2019年8月発売
謎とは何であるか。100年前の1920年、「新青年」創刊。文学の先端で、探偵小説とモダニズムの共鳴がはじまったー!乱歩、横光、小酒井不木、堀辰雄、甲賀三郎、萩原朔太郎、海野十三、夢野久作…戦間期日本の想像力を代表する名作の数々を集成。
開国から四年、幕府は外国局を新設したが、高まる攘夷熱と老獪な欧米列強の開港圧力というかつてない内憂外患を前に、国を開く交渉では幕閣の腰が定まらない。切れ者が登庸された外国奉行も持てる力を発揮できず、薩長の不穏な動きにも翻弄されて…勝海舟、水野忠徳、岩瀬忠震、小栗忠順から、渋沢栄一まで異能の幕臣そろい踏み。お城に上がるや、前例のないお役目に東奔西走する田辺太一の成長を通して、日本の外交の曙を躍動感あふれる文章で、爽やかに描ききった傑作長編!
ほかの作家と並置し、ある観点から比較することで立ちあがるベロー文学の広がりと深さ…。アメリカ文学史に顔を出す名だたる作家たちの重要作品と一緒にベローの小説が縦横に論じられていく本書では、その思わぬ影響関係をもつ文学世界に引きずり込まれてゆく。現代的問題と文学の癒しが交差するベロー文学論集。
ある午後、ある村で行方不明になった12歳の少女。村では「儀礼殺人」ではと噂が流れるが、警察は野生動物に襲われたのだと結論づけた。5年後、その村に赴任した若者が、ひょんなことから事件の真相を追うことになる。警察、政治家、実業家、校長、村人、被害者の母…何重にも折り重なった嘘と秘密の先で、彼女が見たものとはー。
高校卒業後、大阪から上京し劇団を旗揚げした永田と、大学生の沙希。それぞれ夢を抱いてやってきた東京で出会った。公演は酷評の嵐で劇団員にも見放され、ままならない日々を送る永田にとって、自分の才能を一心に信じてくれる、沙希の笑顔だけが救いだったー。理想と現実の狭間でもがきながら、かけがえのない誰かを思う、不器用な恋の物語。芥川賞『火花』より先に着手した著者の小説的原点。
火葬したはずの妻が家にいた。「体がなくなったって、私はあなたの奥さんだから」。生前と同じように振る舞う彼女との、本当の別れが来る前に、俺は果たせなかった新婚旅行に向かった(「ゆびのいと」)。屋上から落ちたのに、なぜ私は消えなかったのだろう。早く消えたい。女子トイレに潜む、あの子みたいになる前に(「かいぶつの名前」)。生も死も、夢も現も飛び越えて、こころを救う物語。
千三百年以上の歴史をもつ岐阜・長良川の鵜飼い。その最中に屋形船に乗っていたカップルが睡眠薬入りのワインをのみ、女が死亡し、男は生き残る事件が発生する。そして二週間後、東京・台場のホテルの一室で、男が亡くなり、女が助かる事件が。同一の睡眠薬を使用した二つの「心中」事件が、偽装殺人なのではと疑念を抱いた十津川警部は捜査を開始する…。迫真の長編トラベルミステリー。
品川の貨物倉庫で働く亮介は25歳の誕生日、出会いサイトでOLの“涼子”と知り合った。どんな愛にも終わりは来るとうそぶく亮介と、愛の力を疑いながら、でもどこかで信じたい“涼子”。嘘と不安を隠し、身体を重ねるふたりは、やがて押し寄せる淋しさと愛おしさに戸惑う…。東京湾に向きあった、品川埠頭とお台場に展開する愛の名作に、その後を描く短篇「東京湾景・立夏」を増補した新装新版。
順風満帆な会社員人生を送ってきた大手食品メーカー役員の芹澤は、三歳で命を落とした妹を哀しみ、結婚もしていない。ある日、芹澤は元部下の鴫原珠美と再会し、関係を持ってしまう。しかし、その情事は彼女が仕掛けた罠だった。自らの運命を変えた珠美と会い続けようとする芹澤。彼女との時間は、諦観していた彼の人生に色をもたらし始めるー。喪失を知るすべての人に捧げるレクイエム。
「そのとき私は、けものになりました」情事が記された夫の日記に狂乱する妻。その修羅を描いた『死の棘』。だが膨大な未公開資料を徹底解読し、取材を重ねた著者が辿りついたのは、衝撃の真実だった。消された「愛人」の真相、「書く/書かれる」引き裂かれた関係。本当に狂っていたのは妻か夫か。痛みに満ちたミホの生涯を明らかにし、言葉と存在の相克に迫る文学評伝。読売文学賞評論・伝記賞、芸術選奨文部科学大臣賞、講談社ノンフィクション賞受賞。
西東京市に聳える時計山病院。十一年前の医療ミスで廃院に追い込まれたこの場所で、一人の看護師が転落死する。死亡状況や解剖結果から自殺が有力視される中、娘の由梨だけはそれを頑なに否定した。天医会総合病院の副院長・天久鷹央は彼女の想いに応え、「呪いの病院」の謎を解くことを決意する。死体にまったく痕跡が残らない“魔弾”の正体とは?現役医師が描く医療ミステリー!
あなたは架見崎の住民になる権利を得ましたー。高校二年生の香屋歩の元に届いた奇妙な手紙。そこには初めて聞く街の名前が書かれていた。内容を訝しむ香屋だが、封筒には二年前に親友が最後に残したものと同じマークが。トーマが生きている?手がかりを求め、指定されたマンションを訪れると…。戦争。領土。能力者。死と涙と隣り合わせの青春を描く「架見崎」シリーズ、開幕。
インハイ出場を決めた希衣と恵梨香の新ペア。カヌー部女子四人は休む間もなく練習を重ね、結束を深める。次の関東大会では、絶対的な強さの“孤高の女王”こと利根蘭子をはじめ、千葉からは繊細なパドル捌きで魅せる双子の大森姉妹、山梨からはパワーが武器の神田と堀ペアなど個性的なライバルらが集結。ながとろ高校の勝利の行方は!?揺れる想いと熱い闘志がきらめく青春部活小説。
まさか、わたくしの姿がお見えになるんですの?2018年12月28日、ひとりのパリ旅行者が知らない女から声を掛けられる。女の名は、ランバル公妃。フランス革命で虐殺された、マリー・アントワネットの女官長だった。王妃への強い思いゆえ亡霊となった彼女は語り始める。王妃を愛し、王妃に愛された女人たちのことをー。世界中から嫌われた王妃を過剰な愛で綴る、究極の百合文学!
賢くて可愛いAI 犯人の探偵を翻弄する大逆襲劇。人工知能探偵・相以の驚異的な推理力に大敗を喫した以相。復讐に燃える彼女は、人間の知能を増幅させ完璧な共犯者を造り、相以に挑戦状を叩きつけた。ゴムボートで漂着した死体、密室で殺された漁協長、首相公邸内殺人事件。連鎖する不可解な事象を読み解く一筋の推理の紐は、なんと以相の仕掛けた恐るべきトリックの導火線だった!? 奇想とロジックが宙を舞う超絶推理バトル再燃。
優しくぼくを見つめる、母と思っていたその人は母ではなかった。ぼくは捨て子だったのだ…。家を追われた8歳の少年レミは、謎の老旅芸人ヴィターリスの一座に加わり、芸をする動物たちとともに巡業の旅に出発する。大都会から炭鉱町まで、時に厳しい荒野を渡り、吹雪を耐え、川を越えーレミは真の幸福を求めて旅を続ける。時代を超えて読み継がれるフランスの児童文学の傑作を完訳!
旅の道中、時に仲間を失いながら出会いにも恵まれるレミ。イギリス人貴族マダム・ミリガンとアーサー母子。弟のように付き従うマティア。レミを家族のように遇してくれた花づくり農家アキャンの一家。国境を超えてイギリス、スイスへと旅を続け、ついに生母の居場所をつきとめるのだがー。レミは永遠に別れることのない本当の家族と巡り会うことができるのか。涙と感動の物語、完結編。