2018年4月6日発売
東日本大震災を経て、刻々と変貌していく“東京”を舞台にした戯曲『エピタフ東京』を書きあぐねている“筆者K”は、吸血鬼だと名乗る吉屋と出会う。彼は「東京の秘密を探るためのポイントは、死者です」と囁きかけるのだが…。スピンオフ小説「悪い春」を特別収録。
昭和49年夏。結婚52年目を迎えた画家・熊谷守一(モリ)と妻・秀子のある1日を描いた映画『モリのいる場所』の小説版。94歳の画家が愛する庭と、そこに住まう無数の小さな生命、老夫婦のお茶の間に集う人々-さまざまな視点から、軽やかに「モリ」の日常があふれだす。
さまざまな思惑を抱く客を乗せて、旅客機が“北部辺境区”へ向けて離陸した。だが、安穏の空の旅とはならない。“西部辺境区”で大殺戮を行い罪人として護送中のハイランド公爵の眠る棺が乗っていたのだ。公爵をめぐる貴族たちの毒牙がさらには残虐無比の空賊が、飛行体に乗り合わせたDと乗客に襲いかかる!
梅雨のある日、小学生のすばるは学校の近くで、未来からきたという若い女性の幽霊と出会う。アイハラコトナと名乗る彼女は、なぜかすばるのことをよく知っていて、「今日転校してくる相原琴奈と仲良くしないでほしいの」と言った。だが、同じ飼育委員になったことで、すばるは転校生の琴奈と親しくなっていく。その後も、中学、高校、大学と、成長していくすばるの前に時々現れる幽霊の彼女。彼女が未来の琴奈だとしたら、琴奈はもうすぐ死んでしまうのだろうかー?青春小説の旗手による青春ミステリーにして、どこまでも透明なラブストーリー!
体力自慢の新米編集者、陽菜子の異動先は、着物雑誌の編集部。アンチ着物派の陽菜子は思いがけない事態に戸惑うばかり。さっそく任された取材で和裁士の桐彦にインタビューをするも、案の定大失敗!桐彦にからかわれ、「ねこちゃん」呼ばわりされてしまう。気にくわない男と思いながらも、桐彦の助言を受けるうちに着物の魅力を知っていく陽菜子。ある日、祖母の着物への態度に疑問を抱いた陽菜子は、違和感の正体を突き止めようと桐彦に相談するがー。着物にまつわる謎と秘密が、鮮やかに解き明かされる。じれったい恋の行方も気になる浅草着物ミステリー!
入学式の朝。中学生の一色恭夜は、例によって霊にからまれていた。恭夜は代々女だけが生まれ、会話によって「霊を説得」し成仏させる役目をもつ一色家に、初めて誕生した男の子だ。そんな恭夜の前に颯爽と現れたのはひとりの少女。自分の体内から日本刀を出して霊と対峙する望月冴子だ。彼女は代々男だけが生まれ、武器によって「霊を斬る」ことで成仏させる役目をもつ望月家初の娘だった。これまで面識のなかったふたりは、同じ三日月中学に通うことになったその日から、協力しあうことに…。中学生コンビの痛快&ほっこり霊障解決ストーリー!
もう一度あの「食」に出会えたら、彼の本当の気持ちがわかると思ったんですー。京都にある看板のない食堂には、思い出の味を求めて今日も迷い人が訪れる。別れの原因になった親子丼、亡き息子の優しさが詰まっていた焼売、妻と息子が好きだったのに、どんな味だったか思い出せないきつねうどん。夕食を家でとらない元夫が毎晩食べていたおでん、遭難しかけた際におばあさんが食べさせてくれた芋煮、一目惚れした彼が完成させたかったハヤシライス。盛りだくさんなメニューを鴨川流・こいし親子が見事に探し出す。大好評の美味しいミステリー第五弾!
石ノ森学園中学校に転校してきた有栖川徹子(通称・アリス)は、転校早々クラスメイトから嫌がらせを受ける。どうやら彼女の座る席には呪われた噂があるようだ。そんなある日、アリスは、自分の隣の家が「花屋敷」と呼ばれ、話題にのぼっていることを知る。彼女は、ある目的をもって花屋敷に潜入した。家のなかには、長期不登校中のクラスメイト・荒井花(通称・花)がいた。そこで花はアリスに、驚くべきことを口にする。岩井俊二監督の映画「花とアリス殺人事件」を、乙一がノベライズした伝説の作品がついに文庫化。
ファミリーレストランチェーン社長・岡崎秀明が誘拐された。犯人は身代金を要求せず、相応の請け負い料を支払えば、敵対する人物を消してみせると持ちかけた。白石検事に不正経理で告発されることになっていた岡崎だったが、一億円を振り込んだ直後、白石検事と部下が事故死した。その頃、特急「南風」に乗車中だつた岡崎には、アリバイがあった。その後、岡崎の弱みを握った誘拐犯から連絡が入る。それは甘言と卑劣な遣り口で人につけ込む、請け負い殺人グループのさらなる策謀の始まりに過ぎなかった!十津川警部は、奴らの正体をどうやって暴いていくのか?長編トラベルミステリー。
昭和八年。ドイツでは年の初めにヒトラー内閣が成立。日本は三月に国際連盟を脱退した。その三月には、東北三陸地方を、想像を絶する大地震が襲った。昨日から今日、そして明日も続くように見える穏やかな日常も、実はたやすく奪われるものだった。この年、父は慶應義塾大学を卒業した。
恋人を交通事故で失ったシンガーソングライターの堀河優美。恋人の国夫は深夜の首都高速で大型トレーラーと接触、車はそのまま逃亡した。遺品の中から「SHADOW GAME」というタイルの楽譜を見つけた優美は、音楽活動再開にあたり、この曲を使うことを決めた。だが国夫の足跡を辿るうち、彼に楽譜を渡した人物も謎の事故死を遂げていたことを知る。この楽譜に何が隠されているのか?
尼崎藩江戸家老・塩谷隼人は、馴染みの船宿『海ねこ』で、お琴に給仕を受けていた。七年越しで互いに憎からず想いあう二人。願わくばお琴を娶り、共に余生を大事に過ごしたいと考える隼人であった。ある日、色好みで知られる将軍家斉公がお忍びで市中に出掛け、偶然会ったお琴を見初めてしまう。そして、お琴を大奥に迎え入れると高らかに宣言。思いも寄らぬ騒動が始まった。
消費者金融の営業マンの水野が家に帰ると、妊娠九ヶ月の妻が何カ所も刺されて殺されていた。おまけに腹を切り裂かれて、胎児までも…。理由もわからぬまま、警察に疑われ、追い詰められていく中、犯人を知らせる差出人不明のメールが届く。水野は、闇サイトを通じて、復讐代行業者「Furies」に依頼した。犯人を捕まえ、妻を殺した理由を知るために。しかし、捕らえた犯人の反応は…。
千葉県銚子の犬吠埼灯台崖下の岩場で、東京・成城学園に住む私立探偵・本橋哲平の他殺体が発見された。そして、本橋に融資していた消費者金融の野崎康幸支店長も、都内のホテルで殺害される。千葉県警の捜査に亀井刑事らが協力するなか、ついに十津川警部も捜査に乗り出した!事件の背後に見え隠れする甘い投資話…。謎の組織の存在も浮かび上がったが!?長篇旅情ミステリー。
家族の借金、失職、恋人だった男の死…人生のどん底にいたセレナに声を掛けたのは、“葬偽屋”を名乗る謎の僧侶・殺生歩武だった。歩武に命を救われその下で働くことになったセレナは、依頼人の望むニセモノの葬儀を手伝うことに。それぞれの偽の死に隠された秘密とは!?偽りの死が“生”の愛しさを照らし出す異色の人情ミステリ。
死の宣告、魔法による創造、死者と生者の邂逅、予測しえない悲劇、夢の中の処刑、王の約束、不滅の種族…古代ローマ、中国、インドの故事や、千夜一夜物語、カフカ、ポオなど、古今東西の書物から選びぬかれた92の短くて途方もない話。
人気浄瑠璃作者・近松門左衛門に命を救われた虎彦は、彼の裏稼業「近松万始末処」に引っ張り込まれる。こき使われるまま、失せ人捜しにお犬さま騒動、井原西鶴の幽霊退治など、さまざまな事件に奔走する虎彦だが、近松にはある思惑がー。正体不明の美貌の剣士に賢い忠犬、からくり細工師見習いの少女ら始末処の面々が繰り広げる、時に爽快、時にホロリの新感覚時代エンタメ小説、登場!