2018年12月13日発売
明治の初め、日本に正則英語を学べる男女共学の学校が設立された。その名を「共立学校」という。現在、東京大学合格者数で日本一を誇り、政官財学をはじめ、各界に人材を送り出している「開成学園」の前身である。近代化へと大きく舵を切り始めた幕末、遣米・遣欧それぞれの使節団に加わり、世界一周を経て、「人の仕立て方」こそが国を創ると予見した男がいた。佐野鼎ー。これは、近代日本に新しい教育の礎を築き、後の世に数多の逸材を輩出することになる、一人の男の物語である。
産婦人科の日常を描き“生命の尊厳”を問う 舞台は三浦半島の小さな産婦人科医院。主人公の医師・野辺地貞春の下では、不妊治療や出産、中絶と、さまざまに行き交う人々の喜びや苦悩が日々交錯している。なかでも中絶手術は、戦後、患者が公に語ることなく行われてきた大規模な医療であった。 綿密な現場取材に基づき淡々と描かれるそれぞれのケーススタディは圧倒的なリアルさで、小説という概念を超える。産婦人科医は生命の誕生に立ち会い、そして同時に中絶という形で一つの命を消し去るという、他の医療には見られない光景が映し出される。生命の尊厳を鋭く問うた“衝撃の問題作”の上巻。
命の“尊厳と神秘”に筆でメスを入れた大作 生誕と堕胎ーーこのふたつの医療に多くの時間を費やすのが産婦人科医の日常だ。 三浦半島で小さな産婦人科医院を営む主人公の医師・野辺地貞春は無神論者だが、自らの倫理観に基づいて淡々と治療を施していた。 “仮性半陰陽の男性”と診断された女性、やっと懐妊した子がダウン症と診断された夫婦、眼球なく生まれた赤児、そしてその静かな死ーー。 中絶手術の腕は名人級の主人公が日々直面する数々の患者の実態を描いて、人間誕生の意味とその神秘に鋭く斬り込んだ“衝撃の問題作”下巻。
『神様のカルテ』以来の最強デビュー作! 大学生の清水美空は、東京スカイツリーの近くにある葬儀場「坂東会館」でアルバイトをしている。坂東会館には、僧侶の里見と組んで、訳ありの葬儀ばかり担当する漆原という男性スタッフがいた。漆原は、美空に里見と同様の“ある能力”があることに目を付け、自分の担当する葬儀を手伝うよう命じる。漆原は美空をはじめとするスタッフには毒舌だが、亡くなった人と、遺族の思いを繋ごうと心を尽くす葬祭ディレクターだった。 読んだ人すべての心を温かく包み込む“お葬式小説”! 【編集担当からのおすすめ情報】 「私の看取った患者さんは、 『坂東会館』にお願いしたいです」 ーー夏川草介氏(医師・作家 『神様のカルテ』)推薦!
両親が起こした火事で、ひとり生き残った幸子。子供たちを乗せた車で海に飛び込み、生き残ってしまったシングルマザーの雪絵。宿命的な出会いによって、二人の女性の人生が動き出す。“加害者”と“被害者”の思いが交錯した時、衝撃の真実が明らかになる!!慟哭のミステリー。
才色兼備の姉と正反対の妹。美しい姉は、母の死、恋人との別離から拒食症になる。しかしその後、すさまじいほどの過食に走り、恐ろしく太り始める。父が亡くなってからは自室にこもり、一日中食べ続ける毎日。かつての面影はどこにも見られなくなった姉の世話をする妹に、様々な感情が生まれるー(「贅肉」)。平凡な人間の、ほんの少しの心の揺らぎが、加害者や被害者になったりする。そんな日常に潜む恐怖を描く傑作サスペンス集!
婚活パーティで出会った、メーコ・カワイ・サモさん・成田屋。仕事や性格はそれぞれ違えど、婚活市場で戦友として闘っている。4人には恋愛がうまくいかない決定的な欠点がある。恋に臆病すぎるメーコ、性に奔放すぎるカワイ、高齢処女で恋愛経験がまったくないサモさん、バリキャリで隙を見せない成田屋ーー互いの姿を見て、自分が本当に欲しいものは何なのか、少しずつ前進していく。婚活や恋愛でうまくいかない全女性に贈る大人の青春小説!
「世界で一つ、大切な時計をお作りします」親の転勤で京都に越してきた高校生の菜奈は、白川通りで素敵な時計屋を見つけた。その「白川時計店」で働く幸也は、菜奈を何かと気にかけてくれるが…ある日、菜奈は幸也にある能力があることを知るーー「大丈夫、大切なことは“時間屋さん”が教えてくれる」……時を操る力を持つ”時間屋”をめぐる、奇跡の物語。
アフリカ帰りの医師・和戸一郎は、札幌にあるホームズ超常科学研究所・所長の河邊鐡臣の助手となった。眉目秀麗な青年実業家の河邊が、なんでオカルトでホームズ? 実は河邊には、ある事故をきっかけに16歳の可憐な少女の魂が乗り移っていた。河邊の意識が戻るのは一日15分。自分の身体に起こった謎を解くため、ホームズ&和戸さん(ワトソン)は、北海道で起こる謎の怪事件に挑む!
たぬきの神社に生まれ、たぬきに囲まれて生きてきた静。これ以上たぬきに人生の邪魔をされたくないと、就職で地元を離れて京都へ。 ところがやっぱり縁を切ることはできず、静はたぬきの依頼で、きつねが営む着物修繕店に潜入することに。そしてそこは、「神様専用」のお店だったーー。
長崎へと辿り着いた坂崎空也は、島巡りで出会った長崎会所の高木麻衣と奉行所の鵜飼寅吉と再会した。そして、長崎奉行松平石見守の命により「大坂中也」という偽名を名乗り武者修行を続けることになる。一方、江戸では薬丸新蔵が野村刀流の道場を開いたのだが…。累計2000万部を突破した「居眠り磐音 江戸双紙」に続く新たな物語。緊迫の五番勝負!
長崎で武者修行を続ける坂崎空也のもとに、想いを寄せる薩摩の渋谷眉月が訪れる。平穏に武者修行を続ける空也だったが、恨みを抱く東郷示現流酒匂一派の影が迫っていた。同じ頃、薩摩藩の江戸家老から呼び出しを受けた薬丸新蔵は、初めて江戸藩邸に出向くが……。空也と新蔵の二人と酒匂一派の因縁は決着の時を迎え、青春篇はいよいよ完結!
南町奉行所与力・荒俣土岐之助を突如、頭巾の侍が襲った。辛くも難を逃れた土岐之助は、襲撃者をかつて“人頭税導入”に絡んで因縁が生じた、前南町奉行・朝山越前守と見て取った。配下の同心・樺山富士太郎と女丈夫の奥方・菫子の奮闘が始まる!大好評シリーズ、待望の第43弾!
貴船屋の企てを退け、無事お琴たちとの再会を果たした左近。浜屋敷のそばでお琴が三島屋を再開するなど、新たな日々がはじまるなか、権八夫婦の暮らす長屋に仇討ちの若い兄妹が転がり込んでくる。仇捜しに江戸中を奔走し疲弊している様子の兄、戸川亀彦を案じた左近は助力を申し出るが、亀彦が捜す仇とは、左近もよく知る人物だったー。葵一刀流が悪を斬る!大人気時代小説シリーズ、絶好調第二弾!!
『タタール人の砂漠』以来、ブッツァーティ本は出れば必ず買って読む。すべて訳されて、読み尽くすその日までは。--山尾悠子 ミラノ地下鉄の工事現場で見つかった地獄への扉。地獄界の調査に訪れたジャーナリストが見たものは、一見すると現実のミラノとなんら変わらないような町だったが……。美しくサディスティックな女悪魔が案内役をつとめ、ジャーナリストでもあるブッツァーティ自身が語り手兼主人公となる「現代の地獄への旅」、神々しい静寂と詩情に満ちた夜の庭でくり広げられる生き物たちの死の狂宴「甘美な夜」、小悪魔的な若い娘への愛の虜になった中年男の哀しく恐ろしい運命を描いた「キルケー」など、日常世界の裂け目から立ち現れる幻想領域へ読者をいざなう15篇。 後期の作品には、それまでになかった新しいテーマや傾向も見出される。そのひとつが、恋愛、より正確に言えば、愛の妄執をテーマにした作品群であるが、そこには作者の実体験が色濃く反映している。(中略)恋愛体験以外にも、彼の人生にとってはかりしれないほど大きな、そしてかけがえのない存在であった母親や、あるいは人生の苦楽を共にした友人や同僚たちとの死別といった実人生に関わる要素が作品に取り上げられるようになるのも特徴である。そして、そうした傾向と並行しながら、作者自身が語り手や主人公として作中に登場したり、物語の背後に老いや死の意識が顔をのぞかせたりするようになってゆく。--「訳者あとがき」より 【収録作品】 卵 甘美な夜 目には目を 十八番ホール 自然の魔力 老人狩り キルケー 難問 公園での自殺 ヴェネツィア・ビエンナーレの夜の戦い 空き缶娘 庭の瘤 神出鬼没 二人の運転手 現代の地獄への旅