2018年7月発売
ロンドン社交界に名の通った賭博場の貴賓専用サロンーそこで働くエリザベスを一目見て、デア伯爵の視線は釘付けになった。どことなく気品の漂う美しい彼女は、その場に似つかわしくなく、経営者のフランス人に利用され、明らかに虐待も受けているようだ。良い育ちであろう彼女が、いったいなぜ身を落としたのか?不遇の女性についてそんなことを考えるうちに、デア伯爵はそのフランス人経営者と一対一の勝負に挑んでいた。その日、運の女神を味方につけた伯爵は、相手の持ち金が底をつくや、貴族にあるまじき言葉を口にした。「その女を賭けろ」
数カ月前に創業者の父を亡くして以来、経営が悪化している会社を救うため、アンナは究極の決断を迫られた。会社を存続させるには、ジェイコブに助けを求めるしかない…。彼はベンチャービジネスの世界で大成功を収め、総資産額が10億ドルを超える富豪となった投資家だ。かつてジェイコブはアンナの捧げた愛を冷酷にも拒絶し、彼女やその家族と完全に縁を切ってしまったのだった。アンナはマイアミの豪華ホテルで開かれた会議の場で、幸運にもジェイコブとの再会を6年ぶりに果たす。彼の別荘で二人きりの甘美な時間を過ごすことになるとは予想もせずに。『愛と裏切りの婚約指輪』で満を持して日本デビューを果たした北米編集部イチオシの筆力を持つ期待の作家の2作目は切なくて甘酸っぱい再会の物語。ジェイコブの別荘で甘く熱い時間を過ごしたアンナは予期せぬ妊娠に気づき…。
子どもができない親友夫婦のために、サラは代理母を引きうけた。ところがサラの妊娠中に親友が事故で亡くなると、その夫リースは我が子が生まれても高額の小切手を送るだけで会いに来なかった。お金があれば解決するとでも?彼の養育費なんていらないわ!しかしいくら必死に働いても、赤ん坊をかかえるサラの生活は苦しかった。そんなある日、リースが姿を現し、今後は一緒に暮らそうと申し出る。彼はサラを甘やかすようにすぐさま人を雇い、つらい日々を一変させた。ほっとすると同時に、彼女は不思議なときめきを覚えた。いいえ、リースは亡くなった親友の夫なのに、惹かれてどうするの?どんなに恋い焦がれても、いつか彼は娘を連れ去ってしまうのに…。今作のヒロインは、なんと友情と許されぬ恋の板挟みに。赤ん坊のために同居生活を続けるうち、ふたりは急速にお互いを意識するようになり、ついには一線を越えて…。
図書館司書のリリーは親友の強引な誘いを断れず、週末のダブルデートに出かけるはめに陥った。親友の恋人が持つコテージに赴いた彼女を待っていたのは、二度と会うことはないと思っていた大富豪、サンチャゴ・モライス!なんて意地悪な偶然なの…。リリーは我が運命を憂えた。ふたりは1年前にスペインで出会って、たちまち激しい恋に落ちたが、ある誤解をしたサンチャゴは怒りまかせに彼女を捨て去った。その後、失意のリリーに突きつけられたのは、妊娠という事実だった。しかも哀しいことに、お腹の子が元気に生まれてくることはなかった。すべてを胸に秘めたままで、この再会を乗りきれるかしら…?傲慢なスペイン大富豪と、耐え忍ぶ薄幸のシンデレラ、運命の再会物語!2006年に刊行された、最大級のハラハラドキドキが味わえる恋物語をリバイバル!
早くに親を亡くしたナターシャは、ギリシアの養父のもとで育った。今は養家を離れ、ひとりロンドンで家事代行業を営んでいる。ある日、養父の死後、海運事業を引き継いだ義兄たちから呼び出された。悪賢い目をした義兄たちは家業が倒産寸前だと説明したあと、1枚の紙をナターシャの前に置いて言った。「おまえがここにサインさえすれば、この家は守られる」ナターシャは文面を読んでショックを受けた。悪名高きプレイボーイ大富豪ーアレクサンドロス・マンドラキスと結婚しろですって?ひどいわ、ライバル会社の社長に私を売るだなんて!
床にはいつくばって銀行のオフィスを掃除していたサラは、不意に聞こえてきた男性の声に凍りついた。この声は…ラウル!間違いない。二人は5年前、海外のボランティア活動で知り合った。ラウルは帰国する際、永遠の約束を求めるサラに冷ややかに告げた。「ぼくの人生設計の中に、きみは存在しない」あれから彼は野望を次々と実現し、今や銀行のオーナーだという。一方、サラは清掃員となり、ぎりぎりの生活を送っていた。でも、どんなにみじめで逃げたくても、再会したからには言わなければ。ラウルとわたしには、4歳になるかわいい息子オリヴァーがいることを。
メアリーとリードは子供のころからの大親友。でも、メアリーはいつからか彼を男性として意識するようになっていた。21歳の誕生日を前にしたある日、メアリーはリードに頼みこんだ。“女としての歓びを教えて”と。突拍子もない依頼にリードは困り果てるが…(「プレゼントは愛」)。夏の恋は熱く、激しく、せつなくー人気作家が描く、珠玉の短篇5篇を収録!
サラは、親友夫婦の船舶旅行に同行していた。ある島に寄港した一行の船の隣に、豪華なクルーザーが停泊する。クルーザーの所有者は、ナポリ名門一族の完璧な貴公子らしい。興奮ぎみな親友の言葉を、サラは聞くともなく聞いていたが、夜のパーティに現れた男性を見て、言葉を失うしかなかった。グイード・バルベリー二度と会いたくなかった、かつての夫。身ごもっていた子を流産すると、彼の父から手切れ金を渡され、ぼろ屑同然に追い払われたのだから。泥棒猫とまで蔑まれて。身動きできないサラに、彼の怜悧な美貌が平然と微笑んでいた。
ブルーデンスが憧れのニコロスと結婚して、8年の月日が流れた。今でこそ彼は大企業の最高責任者として辣腕をふるう身だが、傾きかけた父親の会社を救うため、彼女と結婚しただけなのだ。しかも結婚式では酒をあおり、初夜の契りを頑なに拒絶したー思い出すだけで、胸を焼くような悲しみがこみ上げてくる。夫への未練を断ち切るため、ついに彼女は離婚を切り出していた。ところが予想外にもニコロスは、この結婚を本物にしたいと、君が望むなら、肉体関係を結んでもいいと言い出したのだ。彼の真意がつかめず、ブルーデンスの心は締めつけられるが…。
またもや弟が金目当ての女に引っかかったらしいー雨の中、グザヴィエは場末で働くリサを待ち伏せするが、濡れそぼる彼女の清らかな美しさに、思わず見惚れてしまう。ほどなくして、彼女をものにしたグザヴィエが、もしかしてリサは思っていたような女性ではなかったのかとほだされかけた矢先に、弟から電話が入ったのだ。リサが求婚されているのをもれ聞いたグザヴィエは、思わず、恫喝していた。一族の金を狙うこの売女め。僕は君の本性を暴くために近づいたと。
闇の果てを思わせる迷宮に、アンバーはいた。事故で脚を引きずるようになり、孤独と無力感に蝕まれていた。そんななか、知り合った会社社長ジョエルの申し出で、やはり脚の悪い、彼の幼い息子の面倒を見るために、半年間だけ、肉体関係のない契約結婚をすることになったのだ。アンバーは、ジョエルの類いまれなる美貌に目が眩んでしまう。だが、彼に惹かれれば惹かれるほど、自分の傷に引け目を感じる。そして心が痛むのだ。愛される資格がないとわかっているから。たとえキスをされても、それは同情にすぎないのだと。
騙されて、妹が背負わされた負債をブリーはいま、清算した。部屋を出ようとしたそのとき、聞き覚えのある声が響きわたる。「勝負をしないか。賭けるのは100万ドルと、君の体だ」ブリーはその場に凍りついた。声の主がウラジミールだったから。10年前にブリーを見捨てた、魂もくらむほど美しい大富豪。彼のせいで妹と二人、奈落の底の人生を歩むことになったのだ。ところが、運命の女神はウラジミールに微笑む。わななく唇を噛みしめるブリーに、彼は皮肉な笑みを浮かべた。「これで君は僕のものだ。僕が望むあいだ、ずっと」
天涯孤独のメリーは病院で働き、ひっそりと暮らしていた。ある日、メリーの輸血で救われた患者ジュールダンの熱心な誘いで、食事に出かけることになり、そこで上流階級の彼から、偽装結婚を申し込まれる。娘の親権のために、後腐れのない彼女を妻役に選んだだけーそうと知りながらも、生まれて初めて優しくされて、一回り以上も年上のジュールダンに次第に惹かれていくメリー。ところが、彼の元妻が再婚し、娘の親権が取れなくなってしまう。用済みになったメリーは、別離の予感に小さく震えた…。
勇者サスケー異世界に召喚された彼は、“熱制御”のスキルを使い魔王を倒し、異世界を平和に導いた。サスケは魔王討伐後、一度は現実世界に戻るが、なぜか再び召喚されてしまう。再召喚された理由が魔王の復活だとサスケは危惧するも、その兆候はなかった。ならば今度は「本当にやりたいことをやろう!」と決意。サスケが憧れていたのは、隠密行動で任務を遂行するダークヒーロー“暗殺者”になることだった。超有名なアサシンマスターが弟子を募集していることを知ったサスケは、試験会場に乗り込むが、元来、隠密行動が100%苦手な上に、勇者としての飛び抜けた能力が邪魔をして、全く思い通りにいかなくてー!?
一枚の百円紙幣が語り手となり、闇屋、陸軍大尉などを転々としながら見た欲と情の光景を綴る太宰治「貨幣」。会社の命令で闇食糧の調達に奔走し、その最中に逮捕された朝鮮人の悲惨な運命を描く鄭承博「裸の捕虜」。平凡な会社員が電車内での突発事から闇屋として生き抜くことに目覚める梅崎春生「蜆」-終戦時の日本人に不可欠だった違法空間・闇市。その異様な魅力を伝える名短篇11作を収録。
音楽家の父を探すため、アメリカの難関音楽学校を受験した脩。癖のある受験生や型破りな試験に対峙する中、会場で「アメリカ最初の実験」と謎のメッセージが残された殺人事件が発生。やがて第二、第三と全米へ連鎖していくその事件に巻き込まれた脩は、かつて父と仲間が音楽によって果たそうとした夢こそが事件に深く関わっていたと知る。気鋭の作家が描く全く新しい音楽小説、ここに誕生!
会津出身の父から「喧嘩は逃げるが、最上の勝ち」と教えられ、反発した鷹志は海軍の道を選び、妹の雪子は自由を求めて茨の道を歩んだー。海軍兵学校の固い友情も、つかの間の青春も、ささやかな夢も、苛烈な運命が引き裂いていく。戦争の大義を信じきれぬまま、海空の極限状況で、彼らは何を想って戦ったのか。いつの時代も変わらぬ若者たちの真情を、紺碧の果てに切々と描く感動の大作。
引き揚げられた木箱の夢想は千尋の底海の底蒼と闇の交わる蔀。…留学生時代、手に入れた古い絵はがき。消印は1938年、差出人の名はアンドレ・L。古ぼけた建物と四輪馬車を写す奇妙な写真の裏には、矩形に置かれた流麗な詩が書かれていた。いくつもの想像を掻き立てられ、私は再び彼地を訪れるが…。記憶と偶然が描き出す「詩人」の肖像。野間文芸賞受賞作。