小説むすび | 2020年1月24日発売

2020年1月24日発売

さいはての家さいはての家

出版社

集英社

発売日

2020年1月24日 発売

「この世から逃げたくて仕方がない。 それと同じくらい、この世に触れたくて仕方がない」(本文より) 駆け落ち、逃亡、雲隠れ。 行き詰まった人々が、ひととき住み着く「家」を巡る連作短編集。 家族を捨てて逃げてきた不倫カップルーー「はねつき」 逃亡中のヒットマンと、事情を知らない元同級生ーー「ゆすらうめ」 新興宗教の元教祖だった老齢の婦人ーー「ひかり」 親の決めた結婚から逃げてきた女とその妹ーー「ままごと」 子育てに戸惑い、仕事を言い訳に家から逃げた男ーー「かざあな」 ■『さいはての家』の刊行に寄せて、著者メッセージ■ それから、町で彼(もしくは彼女)の姿を見た者はいないーー。 こんな一文を最後にいなくなる脇役の人、いますよね。登場人物が多いドラマティックな長編の中盤、なんらかの騒動の後にほんのり印象的なセリフを残して物語から退場する、あの人たちです。 子供の頃から、彼らが物語から退場するたび「どこに行ったんだろう」と気になっていました。居づらくなって、罪を犯して、もしくはなにかに反発して、それまで所属していた場所を捨て、他の土地へ向かう人たち。物語の作者が退場していく彼らではなく、その場に残る他の誰かを主人公に据えているということは、きっと彼らのその後は大してドラマチックでも、面白いわけでもないのだろう……と自分を納得させていた時期もあったのですが、本当だろうか。 ここではない場所へ向かった彼らは、もしかしたらとても個人的な冒険を経て、他の誰も見たことがない、静かで自由な場所に辿り着いたのかもしれない。そんな予感から、五つの物語が生まれました。 それぞれのさいはてを、見届けてください。 【著者略歴】 彩瀬まる(あやせ・まる) 1986年千葉県生まれ。大学卒業後、小売会社勤務を経て、2010年「花に眩む」で第9回「女による女のためのR-18文学賞」読者賞を受賞しデビュー。17年、『くちなし』で第158回直木賞候補となる。著書に『あのひとは蜘蛛を潰せない』『骨を彩る』『やがて海へと届く』『朝が来るまでそばにいる』『眠れない夜は体を脱いで』『森があふれる』など。

猫君猫君

著者

畠中恵

出版社

集英社

発売日

2020年1月24日 発売

茶虎で金目銀目の猫、みかんは江戸・吉原で髪結いをするお香のもとで可愛がられて育ち、まもなく二十年が経とうとしていた。 病の床についたお香は、尻尾が二叉に分かれ、言葉を操り始めたみかんが、やがて人に化ける猫の妖怪「猫又」になる特別な存在だと告げて、この世を去る。 飼い主を取り殺したと疑われ、追われるみかんを助けたのは、先輩猫又の加久楽(かぐら)だった。妓楼の一室に匿われたみかんは、同じ新米猫又の白花(しろか)らと出会い、猫又のあれこれを教えられる。 花のお江戸に隠された六つの陣地に分かれて、陣取り合戦を繰り広げていること。代々の徳川将軍のはからいで、江戸城の中には新米たちが修業する学び舎「猫宿」があること。猫又史にその名を刻む英雄「猫君」の再来が噂されていること……。 加久楽に連れられ猫宿へやってきたみかんは、「猫宿の長」と呼ばれる謎の人物をはじめ、様々な師匠のもと、仲間とともに数々の試練に挑んでいくーー 『しゃばけ』の著者が贈る、お江戸ファンタジー開幕! 【著者略歴】 畠中 恵(はたけなか めぐみ) 高知生まれ、名古屋育ち。二〇〇一年『しゃばけ』で第十三回日本ファンタジーノベル大賞優秀賞を受賞してデビュー。病弱な若だんなと摩訶不思議な妖たちが様々な事件を解決する同シリーズで二〇一六年、第一回吉川英治文庫賞を受賞。 その他に、揉めごとの裁定をする町名主の跡取りが幼馴染とともに難問奇問に立ち向かう「まんまこと」シリーズ、古道具屋を営む姉弟と、妖怪と化した道具たちが遭遇する事件を描いた「つくもがみ」シリーズ、『うずら大名』『わが殿(上・下)』など著書多数。

背高泡立草背高泡立草

出版社

集英社

発売日

2020年1月24日 発売

【第162回 芥川賞受賞作】 草は刈らねばならない。そこに埋もれているのは、納屋だけではないから。 記憶と歴史が結びついた、著者新境地。 大村奈美は、母の実家・吉川家の納屋の草刈りをするために、母、伯母、従姉妹とともに福岡から長崎の島に向かう。吉川家には<古か家>と<新しい方の家>があるが、祖母が亡くなり、いずれも空き家になっていた。奈美は二つの家に関して、伯父や祖母の姉に話を聞く。吉川家は<新しい方の家>が建っている場所で戦前は酒屋をしていたが、戦中に統制が厳しくなって廃業し、満州に行く同じ集落の者から家を買って移り住んだという。それが<古か家>だった。島にはいつの時代も、海の向こうに出ていく者や、海からやってくる者があった。江戸時代には捕鯨が盛んで蝦夷でも漁をした者がおり、戦後には故郷の朝鮮に帰ろうとして船が難破し島の漁師に救助された人々がいた。時代が下って、カヌーに乗って鹿児島からやってきたという少年が現れたこともあった。草に埋もれた納屋を見ながら奈美は、吉川の者たちと二つの家に流れた時間、これから流れるだろう時間を思うのだった。 【著者略歴】 古川真人(ふるかわ・まこと) 1988年福岡県福岡市生まれ。國學院大學文学部中退。2016年「縫わんばならん」で第48回新潮新人賞を受賞しデビュー、同作で第156回芥川賞候補に。2017年、第2作「四時過ぎの船」で第157回芥川賞候補、第31回三島由紀夫賞候補、2019年、第4作「ラッコの家」で第161回芥川賞候補。2020年、第5作「背高泡立草」で第162回芥川賞受賞。

太平洋食堂太平洋食堂

著者

柳広司

出版社

小学館

発売日

2020年1月24日 発売

ベストセラー作家が秘された歴史に命を宿す 「目の前で苦しんでいる人から目を背けることは、どうしてもできん」 山と川と海に囲まれた紀州・新宮。この地に誰からも愛された男がいたーー。 大石誠之助(享年43) 歴史の闇に埋もれた傑士の知られざる半生に光をあてる、著者2年半ぶり渾身の長編小説! 一九〇四年(明治三十七年)、紀州・新宮に西洋の王様がかぶる王冠のような看板を掲げた一軒の食堂が開店した。 「太平洋食堂」と名付けられたその食堂の主人は、「ドクトル(毒取る)さん」と呼ばれ、地元の人たちから慕われていた医師・大石誠之助。 アメリカやシンガポール、インドなどに留学した経験を持つ誠之助は、戦争と差別を嫌い、常に貧しき人の側に立って行動する人だった。 やがて幸徳秋水、堺利彦、森近運平らと交流を深めた誠之助は、“主義者”として国家から監視されるようになっていくーー。 なぜ彼は死ななければならなかったのか。 彼が犯した「罪」とは一体なんだったのかーー。 ドラマチックな筆致と徹底した歴史考察が融合した、超近代的歴史長編!!

銀燭集銀燭集

澁澤龍彦生前に企画されながらも実現を見ずに終った幻の選集が、半世紀の歳月を経てついに刊行。我が国最高の幻想作家・鏡花の膨大な作品から、澁澤ならではの鑑識眼が選び抜いた約50篇を4巻で構成。 第2巻は眉かくしの霊、海神別荘、黒百合、沼夫人、髯題目、幻往来、蠅を憎む記、龍潭譚、玄武朱雀、ささ蟹、薬草取の全11篇を収録。 至高の審美眼が選りすぐった 天上界の作家の神品の数々 谷崎潤一郎も川端康成も決して連れていってくれない一種澄みきった天上界、そこへ連れていってくれるのが泉鏡花の文学だということを、三島さんはしきりに強調していたが、まったく私もその通りだと思う。いくら鏡花文学の構造を論じ、基層を論じ、文体を論じても、鏡花の幻想の翼に身みずから乗せられて、この天上界の至福に一挙に参入しえないひとは、不幸な読者というほかあるまい。 --------澁澤龍彦 澁澤・種村没後の索漠たる世界となった現在、いま望まれるのは澁澤セレクトによる鏡花選集である。遺された澁澤リストを見れば、偏りが大きいこと以上に数多くの魅力的な謎を孕んでいるようにも思われる。いかにも澁澤好みと誰もが頷く作も多ければ、意外なマッチングの選択もあり、また何故これを澁澤がと不思議に感じられるものも少なくはない。「半世紀も昔のほんの下書きのリスト、何を書いたか忘れてしまったよ」と泉下の氏には苦笑されてしまいそうであるが、それでも鏡花と澁澤龍彦、相対する二者の魅惑は互いに響きあい、興趣は尽きない。おぼつかぬことながら謎の一端なりとも追っていければと思う。 ---------山尾悠子(「第I巻解説」より) ◎鏡花没後80年記念出版 ★澁澤龍彦の生前、1970年代前半に企画されながらも、惜しくも実現を見ずに終った幻の選集が、半世紀の歳月を経てついに刊行。 ★我が国における最高最大の幻想作家・泉鏡花の膨大多彩な作品群から、澁澤龍彦ならではの鑑識眼が選び抜いた、小説・戯曲約50篇を4巻で構成。 ★各巻の解説は、鏡花作品をこよなく愛し、2018年には泉鏡花文学賞を受賞した山尾悠子が担当。各巻に、解説者が特に選んだ一作品も増補追加する。 ★装釘は、名匠・小村雪岱の鏡花本をあたうかぎり再現した。表紙や本扉はもちろんのこと、見返しも雪岱描き下ろしの絵を用いた、美麗な豪華愛蔵版。 眉かくしの霊 海神別荘 黒百合 沼夫人 髯題目 幻往来 蠅を憎む記 龍潭譚 玄武朱雀 ささ蟹 【山尾追加作品】薬草取 解説 山尾悠子

いちばん近くて遠い君いちばん近くて遠い君

どんなに愛しくても、 あなたは亡き親友の、永遠の恋人。 リゾート地での挙式前日、嫌な予兆から結婚は間違いだと確信して リハーサルを抜け出したゾーイは、参列客のアシュにでくわした。 アシュは数年前に事故で他界した大親友の夫で、 悲しみのなか、支え合い、助け合い、理解し合ってきた相手だ。 ゾーイが助けを求めると、アシュは彼女をクルーザーに乗せ、 大富豪である彼の一族が所有する別荘に向かった。 途中、嵐に見舞われながらもたどり着いた別荘で二人きり、 今回の婚約のことや、喪った大切な人、つらかった日々…… 語り合ううちに感情は高ぶり、気づけば一線を越えてしまう。 まさか、その一夜で命を授かるとは思いもよらずに。 イマージュ人気作家が描く、亡き親友の夫とのロマンスです。この世を去った女性への忠誠が自分たちの幸せより大事だと思う二人ですが、運命はいたずらにも……。恋の行方から目が離せず、ページをめくる手が速まります。ストーリーテラーの腕が冴える秀作!

美しき夢破れ美しき夢破れ

ヴィクトリアの結婚は、誰の目にも理想的な結婚に見えた。 夫のザックはどんな女性をも虜にする容姿端麗な会社社長で、 二人は愛し合って結ばれたと、ヴィクトリアは信じていたーー この結婚の裏に彼女の父とザックの会社の提携があり、 さらに初夜の翌朝、夫が愛人のもとに駆けつけたと知るまでは。 残酷な裏切りにヴィクトリアは深く傷つき、彼のもとを去った。 お腹に赤ちゃんがいるとわかったのは、それからまもなくのことだった。 やむなく妊娠をザックに告げると、なんと彼は自分の子と信じなかった! 独りで育てようと心に決めるヴィクトリアだったが、この期に及んで、 心の片隅でザックとの愛の夢を捨てきれずにいる自分が哀しかった……。 両親の愛を知らずに育った私のように惨めな子にはしたくない。たとえ独りでも、わが子を大切に、立派に育てようと決意し、小さな生花店で働き始めたヴィクトリア。それを知ったザックから小切手が送られてきても突き返しますが、彼はたびたび目の前に現れ……。

愛なき伯爵の手に堕ちて愛なき伯爵の手に堕ちて

仮面舞踏会の夜、 乙女は窮地に陥って……。 「抵抗しても無駄だ。安心しろーー悪いようにはしない」 リネットは仮面の男に抱きすくめられ、甘いおののきを覚えていた。 弟が悪友にそそのかされて盗んだ宝石を返そうとしただけなのに、 偶然居合わせた泥棒にとらわれて、唇を奪われてしまうなんて……。 混乱するリネットの口から不意に、恥ずべき言葉が飛び出したーー 私の純潔と引き換えに、盗みを諦めてはもらえませんかと。 男は彼女の申し出を一笑に付し、宝石を手に立ち去った。 呆然と立ちすくむリネットは夢想だにしなかった。 彼は単に、友人に預けていた宝石を持ち帰っただけだということを。 そして、やがてリネットが住み込みで働く伯爵家の主だということを。 主不在のあいだに雇い入れられた家庭教師がリネットだと知るや、即座に解雇を言い渡す伯爵。リネットは深く傷つきながらも、彼と初めて会った夜の淡いときめきを忘れられず……。傲岸不遜な伯爵と心優しき健気な乙女の情熱的なシンデレラ・リージェンシーです。

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