2018年10月発売
人間は忘れる生き物だ。だからこそ、残っている記憶には意味がある。記憶翻訳者とは、依頼人の心から抽出した記憶データに潜行し、他者に理解可能な映像として再構築する技能者である。珊瑚はトップ・インタープリタとして期待され、さまざまな背景を持つ依頼人の記憶翻訳を手がけていた。しかし彼女にとって人の記憶と深く関わることは、自分自身のなかにある埋められない欠落と向き合うことでもあったー第五回創元SF短編賞を受賞した表題作にはじまる連作短編集。
逆光を浴びながらステージに登場したボーカルは、突如悲痛な叫び声をあげるとその場に頽れた。彼の胸には千枚通しが突き刺さっていた。衆人環視の中でのボーカルの不可解な変死により、ロックバンド“赤い青”は活動休止に追い込まれる。事件直前、カリスマ的なギタリストが演奏中に冒した、彼に似つかわしくないミスは事件と何か関係があるのか?ライブハウスのスタッフである梨佳は、あの日なにが起こったのかを考え始める。やがて起きた第二の悲劇ーロックは、果たして人を殺すのか?無冠の大型新人が満を持して贈る、感動の第一長編。
川で少女の死体が発見された。長期間にわたって虐待された痕があり、死因は溺死だと判明する。だが不可解なことに、少女は川の水ではなく塩素水で溺れていた。おぞましい犯罪に、刑事オリヴァーとピアたちは必死の捜査をはじめるが、二週間たっても少女の身元が判明しない。さらに殺人未遂事件も発生。警察関係者の想像を絶する凶悪犯罪の全貌とは。欧州席捲の大人気警察小説!「刑事オリヴァー&ピア」最新作!
その学校に入学するのは、異世界へ行った、不思議の国のアリスのような子どもばかり。つまり“向こう”に帰りたいと切望する彼らに、現実と折り合うすべを教える学校なのだ。新しい生徒のナンシーもそんなひとり。ところが死者の世界に行った彼女に触発されたかのように、不気味な事件が…。アリスたちの“その後”を描いたファンタジー3部作開幕。ヒューゴー、ネビュラ、ローカス三賞受賞!世界幻想文学大賞候補作。
恐怖政治で権力を掌握する独裁者が治める国アレパの“真の独立”は成し遂げられるのか?陰謀、クーデター、暗殺計画…さまざまな思惑が入り乱れるハードボイルド小説さながらの「政治喜劇」。
完全犯罪という大いなる使命を抱いた主人公によって『失われた時を求めて』の登場人物たちが、ある一定のルールに基づいて、1人、また1人と殺されていく、実験文学集団ウリポ(潜在文学工房)の数少ない女性会員による、奇想天外な犯罪小説。
かたや美しきヴォーカロイド、かたや怖るべき透明人間ストーカー。東欧を舞台に、不在の女性への狂恋が奔騰するヴェルヌの最も21世紀的小説二篇。