2019年発売
途方もない悲しみが、若き牧師の心を引き裂いたー6歳の僕の前にあらわれたジェイコブス師。神を呪う説教を執り行ったのち、彼は町から出て行った。しかしその後も僕は、あの牧師と何度も再会することになる。かつては電気仕掛けのキリスト像を無邪気に製作していた牧師は、会うたびごとに名前を変え、「聖なる電気」なるものを操る教祖にのぼりつめる。少年小説であり青春小説である前半を経て、得体の知れぬ恐怖が徐々に滲み出す。忌まわしい予感が少しずつ高まる中、あなたは後戻りのきかない破滅と恐怖への坂道を走りはじめる。
何かが起こった。ジェイコブス師の稲妻の肖像写真に撮られたオクラホマの娘に、恐ろしい何かが起こった。牧師の電気治療でドラッグ中毒から脱した僕の身にも何かが起こるのだろうか?オクラホマ娘の一件で再び僕のもとから去ったジェイコブス師。だが運命の糸は僕たちを三度目の邂逅へと導いてゆく。二〇〇八年。初老となった僕はジェイコブスが「ダニー牧師」と名を変えて、一大信仰運動を開始したのを知る。牧師の主催する集会にもぐりこんだ僕は、彼の「癒し」を目撃する。“聖なる電気”による電撃で、歩けなかった者が歩きだし、病に苦しむ者は苦痛から解放される。まやかしか?それとも電気の魔術は本物なのか?僕と牧師の運命が、またもやひとつに撚り合わされる。だが僕は知りつつあった。ジェイコブスの「癒し」を受けたひとびとに何かが起こっていることをーそして僕がジェイコブスとともに稲妻の降り注ぐ山荘を訪れたとき、ああ、何かが起ころうとしていた、ひどく忌まわしい何かが!この世ならざる怪異。悲しみの淵から噴き出す恐怖、恐怖!ホラーの巨匠が、久々に放つ怪奇小説大作、ついに恐るべきものが電撃とともに頭をもたげる!
「おれは首都圏連続殺人事件の真犯人だ」。大手新聞社の社会部記者の許に届いた一通の手紙。送り主は「ワクチン」と名乗り、首都圏全域を震撼させる連続殺人の犯行を詳述したうえで、記者に対して紙上での公開討論を要求する。絶対の自信を持つ殺人犯と記者の対話は、始まるや否や苛烈な報道合戦に巻き込まれていく。果たして犯人の目的はーー圧倒的なディテールで劇場型犯罪と報道の行方を描き出し、話題作『屍人荘の殺人』と栄冠を競った第27回鮎川哲也賞優秀賞受賞作。
翻訳ミステリー大賞・読者賞ダブル受賞 少女ローレルは庭のツリーハウスから、見知らぬ男が現われ母ドロシーに「やあ、ドロシー、久しぶりだね」と話しかけるのを見た。そして母はナイフで男を刺したのだ。男は死んだが、ローレルは目撃したすべては話さず、事件は多発していた強盗事件のひとつとされ、母の正当防衛が認められた。50年後、女優となったローレルは、死の床にある母の過去を知りたく思う。古い写真に母と映る美しい女性は誰? あの事件は何だったのか?
第二次大戦中ローレルの母はロンドンのある屋敷のメイドで、向かいに住む美しい作家夫人に憧れていた。空襲で家族を失っていたが、婚約者もいてひとりでぼっちではなかった。しかし、彼女の運命は急転回する。ロンドン大空襲、そして……。70年後、ローレルは弟とともに母の過去を探り始める。メイドだった母、写真の女性、高名な作家……浮かび上がったのは思いも寄らぬ母の姿だった。翻訳ミステリー大賞・読者賞ダブル受賞の傑作。
「だいたいお前さん達は想像力ってもんが足りなさすぎるよ、新聞や雑誌にひょいひょい乗せられて、やれ空飛ぶ人だ空中散歩者だってはしゃいでるんだからーーもう少し頭使って自分の考えで物を云いなさいよ」そう言い放ったこの、仔猫みたいなまん丸い目をした童顔の小男こそ、名探偵猫丸先輩その人である。コミカルな筆致と切れ味鋭いロジックで読者を魅了し続ける本格推理作家、倉知淳の第一作品集。デビュー25周年を祝し新版刊行開始!
メタン液の海とアンモニア氷とに覆われ、地球の700倍の重力を持つ巨大惑星メスクリンは、人類の探検を許さない未知の世界だった。そこに座礁したロケットを調査するため、地球人とメスクリン人のあいだに取引が成立する。長さ40センチ、36本足、体重100キロほどのシャクトリムシ形をしたメスクリン人は、何の目的で、この危険な仕事を無報酬同然でひきうけたのか? 異生物ハードSFの里程標的傑作。
ライバルの真鶴高校ミステリ研究会と交流試合を行うことになった美心国際学園(BIS)ビブリオバトル部。それぞれ自分のスタイルでバトルに挑むなか、ミステリ研究長の美少女・早乙女寿美歌は巧みな話術とミステリの知識で周囲を圧倒する。だが彼女には、周りに隠し続けている秘密があるようで…。空が初めてコミケを体験する番外編「空の夏休み」を併録したシリーズ第三弾。
マコトは戦乙女サーラの力を借りることでミレイブルク公国の危機を乗り切ったが、帝国内の内乱は続いていた。そんななかライオネル皇子が帝都での権力闘争に敗れて、ミレイブルクに亡命してくる。ライオネルの頼みを受けたマコトたちは、帝都の奪還および反対勢力の撃破に乗り出すことになった。マコトが戦場を舞台に、再び丸太で無双する!?----「小説家になろう」発、大人気異世界ヒーローファンタジー第八弾!
最愛の姉・セシルの死を乗り越え、迷宮都市レーデンスにたどり着いたウルグ。彼はこの街で王立ウルキアス魔術学園への入学金を稼ぐため、冒険者となる。黒髪を畏怖する周囲の罵声をものともせず、次々と魔物を倒し冒険者として頭角を現していく。そんなとき、ウルグはかつての自分のように、フードで頭を隠す一人の少女と出会うのだがーー。「小説家になろう」発、大人気異世界成り上がりファンタジーを加筆修正し、待望の文庫化!
誰もが使うトイレの様々なお話がつまってます。恋の話に下品な話、殺人事件だって起こるかも? 「真犯人は個室のこの中にいる!」なんて。読みふけって流し忘れちゃったなんてことのないように、ご注意を!
7年前、旭ヶ丘の中学校で起きた、クラスメイト9人の無差別毒殺事件。結婚を機にその地に越してきた私は、妻の連れ子である14歳の晴彦との距離をつかみかねていた。前の学校でひどいいじめに遭っていた晴彦は、毒殺事件の犯人・上田祐太郎と面影が似ているらしい。この夏、上田は社会に復帰し、ひそかに噂が流れるー世界の終わりを見せるために、ウエダサマが降臨した。やがて旭ヶ丘に相次ぐ、不審者情報、飼い犬の変死、学校への脅迫状。一方、晴彦は「友だちができたんだ」と笑う。信じたい。けれど、確かめるのが怖い。そして再び、「事件」は起きた…。
債権奴隷の少年アも、なけなしの魔法ひとつで迷宮へ潜るそのひとりだ。費用さえあれば死者蘇生は可能だが、新人の稼ぎでは到底無理。たった三匹の大ネズミに苦戦し、落とし穴に落ち、ウサギの攻撃で仲間の首がとぶ…。危険と隣り合わせの中で、彼は知恵を振り絞り、時には芝居をし、嘘をつき、そして微々たる幸運を最大限に生かすのだ。そんな折り、冒険者組合が出した依頼は「邪教徒から迷宮を解放せよ」。成り行きで邪教徒の群れに潜り込んだアは、自分たちと何ら変わらない彼らの姿を目にして!?「僕は生まれて初めて力が欲しいと思った。あらゆる不条理を蹴散らせるくらいの圧倒的な力が」…!異色のダークファンタジー、ここに開幕!
芸能事務所「ドラゴンプロモーション」の売り出し中の若手女優・弓月苺が誘拐された。事務所の社長・勅使河原竜太は、世間に悟られないように行動を開始するが、竜太は「覚えられない」障害を持っていた。竜太は、記憶を留めるために書き留めているメモ帳を見ながら、日付をさかのぼりで真相を追っていくが、誰にも相談できず事件を探っていく竜太がたどり着いた真相は、自らの過去に起因した信じられない事実と因果だった! 現在から過去をさかのぼる、今までに無い形式で綴られるスリリングな展開の先には衝撃の結末が!
料理人である新堂春樹は不慮の事故で異世界へと転移する。 そんな春樹に与えられたのは、神域の剣技を操ることのできる『剣聖』のスキルだった。 ドラゴンをも一太刀で斬り伏せられる剣術を身につけた彼がその刃を振るうのは、 魔王でも邪竜でもなくーー仕込みの野菜!? 料理の技量を見込まれ、領主タマモの城に召し抱えられた春樹は 都度ふっかけられる無理難題に応えるべく様々な料理を作り出す! “焼かない”スクランブルエッグに異世界の絶品ジビエ、 そして春樹にオーダーされた、『宝石王』と呼ばれる美女に相応しい一皿とは……? 最強の異世界料理ファンタジー、開幕!!
魔法が使えて、よく知ってる「乙女ゲー」の設定にそっくりなファンタジー世界に貴族の幼女アリスとして転生した、オカルト好きのアラサー女子・一条夏樹。魔術研究にすっかりハマリ、幼馴染のオルリス&ヴィル兄弟たちの愛情を受けつつも、学園のかわいい友人レティシアやローリエ、モケっ子のイヴァンやフレッジたちと勉強と研究に励む毎日。ある日遭遇した魔獣の魔法陣に既視感を覚え、もしかしてと書き写して呪文を唱えたら見事発動!このタロット魔術の秘密を身近な人以外には伏せたのに、密かに近づく者の姿が?まさかもうひとりの転生者!?アリスはどう切り抜ける!?
慶応四年、六月二十八日。北辰一刀流の開祖・千葉周作のもとで四天王のひとりと謳われた剣豪・森要蔵は、遠い会津の地にいた。門弟や息子とともに会津藩に与し、白河城を奪還する戦に参陣するためだ。時代の趨勢に抗い、新政府軍に立ち向かった男はいかにその生涯をまっとうしたのか。ひとたび戦えば、「雷雲を纏った龍のよう」と称された要蔵。平穏な日々を捨て、世の為人の為に生きる信念を貫いた愚直な男を描く、傑作歴史長編! 名誉を捨て、義を貫く! 講談社創業者・野間清治の祖父にして、門下八百人を超える大道場の当主、森要蔵。 幕末の動乱の中、なぜ彼は藩を抜け、会津で新政府軍と戦ったのか。 世を憂い、家族を愛し、弟子の未来を想った、知られざる剣豪の生涯。 慶応四年(1868年)、六月二十八日。北辰一刀流の開祖・千葉周作のもとで四天王のひとりと謳われた大剣士・森要蔵は、道場のある江戸を出て、遠い会津の地にいた。門弟や息子とともに会津藩に与し、白河城を奪還する戦に参陣するためだ。ただひたすら、己の信じる「誠」に従って。時代の趨勢に抗い、新政府軍に立ち向かった男はいかにその生涯をまっとうしたのか。ひとたび戦えば、「雷雲を纏った龍のよう」と称された要蔵。平穏な日々を捨て、世のため人のために生きる信念を貫いた愚直な男を描く、傑作歴史長編! いつの世も、守るべきものは変わらないーー。
320万部のベストセラー、大学病院編始動 信州にある「24時間365日対応」の本庄病院に勤務していた内科医の栗原一止は、より良い医師となるため信濃大学医学部に入局する。消化器内科医として勤務する傍ら、大学院生としての研究も進めなければならない日々も、早二年が過ぎた。矛盾だらけの大学病院という組織にもそれなりに順応しているつもりであったが、29歳の膵癌患者の治療方法をめぐり、局内の実権を掌握している准教授と激しく衝突してしまう。 舞台は、地域医療支援病院から大学病院へ。 シリーズ320万部のベストセラー4年ぶりの最新作にして、10周年を飾る最高傑作! 内科医・栗原一止を待ち受ける新たな試練! 【編集担当からのおすすめ情報】 「新章 神様のカルテ」に寄せて 「神様のカルテ」を書き始めて、いつのまにか十年が過ぎた。私の歩んできた道を追いかけるように、栗原一止の物語も五冊目を数え、本作をもって舞台は大学病院へと移る。栗原は、私にいくらか似たところはあるが、私よりはるかに真面目で、忍耐強く、少しだけ優秀で、間違いなく勇敢である。そんな彼が、大学という巨大な組織の中で描きだす、ささやかな「希望」を、多くの人に届けたいと思う。 夏川草介 深夜2時半の医局にて
夏祭りが近づくたび、艶夢のなかで激しく乱れる舞桜子。どれだけ過去から逃れても、年の離れた男しか愛せない秋実。夫との夜がなくなって以来、熾火のような欲求を抱え続ける小夜子…。神々を祭らふ夜。男と女は、人の世の裂け目を踏みはずすー恋愛と官能の第一人者が多様な“性”を描き尽くす!六つの禁断の物語!