2017年6月23日発売
14歳の玲菜(れな)には戸籍がない。母親は〈あの人〉から逃げるために出生届を出さなかった。母と二人、町から町へひっそりと移り住み、ここ川越にも二年。一人で勉強している玲菜のために教科書を探してくれるリサイクルショップの主人、秋吉とその孫の牧生とも顔見知りになったある日、突然「あの人に見つかった」という電話を最後に、母は消息を絶つ。学校とも、社会ともつながりのない少女を一人残して…。 生まれたときから、ずっと逃げ続けている少女。 彼女の心が砕けてしまわないように、ぼく達は何をすればいいんだろう。 つながりの薄い現代社会で、必死に手をさしのべようとする人々。 青春ミステリーの妙手が放つ、心温まるストーリー。
寛政10年(1798)に九州秋月藩の儒者の娘として生まれ、生涯独身で日本各地を遊歴の漢詩人として旅を続けた原采蘋。儒教倫理の規制の中で、「漢詩人として成功せよ」との父の遺命を背負い、62年間その遺命に背くことなく漢詩人としての業績を上げることに精進した。遊歴の日記を漢詩で綴ったが、残された詩には、自らの運命に対する恨み、悲しみが正直に書かれており、江戸時代後期に漢詩人として生きた女性の複雑な感情がにじみ出る。またそれは儒者の娘として一人の女性が学んだ知識の深さを改めて知ることが出来るものである。「男子は徳有れば便(すなわ)ちこれ才、女子才なければ、便ちこれ徳」と一般的に考えられた時代に、采蘋のような女性が生きることは決して楽ではなかったはずである。時代の過渡期を彼女はどう生きたのか。その生涯と詩に再び光を当て、これまで定着していた「男装の女性漢詩人」という勇ましい采蘋像を更新した労作。
男女の複雑怪奇な心理の綾 ミルハウザーが59歳だった2003年に刊行された本書は、匠の技巧を堪能できる、粒ぞろいの中篇集だ。ミルハウザーは、『三つの小さな王国』『魔法の夜』が証明するように、優れた中篇作家でもあるのだ。 売りに出した自宅を女性が客に案内するなかで、思いがけない関係が浮かび上がる「復讐」、官能の快楽に飽いた放蕩児が、英国の貴婦人に心を乱される「ドン・フアンの冒険」、王妃と騎士の不義を疑う王の煩悩、王の忠臣が悲運を物語る表題作を収録。 「木に登る王」では、騎士トリスタンと王妃イゾルデと王の悲劇を傍観しつつ、重要な節目では当事者ともなる王の忠臣トマスの語りが冴える。三角(もしくは四角)関係の当事者・準当事者たるこの三人の心理のさまざまな層が、ミルハウザーならではの律儀な丁寧さでーー意外性を伴ってーー仔細に述べられてゆく。 本書は、「複雑怪奇化した男女関係」というテーマの一貫性が、書物としての統一感を生み出し、三つの中篇作品の累積的な読みごたえにおいて、ミルハウザーのひとつの到達点と言えるだろう。 男女の複雑怪奇な心理の綾、匠の技巧が光る極上の物語!
自転車で蛇行運転をしていた青年が、警察官に捕まり、取り押さえられているときに死亡した。警察官の暴行を目撃した複数の人間がいるにもかかわらず、県警は正当な職務だと主張するのだった。青年の父親の依頼で水木弁護士が動いたのだが…。
41歳の黒崎竜司は元敏腕刑事で、訳あって探偵に転職した。事務所ではハードボイルドを気取っているが、実は女性とまともに付き合ったことがない草食系なのだ。結婚相談所のアドバイザー・城戸まどかは親身にサポートしてくれる。しかし、妙にマジメな性格が災いしてか、誤解あり、判断ミスあり、運はナシで、道のりは険しく…。竜司の婚活に未来はあるのか!?
イギリスの港町が舞台。 船乗りの父を海で失った少年が、瓶に手紙を入れて海に流し、返事を待つ。 そして少年はついに水面に浮かぶ瓶を発見する。 それは‘デイヴィ・ジョーンズの監獄’の元船乗りテッド・ボーンズという男からの返事だった。 この謎の男とのやりとりからストーリーは一気に盛り上がりをみせていく。 海の怖さを知りつつ海に憧れる少年が、不思議な体験を経て一歩大人に成長する、 感動のヒューマン・ファンタジー小説。『青空のむこう』『13ヵ月と13週と13日と満月の夜』『チョコレート・アンダーグラウンド』など累計部数100万部突破のベストセラー作家アレックス・シアラーの最新作。船乗りの父を海で失った少年が、不思議な体験を経て一歩大人に成長する、奇跡のヒューマン・ファンタジー。刊行前に実施した読者モニターアンケートで99%の方がおもしろかった!と回答。読者モニターのお墨付きをいただき、自信を持ってお届けします。あきらめない勇気をもらえる、読後感の爽やかな物語です。 第一章 この瓶をみつけた人へ 第二章 パンを水に投げよ 第三章 ローズ・ヘイヴン 第四章 二本め、三本め、四本めの手紙の瓶 第五章 具合の悪い日 第六章 人魚 第七章 海難救助者の権利 第八章 五本めの瓶ーー最終通告 第九章 その他の話題 第十章 返事 第十一章 海の男 第十二章 ミスター・ボーンズへ 第十三章 オーシャン・パール号 第十四章 新たな知らせ 第十五章 わが友よ 第十六章 エサ 第十七章 スワン・オブ・イヴ号 第十八章 嵐を乗りきれ 第十九章 最後の手紙 第二十章 出航 第二十一章 そのうちやがて 第二十二章 最後の最後
瀬部 麟(せべ・りん)は高校2年の春、肉体が腐り精神異常を来す不治の病「オメガ熱」を発症。 全ての元凶である両親を殺害し、幼馴染の同級生・木下くららの命をも奪うが、それらを手助けをした新興宗教団体に裏切られ、薬液の入ったドラム缶に沈められてしまう。 ーーふたたび目が覚めると、そこは「イース」と呼ばれる遥か未来の世界だった。日本人は「ヤプー」という“人間以下の家畜”として白人貴族(イース人)に使役させられ、麟もまた女性に性転換後、ポーリーン・ジャンセンお嬢さまの飼う<雌犬>として第二の人生を送ることになるのだが…… エロとグロにまみれた戦後最大の奇書「家畜人ヤプー」(沼正三)を大胆にリメイクした、奇想天外なライトノベル! 某大手出版社か ら、あまりに過激な内容ゆえ、「とても出版できない」と拒否された問題作、ついに登場!
玄洋社の生みの親は女性だった! 名著待望の復刊! 胎動期近代日本の主役の一翼を担った玄洋社は、どのようにして生まれ、戦後の日本の中でなぜ抹殺されていったのか? 玄洋社の生みの親である女医・高場乱(たかば・おさむ)の壮絶な生涯を描き切る秀逸な名作を、新たに解説を加え待望の復刊! [解説]小林よしのり・石瀧豊美
太平洋戦争終了後、「彩雲の城」の彗星ペア・谷藤十郎と緒方伊魚は解員となり日本に帰還。-その後、二人が互いを愛し、「唯一」と求め合う姿を官能的に描いた同人誌、「謹製ヘルブック」や「続・謹製ヘルブック」から作品を厳選、書店特典SSを収録した永久保存版!最新書き下ろしは「一と超ジュラルミン」。慈しみあう藤十郎と伊魚のハッピーエンドラブストーリー。1945 Series番外編集第2弾!!