2019年5月23日発売
ツアーコンダクターとして15年間、国内外を旅してきた常磐万智は、義母の介護のため退職。旅先で料理について学んだ経験を生かし、義母の死去後、自宅で料理教室を営むことに。珍しい郷土料理を扱う教室には、亡き妻を偲び、あるいは両親のため、老若男女の生徒たちが通ってくる。そして万智の家庭にもある事情が。
金毛九尾の狐の物語「殺生石伝説」を下敷きにした、綺堂の長篇伝奇小説。平安朝、妖狐に憑かれ国を惑わす美女になった娘と幼なじみの若き陰陽師の悲恋を軸に、権力闘争にあけくれる殿上人や怪僧らが暗躍する。附録として短篇「狐武者」を収載。装画と口絵は山本タカトによる描き下ろし。本文には井川洗〓(がい)による挿絵を再掲。
ここは、「この世」の境が溶け出す場所ーお針子の齣江が、皮肉屋の老婆トメさん、魚屋の少年・浩三らと肩寄せ合う長屋では、押し入れの奥に遊女が現れ、正体不明の「雨降らし」が鈴を鳴らす。秘密を抱えた路地を舞台に繰り広げられる、追憶とはじまりの物語。巻末に堀江敏幸氏と著者の対談を収録。
極限の貧困の中、シベリアに売られた青年・南雲凱は帰国後、新格闘技団体に入門。自身の強靱さを武器に一攫千金を夢みる。一方、裕福な家庭に育ち空手道場に通う大学生・麻生英治郎は、流派への漠とした違和感の中、フルコンタクト空手師範の黒沢と出会うー対照的な二人の目指す先には何が待ち受けるのか。そして、「真の強さ」とは!?
格闘技大会で勝ち続け不敗神話を作り上げる凱だが、満たされない虚しさに豪遊を繰り返す。一方「輝英塾」を立ち上げた英治郎は、弟子たちの活躍によりマスコミに「常勝軍団の総帥」と祭り上げられ、理想とは正反対の現実に苦悩する。そして、頂点を極める凱と対決し、その事態に終止符を打つことを決断する。両者激突、感動の結末!
どの被害者も顔を“壊された”状態で発見される、多摩連続殺人事件。事件を捜査する夢川時勇はある朝、自分の身体に妙な傷と痣があるのに気づく。そして殴殺魔による新たな被害者がー。「あいつがやったのか?」実は時勇は、深夜数時間だけ別人格に入れ替わるのだ。犯人は“ハイド”と名付けたこの人格なのか。その目的とは?
その執念深さで捜査一課の名物刑事と謳われた奥田が、退職直後に木曽路で失踪した。さらに実在しない奥田の娘から捜索依頼の手紙が、十津川警部のもとに届く。奥田の妻も入院先の病院で不審な焼死を遂げ、事件は混迷を深める。木曽路に向かった十津川・亀井コンビを待ち受けていたものは…!?
大力の青年・坂田公時は武士になるため都へ上る。初めて知る身分の境に戸惑う彼は、ある日「鬼」の噂を耳にする。一方、神の棲まう山・大江山では食糧たる獣たちが姿を消す。里の長である朱天は仲間たちのため、盗みを働く決断を下す。公時と朱天、都と山、人と鬼ー二つの魂が交錯する時、歴史を揺るがす戦が巻き起こる!
二番めに襲ってきたエレメントの十戒は、寄生した者を怒りと攻撃欲の虜にしてしまう戦争エレメントだった。タウレクが発見した手段により絶滅できたかに見えたのだが、一体だけ生きのこった戦争エレメントが分裂増殖したせいで銀河イーストサイドの惑星カルルジョンに住むブルー族は全員、とりつかれてしまう。そこへ、十戒の司令官と呼ぶべき“指揮エレメント”がやってきた。またの名を夢見者カッツェンカットという!
無辺の空間に茫漠とひろがるカニ星雲ーその外縁部で銀色に輝く地球の宇宙船が遭遇した漆黒の異星船は、敵か味方か?SF界の重鎮によるもっとも有名なファースト・コンタクト・テーマの決定版「最初の接触」をはじめ、『呪われた村』のジョン・ウインダムの「生存者」、奇才P・J・ファーマーの「キャプテンの娘」など、名翻訳家伊藤典夫が惚れこみ翻訳した宇宙SFの中から、SF評論の第一人者高橋良平が7篇を厳選。
不治の病を宣告された母ー母はわたしを見守り、残された時間をともに過ごすためにある選択をする。それはとてつもなく残酷で、愛に満ちた決断だった…。母と娘のかけがえのない絆を描いた美しくも切ない表題作、肉体を捨てて意識をアップロードした家族を見送った人々を描く「残されし者」など、『紙の動物園』で読書界の話題を集めた作家が贈る、第二短篇集である単行本版『母の記憶に』から9篇を収録した傑作集。
マンハッタンで発生した立てこもり事件は人質救出で解決したかに見えた。だが上層部にその後の捜査を阻まれたNY市警のブラウンは、逆に事件を追う決意をする。一方、NYに潜伏中の探偵・濱崎は、人質が旧知のヤクザの情婦だったことから裏があると睨み…人種や立場を越えて互いの正義を信じるブラウンと濱崎ーかつて東京でタッグを組んだ水と油の名バディが復活する!相棒ハードボイルド『over the edge』続篇。
元書店員の啓は、ある事件がきっかけで“本が読めなくなってしまう”。が、入院した伯父の代わりに、彼が営む書店の店長をすることに。その初日、店内の座敷童子人形がいきなり動き、あれこれ書店繁盛の教育的指導をしてきた!啓はワラシとぶつかりつつ、子どもへの贈物ですれちがう夫婦の悩みや、何年も取り置きされたままの“赤毛のアン”の謎など、お客様の問題を解決し…出逢いとドラマが山積みのマチナカ書店物語。
1996年2月、ストックホルム。シンクタンクで働くマックスは、音信不通になった恋人パシーの身を案じていた。彼はパシーの住むサンクトペテルブルクへ飛び、そこで、彼女がロシアで急成長している携帯電話会社の技術について情報収集をしていたことを知る。この企業とパシーの失踪には何かかかわりがあるのか?ソ連崩壊直後のロシアと第二次世界大戦末期のスウェーデンを舞台に繰りひろげられるサスペンス長篇、開幕!
失踪した恋人のパシーを捜しに、サンクトペテルブルクへ飛んだマックス。わずかな手がかりを頼りに彼女の足跡を追ううち、とある人物の影に気付く。巨万の富と権力を用いてロシア裏社会で暗躍するこの男は、ソ連の復活を目論んでいた!この男がパシーを捕らえているのか?彼女は無事なのか?さらに彼はマックス自身の出自にまつわる謎を解く鍵も握っていた…二つの都市と時代を繋ぐ一気読み必至のサスペンス大作。
1922年、モスクワ。革命政府に無期限の軟禁刑を下されたロストフ伯爵。高級ホテルのスイートに住んでいたが、これからはその屋根裏で暮らさねばならない。ホテルを一歩出れば銃殺刑が待っている。そんな不遇を乗り切るために彼が選んだのは、紳士の流儀を貫くこと。人をもてなし、身のまわりを整え、人生を投げ出さない。やがて彼は宿泊客や従業員たちと友情を深めるが…。いまも世界中の名士から愛されるホテル、メトロポールを舞台に上流社会のドラマを描く、陶酔と哀愁に満ちた長篇小説。全米で140万部突破、“ワシントン・ポスト”など8紙誌の年間ベストブックに選出。
それは、世界各地に出現した。それは、全ての動植物を喰らった。それは、地球人類の絶望となった。日本では対馬に現れた、それーIAS。陸上自衛隊による奪還作戦は失敗し、多くの自衛官と住民が殺戮される…。空前の脅威に為す術もない日本政府は、同島の完全封鎖を決定するがー。地球の未来を指し示す、人類生存の黙示録。