2017年発売
飛鳥山の菊屋敷で、剣術家が独り稽古を続けていた。いくつもの死地を乗り越えた疵を負いながら、どこか清らかにして爽やかな印象を与える不思議な青年ー昇平が盗み見たのは、五年ぶりに帰着した金杉清之助の泰然たる姿だった。剣術大試合開催まで十日余り。その出場権を奪うべく、惣三郎と神保桂次郎は、尾張柳生の剣術家二人を追って中山道をひた走っていた。
子供には武器のおもちゃや兵隊人形ではなく平和的な玩具を、という記事に感化された母親が早速それを実践にうつすが…「平和の玩具」。その城には一族の者が死ぬとき近隣の狼が集まって一晩中吠えたてるという伝説があった…「セルノグラツの狼」他、全33篇。ショートショートの異才サキの没後出版の短篇集を初の完訳。
彼女は子爵にとって、闇を照らす麗らかな木漏れ日ーー RITA賞受賞作家が紡ぎだす、リージェンシーに咲いた恋。 小さな村に暮らす準男爵の娘ルイーザは、名付け親の遺言によって社交界デビ ューをすることに。とはいえ愛ゆえに悲しい最期を遂げた母の影響で結婚に興 味はなく、ロンドンへも渋々赴いたのだが、そこで滞在先の隣の豪邸に暮らす ウェイクフィールド子爵と出会う。彼は、もう何年も公の場に姿を現していな い隠遁貴族ーーこの世のすべてに背を向け、本来は見目麗しいであろう容貌も すっかり陰を帯びている。なぜこの人はここまで心を閉ざしてしまったの? ルイーザはいてもたってもいられず、子爵の力になりたいと奮闘するが……。
愛する人を守るためなら、この命さえいらない。 絶対的人気のマヤ・バンクス、涙の最新作! 里親のもとを転々としながら、孤独で壮絶な少女時代を過ごしたイライザ。心 の傷はまだ癒えていないが、信頼できる仲間もでき、今は警備会社で唯一の女 性スタッフとして働いている。目下の悩みの種と言えばある事件を通し知り合 ったウェイド。尊大な彼とは顔を合わせれば喧嘩ばかり。それなのに突然、ウ ェイドからパーティの招待を受けたうえにすてきなドレスまで贈られ、思いが けない出来事にイライザは胸をときめかせる。だがその背後には危険が忍び寄 っていたーー10年前の忌まわしい悪夢が、今また彼女を地獄へ連れ戻すため。
ヴィクトリア朝時代イギリス。カミールはその知らせを聞き、恐怖に凍りついた。愛する養父が盗みを働こうとしてカーライル城に忍びこみ、捕らわれたというのだ。先代の城主夫妻が悲惨な死を遂げて以来、その城には呪いがかかっているともっぱらの噂。さらに現在の城主である伯爵ブライアンは、両親は殺されたのだという妄想のもと世間を恨み、復讐に燃えているらしい。でも…たとえそこが呪いの城だとしても、養父を見殺しにはできないわ。カミールは勇気を振り絞り城に赴く。待っていたのは奇妙な獣の仮面をつけた伯爵だった。
母と姉が男性に裏切られて不幸の一途をたどったため、 ベス・ヘイリーは男を毛嫌いしていた。 とはいえ、子供だけはどうしても欲しいーー思い悩んだベスは、 あるパーティに紛れて誰かを誘惑するという大胆な計画を立て、 大人の雰囲気を漂わせたアレックスなる人物に近づく。 妊娠するためだけの一夜は意外なまでに燃えあがるが、 ベスは素性を隠したまま、寝ている彼を残して姿を消した。 まさかアレックスが、ギリシアに名を馳せる財閥の跡取りで、 その権力を使って自分の行方を捜し回るとは夢にも思わずに。
小さな牧場で男まさりに育ったコリーは、 十代のころ、隣に住む名家の長男ニックに恋をした。 しかし淡い恋心はあっけなく打ちくだかれた。 ニックは、コリーが彼の弟と親しくしているのを快く思わず、 その関係が幼なじみの域をこえていると思いこみ、 住む世界をわきまえるようコリーに言い渡したのだ。 以来6年、隣人ながらほとんど顔も合わさない日々が続いたが、 ある日、コリーがいつものように花壇に水をやっていると、 険しい表情を浮かべたニックが近づいてきて……。
本好きの高校生・片倉彰文は、大切な何かが記憶から失われているのではないか、という感覚に襲われる。そんなある日、少年は突如、友人の甲斐浩太郎と共に小説投稿サイト“悪魔の書架”の中へと召喚された。現在、“悪魔の書架”が管理する物語の一部が“紙魚”と呼ばれる存在に蝕まれ、世界記憶からも失われようとしているらしい。少年は全ての物語を救うため、記憶ごと失われてしまった“大切な存在”を取り戻すためー悪魔と契約し、“想像”を“創造”にする能力を手にする。巨匠・水野良が贈るー新時代を切り開く、ビブリオン・現代ファンタジー!
人々に感謝され、頼りにされたくて高校教師となった青年・助。ある日彼は、災いをもたらす魔女・レクラハによる事故に巻き込まれ、何故か彼女の身体を手に入れてしまう。そして中身は自分一人のまま、2つの身体を行き来して学校教師と魔女の二重生活を送ることに。そんな状況に助は、これなら魔法で人助けができる!と喜ぶがーなんとレクラハの身体は“人々から恐れ嫌われる”ことが魔力の源だった!自分の望みとは相反する、矛盾した状況に頭を抱える助。そこへ、異世界から次々とレクラハを追って魔女たちがやってきて…?好かれ嫌われ大忙しな学園魔女コメディ、開幕!
ごく普通の腐女子・早乙女朱葉のスペースに同人誌を買いに来たのは、ごく普通の腐男子・桐生和人。 ただひとつ、ごく普通と違ったのは、二人は高校の教え子と教師だったのですーー。 イケメン生物教師の真(オフ)の姿がもっさり残念メガネ男子かつ同じ沼の狢……だと……!? そう、これはーー教え子を神(絵師)と讃えるイケメン腐男子先生と、とある腐女子の物語。 桐生:「今週の雑誌にマジ神コマがあるので審議したい」 朱葉:「それな」 こんな先生に教えられたい!? 共感しすぎるオタクラブコメ登場!!!!!
役者志望の「僕」は、その日もオーディションに落ち、ふらりと小さな居酒屋に入った。壁いっぱいに貼られたサイン色紙に、有名選手の記念バット…。目黒区蛇崩。著名人が通い続ける実在の店の、伝説のおやじ。彼の八十余年の強烈な生き様は、今に迷う人たちへ、勇気と希望を与えてくれる。傑作長編小説。
東京で初めての出産をまぢかに控えた遼子。夫の克哉が、突如、ドバイへ赴任することになったため、遼子は大阪の実家に戻り、出産をすることに。だが、実家に帰ると、両親と妹・美和の間に、会話がないことに気がつく。そして父は新築したばかりの自宅を売却しようとしていた。不穏な空気が流れる実家で、出産への不安と家族への不信感があふれ出る……そして明らかになっていく家族を襲った出来事とはーー。 第一章 第二章 第三章 第四章 第五章 第六章 第七章 第八章 第九章 第十章 第十一章 文庫版あとがき
「かわいい結婚」…「結婚ってなんなんだ?」という疑問から生まれた作品。結婚して仕事をやめ、専業主婦になった29歳のひかり。しかし、家事能力はゼロ。当然、部屋は散らかり放題。もちろん食事も作れない。夫とは仲良しだけど、こんなに家事が延々と続くなんて……。 騙された!わたし騙された!騙されてた! 結婚生活のリアルをコミカル&ブラックに描く。ほか「悪夢じゃなかった?」「お嬢さんたち気をつけて」二篇収録。 かわいい結婚 悪夢じゃなかった? お嬢さんたち気をつけて
「人間の視点で物を考えないでください」 動物オタクの天然系巡査・薄圭子のアニマル推理が大爆発! ペンギン、ヤギ、サル、ヨウム……現場に残されたペットの生態から、常識はずれの発想で真犯人をあぶり出す。コンビを組む元捜査一課の鬼刑事・須藤友三も、薄を認め始めるが。大好評シリーズ、待望の第3弾。 ペンギンを愛した容疑者 ヤギを愛した容疑者 サルを愛した容疑者 最も賢い鳥
二宮光二郎七十五歳、元理科教師で趣味は分解。大抵の故障はすぐ直す。ただし最近頭の調子がイマイチで、家族はちょっと困ってる。そんな俺のじいちゃんが、芝刈り中の老人を刺したって!? クセありじじばばも巻き込み、浪人生活まっさかりのかけるは、真犯人を捜せるのか。「二人で一人」の迷探偵が大活躍! 「加速する面白さ! 読者は皆、光二郎が好きになる」 ーー相原透(解説より) 二宮光二郎七十五歳、元理科教師で趣味は分解。大抵の故障はすぐ直す。ただし最近頭の調子がイマイチで、家族はちょっと困ってる。そんな俺のじいちゃんが、芝刈り中の老人を刺したって!? クセありじじばばも巻き込み、浪人生活まっさかりのかけるは、真犯人を捜せるのか。「二人で一人」の迷探偵が大活躍! 第一章 光二郎、家出する 第二章 光二郎、指名手配される 第三章 光二郎、逃亡する 第四賞 光二郎、磨く 第五章 美女とこおひい
霧ヶ峰高原北西の鷲ヶ峰(わしがみね)に登った会社の同僚男女7人。山頂にあった石地蔵を盗んだ彼らを次々不審な死が襲う。メンバーの一人は地蔵の来歴を調べ、意外な事実を突き止めるが……。(表題作「鷲ヶ峰物語」)他、谷川岳の雪崩事故から生還した男と、死んだ友人の娘との愛憎を描く「谷川岳春色」他全5編収録。 鷲ヶ峰物語 谷川岳春色 万治の石仏 『妙法寺記』原本の行方 大地震の生霊
東京調布で浪人生の死体が見つかった。現場には時限爆弾を作っていた痕跡があり、その部屋の住人で被害者の親友・橋本が行方不明に。やがて、京都駅長に奇妙な脅迫状が届く。「古都の景観を損なう醜怪な京都駅を建て直せ。さもなければ爆破する」犯人は橋本なのか?そして、十津川警部は京都駅を守れるのか?
僧侶となって正体を隠す、伝説の大悪党・河内山宗俊に強引に連れて来られた超高級料亭・百川。そこで魚之進は、兄が遺言に残した「この世のものとは思えないほどおいしいもの」-ケイクをついに口にする。ケイクを作らせた主はいったい誰なのか。“美味の傍にいる悪”は、もうすぐそこにいる!?
これぞ桐野夏生の原点。江戸川乱歩賞受賞作!親友の耀子が、曰く付きの大金を持って失踪した。夫の自殺後、新宿の片隅で無為に暮らしていた村野ミロは、共謀を疑われ、彼女の行方を追う。女の脆さとしなやかさを描かせたら比肩なき著者のデビュー作。江戸川乱歩賞受賞! 親友のノンフィクションライター宇佐川耀子が、1億円を持って消えた。大金を預けた成瀬時男は、暴力団上層部につながる暗い過去を持っている。あらぬ疑いを受けた私(村野ミロ)は、成瀬と協力して解明に乗り出す。二転三転する事件の真相は?女流ハードボイルド作家誕生の’93年度江戸川乱歩賞受賞作! どうぞ楽しいひと時を。 須賀しのぶ氏 個人的には、女性ならでは、とか、女性だからこそ、という表現はあまり好きではないのだけれど、この繊細な皮膚感覚とミロの再生、そして水の膜が一枚ずつ剥がれおちていくように真相に近づいていくミステリー展開の融合の見事さは、やはり女性にしかーーいや桐野さんにしかできないのではないかと思う(「新装版 解説」より)。