2018年5月発売
東京郊外を流れる青目川に架かるねこすて橋。この橋では、夜になると猫たちが集会を開いている。川に落ちて流された飼い猫・良男がねこすて橋で見たのは、彼を覗き込む無数の猫たちだった。自分は人間で飼い主・沙織の恋人だと思い込んでいた良男は、沙織の元へ帰ろうとするが…。絵描きの“ゴッホ”を慕う猫・キイロ、その他個性豊かな猫たちと人間が織りなす切なく温かい連作短編集。
元海兵隊員のジョーは、売春を強要されている少女や女性の救出を生業とするフリーランサーだ。ある時、仲介役のマクリアリーから、誘拐された上院議員の娘を助ける仕事が回ってきた。娘が娼館に閉じ込められているという情報を得たジョーは、現場へと急行するが背後には穢らわしい陰謀がー。ホアキン・フェニックス主演、リン・ラムジー監督で映画化!カンヌ国際映画祭2冠!気鋭の作家による傑作ノワール・スリラー。
金原瑞人氏推薦! 移民文学のバイブル 「いつか、本と紙をバッグにつめよう。いつか、マンゴー通りにさよならをいおう。わたしはあんまり強すぎるから、永久にここに留まらせておくことはできないよ。いつか、わたしは出ていくからね」(本書より) アメリカンドリームを求めて、プエルトリコやメキシコから渡ってきた移民が集まる街に引っ越してきた少女エスペランサ。英語とスペイン語文化が入り混じるなかで育ち、思春期にさしかかった彼女の目を通して、街の人たちのさまざまな夢、日常の喜びと悲しみ、声にならない声を、みずみずしい感性ですくいあげた44の掌篇。 米国の移民社会をリアルに描いた本書は世界各国で翻訳され、年代を超え、世界中で読み継がれている。現在の日本で改めて読まれるべき名作。解説・温又柔
“最初の出版人”の全貌を描く、ビブリオフィリア必読の長篇小説! グーテンベルクによる活版印刷発明後のルネサンス期、イタリック体を創出し、持ち運び可能な小型の書籍を開発し、初めて書籍にノンブルを付与した改革者。さらに自ら選定したギリシャ文学の古典を刊行して印刷文化を牽引した出版人、アルド・マヌツィオの生涯。 序章 何年ものち イチゴかごの娘/静かなる読み手/世の中を読む 第一部 第一章 漂流者 またとない時に/ホロスコープ 第二章 機械 塔の商標/ラ・ストゥーファ/懊悩 第三章 狂人たちの祝宴 巣窟の中の女神/天使と悪魔/居酒屋にて/愛の七夜 第四章 三美神 契約/家畜市 第二部 第五章 結婚式の晩 ベール/乾杯/屋根裏部屋の熱気 第六章 トッレザーニの回想 扉の神ヤヌス/宣伝ビラ/ラ・グランデ・コンパニア 第七章 夢における愛の戦い 魔法の言葉/手軽に読める喜び/私に触れるな 第八章 ゆっくり急げ 韻文と火/正気を失った人質/矢とコバンザメ/説教 第三部 第九章 ヴェネツィアを離れて 逃避/書物の死 第十章 エピクロスの運命の下に ノヴィでの隠遁/妻の出現/荒れ果てた菜園 第十一章 エラスムスの嘆き キリスト教世界初の大文筆家/卑しき贅沢/焚書がもたらした安堵感 第十二章 奥書(フィナーレ) その時が来た/ラファエレ・レジオ司教の弔辞 訳者あとがき
将来、NASAのエンジニアになりたい小学六年生の佐倉ハルくんは、風船宇宙撮影を目指しています。ハルくんは意地っ張りなこともあって、同じクラスに友達はひとりしかいません。しかし、あることをきっかけに、クラスのだれとも話そうとしない、金髪の転校生の女の子に妙になつかれました。結局、撮影は三人で挑むことになりますが……。ハルくんの、夢と努力の物語。奮闘するこの少年を、きっと応援したくなるはずですーー読み終えたあとは、もっと。
地位と愛情を天秤にかける医師の誤算(「是枝哲の敗北」)、夫の企みを察知し機先を制する料理好きな妻(「上品な魔女」)、身を挺して師匠の名誉を守ろうとするバーテンダー(「安息の場所」)、数年越しの計画で恋人の仇を討つ証券マン(「東京駅発6時00分 のぞみ1号博多行き」)--犯行に至るさまざまな事情と慮外の齟齬。透徹した眼力で犯人の思惑を見抜くシリーズ最新刊。
中野で犬小屋支配の助役を勤める森橋家の娘・知世は、母の療養のため、祖父、弟ともども小石川の剣術稽古場・堀内家の離れに移り住む。彼女は、どんな犬でも手なずけてしまうことから「お犬姫」と呼ばれている。家族や道場の人びととの語らい、仇を追う浪人への恋心、盗賊一味との対決、そして忠臣蔵事件。知世の周囲で織りなされる、さまざまな人間模様、犬模様を、やわらかに、あたたかく描いた時代小説。
誰が知るだろう、この物語のすべてが 一編の復讐劇でもあるということをーー 一代にして財を成し、 あまたの男の運命を狂わせた母クムボク。 並外れた怪力の持ち主にして、人ならざるものと心を通わし、 煉瓦づくりに命を賭した娘チュニ。 巨大な鯨と煉瓦工場、華やかな劇場をめぐる 壮絶な人生ドラマが幕を開ける。 ストーリーテラーとして名高い著者が、 破壊的なまでに激しく生々しい人間の欲望を 壮大なスケールで描き出した一大叙事詩。 ★韓国では累計15万部を記録するロングセラー ★「私にとって小説は最も自由で最も新しい芸術です」--チョン・ミョングァン 第一部 波止場 工場/ 鬼/ 一つ目/ 少女/ 波止場/ 荷役夫/ ローラ/ 刀傷/ ジョン・ウェイン/ 怪物/ 暴風雨/ 出港/ 流浪/ 双子 第二部 ピョンデ ヒメジョオン/ コーヒー/ 雷/ ナムバラン/ 象/ オート三輪/ 沼/ 煉瓦/ トンピョ/ スキャンダル/ 蜜蜂/ 祈禱師/ 白内障/ 娼婦/ 鯨/ 彼、または彼女/ 幽霊/ 前夜/ 火柱 第三部 工場 放火犯/ 刑務所/ バークシャー/ 鉄仮面/ 王族/ 出獄/ 帰還/ 谷間/ トラック/ 豪雪/ 大劇場/ チュニ、または女王 エピローグ1/ エピローグ2
かごめかごめ かご籠の中の鳥は いついつ出やる 夜明けの晩に 鶴と亀が滑った 後ろの正面だあれ? 幼子の声が聞こえる。聞こえるけれど見えない、どこにいるかもわからない。天井近くにある小さな窓、そこから響いているが姿は見えない。窓は、つま先立ちになろとうと手に届かない場所にある。 太陽の光が恋しい。でも、外に出るのはおつと勤めの時だけだ。普段はずっとこの薄暗い部屋にしかいられない、誰も外に出してくれない。 「欲しいものはありませんか?」 「食べたいものはございませんか?」 優しく問いかける使用人たちだが、誰もが自分のことを気遣っているようで、そうじゃない。ならば、なぜここから出してくれないのか。 古都の玉繭神社にある機織り小屋で、今日も巫女・絹子は布を織る。田舎の辺鄙な村から出てきた絹子は、社務所に住みながら、大学で非常勤講師として日本文化や機織りを教えている。住処は大家が管理し、シロとクロという若者がいつも美味しい料理を作ってくれ、快適だ。だが、その寮の住人の数も、どんなモノが住まうのかも、絹子は知らないーー。そしてまた、新たなる事件が始まった……
「運命屋(サダメヤ)」に頼めば未来を変えられるが、その対価は過去の記憶で支払う…。そんな都市伝説に導かれ、運命屋を営む千夜子と出会った大学生の慧(さとし)は、彼女の仕事を手伝うことになる。次々訪れる依頼人の願いをかなえる千夜子には真の目的があり、それには慧が大きくかかわっていた…。大好評「猫の木」シリーズの著者が描く現代ダークミステリー!
秘密と欲望と一瞬の愛。とまどいながら、傷つきながら、あの島で、女たちは強くなったーー。届けられた死者のメモ。主婦、保育所のオーナー、一流企業のOL、女優。共通点はひとつ。「売春島」で体を売っていたことだけ。あの日の記憶が蘇り、恐怖に包まれる。ばれるかもしれない。娼婦だった母への憎悪で、胸が張り裂けそうな男もまたーー。心と体を痛みが貫き、やがて快感へと変わる、戦慄の体験があなたを待っている!
ヴェネツィアから流れ着いた一枚の鏡。その鏡は持ち主の願いを現実のものにすると言い伝えられていた。脳病院に身を置く奥様と看護婦、昔気質な鏡研ぎ職人と美青年、人気舞台女優と財界の黒幕。禁断の鏡に魅入られた人々に訪れる、運命の行く末とは。戦前から終戦直後を舞台に、狂瀾の愛憎劇が幕を開ける。トラウマ絶対不可避。残酷で甘美なる連作短編集。
何度だって言ってあげる。あんたはぜんぜん悪くないーー。希望への疾走を描く、鮮烈なデビュー作! 優等生・智佳は、抑圧する父親に反発し、日帰り旅行を決行する。長距離バスで偶然乗り合わせた同じ高校に通うお馬鹿なギャル・優亜の過去を知り、彼女を助けるため、大好きなホラー映画にヒントを得て計画を練るがーー。R-18文学賞大賞・読者賞ダブル受賞作ほか、映像制作会社で働く智佳、美容師の卵となった優亜、ふたりの「その後」を描く連作短編集。
彼女は消えない炎のような人だった。この美しい年上の人に、僕は恋をしたー。炎は消えてもその来歴は残る。ひとりの男の人生を根底から動かして、海の向こうへ、燃えさかる炎へと向かわせた、崇高なその行為とは。二人の間を流れた電流とは何だったのだろうかー。戦後の日本とヴェトナムを舞台に描かれた激しくも美しい物語。
昭和十九年十一月、レイテ島最大の激戦地となるリモン峠での死闘が始まった。現地の苦戦に武藤方面軍参謀長は打切りを意見具申するが、八日の総理大臣小磯国昭の天王山発言により、レイテ戦続行は大本営方針となる。巻末にインタビュー「『レイテ戦記』を語る」(聞き手・古屋健三)を収録。(全四巻)
ゴールデンウィーク明けの朝、出勤した警視庁捜査一課・碓氷警部補の元に、都内で起こった二件の自殺と二件の殺人の報が入る。一見関連性がないように見える各事件だが、発生時刻はすべて同じ日の午後十一時だという。さらにその後、同日同時刻に別で三件の事件が起きていたことが判明。第五係と、再度捜査協力に訪れた心理調査官・藤森は、意外な共通点に気づくが。
暗渠化工事で川辺の棲みかを追われたネズミのタータ親子。夏の終わり、安住の地を求めて上流を目指す旅が始まる。彼らを待ち受ける幾多の試練や思いがけない出会い、はぐくまれる友情……。子どもから大人まで、あらゆる世代をとりこにした物語が、待望の文庫化!小さきものをこよなく愛する著者が、足元で脈動する世界の秘密を描き出した人気シリーズ第一弾。チッチが跳ね、タータが走り、タミーが飛び出す!島津和子氏による挿画も多数収録。
しまなみ海道沿いの中学に通う巧海、千佳、啓太の三人に、ある日、四台のロードバイクが届けられた。なんと世界的ロードレーサーからのプレゼントだという。これを機に「ツール・ド・しまなみ」に出場することを決意した三人は、地域おこしに来ていた女性の桜井にコーチを依頼。だが、しだいに桜井のつらい過去が明らかになりー。