2019年4月17日発売
甲高い少女の叫び声、ネズミ花火の炸裂音、空襲警報、戦争が終わったあとの、静穏と澄明ー。耳底に刻まれた“音”の記憶をたよりに、人生の来し方を一人称“私”ぬきの文体で描く自伝的長篇『耳の物語』二部作の前篇。幼少年期から大学を卒業するまで、闇のなかでふるえながら眠る蛹のような記憶を、隠喩に満ちた彫心鏤骨の文章でたどる。
「名前のないモノ」ばかり作る大工、「世界でもっとも偉大な詩」を書いている詩人、父親が違う七人の子どもを生んだおっ母さん──少年の眼を通して語られる、「ミゲル・ストリート」で生まれた十七の人生の物語は、みな風変わりで、そしてちょっと切ない。ノーベル賞作家ナイポールの実質上の処女作にして、必読の一作。 1 ボガート 2 名前のないモノ 3 ジョージとピンクの家 4 彼の天職 5 マン・マン 6 B・ワーズワース 7 腰抜け 8 花火技術者(パイロテクニシスト) 9 タイタス・ホイット,教養学士 10 母性本能 11 青いゴミ収集カート 12 ラブ,ラブ,ラブ,アローン 13 機械いじりの天才 14 念には念を 15 兵隊がやって来るまで 16 ハット 17 僕がミゲル・ストリートを去ったいきさつ 訳者あとがき
昭和10年代の東京を舞台にして、ヒロインの起伏にとんだ日々を描いた『浮沈』、浅草の若い女性が逞しく生きる姿を活写した『踊子』。「蟲の声」「冬の夜がたり」「枯葉の記」は、散文詩の如き小品。戦時下に執筆され、終戦直後に発表、文豪の復活を告げた。時代をするどく批判した文学者・荷風による抵抗の文学。
”斧乃木余接とも、思えば長い付き合いになった” 老倉育に児童虐待の専門家に仕立て上げられた阿良々木暦は、家住准教授から相談を持ち掛けられる。 我が子を檻に入れたまま三日も家に帰っていないという。わけあって斧乃木余接と現場に急行した彼が、そこで見たものは。 これぞ現代の怪異! 怪異! 怪異! 【収録作】よつぎバディ/よつぎシャドウ
これからお届けするのは、「お天気」をテーマにしたショートストーリーです。「虹」「おひさま」「雨」「風」「雪」「季節」…。お天気にまつわる「ことわざ」や「賢人の名言」などを軸にして、「レインボー銀座」の居酒屋「てるてる坊主」を舞台に「ハートウォーミング」な物語が、次々と巻き起こります。誰にも心の中に「雨が降る」ことがあります。辛いとき、哀しいとき、せつない時…本書で「元気」を出して心をパーッと青空にしていただけたらと願います。心を晴らす「いい話」6編。
探偵社を辞めて数カ月後、ノラはデトロイトの夜の街にいた。30年前に拳銃自殺した父の死への疑念ー死の数年前、海兵隊員として赴いたレバノンでいったい何が起きたのか?封印された過去が明らかになるにつれ、ノラは何者かに執拗に命を狙われはじめる。一方、ノラの知人で元刑事の探偵ブラズーカは新種の合成麻薬の供給ルートを探るうち、ある組織とノラとの思わぬ接点に気づき…。
パリ郊外の断裁工場で働くギレンは、大好きな本を“死”へと追いやる毎日にジレンマを抱えていた。生き延びたページを持ち帰っては翌朝の通勤電車で朗読して“往生”させるのが日課。心の拠り所は飼っている金魚だ。そんなある朝、ギレンはいつもの電車で、持ち主不明の日記を拾う。その日から彼の憂鬱な日々は少しずつ変わり始めー人生の悲哀と葛藤、希望を描いた、フランス発ベストセラー。
「お仕置きだ。たくさん、僕の子種を呑め……!」 気高く美しい王子様が、こんなに淫らだなんて聞いてない!? 『シンデレラ』『白雪姫』から『羽衣伝説』まで、 古今東西の童話、説話がモチーフとなった ティアラ流エロティックメルヘン! 愛されヒロインは溺れるほどの快感に蕩けてーー とびきり淫らで扇情的な、背徳の官能童話アンソロジー!
芳流閣の屋上から墜落した犬塚信乃と犬飼見八は、江戸湾をのぞむ行徳村に流れ着いた。そこで力自慢の大男、犬田小文吾との運命的な出会いが待っていた。信乃は孝、見八は信、小文吾は悌の珠をもち、いずれも牡丹の痣がある。三人は義兄弟の契りを交わす。罪人として追われる信乃を、我が家に匿う小文吾のもとに、相撲に負けた恨みを抱く山林房八が押し掛けてきた。窮地に立たされる小文吾。しかし、信乃を逃がすための、思いがけない秘策があった! 犬士たちの活躍と、その陰に隠された、犬士になれなかった者たちの思いが描かれる。 江戸時代に生まれた歴史エンターテイメントを、小説化したシリーズ第2弾。