小説むすび | 2017年発売

2017年発売

木に登る王木に登る王

男女の複雑怪奇な心理の綾  ミルハウザーが59歳だった2003年に刊行された本書は、匠の技巧を堪能できる、粒ぞろいの中篇集だ。ミルハウザーは、『三つの小さな王国』『魔法の夜』が証明するように、優れた中篇作家でもあるのだ。  売りに出した自宅を女性が客に案内するなかで、思いがけない関係が浮かび上がる「復讐」、官能の快楽に飽いた放蕩児が、英国の貴婦人に心を乱される「ドン・フアンの冒険」、王妃と騎士の不義を疑う王の煩悩、王の忠臣が悲運を物語る表題作を収録。  「木に登る王」では、騎士トリスタンと王妃イゾルデと王の悲劇を傍観しつつ、重要な節目では当事者ともなる王の忠臣トマスの語りが冴える。三角(もしくは四角)関係の当事者・準当事者たるこの三人の心理のさまざまな層が、ミルハウザーならではの律儀な丁寧さでーー意外性を伴ってーー仔細に述べられてゆく。  本書は、「複雑怪奇化した男女関係」というテーマの一貫性が、書物としての統一感を生み出し、三つの中篇作品の累積的な読みごたえにおいて、ミルハウザーのひとつの到達点と言えるだろう。  男女の複雑怪奇な心理の綾、匠の技巧が光る極上の物語!

ガラスの封筒と海とガラスの封筒と海と

イギリスの港町が舞台。 船乗りの父を海で失った少年が、瓶に手紙を入れて海に流し、返事を待つ。 そして少年はついに水面に浮かぶ瓶を発見する。 それは‘デイヴィ・ジョーンズの監獄’の元船乗りテッド・ボーンズという男からの返事だった。 この謎の男とのやりとりからストーリーは一気に盛り上がりをみせていく。 海の怖さを知りつつ海に憧れる少年が、不思議な体験を経て一歩大人に成長する、 感動のヒューマン・ファンタジー小説。『青空のむこう』『13ヵ月と13週と13日と満月の夜』『チョコレート・アンダーグラウンド』など累計部数100万部突破のベストセラー作家アレックス・シアラーの最新作。船乗りの父を海で失った少年が、不思議な体験を経て一歩大人に成長する、奇跡のヒューマン・ファンタジー。刊行前に実施した読者モニターアンケートで99%の方がおもしろかった!と回答。読者モニターのお墨付きをいただき、自信を持ってお届けします。あきらめない勇気をもらえる、読後感の爽やかな物語です。 第一章 この瓶をみつけた人へ 第二章 パンを水に投げよ 第三章 ローズ・ヘイヴン 第四章 二本め、三本め、四本めの手紙の瓶 第五章 具合の悪い日 第六章 人魚 第七章 海難救助者の権利 第八章 五本めの瓶ーー最終通告 第九章 その他の話題 第十章 返事 第十一章 海の男 第十二章 ミスター・ボーンズへ 第十三章 オーシャン・パール号 第十四章 新たな知らせ 第十五章 わが友よ 第十六章 エサ 第十七章 スワン・オブ・イヴ号 第十八章 嵐を乗りきれ 第十九章 最後の手紙 第二十章 出航 第二十一章 そのうちやがて 第二十二章 最後の最後

政略結婚政略結婚

著者

高殿円

出版社

KADOKAWA

発売日

2017年6月24日 発売

金沢城で生まれた私の結婚相手はわずか生後半年で決まった。(中略) 早すぎると思うかも知れないが、当時ではごくごく当たり前のことで、 大名の子の結婚はすべて政略結婚、 祝言の日まで互いに顔を合わせず、文も交わさぬのが慣習である。 私の生まれた文化の世とはそういう時代であった。--第一章「てんさいの君」より 不思議な縁(えにし)でつながる、三つの時代を生き抜いた三人の女性たち。 聡明さとしなやかさを兼ね備え、自然体で激動の時代を生き抜く彼女らを三部構成でドラマチックに描き出した壮大な大河ロマン! ーーー 加賀藩主前田斉広(なりなが)の三女・勇(いさ)は、生後半年で加賀大聖寺藩主前田利之(としこれ)の次男・利極(としなか)のもとに嫁ぐことが決まっていた。やがて生まれ育った金沢を離れ江戸へと嫁いだ勇は、広大な屋敷のなかの複雑な人間関係や新しいしきたりに戸惑いながらも順応し、大聖寺藩になくてはならない人物になっていく。だが、石高十万石を誇る大聖寺藩の内実は苦しかった。その財政を改善させるような産業が必要と考えた利極と勇が注目したのはーー(「第一章 てんさいの君」)。 加賀藩の分家・小松藩の子孫である万里子。パリで生まれ、ロンドンで育った彼女は、明治41年帰国し、頑なな日本の伝統文化にカルチャーショックを受ける。やがて家とも深い縁のある九谷焼をアメリカで売る輸出業に携わることとなり、徐々に職業夫人への展望をいだくが、万里子の上に日本伝統のお家の問題が重くのしかかる。日本で始めてサンフランシスコ万博の華族出身コンパニオンガールになった女性は、文明開化をどう生きるのかーー(「第二章 プリンセス・クタニ」)。 貴族院議員・深草也親を祖父に持つ花音子は、瀟洒豪壮な洋館に生まれ育ち、何不自由なく暮らした。だが、花音子が幼稚園に上がるちょうどその頃、昭和恐慌によって生活は激変。すべてを失った花音子と母・衣子は、新宿の劇場・ラヴィアンローズ武蔵野座に辿り着く。学習院に通いながら身分を隠して舞台に立つ花音子は一躍スターダムにのし上がるがーー(「第三章 華族女優」)。

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