。
明日を信じ、悩み、もがき、苦しみ、幕末という激動期を、疾風のごとく駆け抜け、二十七歳という若さで天命をまっとうした、幕末の風雲児・高杉晋作の短くも波瀾に満ちた生涯を活写したノンフィクション小説。
「自分がだれか絶対に忘れるな!」父が最期に残した言葉と、その死の真相を知ったカイラ。失った記憶を完全に取り戻すため、反政府組織に連れ去られる前に暮らしていたケズウィックへと赴く。しかし、実の母・ステラから明かされた出生の秘密に煩悶する。やがて、平和なはずのこの地にもローダーズの脅威が迫り…。彼らの非道な政策の決定的証拠を掴んだカイラは、地下で抵抗運動を行なうMIAのエイダンの元へ合流する。再会、そして裏切りー証拠映像を公にする、命懸けの作戦は成功するのか。カイラが下した最後の決断とは?3部作圧巻のクライマックス!
ある朝いつものように登校すると、僕の机の上には分解されたたて笛が。しかも、一部品だけ持ち去られている。-いま五年三組で連続して起きている消失事件。不可解なことに“なくなっても誰も困らないもの”ばかりが狙われているのだ。四番目の被害者(?)となった僕は、真相を探るべく龍之介くんと二人で調査を始める。小学校を舞台に、謎解きの愉しさに満ちた正統派本格推理。
未練を残して死んだ者は鬼となり、水源を涸らし村を滅ぼすー。鬼の未練の原因を突き止めて解消し、常世に送れるのは、八尾一族の「烏目役」と「水守」ただ二人のみ。大正12年、H帝国大学に通う八尾清次郎に、烏目役の従敬が死んだと報せが届いた。新たな烏目役として村を訪ねた清次郎。そこで出会った美しい水守と、過酷な運命に晒される清次郎を描く、深愛に満ちた連作集。
グウィネズの王マースの甥にして跡継ぎのグウィディオンは、あるときは吟唱詩人に身をやつし、新しき民の治める地から豚を盗み、両国に戦を起こさせ、あるときは妹アリアンロドを騙して子を産ませ、自らの跡継ぎとして育てる。人の心を読み、甥のために花から麗しき乙女を創り出す。ウェールズ神話最大の英雄で神グウィディオンの物語をもって、神話ファンタジーの金字塔完結!
失業、貧困、明日への不安…ナチズムへ繋がる道を用意した暗い時代に、お金はちょっぴり、心配と希望はたっぷり抱え、懸命に生きる若夫婦の姿を描いた長編。
夏の日に出会ったサンタクロースと、彼が作った色とりどりの花冠のケーキー運命を変えるお菓子を、あなたにお届けします。博多の老舗和洋菓子屋「お気に召すまま」は、今日も店主・荘介と接客兼“試食係”のアルバイト・久美の二人で営業中。ある日、店の先代で荘界の祖父が遺した1冊のレシピノートが見つかる。ノートにはある秘密が隠されていて…?過去から現代へと受け継がれる、心温まるお菓子のストーリー。
大学を卒業し、就職することなく何となくラノベ作家になった久太と、マンガ家になった漆は、久太の母・涼花と3人で奇妙な“同居”生活を送っている。2人は恋人同士ではなく、親友とも違った関係だった。彼らを結びつけているのは、高校生の冬に起きたある事件だったー。気がつくと自然に泣いていた作品『サムウェア・ノットヒア』に連なる物語ではあるが、完全に独立した作品として、あなたに喪失と再生の物語を捧げる。