小説むすび | 2019年7月発売

2019年7月発売

福袋福袋

出版社

講談社

発売日

2019年7月12日 発売

今、いちばん勢いのある時代小説作家・朝井まかてが、こよなく愛する江戸の町を舞台に、歌舞伎役者や職人、商売人など様々な生業の人々の姿を、中身の詰まった8編の人情話に仕立てた傑作短編集。 1編目の「ぞっこん」では、「筆」が語り手になる。看板書きだったあるじと「筆」との出会いや情の深まりを、緩急をつけた落語調の文体で読ませる。2編目の「千両役者」は、ぱっとしない歌舞伎役者に千載一遇のチャンスが巡ってくる。もう後がない役者の焦りと、破滅と背中合わせの功名心が生々しく伝わる。3編目の「晴れ湯」は、湯屋(銭湯)を営む家に生まれた少女が主人公。客の戯作者や長屋のおかみさんたちのふるまい、子どもなりの家業への意気込み、江戸で恐れられた火事……。少女は大小のドラマに遭遇しながら、道楽者の父と働きづめの母という夫婦を、一つの男女の形として受け入れていく。続いて、自分のやりたいことを見つけた古着屋の少女が巻き込まれた揉め事に、愉快なオチを付けた4編目「莫連あやめ」。離縁された大喰らいの姉と、彼女を馬鹿にしながら利用する弟の、それぞれの顛末を活写した5編目「福袋」。さらに、女絵師が描いた枕絵が、昔の恋を照らす6編目「暮れ花火」。堅物の家主が、神田祭のお祭掛になってしまった7編目「後の祭」。その日暮らしの遊び人、卯吉と寅次の二人が助けた男からお礼にもらった品で商売を始める8編目「ひってん」。と、まさに福袋のように、何が入っているかわからないワクワク感とお得感。直木賞作家・朝井まかて初の短編集にして、第11回舟橋聖一文学賞を受賞した傑作!

産まなくても、産めなくても産まなくても、産めなくても

出版社

講談社

発売日

2019年7月12日 発売

妊娠と出産にまつわる、女性にとって切実な話題を切り取った七つの物語──「第一話 掌から時はこぼれて」39歳の女性弁護士が、ふとしたきっかけで知った卵子凍結の情報に、心が大きく揺さぶられて……。/「第二話 折り返し地点」妊娠よりもオリンピック出場を優先してきた女性アスリート。レース前、胸に去来したものは?/「第三話 ターコイズ」不妊治療中の女性たちが集うイベントで、子宮の劣化の話を聞いて愕然となり……。/「第四話 水のような、酒のような」バブル時代に独身生活を謳歌した男が、不妊治療のクリニックで思わぬ宣告を受け……。/「第五話 エバーフレッシュ」妊娠をめざすのか、仕事を優先するのか。女性の厳しい現実に対応する、新しい社内制度とは?/「第六話 五つめの季節」三度目の流産で子供をあきらめかけたとき、養子縁組のことを知り……。/「第七話 マタニティ・コントロール」近未来。不妊治療や子育て支援に大きな予算が投じられ、妊娠は政府によって制御されようとしていた。

スズメの事ム所 駆け出し探偵と下町の怪人たちスズメの事ム所 駆け出し探偵と下町の怪人たち

出版社

文藝春秋

発売日

2019年7月12日 発売

不動産販売の営業マンだった黒葛原涼(つづらはら・すずむ)は、会社の倒産後、ひょんなことから東京の下町・町良(まちら)で、探偵事務所を開業。ハーバード大卒、犯罪マニアの押しかけ美女ネジ子さんを相棒に、町で起きた怪事件に挑む! 〈あらすじ〉 第1話 都電の町と鉄仮面 東京の下町・町良に移り住んだスズムはピカピカ光る鉄仮面が夜な夜な徘徊すると聞き…… 第2話 ネジ子さんが来た 神出鬼没の連続ひったくり犯“カマイタチ”を捕まえてほしいという依頼を受ける 第3話 セカイは知らんぷり 公園で虐待された野良猫を助けたスズムが調べを進めると、意外にも犯人は…… 第4話 守り神は失踪中 “信号揚げ”が名物、タツ子が営むてんぷら屋から大事な守り神が消えた 第5話 スキマ男のレモン 町のあちこちで空き缶と一緒に置かれたレモンが見つかった。それは怪しい暗号なのか? 第6話 まぼろし楽隊(ジンタ) 正式につづらはら探偵事務所を立ち上げたスズムは、いきなり謎の“怪人”から挑戦を受ける

神前酔狂宴神前酔狂宴

金と愛と日本と神が、ひとつに交わるこの宴 狂乱の神前結婚パーティーが、いま始まる! 神社の披露宴会場で働く18歳のフリーター・浜野。披露宴の「茶番」を演じるうち、神社のまつる神が明治日本の〈軍神〉であることを知り……。 結婚、家族、そして日本という壮大な「茶番」を鮮やかに切り裂く、最注目の俊英による今年度最大の問題作! ■早くも話題、絶賛の声続々! 披露宴会場の仕事の細部を本物の現場感覚で見事に描きだし、結婚とは何かという普遍的な事柄とともに、神社や宗教を絡めてテーマを広げ、全部をうまく溶け込ませている。橋本治『草薙の剣』とも共通する、時代との独特の接し方。 ーー佐伯一麦(「群像」創作合評) 立ち位置なんて、決めたくない! 強い意志をもつ主人公浜野。相棒は、熱血青年の梶。正義を背負って参戦する、神道女子の倉地。 登場人物の葛藤が、なんともチャーミングな痛快作。古谷田奈月さんは、華燭の典の楽屋の壮絶な闘いをすべて書きつくされた。 ?-石田千(「群像」創作合評) 従来の結婚式小説とは違い、神道それ自体を描き出し相当奥行きのある作品に仕上がっている。震災やオリンピック会場の建設などの時事的な事柄をも主人公の経験に沿って語る、一種の平成史小説。 ?-陣野俊史(「群像」創作合評) 軽妙な語り口ですがすがしい読み心地。神社政治のメカニズムの扱いにも慣れた彼が、ライバル関係をうまくやり過ごし実現させるのは、全く新しいお一人様での結婚式。荒唐無稽のようでいて、意外と切なく、締まった結末。 ?-阿部公彦(「共同通信」) 軍神も神社も架空のものだが、いかにもなリアリティがあり、ワリの良い仕事だからと軽い気持ちで働き始めた主人公を通して、読者は「天皇制」の「日本」の「社会」と「家族」の不可思議に対峙させられる。力作である。 ?-佐々木敦(「東京新聞」) 右寄りの思想の空無な状態を戯画化し、それだけでなく、彼らの寄る辺なさに哀切を漂わせている。さらに現代の婚礼における差別主義をも暴く射程の広い物語。紛れもなく著者の代表作。 ?-長瀬海(「週刊読書人」)

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