2019年7月発売
経済誌編集者・大原史郎。創業社長五十嵐岳人が亡くなり、夫人が会長に、息子の隼人が社長に就いた。一匹狼の大原は窓際に追いやられる。囲碁仲間のとりなしで、扱ってきた経済事件を掘り下げることを決意する。重電メーカー元会長失脚事件。病床の元会長から本音を引き出し真相に迫れるか!?
現在の薄井の楽しみは、十年来の愛人しかなかった。それなのに逢い引きに急ぐところを会長に呼び止められ、社長のきなくさいセクハラ問題を耳打ちされる。家に帰れば、妻が占い師を知らぬ間に連れ込んでいる。女のマンションで機嫌をとって朝帰りすれば、妹から電話で母が亡くなったと知らされた。「なぜみんな俺を辛い立場に立たせる?」欲深い59歳の男はついにある一線を越えてしまう。もっとも過激な「定年小説」!
「戦国七雄」がひしめく中国戦国時代。趙正(始皇帝)は質子として趙の都・邯鄲で生まれた。父・子楚が大商人・呂不韋の工作により秦王となるが急死したため、趙正が十三歳で即位する。呂不韋から権力を奪った趙正は韓を攻略。天下一統までの苦難と闘いに満ちた始皇帝の生涯をダイナミックに描く歴史巨編!
都内各地で同時多発的に発生した放火殺人。被害者は全員16歳で、碑文谷女子大付属高校の1年生だった。辻曲彩音は江戸五色不動が狙われていると気づき、現場へ急ぐ。その彩音を警視庁捜査一課の刑事らが密かに追う。振り袖火事とも呼ばれる明暦の大火を経た復興都市「江戸」の鎮魂の歴史が明らかに。
今、いちばん勢いのある時代小説作家・朝井まかてが、こよなく愛する江戸の町を舞台に、歌舞伎役者や職人、商売人など様々な生業の人々の姿を、中身の詰まった8編の人情話に仕立てた傑作短編集。 1編目の「ぞっこん」では、「筆」が語り手になる。看板書きだったあるじと「筆」との出会いや情の深まりを、緩急をつけた落語調の文体で読ませる。2編目の「千両役者」は、ぱっとしない歌舞伎役者に千載一遇のチャンスが巡ってくる。もう後がない役者の焦りと、破滅と背中合わせの功名心が生々しく伝わる。3編目の「晴れ湯」は、湯屋(銭湯)を営む家に生まれた少女が主人公。客の戯作者や長屋のおかみさんたちのふるまい、子どもなりの家業への意気込み、江戸で恐れられた火事……。少女は大小のドラマに遭遇しながら、道楽者の父と働きづめの母という夫婦を、一つの男女の形として受け入れていく。続いて、自分のやりたいことを見つけた古着屋の少女が巻き込まれた揉め事に、愉快なオチを付けた4編目「莫連あやめ」。離縁された大喰らいの姉と、彼女を馬鹿にしながら利用する弟の、それぞれの顛末を活写した5編目「福袋」。さらに、女絵師が描いた枕絵が、昔の恋を照らす6編目「暮れ花火」。堅物の家主が、神田祭のお祭掛になってしまった7編目「後の祭」。その日暮らしの遊び人、卯吉と寅次の二人が助けた男からお礼にもらった品で商売を始める8編目「ひってん」。と、まさに福袋のように、何が入っているかわからないワクワク感とお得感。直木賞作家・朝井まかて初の短編集にして、第11回舟橋聖一文学賞を受賞した傑作!
何をするにも妻を優先する浪人の孫次郎。ある日、窮地に陥った武士を助けたことから剣術指南役として召し抱えられることになるが…。孫次郎の告白と夫婦の真実を、哀切深く綴った表題作「おもかげ抄」ほか、本当の優しさとは何か?その問いに向き合う「かあちゃん」など、さまざまな家族、愛の姿を描く七篇。
妊娠と出産にまつわる、女性にとって切実な話題を切り取った七つの物語──「第一話 掌から時はこぼれて」39歳の女性弁護士が、ふとしたきっかけで知った卵子凍結の情報に、心が大きく揺さぶられて……。/「第二話 折り返し地点」妊娠よりもオリンピック出場を優先してきた女性アスリート。レース前、胸に去来したものは?/「第三話 ターコイズ」不妊治療中の女性たちが集うイベントで、子宮の劣化の話を聞いて愕然となり……。/「第四話 水のような、酒のような」バブル時代に独身生活を謳歌した男が、不妊治療のクリニックで思わぬ宣告を受け……。/「第五話 エバーフレッシュ」妊娠をめざすのか、仕事を優先するのか。女性の厳しい現実に対応する、新しい社内制度とは?/「第六話 五つめの季節」三度目の流産で子供をあきらめかけたとき、養子縁組のことを知り……。/「第七話 マタニティ・コントロール」近未来。不妊治療や子育て支援に大きな予算が投じられ、妊娠は政府によって制御されようとしていた。
女学校時代から歌人となり、その後は仏教研究家としてもてはやされ、ついには情熱を傾け続けていた小説で大いに注目を集めた女性作家・岡本かの子。だがその創作過程は尋常ではなかった。大人気漫画家・岡本一平の妻でありながら、金持ちの息子と青年医師に惚れこみ同居させるのだ。3人の美男子に傅かれる専制君主。世間からは奇矯と見られる共同生活から芸術作品は生み出されていった。特に一平は本業の人気も夫婦の営みも捨て、かの子を支え続けたのだった。死の前後数年にして不動の人気を勝ち得た女性作家。天衣無縫であり稀有なその生涯を、愛情をこめて描いた評伝小説の傑作!
鯨井留可は完全犯罪を目指さない男。そんな彼がアリバイ工作のために声をかけたのは、白髪の美女。なんと彼女は眠るたびに記憶を失ってしまう忘却探偵・掟上今日子だった! 完璧なアリバイ、衆人環視の密室、使者からの暗号ーー不可解な三つの殺人事件に、今日子さんはどう挑むのか?! 「掟上今日子のアリバイ証言」ほか、2編が収録された忘却探偵シリーズ第三弾ついに刊行!
横丁の女児が次々と攫われた。花街の女衒が監禁しているらしい。口入れ屋で居候する剣の達人・彦十郎は、住人たちから助けを求められ、仲間とともに戦いを挑むことに。だが敵が雇った牢人の平松は、刀身を垂直に立てる独自の剣法で、裂帛の気合を発して彦十郎に斬り込む!大人気剣豪ミステリ。
泥棒の娘と刑事の息子に、探偵の娘が? 恋と復讐の物語が、新たにはじまる! 和馬が新人の女性新人刑事の教育係に指名された。北条美雲、23歳。京都の老舗探偵事務所に生まれ、祖父は「昭和のホームズ」、父は「平成のホームズ」と称された探偵一家のひとり娘である。 泥棒一家、警察一家、探偵一家の運命が交差する。 連続ドラマ化で話題沸騰のシリーズ第二弾!
「平壌放送の乱数表が複雑化している」米朝の苛烈なせめぎ合いで危うい変化が起きている。「同胞の協力関係を活かせ」という北朝鮮の世界規模の侵攻とどう戦うか。札幌、秋葉原、そしてシリコンバレー。一貫した哲学で他を圧する調査官・黒田純一が攻める!不透明ないまを生き抜くためのエンターテインメント。
不動産販売の営業マンだった黒葛原涼(つづらはら・すずむ)は、会社の倒産後、ひょんなことから東京の下町・町良(まちら)で、探偵事務所を開業。ハーバード大卒、犯罪マニアの押しかけ美女ネジ子さんを相棒に、町で起きた怪事件に挑む! 〈あらすじ〉 第1話 都電の町と鉄仮面 東京の下町・町良に移り住んだスズムはピカピカ光る鉄仮面が夜な夜な徘徊すると聞き…… 第2話 ネジ子さんが来た 神出鬼没の連続ひったくり犯“カマイタチ”を捕まえてほしいという依頼を受ける 第3話 セカイは知らんぷり 公園で虐待された野良猫を助けたスズムが調べを進めると、意外にも犯人は…… 第4話 守り神は失踪中 “信号揚げ”が名物、タツ子が営むてんぷら屋から大事な守り神が消えた 第5話 スキマ男のレモン 町のあちこちで空き缶と一緒に置かれたレモンが見つかった。それは怪しい暗号なのか? 第6話 まぼろし楽隊(ジンタ) 正式につづらはら探偵事務所を立ち上げたスズムは、いきなり謎の“怪人”から挑戦を受ける
金と愛と日本と神が、ひとつに交わるこの宴 狂乱の神前結婚パーティーが、いま始まる! 神社の披露宴会場で働く18歳のフリーター・浜野。披露宴の「茶番」を演じるうち、神社のまつる神が明治日本の〈軍神〉であることを知り……。 結婚、家族、そして日本という壮大な「茶番」を鮮やかに切り裂く、最注目の俊英による今年度最大の問題作! ■早くも話題、絶賛の声続々! 披露宴会場の仕事の細部を本物の現場感覚で見事に描きだし、結婚とは何かという普遍的な事柄とともに、神社や宗教を絡めてテーマを広げ、全部をうまく溶け込ませている。橋本治『草薙の剣』とも共通する、時代との独特の接し方。 ーー佐伯一麦(「群像」創作合評) 立ち位置なんて、決めたくない! 強い意志をもつ主人公浜野。相棒は、熱血青年の梶。正義を背負って参戦する、神道女子の倉地。 登場人物の葛藤が、なんともチャーミングな痛快作。古谷田奈月さんは、華燭の典の楽屋の壮絶な闘いをすべて書きつくされた。 ?-石田千(「群像」創作合評) 従来の結婚式小説とは違い、神道それ自体を描き出し相当奥行きのある作品に仕上がっている。震災やオリンピック会場の建設などの時事的な事柄をも主人公の経験に沿って語る、一種の平成史小説。 ?-陣野俊史(「群像」創作合評) 軽妙な語り口ですがすがしい読み心地。神社政治のメカニズムの扱いにも慣れた彼が、ライバル関係をうまくやり過ごし実現させるのは、全く新しいお一人様での結婚式。荒唐無稽のようでいて、意外と切なく、締まった結末。 ?-阿部公彦(「共同通信」) 軍神も神社も架空のものだが、いかにもなリアリティがあり、ワリの良い仕事だからと軽い気持ちで働き始めた主人公を通して、読者は「天皇制」の「日本」の「社会」と「家族」の不可思議に対峙させられる。力作である。 ?-佐々木敦(「東京新聞」) 右寄りの思想の空無な状態を戯画化し、それだけでなく、彼らの寄る辺なさに哀切を漂わせている。さらに現代の婚礼における差別主義をも暴く射程の広い物語。紛れもなく著者の代表作。 ?-長瀬海(「週刊読書人」)
試験的にAIロボットを導入した第七明和銀行。高田通り支店の庶務行員・多加賀主水は、AIに負けじと雑用をこなしていた。ところがある日、主水は友人の木村刑事に放火の疑いをかけられ、署に連行される。聞けば“高田町稲荷の遣い”を騙り、町内の嫌われ者の自宅に「天誅」と称して放火する輩が出没しているらしい。潔白を訴える主水は、町を脅かす巨悪と対峙する!テレビドラマ化された痛快銀行小説シリーズ第4弾。
暴力団排除条例の下、壊滅した旧鳴龍会の残党は困窮していた。ヤクザから足を洗っても世間の偏見からは免れられない。彼らの現状を憂慮した鳴海署の刑事佐脇は何とかしようと乗り出すが、旧鳴龍会を目の敵にして潰そうとする怪しげな警備会社の職員が、武装して乗り込んでくる。裏で糸を引いているのは誰か?やがて関西の巨大暴力団を巻き込んで、一大抗争が勃発する!
元女優の母、元叔父さんの父、反抗期の妹、そしてヒッチコック好きのぼく。訳ありそうに見えるけれど、ぼくら安井家は平穏で普通のはずだった。それなのにある夜、母が突然、ぼくらの知らない男の人を看とると宣言した瞬間、歯車が狂い始める。母の恩人だというその人に、ぼくは会いに行く決意をしたけれど…。揺れ動く家族と少年の心を瑞々しく描ききる、成長の物語。
突然失踪した経営者を追い、六本木のホストクラブへ単独潜入を試みた“悪女刑事”こと警視庁組対部の黒須路子。だが、客が店に放火し、ロケットランチャーがぶっ放されて、九死に一生、逃げ出した。自分を亡き者にしようとする上司の富沢を疑うが、やり方があまりに粗暴すぎる。そんななか伝説のやくざの帰還が伝えられて…。向かうところ敵なしの女刑事、大暴走!