2019年6月発売
水色桔梗の幟が早暁の京の町を埋め尽くす。「信長殿の御首、頂戴仕る!」光秀の凛とした声が、本能寺の中へ吸い込まれた。天は自分に味方する。これを逃せば二度と機会はない。この決意が、時代を大きく動かした。-明智城の陥落から二十数年、信長のもとで異例の出世を果たし、一介の牢人から三十四万石の城主にまで上り詰めた明智光秀。天下万民の幸福を心から願い続けた孤高の智将の生涯を描く。
校舎屋上で水野が見つけたのは、巨大な“水たまり”と、そこで泳ぐ美少女・水原。彼女曰く、水たまりに潜りながら強く願うことー「パドル」により、世界を一つだけ変えられると言う。パドルの秘密、水原との距離、水原が「パドル」をする理由とは。切なさに満ちた青春小説!第六回ポプラ社小説新人賞受賞作!
会社を辞めてシナリオ作家を目指す小倉直丈は、新人賞に応募し続けるが落選ばかり。そんな折、プロ野球選手として活躍する小学校時代の級友から、奇妙な仕事を頼まれる。蟹座のB型、おなじ星のもとに生まれながら圧倒的な差がついてしまった同級生の「頼みごと」、それはある身近な人物の「尾行」だったーー。20年ぶりに再会した級友が、それぞれの場所でもがきながら新たな希望を見出していく、胸がいっぱいになる青春小説!
浜名湖の湖岸にあるビルが炎上し、男の焼死体が発見された。男の名は藤田武。戦争前に、武の祖父徳之助は「フジタ浜名湖地震津波研究所」をつくり、父の健太郎とともに研究をしていた。太平洋戦争の敗色濃い戦時下、一九四四年十二月七日に、大地震が東海地方を襲った。昭和東南海地震である。これが次の大地震を誘発すると警告する藤田親子。そして、翌年一月十三日には三河地震が起こった。しかし徳之助は鉱山に、健太郎は沖縄戦線に送られ、その後徳之助は行方不明に。それを命令したのが、川崎憲兵隊長だったー。親子三代にわたる怨念が戦争の闇を暴く。
さる由縁で旅に出た伊坂八郎兵衛は、京の都で命尽きかけていた。「南町の虎」と恐れられた元隠密廻り同心も、さすがに空腹と風雪には耐え切れず、ついに破れ寺を頼り、草鞋を脱いだ。冷えた粗菜にありついたまではよかったが、胡散臭い住職に恩を着せられ、盗まれた本尊を奪い返さねばならぬ羽目に。自棄になって島原の廓に繰り出すと、なんと江戸で別れた許嫁と瓜二つの、葛葉なる端女郎が。一夜の情を交わした翌朝、盗人どもを両断すべく、一条戻橋へ向かった八郎兵衛を待ち受けていたのは…。立身流の秘剣・豪撃が悪党を乱れ斬る、剣豪放浪記第一弾!
突きの鬼一こと百目鬼一郎太と供侍・神酒藍蔵の江戸暮らしは風雲急を告げていた。実母桜香院とその腹心の国家老・黒岩監物が放った羽摺り四天王の生き残りが虎視眈々と一郎太の命を狙っている。そんな最中、草創名主・槐屋徳兵衛の一人娘・志乃の幼馴染みで、女郎屋から逃げ出してきたお竹が助けを求めてくる。さらに旗本屋敷の賭場帰り、一郎太の乗った船に武家娘が悲鳴を上げて飛び込んできた。じりじりと包囲網を狭めてくる羽摺りの者との激闘!秘剣滝止が快刀乱麻を断つと思われたのだが…。大好評!突きの鬼一2ケ月連続刊行、シリーズ第4弾。
話題のアニメーション映画ノベライズ! サーフィンが大好きな大学生・向水ひな子は、マンションで起きた火事の消火に来ていた消防士の雛罌粟港と出会い、恋に落ちる。幸せな日々を過ごす二人だったが、あるとき港が海の事故に巻き込まれ、命を落としてしまう。大好きな海を見られなくなるほど憔悴するひな子が、ある日ふと二人の思い出の歌を口ずさむと、なんと水の中に港の姿が……。 世界が注目するアニメーション監督・湯浅政明による待望のオリジナル最新映画「きみと、波にのれたら」(2019年6月公開)をノベライズ! 巻頭カラー全16ページで、映画の見所となるシーンとその原画も掲載。小説でしか読めないオリジナルエピソードも楽しめる、贅沢な1冊になっています。 ひな子と港の世界を、小説版文庫「きみなみ」でも、とことんお楽しみください。
私のご先祖様・静助は、江戸から遠くない村で大地主の次男坊として生まれた。静助が幼少の頃、世が一変する明治維新を迎えたが、何不自由のない暮らしを送っていた。ある日、静助は両国の隅田川で打ち上げ花火を見物し、一目で心奪われる。より鮮やかな花火を上げるため、花火屋達は競い合っているという。村に戻ってからも花火への情熱が消えない静助は、潤沢な資金を元に職人を雇い、花火作りに夢中になるが、富国強兵へ向かう時の流れが、静助一族を飲み込んでいくー。一族誰もが語り継ぐ、花火に生きたご先祖様に思いを馳せるファミリーヒストリー。
変わり者の姫の結婚相手は隣国の国王で!? この世には〈蠱毒(こどく)〉というものがある。壺に百の毒蟲(どくむし)を入れて互いに殺し合わせ、最後に生き残った一匹が猛毒を持つ〈蠱〉となるのだ。それを古来〈蠱術〉といい、操る術者を〈蠱師〉という。 大陸でもっとも強大な斎帝国の第十七皇女・李玲琳は、気味の悪い蟲(むし)と、その蟲から生成される蠱毒をこよなく愛し、周囲からひそかに「毒の姫」とあだ名される風変わりな姫だ。ある日、最愛の姉である斎国の女帝・彩蘭の指示で魁国の王・楊鍠牙のもとへ嫁ぐ。ところが、結婚生活は前途多難。 まず、せっかく大国から迎えた若く美しい花嫁が、華やかな衣裳やきらめく宝石よりも蟲が大好きで蠱毒をつくりまくる蠱師だと判明してしまい、魁国の者たちはドン引き。鍠牙の命が何者かに狙われているーーという噂が立つと、毒殺犯の容疑をかけられた玲琳の立場はますます危ういものになって……。 運命は自分で切り開く。最強毒姫の冒険! 【編集担当からのおすすめ情報】 カバーイラスト:碧風羽
それは迷信だ!--明治あやかし事件解明録 明治時代、大阪。会社が倒産して失業し、手持ちの金も尽きて町をさまよっていた峯北修は、小さなビルの扉に掲げられた「妖怪科學研究所」の看板と所員募集の貼り紙を見つける。怪しげな名だが採用してくれるならありがたい。扉を開いた修は、大量の本の間で不機嫌そうに座る男ーー所長の八尋に対面する。八尋によるとこの研究所は、不可思議な事件を科学的に説明することで依頼人の問題を解決するらしい。迷信嫌いの修は八尋に共感、ここで働くことを決める。 八尋の友人で小説家の飯窪恭之介とも出会い、研究所に馴染んできた頃、修は一人の青年の相談を受ける。青年の父が村長を務める村で、立て続けに人が行方不明になるが、村人たちは妖怪「ゆらさま」の仕業だとして行方不明者を捜そうとしないらしい。八尋と修、なぜか同行することになった飯窪の三人は、「ゆらさま」の事件の真相を探るため、村へと向かうが……。 「妖怪など迷信だ!」と断じる所長の八尋。迷信を憎む修。妖怪の小説を執筆する飯窪。欧化の波に逆らうように、いまだ人々の心を恐怖させる「妖怪」の正体とはーー? 大人気BL作家が初めて挑む、明治あやかし事件解明録! 【編集担当からのおすすめ情報】 カバーイラスト:松尾マアタ
パリ警視庁警視のコルソは、ストリッパー連続殺人事件の捜査を進めていた。猟奇的で陰惨な事件の背後に見え隠れする白スーツの男に導かれ、コルソは社会の、そして自身の抱える暗部と向きあうことになる。フレンチ・サスペンスの巨匠グランジェが放つ最新刊!
もうひとつの「京都」の世界、「京洛の森」で仲良く共同生活を続けていた、ありすと蓮とナツメ。だが、ナツメのカフェ経営の夢を叶えるために、彼らは別々に暮らすことになる。新たな生活のはじまりに、蓮はありすと幼い頃に交わした結婚の約束を白紙に戻すことを決める。ふたりの関係はどうなるのかー?波乱の第三巻。
平野啓一郎のロングセラー恋愛小説、ついに文庫化! たった三度出会った人が、誰よりも深く愛した人だったーー 天才ギタリスト・蒔野聡史、国際ジャーナリスト・小峰洋子。 四十代という“人生の暗い森”を前に出会った二人の切なすぎる恋の行方を軸に 芸術と生活、父と娘、グローバリズム、生と死など、現代的テーマが重層的に描かれる。 最終ページを閉じるのが惜しい、至高の読書体験。 第2回渡辺淳一文学賞受賞作。 序 第一章 出会いの長い夜 第二章 静寂と喧噪 第三章 《ヴェニスに死す》症候群 第四章 再会 第五章 洋子の決断 第六章 消失点 第七章 愛という曲芸 第八章 真相 第九章 マチネの終わりに
半月ほど前に、藤原兼家が捕らえた兎は全身黒い毛で覆われていた。しかし、この兎、奇妙なことに日ごとに白い毛に変わり始め、その上人語を話し出したというのだ。「晴明を呼べ」と…。『嫦娥の瓶』など全9篇。晴明と博雅が活躍するシリーズも、遂に第15弾!もちろん蘆屋道満や琵琶法師・蝉丸も登場。
北関東の小さな町で、珈琲豆と和食器の店「小蔵屋」を営むおばあさん、お草さん。 彼女の周囲にあたたかく描かれる人間の営み、日常にふと顔をのぞかせる闇が読む者を引き込む大人気シリーズ第6弾。 秋のある日、草のもとに旧友の初之輔から小包が届く。中身は彼の書いた短い小説に、絵を添えたものだった。 これをきっかけに初之輔と再会した草は、彼のために短編を活版印刷による小本に仕立て贈ることにした。そんな中、本作りを頼んだ印刷会社が個人データ流出事件に巻き込まれ、行き詰まる印刷会社を助けることに。その過程で、お草は印刷会社周辺の人々の過去に触れ、ある女性の死にまつわる“不可解”を解きほぐすことに……。 「一つほぐれると、また一つほぐれてゆくものよ」--逃した機会、すれ違い、あきらめた思いーー長い人生、うまくいくほうがまれだったけど、丁寧に暮らすのが大切。 お草さんの想いと行動が心に染みる珠玉の一冊。