2019年発売
夫に支配される人気作家・柚。先が見えない三流大学三回生の航大。二人はひょんなことから「綴り人の会」というサイトを介して、文通をはじめる。柚は「夫にDVを受けている専業主婦」を装い、航大は「エリート商社マン」だと偽ってー。便箋の上に書かれた偽りが、いつしか真実を孕んで、二人をくるわせていく。掻き立てられた情動が、やがて越えてはならない一線を踏み越えさせて…。緊迫の恋愛サスペンス!
戦国期、激化する一向一揆衆弾圧のため、信長軍が越前に攻め入る。信仰の名のもと、戦に駆り出される罪なき民と、蹂躙される村々。十六歳の結衣が暮らす長閑な村も、侍に襲われる。村人が逃げ惑う中、平凡な少女だったはずの結衣は、次々と敵を斬り殺していく。圧倒的な強さを秘めた彼女には、封印されたおぞましい過去があったー。波乱の時代を駆け抜けた少女の過酷な運命を描く、傑作歴史長編。
肉感的な悪女大道寺明子は、製薬会社社長村上をパトロンにして、銀座で高級クラブを開店。フィリピンの権力者ロドリゲスに近づく。一方、村上の秘書矢崎は、明子たちの動きに金の匂いを嗅ぎつけ、分け前を狙って探り始める。そんな折、矢崎の愛人がフィリピンで殺され、復讐を誓って現地へ。色と欲にまみれた悪党たちの妖しい祭典を目撃した彼は、罠を仕掛けるが…。スリリングな異色ミステリー。
一流商社の部長職を辞め、名門ホテルで第二の人生を送ることになった畑中教司。マラソン中に眼前で社長の犬飼が誘拐された。数日後無事に救出されたものの、犯人からホテルに対して執拗な脅迫が始まる。犬飼から特命を受けた畑中は、誘拐直前に起きたホテル従業員の転落死に着目。ホテルの裏側の極秘事項に肉薄し、真相を掴もうとするのだが…。巨大企業に巣食う悪を描く傑作長編社会派推理。
昭和初期の東京。浅草の片隅の見世物小屋でひっそりと暮らす猫又の弐矢は、むかし愛した女に瓜二つの美貌の持ち主を見つける。その青年・嘉寿哉の家に居候することに成功した弐矢だが、心理学を研究しオカルトを糾弾しようとする嘉寿哉の周りには何故か妖怪たちが引き寄せられてくる。愛しい彼を守るべく、弐矢は奮闘するが…。欲望渦巻く帝都で暗躍する、妖しくも美しい妖怪たちの物語。
鶴見弁護士は、24年前に妻の美紗を殺害したと疑われた悠木と冤罪被害者の会で知り合う。彼は、失踪した妻を捜しに郡上八幡へ通い続けている。今年の郡上おどりで、似た女性を見つけたが否定された。その頃、ジャーナリストの辰巳が刺殺され、悠木と接触した形跡があったため、また疑われる。彼を信じる鶴見は調査を開始するが…。美紗の失踪に隠された驚愕の真相とは!?書き下ろしミステリー。
北海道は羊蹄山の東、支笏湖に連なる山間で競走馬を生産する風死狩牧場。起業に失敗した祐介はそこで働き始める。サラブレッドとの触れ合いに感動しながら、閉鎖された地での生活に不自然さも覚える。やがて次々と変死、失踪事件が発生。ヒグマか、怨恨か、謎が深まる。開拓時代の歴史を縦糸に、現代競馬の最先端事情を横糸に編まれゆく、人と馬との系譜。息もつかせぬ急展開、圧巻の競馬ミステリー。
愛する娘は“ボーダー〞だった! 63歳にして新人。異能の作家が実体験を基に描く、正真正銘の問題作! バブルのあぶく金を摑み、順風満帆に過ごしてきたはずだった。やがて事業は破綻し、境界性人格障害の娘を連れた大西浩平は東北で土木作業員へと転身。再起を賭し、津波避難タワー建設へ奔走するも、それは奈落への序章に過ぎなかった。圧倒的な孤独、極限の恐怖、そして、絶望の頂へーー。あなたは、この現実を直視できるか。
いまは亡き天才建築家が設計した、通称「おっぱいマンション」。立地もデザインも抜群、できた当時はあこがれの住居、いまでは、終の住処として、人気を保ち続けていた。だが、重大な問題が発覚!勃発した改修騒ぎは、建築家の娘、学生運動あがりの引退した教師、秘密を抱えた元女優、天才の右腕たちの人生を、秘密を、理想を呑み込んでー。建て替えるべきか、残すべきか。正義の審判の行方は?人生最大のお買い物は、人生最悪のドラマを生む!?
私たちは、かなしみを乗り越えるために“家族〞になったーー。関東大震災で最愛の妹を喪った八重は、妹の婚約者だった竹井と結婚したが、最新式の住居にも、新しい夫にも、上手く馴染めないーー昭和と共に誕生し、その終焉と共に解体された同潤会代官山アパート。そこに暮らす一家の歳月を通して、時代の激流に翻弄されても決して失われない《魂の拠り所》を描く。今こそ見つめ直したい家族の原風景。
明治維新から数えて百五十年を超え、歴史に対する認識が次々に見直される中、上野の西郷隆盛像を破壊せよ、という脅迫状が届いた。犯行グループは「歴史を正す者」と名乗る集団。警備中に、東武鉄道への爆破予告も。十津川は「特急リバティ会津」に乗り、会津若松へ。さらに犯人から、東京都などに対し、二十億円の要求が届く。これは会津人から、明治新政府の流れを継ぐ“政府”に対する復讐なのか?
この病院に訪れるのは動物だけじゃない!? 幼いころから「あやかし」が視えた梨々香は、念願の動物看護士として岡山にある黒瀬動物病院で働くことになった。 しかしそこは、あやかしが行き来する扉“駅”があり、頻繁にあやかしを目撃することに。 人懐っこい小さな妖狐の月乃をはじめ他のあやかしたちの力を借りて、病院に訪れる飼い主たちの悩みを解決していく。 人と動物とあやかしが織りなす切なくも温かい物語。 プロローグ カルテ1 黒瀬動物病院の病院長代理 カルテ2 ゴールデンレトリバーと家族の絆 カルテ3 ライオンラビットの縁結び カルテ4 ペルシャ猫とすれ違いの夫婦 カルテ5 再会の父子とあやかし動物病院 エピローグ
教師になる夢に破れた創士が辿り着いた街「さくら中央」。その街のビルの中にある託児ルーム『さくらねこ』。そこは一風変わった先生と元気な子どもたちが集う託児所だった。疲れ知らずの先生たちと子どもたちに翻弄されながら、少しずつ成長していく創士。働くにつれ創士自身が知らなかった過去が徐々に明らかになるー。第3回「お仕事小説コン」入選作を書籍化!
任官5年目の検事・佐方貞人は、認知症だった母親を殺害して逮捕された息子・昌平の裁判を担当することになった。昌平は介護疲れから犯行に及んだと自供、事件は解決するかに見えた。しかし佐方は、遺体発見から逮捕まで「空白の2時間」があることに疑問を抱く。独自に聞き取りを進めると、やがて見えてきたのは昌平の意外な素顔だった…。(「信義を守る」)
デビュー作『楽園のこちら側』と永遠の名作『グレート・ギャツビー』の間に書かれた長編第二作。刹那的に生きる“失われた世代”の若者たちを絢爛たる文体で描き、栄光のさなかにありながら自らの転落を予期したかのような恐るべき傑作、本邦初訳! 摩天楼が林立し始め、繁栄を誇るニューヨーク。その華やかな文化と、上流階級の暮らし。それがフィッツジェラルド独特の絢爛たる文体で描かれる。そしてアンソニー、グロリア、リチャードらの生き方に、信じられるものを失い、刹那的に生きる「失われた世代」の心情が見て取れる。 「どうしてこの作品がこれまで訳されてこなかったのだろう?」 訳しながら、私はずっとそう思っていた。こんなに魅力的な作品なのになぜ、と。この素晴らしい作品を読む喜びが多くの日本の読者にも伝わりますように。(「訳者あとがき」より) 第一部 第一章 アンソニー・パッチ 第二章 魅惑的な美女の肖像 第三章 キスの目利き 第二部 第一章 光り輝く時間 第二章 シンポジウム 第三章 分裂の兆し 第三部 第一章 文明の問題 第二章 美学の問題 第三章 問題外! 訳者あとがき