2018年10月発売
瑞燕国で最下層とされる尹族の少女・玉瑛は、皇帝の「尹族国外追放」の勅命により、下女として働いていた貴族の屋敷を追われた。山中を彷徨う玉瑛は追いついた騎兵に斬られ、尹族差別の元凶となった皇帝の側室・柳雪媛への恨みを胸に意識を失ってしまう。意識を取り戻したとき目に入ったのは、見知らぬ女。高価な調度品。そして女が玉瑛に呼びかけた。「雪媛様」と。
一流化学企業に勤めるはるのは、憧れの先輩・南が率いる群馬の研究所に異動になった。意気揚々と出勤したが、なんとそこは問題社員を集めたいわゆる「追い出し部屋」。天才研究員と謳われた南はやる気をなくして酒浸りになっていた。「来年度までにメロンを収穫しないと全員クビ」と言い渡されたはるのは、課の存続と南を再生させるべくメロン栽培に乗り出すが!?
三代将軍家光は、島原の乱鎮圧後、島原藩松倉家を潰した。牢人となった旧藩士たちは、松倉家と隣接する平戸藩松浦家へ狼藉をしかける。苦慮した松浦肥前守は、再び斎弦ノ丞を辻番に任命し、家の安泰を図ろうとする。一方、将軍“御成”の栄誉を巡り、松平伊豆守ら重臣の権力抗争が激化。この“御成”を狙う企みを知った弦ノ丞に密命が下るが…。藩のため奮迅する辻番たちの活躍!書き下ろし時代小説。
介護施設に入所中の父を支え懸命に働く亜紀と、権力者の父の元で安穏と暮らす健司。二人の偶然の出会いと、亜紀の父浩介が偶然テレビに映った「死んだはずの男」湯浅を見たことから、運命は動き始める。十数年前の湯浅の死に父の重治が関わっていたと知った健司は、亜紀と事件の真相を追うが、二人の前に公権力の壁が立ち塞がり…。巨匠が描く渾身の社会派サスペンス。吉川英治文学賞受賞作。
人間が犬を選び、犬が人間を選ぶ。その先に生まれる信頼関係が“ソウルメイト”の証。長年寄り添った愛犬の最後の時。家族の決断とはー。(「フラットコーテッド・レトリーバー」)、自殺を踏みとどまらせてくれた一匹の犬の存在。(「フレンチ・ブルドッグ」)心に空洞を抱えて生きる人々と、そこに寄り添う犬たち。犬と生きる喜びも、犬を失う悲しみも刻まれた、一つ一つの物語が胸を打つ全七編。
南米のコカインを駆逐せよ!ホワイトハウスから命を受けた退役将軍バーンズは、作戦の遂行を宿敵にして最良の友、那須野治朗に託す。那須野はキューバへ飛ぶが、愛機「ネオ・ゼロ」は敵に爆破されてしまう。絶体絶命の窮地の中、那須野とチーム・ゼロのメンバーは賭けに出る。伝説のパイロット、ぶれない男の生きざまの物語、ついにクライマックス。発表から25年冷めない熱。シリーズ感動の最終話。
五感の中でもっとも記憶が薄れないのが味覚。人間は食とともにある。健康のためには一日三食、規則正しい食生活を。心の健康のために、一日一作、規則正しい読書生活はいかが?ただしご注意を。「食」ではなく「味覚」、しかも「冒険」と銘打たれたこのアンソロジー、一筋縄ではいかないかも。ただ、14編どれもがリアルな味覚に訴えかける迫力と、飛び切りの面白さを備えていることは保証します。
武家の出身ながら、髪結いとして生きる少女・卯野。友人の花絵と、新しい商いの相談も楽しい日々を送っている。近頃ひいきの青物問屋のお嬢さん・里世は、火消しに恋をしているらしい。「恋を叶える」という卯野の噂を信じているようだが、度を超した頻度で呼ばれるようになり、家族も心配している様子。どうやら里世の思いは、ただの恋心ではないようで…。むすめ髪結いの奮闘記、第3弾。
誰もが顔見知りの小さな町トールオークス。深刻な犯罪とは無縁のこの町で、嵐の晩に、三歳の子供が忽然と消えた。全米の注目を集めたこの失踪事件は、住民総出の捜索でも警察の捜査でも、手がかりすら出てこない。絶望に抗いながら捜し続ける母親。そして、町の住民たちそれぞれが抱えていた秘密が次第に明らかになっていくなかで、意想外の真相が姿を現してーCWA新人賞受賞の傑作ミステリ!
ニューヨークで起こった誘拐事件の犯人、自称“作曲家”が国外に逃亡、名探偵ライムと刑事アメリア、介護士のトムの3人はあとを追ってナポリに渡り、現地の警察と共同で捜査を開始するーほぼ全編がイタリアで展開する最新作は、シリーズのファンが「こうでなくちゃ」と快哉をさけぶ場面が満載。名探偵ライムが証拠とロジックで快刀乱麻の名推理を導き出せば、アメリアは凶行を阻止するために車を疾走させ、死地へと飛び込む。もちろん大規模ドンデン返しも待ち受けています。
戦争で顔と身体の右半分にひどい火傷を負い、許嫁にも去られたアシュベリー公爵は、切実に跡継ぎを欲していた。そこに貧しいお針子のエマが現れる。ふたりはそれぞれの思惑から便宜結婚をした。愛情は必要なし、キスも御法度と、機械的な子作りだけを要求する公爵に、エマはあの手この手で心を通わせようとするのだが…。二度のRITA賞受賞など、華麗な受賞歴を持つベストセラー作家が贈る、ロマンス版“美女と野獣”!?
「不思議な夢が続き、寿命が喰われていく。これは“夢喰い”だ」恩師の堀越教授はそう言い残して死んだ。これは病気なのかー大学助教授の牧野は何人もが犠牲になった“夢喰い”の正体を究明しようと調査に乗り出した。一方、牧野の中学の後輩で、通信会社NJTT社員の咲元光明は奇妙な夢を見るようになり、身の回りで不可解な出来事が起こるようになった。咲元は“夢喰い”に蝕まれていく…。社会を変革するようなビジョンを持つ前途有望な若者に取り憑く“夢喰い”の犠牲者をこれ以上出してはならない。追う者、追われる者の交錯する物語。果たして咲元の運命やいかに!?
あたしを殺して魔物に捧げようなんて、正気の沙汰じゃないことをしでかして入院してたアナベルが、学校に戻ってきた。もちろん夢の世界にも。夢にかけては、アナベルの実力はヘンリーも、アーサーさえも凌ぐ。もちろんアーサーとあたしたちは完全に敵同士。アナベルは、自分もアーサーの敵だから、敵の敵は味方よ、なんて共闘をもちかけてきたけど、なんか胡散臭い。本当の敵はアーサー?アナベル?それとも二人はグルなの?夢の世界を舞台に繰り広げられるロマンティック・ファンタジー完結。
ヨーゼフ・メンゲレ、アウシュヴィッツ絶滅収容所に移送され、降車場に降ろされたユダヤ人を、強制労働へ、ガス室へと選別したナチスの医師。優生学に取り憑かれた彼は、とりわけ双子の研究に熱中し、想像を絶する実験を重ねた。1945年のアウシュヴィッツ解放時に研究資料を持って逃亡。その後、49年にアルゼンチンに渡った彼は、79年にブラジルの海岸で死亡するまで南米に潜み、捕まることも、裁かれることもなく様々な偽名のもと、生き続けたのだった。そして、その死が遺骨のDNA鑑定によって確認されたのは90年代になってからのことだ。なぜメンゲレは生き延びることができたのか?彼は、どのような逃亡生活を送ったのか?謎に満ちた後半生の真実と、人間の本質に、ジャーナリスティックな手法と硬質な筆致で迫った傑作小説。ルノードー賞受賞作。
放課後の理科室で、5人の高校生がルール違反の罰で教師に作文を書かされていた。だが突然、生徒の1人サイモンが苦しみだし、病院搬送後に死亡する。検死の結果、警察は事件性があると判断した。サイモンは生徒のゴシップを暴くアプリを運営しており、ほかの4人は全員が彼に秘密を握られていたのだ。4人は順繰りに事件について語っていく。いったい、誰が何を隠しているのか?