2018年発売
「行為のスタイル」が「存在のスタイル」でもある世界をめざして。日本にいるサトコは職場での軋轢にもがき、イタリアを旅する里子はトリノという文学の磁場で模索する。二つの連作と屋根裏部屋の「私」の呟きが交錯する短篇集。
親戚にも家族にも疎まれながら死んでいった在日一世の父。遺品の中から出てきた古びたノートには、家族も知らなかった父の半生が記されていた。ノートから浮かび上がる父の真実の姿とは。そして子供たちに伝えたかったこととは?
私はアリシア。女装ホームレスとして四つ角に立っている。ソウル郊外に建設される、大規模マンションを巡り加熱する人々の欲望ー凶暴な母と年老いた父、そして沢山の食用犬と暮らす少年アリシアのたったひとりの戦い。数々の賞を総なめにする最前線の女性作家が強烈なイメージで描く怒りと敗北、無垢な祈りの物語。暴力の心臓を描く傑作!
麻薬や銃による犯罪を取り締まるマンハッタン・ノース特捜部、通称“ダ・フォース”。ニューヨーク市警3万8千人の中でも最もタフで最も優秀で最も悪辣な警官たちを率いるデニー・マローンは市民のヒーローであり、この街を統べる刑事の王だった。だが、ドミニカ人麻薬組織の手入れの際におこなったある行動をきっかけに、栄光を約束されたマローンの人生は、転落の道をたどりはじめる…。
ダ・フォースの中にネズミー裏切り者ーがいる。FBIが汚職警官を極秘裏に捜査するなか、1人の刑事が拳銃自殺を遂げた。仲間内に衝撃と疑心暗鬼が広がる一方、街場ではラテン系、黒人ギャング、マフィア新旧入り乱れる権力抗争が激化していた。複雑に絡み合う悪に追いつめられていく刑事マローン。やがて哀哭の街で男たちを待ち受ける血みどろの結末とは?圧倒的熱量を放つ渾身の警察小説。
40年前に消えた母を探し韓国へ来た男の物語は、それを書きつつある作者自身の記憶と次第に混じり合う…出生の秘密をめぐるミステリと私小説的メタフィクションを融合させた、著者晩年の問題作にして最大の実験長篇、遂に書籍化。
母さん、あの大仏をこわしてよ!母を失くした居場所なき少年は、この世の権威を憎んでいた。その象徴をこわしたとき、男たちがつくり上げた正史の余白から、いかなる物語が流れ出るのか。時空を超え、生死の境に降り立つ未踏の日本文学。
矢口弼は38歳、元税理士。離婚を経験して仕事にも疲れた矢口は、中学時代を過ごした雨森町にひとりきりで戻る。新しい住まいは、かつての同級生・小日向の営む喫茶店「レインフォレスト」の上階。外見は変わっても中身は子どものままに騒々しい小日向に矢口は面食らいながらも、少しずつ雨森町になじんでいく。そんなふたりにもたらされる恩師の死をめぐる謎。先生の死は事故なのか?あるいは、生徒からのいじめを苦にした自殺?23年前の真実を求めて、矢口と小日向は元クラスメイトを訪ねるがー。失くしたものも、ふたりでなら見つけられる。喪失を抱えた者たちの人生を全力で肯定する物語。
ゆとり世代ど真ん中の“もう一人の”天才!井上尚弥の感覚は、同世代のアスリート大谷翔平や羽生結弦にどこか似ていて、そして彼らにだって負けてない。尚弥の闘いは、強く、逞しく、美しい。父、弟、従兄弟とファミリーで腕を磨いた少年時代。史上初のアマチュア七冠を達成した高校時代。日本最短記録を塗り替え続けたプロデビュー以降。そして、怪物と呼ばれるボクサーが踏みだす道はー。
人口の三分の一が失われた地球で、感情を持たないがゆえ、突如ヒーローに選ばれてしまった少年。生きるために逃げていたはずなのに、戦い続けるうちに死に損なっていた。彼の名は空々空。この少年の名前を、どうか忘れないでほしい。
六尺超の大男、桜井新十郎は泣く子も黙る火付盗賊改の同心…から「結婚奉行」配下となった。持参金目的の婚姻を取り締まり、幕臣意識を正すための老中肝煎りの新職制。とはいえ、剣はイケても、男女の機微には不調法。賢妻きくと盟友高山の助けを借りて武家の婚活を支える。とある仇討ち絡みの一件で奉行所の不正を指摘した新十郎は、突如投獄されてしまうのだが…。
国道沿いのラブホテルのネオンだけが夜を照らす村を、自転車で爆走する高校生の田上。ある晩ラブホ帰りの同級生、野口と遭遇した。足が不自由な彼女は“復讐”のため、村中の男と寝るという。田上は協力を申し出るが…。出会い系、不倫、家庭崩壊、諦めながら見る将来の夢。地方に生まれた全ての人が、そこを出る理由も、出ない理由も持っている。光を探して必死にもがく、青春疾走群像劇。
夢みたいに流れる風景にみとれた私は、原付バイクごとあぜ道へ突っ込む。空と一緒に回転し、田んぼの泥に塗れた19歳だった私と、14年後の私がつかの間すれ違う。互いの裸を描き合った美術講師の房子や、映画監督の夢をかかえて消えた友の新之助、そして旅先で触れた様々な言葉。切れ切れの記憶を貫いて、ジミヘンのギターは私のそばで静かに発火する。寡黙な10代の無二の輝きを刻む物語。
東京湾岸で男の射殺体が発見された。蒲田署の刑事は事件を追い、捜査一課の同期刑事には内偵の密命が下るーー所轄より先に犯人を挙げよ。捜査線上に浮上する女医の不審死、中学教師の溺死、不可解な警官の名前。刑事の嗅覚が事件の死角に潜む犯人を探り当てたとき、物語は圧巻の結末になだれこむ。徹底したリアリティと重厚緊密な構成で警察小説の第一人者が放つ傑作長編。『犬の掟』改題書。
新首都郊外の難民地区で、若い女性の行方不明事件が多発している。総理直轄の特殊捜査班「R.E.D.」は、困窮した少女たちを餌食にする暴力団と巨大外資企業、さらには児童福祉行政が一体となった国際人身売買ネットワークの影を捉えた。巨悪の策謀を根刮ぎ殱滅すべく潜入捜査・一斉検挙を試みるが…。元警察キャリアのみが描ける圧倒的リアル。警察捜査サスペンス、緊迫の第二幕。
不登校になって早一年、14歳の工藤渉は暇を持て余し、軽い気持ちで小説を書き始める。物語を作るのは想像以上に難しく、だが驚くほど楽しかった。初めての小説『ルール・オブ・ルール』をネット上で公開すると、予想外の反響が。けれどその途端、渉の身辺で怪事が続く。脅迫メール、不審な電話、そして作中の場面に酷似した殺人未遂事件。現実と物語が交錯する高次元ミステリー!!
乗客の失踪が相次ぐ大西洋横断客船“海のスルタン”号。消えた妻子の行方を追うべく乗船した敏腕捜査官の前に現れる謎、謎、謎。錯綜する謎を解かないかぎり、ニューヨーク到着まで逃げ場はない。無数の謎をちりばめて、ドイツ屈指のベストセラー作家が驀進させる閉鎖空間サスペンス。
異世界で二十年間も禍々しい呪詛を受け続けていたサクと、そこから助け出した龍一が結婚!!呪縛を断ち切り花嫁を連れ帰った龍一を、兄として、次期当主の片割れとして祝福する恍一。けれどそれ以来、玉造家の周囲は俄かに騒然!!噂を聞きつけ探りを入れてくる他家の式神や魔のモノが、日々様々な出会いと災禍をもたらすのだ。そんな不安に駆られる恍一を支えるのは、恋人契約の取引をした本に巣食う悪魔・仰倉。最も油断ならないのに、最も信頼している相手に、最近は恋を自覚しているー。本が喋る声を聴く恍一と、異世界を自在に渡る龍一ー二人の兄弟が異能力を開花させ鮮やかに巣立つ、感動の最終巻!!