2019年5月発売
異世界アースフィアに召喚され、聖剣を託された勇者・明彦。一見、平和で清浄に見えるこの世界は、途方もない悪意も内包したうえで、絶妙なバランスで成り立っている世界であった。人の不幸を見て見ぬふりのできない性格の明彦は、この世界の住人にとって余計なお世話と知りつつも、恒久的な平和を築くためアクションを起こす。まずは政情不安定なカドニア王国からと思い立つも、それは想像を遙かに超える困難な道のりであることを悟る。彼と超科学技術は、窮状に陥ったカドニアの民を救えるかー!?
迷宮で得られるアイテムを求めて多くの探索者が迷宮に潜り、そのうちの3割から4割は潜ったまま帰ってこなくなる。主人公のケンはそんな世界に流れついて5年。彼は安全マージンを十分とって慎重に慎重を重ねる独自の探索スタイルを確立し、堅実な探索者生活を送っていた。そんなある日、貴重なアイテムが入った宝箱を発見!それをきっかけに、ケンの探索者生活に変化が生まれ始める。彼は宝をどう利用するのかー!?
「白く塗りたる墓」は、1960年代の高度成長期における公害汚染や原子力発電所の安全などの社会問題をベースに、報道機関の公器性や良心を問うた意欲作。TVカメラが持つ同時性から一躍報道の花形産業となったTV報道の視座をフィルターにして、目の前の現実と報道との溝に苦悩するテレビマンの狂気と孤独もドラマティックに描いている。もう一作は、ニヒリストの医者の堕落と病院に関わる人間の業を描いた「もう一つの絆」。共に第一部までの未完作であるが、著者の新境地ともいえる作品で、現代に連なる荒廃を予見している秀作である。
噴煙吹き上げる春まだ浅い三原山に、女子大生がふたり登っていった。だが、その後、夜更けに下山してきたのは、なぜかひとりだけー。遡ること一ヶ月前、同様の光景があり、ひとり下山した女子大生は同一人物だった。自殺願望の若い女性ふたりに、三原山まで同行して、底知れぬ火口に向かって投身させた自殺幇助者の京大生・鳥居哲代。生きていることに倦んだ高学歴の女学生たちの心理を精緻に描き、自殺者と自殺幇助者になっていく軌跡をミステリー風に仕立てた悽絶な魂のドラマ。高橋たか子の初期長編代表作で第4回泉鏡花賞を受賞。
源頼朝、足利尊氏、明智光秀、大塩平八郎、土方歳三…命を懸けた果てなき争いの先に待ち受けていた光景とは?千年近くの永きに亘り、この国を支配し続けてきた武士。しかしてその真の主役とは、勝者・敗者問わず、あらゆる猛き者をなぎ倒し、咆哮する魂を飲み込んでひたすらに驀進し続けた“歴史”そのものであった。いま、若き勢いそのままに練達の境地へと飛躍する著者が、その血塗られた戦いの系譜を、一巻の書物の中に極限まで描き切った。本書は、一篇の娯楽的歴史小説を、この国の叙事詩へ昇華させることに成功した、圧巻の物語である。さあ、覚悟して本書を繙かれよ。そして、その歴史の“声”に耳を傾けよー。
山内の朝廷の実権を掌握した若宮。彼に仕える雪哉は、全軍の参謀役となった。ある日、大地震で開かれた禁門の扉の向こうに「人喰い大猿」が現れ、ついに猿と八咫烏の最終決戦が始まる。若宮は記憶と名前を取り戻し、真の金烏となれるのか。山内の命運はー?八咫烏シリーズ第一部、堂々の完結。巻末に夢枕獏氏との対談収録。
結婚して三年ほどの三十歳の主婦、初美。編集者の夫とは仲が良く、優しい彼に不満はないが、夜の営みが間遠に。欲求不満で同級生の男と浮気をしそうになったり、義弟に妄想、浪人生を誘惑、果ては乳房を触診する女医にまで発情する始末。夫婦はエロさから遠ざかる?幸せとセックスレスの両立は難しい?
スーパーでアルバイトをしながらいつかのスポットライトを夢見る売れないバンドマン。恋をした相手はピンサロ嬢。どうでもいいセックスや些細な暴力。逆走の果てに見つけたものはー。人気ロックバンド「クリープハイプ」のフロントマン尾崎世界観、渾身の初小説。書下ろしスピンオフ短篇「字慰」収録!
標高8000メートル峰が屹立するヒマラヤで、“魔の山”と畏怖されるナンガ・パルバット。立原祐二は、前人未到の冬季登頂に失敗、友人の倉本を失った。5年後、立原は、兄の雪辱に燃える倉本晴彦と共に、再び“魔の山”と対峙する。ロシアのパーティの不穏な動き、牙を剥く過酷な天候…。頂に立つのは誰か。
美しい利尻富士で、一人の会社員が不審死した。警察庁刑事局長の兄・陽一郎から内々に調査を頼まれた浅見光彦は利尻島を訪れ、ある女性から託されたメッセージを足がかりに調査を進めるがー。兄弟の思いは、“国”を動かすことができるのか。「日本人の覚悟」に迫る浅見の姿が熱い!内田康夫の代表作、渾身のミステリー!
武田の遺臣として、数多の主家を渡り歩いた御宿勘兵衛。武田家滅亡から、大坂の陣までー仕えた家が次々と滅びることから、「厄神」と忌み嫌われた男と、彼に関わった度し難い男たち。時代に迎合することなく、己の夢と覚悟を貫いた依田信蕃や久世但馬守など、気鋭の著者が描く、くせものたちの物語。
高校進学を諦め、舞妓になった彩葉、漁師の生き方に憧れる留子、ヤンキー仲間に一目おかれるマリエ、家業の神職を継ぎたい千夏、売れないご当地アイドルみゆき。次から次へと押し寄せる人生の選択肢に彼女たちが選んだ道とはー。まぶしくてちょっと甘酸っぱい5人の少女が紡ぎだす地方発青春エンタテインメント。
女子高生の唐坂和葉は17歳。隣のクラスの沢くんへの告白の返事は「まあいいよ」。いつもヘッドフォンをつけていて「ハブられている」クラスメイトの初岡と、沢の会話を聞きながら、いろいろ考える。いじめのこと、恋愛のこと、家族のこと。十代のめまぐるしく変化する日常と感情と思考を、圧倒的な文体で語る新感覚の小説。
夏を迎えた江戸深川。浪人、坂崎磐音の用心棒稼業は相も変わらぬ貧乏暇なし。同じ長屋に住む婀娜っぽい女を行き掛かりで助けたことで、思わぬ“女難”を招き、一騒動に。そんな折、今津屋の内儀お艶が倒れた。病気平癒を祈るため、相州・雨降山大山寺詣でに発った今津屋一行を襲う不逞の輩。危機に相対し、磐音の剣が唸る!
おこんの慰労をという今津屋の心遣いで海晏寺まで紅葉狩りに出かけた磐音たち。美しい景色に心を奪われたその席で狼藉を働く直参旗本たちに出くわす。おこんに目をつけた旗本たちは、江戸市中に戻った後にも、難癖をつけてくる。後日、狐火見物に出かけた折にも、おこんの身に危険が迫り…。磐音の豪剣と知恵が冴えわたる!
「ねえ、お願い…羊の絵を描いて」不時着した砂漠で私に声をかけてきたのは、別の星からやってきた王子さまだった。王子さまとやりとりを重ねるうちに、私の胸に去来したものとはー。作家・倉橋由美子による誉れ高い名訳が、美しい装丁と共に甦る。1943年の刊行以来、世界中を魅了し続けている名作。
町じゅうが楽しみにしているクリスマス劇の上演まであとわずか。町の素人役者たちもドキドキしながら稽古を重ねていた。主役に抜擢されたのは、町一番の気むずかし屋と言われるアラン。その日はリハーサルにもかかわらず、舞台上に倒れこむ迫真の演技で会場を沸かせていた。でも、何かがおかしい。台本では幽霊役が立ち去ったあと、彼は起き上がるはずなのに…。裏方として舞台袖に控えていたスザンヌは異常事態に気づき、あわてて駆け寄ったものの時すでに遅し。アランは腹部を刺され、息絶えていた。舞台上で堂々と主役の命を奪うという、大胆不敵な犯行に劇場内は騒然。そればかりか、事件の目撃者たちは口々に「幽霊による犯行」と保安官に言い募り…!?
姉が駆け落ちしたせいで、社交シーズン中に誰からもダンスを申し込まれなかった資産家の令嬢クララに、不気味な年配の貴族が屈辱的な物言いで求婚してきた。彼女は拒絶したものの、家の名誉を取り戻したい父が縁談を決めてしまう。家出する決意をしたクララは、メイドの手助けでアシュワース伯爵の屋敷にしばらく隠れることになった。身の上を秘密にして、メイドとなって働くのだ。家出の道中、馬車に轢かれそうになって転んだ彼女を、美しい男性が助けてくれた。そして伯爵邸に到着すると、そこにいたのは先程の男性。彼こそがアシュワース家の当主になったばかりのウィリアムだ。一方、ウィリアムは新しいメイドが気になって仕方がない。女性にうつつを抜かしている場合ではないと悩むのだが…