2019年2月7日発売
異変が始まったのは、三年ほど前のことだった。作家・姫野伸昌は妻・小雪の「死」を境に、酒浸りの生活を送っていた。突如身の周りで起き始めた不可思議な現象は、やがて自身の肉体にも及び始める。ある朝、右足のかかとが透明になっていたーそれからは次々と、身体のあちこちがプラスチック化し、脱落し始める。これはいったい何を意味するのか!?「作家として忌むべき安定」を選択した故の、あるいは小雪の「死」から酒に逃げたことへの痛烈な報復だろうか。そもそも、愛妻・小雪は何故亡くなってしまったのか。過去を探す壮大な旅に出た姫野は、自身の記憶とことごとく食い違う数々の証言に頭を抱える。何が事実なのだろうか。またそもそも、事実を事実たらしめているものとは一体何かー。
小説家の父、美しい母、そして瀬戸内寂聴をモデルに、“書くこと”と情愛によって貫かれた三人の“特別な関係”を長女である著者が描き切る、正真正銘の問題作。作家生活30周年記念作品。
巡査の滝と原田は、女学生美人くらべや競馬場での事件など厄介事の解決に日々奔走する。だがこの二人と仲間達の周りには時折何やら妖しい気配が漂い…。消えた村と仏像を巡る噂。ワクワクの謎とき物語に時折差し込む薄昏さにゾクリとさせられる連作小説集。「明治・妖モダン」シリーズ第2弾!
裂かれた腹部に手錠をねじ込まれた刑事の遺体。群れを嫌う捜査一課の一條は、新米の女刑事・福地と組むが、その新人らしからぬ鋭さに疑念を抱く。やがて、同様の手口による犯行が発生するに至り、一條は単独捜査を始めた。次第に浮かび上がる、被害者たちを繋ぐ糸とはー。
西の雄、マルーク王国を瞬く間に殱滅、占拠したアラクネア。これを率いる女王・グレビレアは、諸国殱滅のためシュトラウト公国に狙いを定める。自軍から精鋭を引き連れ、山路を経て港湾都市マリーンに侵入するグレビレアたち。彼女らは国の特徴、地形などをこと細かに探るため、意図的に「冒険者ギルド」に登録をする。女王陛下は、日々、グリフォンやマンティコアなどの強獣を倒しながら、シュトラウト公国の首を掻き切る爪を研ぐー。
タイロス迷宮の地下五十階層で伝説の魔物とまで呼ばれた死霊魔王と遭遇したパーティ“宵闇の剣”。迷宮道先案内人であるロウの機転もあって、激烈な闘いを制したが、パーティは離散してしまう。なんとかパーティからはぐれてしまったロウとベリィを救出した一行はようやく地上に帰還。ロウとユイカの関係も大きく前進するのだが…。
殺人犯を意味する収容番号末尾ゼロの「ゼロ番囚」たちは、拘置所二階の特別頑丈な独居房に収容されている。T大卒の楠本他家雄は、いつくるか分からない“お迎え”に常時怯えていた。ほかに女を崖から突き落とした砂田や一家四人を惨殺した大田なども同様に死者の部屋で怯え暮らしている。他家雄の奇妙な墜落感を丹念に診る若い医官で精神科医の近木のあまりに生々しい接見記録と、生と死の極限で苦悩する死刑確定囚たちの拘禁ノイローゼの実態や日々の会話を克明に描いた、類のない傑作。第11回日本文学大賞受賞作で全三巻。「死刑の意味」を現代に改めて問う“死刑囚たちの赤裸々な実態”。
楠本他家雄は良家に生まれ頭脳明晰でT大を卒業したにも拘わらず、無為放蕩な生活をくり返し、新橋にある「トロイメライ」というバーで証券会社の外交員を絞殺する。強盗殺人罪で逮捕され、一審の死刑判決を控訴せず刑は確定。だが他家雄は拘置所に入ってからカトリックに回心し、彼の手記に心を動かされた心理学専攻の女子学生・玉置恵津子と文通を始める。死刑囚として淡々と暮らす折り、連続女性暴行殺人犯の砂田市松の死刑が執行される。じわじわと迫り来る死を待つ恐怖におののく青年の魂の懊悩を描く、全三巻の中巻。死刑執行におののく青年の“苦悩する魂”を克明に描いた傑作。
楠本他家雄が入獄して十六年目、ついに“お迎え”の日がやってくる。拘置所の若い医官で精神科医・近木は、刑執行現場への同行許諾を得る。その日の朝、心のなかに喜びが立ち昇るのを感じた他家雄は、一年間文通を続けた女子学生・玉置恵津子に最後の手紙を書く。「きみのおかげでぼくの死は豊かになりました。ありがとう。そして、さようなら」。精神科医として東京拘置所医務部技官を務めた筆者にしか描けない、青年死刑囚の衝撃的な死刑執行現場の全行程。全三巻完結編。復刊にあたり、著者による新たなあとがきを収録。入獄十六年目ー死刑執行の朝を迎えたいち青年の魂の叫びと軌跡。
坂本龍馬とともに暗殺された男、中岡慎太郎。彼はいったい何者だったのか。土佐藩の山間の小さな村の庄屋の家に生まれた光次(のちの慎太郎)は、やがて志士活動に身を投じ、幕末という時代を駆け抜けてゆく。地味で地道でいごっそう(頑固者)。真面目と理屈っぽさが取り柄の男は、魑魅魍魎うずまく幕末の世で何をなすことができたのか?龍馬がもっとも頼りにした男の波瀾万丈の一代記。
地球上、もっとも珍妙で愉快な生き物、それは男。ハドリアヌス帝、プリニウス、ゲバラにノッポさんに山下達郎さん。古今東西の男を見れば真の「男らしさ」が見えてくる?世界的、はたまた極私的目線で観察し倒す新男性論。
いぶし銀の働きでお夏を支える料理人の清次が、哀しき母子との交流を人知れず深めていた。女の亭主は理由あって旅に出ているのだという。やがて旅帰りした亭主と対面した清次は、その男に好感を抱く。だが彼の眼差しには、修羅場を潜った者特有の鋭さが含まれていた。男の過去に一体何が?脛に傷持つ者は幸せになれないのか?感涙の第九弾。
ロンドンで美術教師をしているミス・シートンは、名付け親が遺してくれた田舎のコテージでの休暇を楽しみにしていた。いよいよ出発という日の前の晩、女性に手を上げている男を見かけ、持っていた傘でみごとに撃退。ちらりと見えた男の似顔絵を描いて警察の捜査に協力した。この事件に新聞記者は、勇敢なヒロイン誕生と大喜び!「戦うこうもり傘」と名づけて大々的に記事にした。おかげでミス・シートンは初めて訪れた村でも有名人に。歓迎の品が玄関先に溢れたり、あれこれと噂が飛び交ったり、助けてほしいという少年が訪れたり、さらには逃走中の犯人がミス・シートンを狙ってこの村にやってきて…!?傘が導くミステリ。
18世紀末のイングランド。世界中を周遊し、冒険譚を次々に出版している貴族アラリック・ワイルドが5年ぶりに帰国した。著作や彼を主人公にした芝居は大流行し、出迎えのために貴婦人たちが波止場にひしめき合うほど、彼はいまや女性の憧れのまとだった。兄の婚約披露のために開かれたパーティーでアラリックは、社交界にデビューしたばかりの愛らしい淑女ウィラと出会う。聡明で心やさしく、それでいて自分を表に出さない彼女にミステリアスな魅力を感じて夢中になるが、ウィラのほうは及び腰だ。彼女は奔放な両親のせいで悲しい思いをしてきたため、平穏な生活を望んでおり、華やかなアラリックに警戒の気持ちを抱いていて…ヒストリカルロマンスのトップ作家が描く注目の新シリーズ“ワイルド家”第一弾!
発見された死体と書き換えられた遺言書。遺された財産を巡る人間模様。シャーロック・ホームズのライヴァルで、法医学者にして名探偵のソーンダイク博士が、科学的知識を駆使し事件の解決に挑む!