2020年10月30日発売
「この町はとっくにひっくり返っている。みんなが気づいていないだけでな」 〈はじまりの町〉の初等科に通う少年・トゥーレ。ドレスの仕立てを仕事にする母は、「羽虫」と呼ばれる存在だ。誇り高い町の住人たちは、他所から来た人々を羽虫と蔑み、公然と差別している。町に20年ぶりに客船がやってきた日、歓迎の祭りに浮き立つ夜にそれは起こった。トゥーレ一家に向けて浴びせられた悪意。その代償のように引き起こされた「奇跡」。やがてトゥーレの母は誰にも告げずに姿を消した。 消えた母親の謎、町を蝕む悪意の連鎖、そして、迫りくる戦争の足音。 ドラマ「相棒」の人気脚本家が突きつける、現代日本人への予言の書。
その所業、人か、鬼かーー規格外の熱量を孕む小説野性時代新人賞受賞作! 江戸は文政年間。足を失い絶望の底にありながらも毒舌を吐く元役者と、彼の足がわりとなる心優しき鳥屋。この風変りなバディが、鬼の正体暴きに乗り出してーー。 「あたかも江戸時代をひらひらと自在に泳ぎまわりながら書いているような文章。こんなにぴちぴちした江戸時代、人生で初めて読んだのである。脱帽!!」(森見登美彦氏) 「早くもシリーズ化希望!」(辻村深月氏) 「作品の命というべきものが吹き込まれている」(冲方丁氏) と、選考委員全会一致の圧倒的評価。 傾奇者たちが芸の道に身をやつし命を燃やし尽くす苛烈な生きざまを圧倒的筆致であぶりだした破格のデビュー作!! ■「大傑作!!江戸という時代と場所、芝居の世界のバーチャル体験として見事」(ライター 吉田大助) ■「現代の戯作者としての力量を秘めている。とんでもない新人が登場したものだ。今年度ナンバーワンのベスト本である。」(評論家 菊池仁) ■「江戸の景色が浮かんでくるような文章のセンスは驚異的である。」(ミステリ評論家 千街晶之) ■「これで新人!?ぜひ豪華絢爛な舞台や映画で観たい!」(丸善本店・高頭佐和子) ■「取り憑いたら離れない「鬼気迫る」以上の物語。すっかり呑み込まれ、抜け殻状態。。」(ブックジャーナリスト 内田剛) ■「あまりに興奮して、体が乗っ取られたようになりました」(本の雑誌社・浜田公子) ■「アウトローな存在であり、かつ男女の性別からも逸脱している役者の生理や道徳観念を浮き彫りにしていく展開がスリリング。肚の坐った書き手だ」(書評家 杉江松恋) 時は文政、所は江戸。 鳥屋を営む藤九郎は稀代の女形として人気を誇った元役者の魚之助に呼び出され、中村座の座元の許へと向かう。 数日前『堂島連理柵』という新作台本の前読みを役者六人で車座でおこなった際、輪の真ん中に誰かの頭がごろぅり、転げ落ちてきたという。しかし役者の数は変わらず、鬼が誰かを食い殺して成り代わっているのは間違いない。二人は「鬼探し」の道行と洒落こむが、それは同時に、役者たちが芸の道をきわめるために鎬を削る地獄めぐりでもあった。 梨園の知られざる闇、血のにじむような努力や才能への渇望、葛藤を目の当たりにするうちに、藤九郎は、人と鬼の境目に深く思いを致すことになる。 芝居中、熱狂的な贔屓に襲われて足を失い、悪態をつきながら失意のうちに過ごす魚之助をなんとか舞台に戻してやりたい、その一念だった藤九郎だが、“傾奇者”たちの凄まじい執念を目の当たりにするうち、心も体も女形として生きてきた魚之助の人生や役者としての業と正面から向き合うことになりーー。 善悪、愛憎、男女、美醜、虚実、今昔ーーすべての境を溶かしこんだ狂おしくも愛おしい異形たちの相克。
世界一の美少女になるため、俺は紙おむつを穿くーー。 しがない会社員の狩野忍は世界最大のVR空間サブライム・スフィアで世界最高の美少女シノちゃんとなった。 VR世界で恋をした高級娼婦ツユソラに会うため、多額の金銭を必要とするシノは会社の先輩である斉木みやびと共に過激で残酷な動画配信を行うことで再生数と金を稼ぐことを画策する。 炎上を繰り返すことで再生数を増やし、まとまった金銭を手にしたシノはツユソラとの距離を縮めていくのだが、彼女を取り巻く陰謀に巻き込まれていきーー!?
迷宮都市ガレルにて念願の家馬車を作り、エイフやイサといった新たな仲間も得たクリス。永住できる場所を探しつつものんびりと旅を楽しもうと決めた一行は、エイフの発案で天空都市シエーロへとやってくる。巨大な樹々の上に作られたシエーロの街を観光しつつ冒険者として依頼をこなすクリスたちは偶然、エルフ族の青年マリウスとその幼馴染ナタリーに出会い仲良くなる。そしてナタリーがニホン組の青年からストーカー被害を受けているという話を聞いたクリスは、彼女を助けるために奔走するのだがーー!? 努力家少女のDIY異世界奮闘ファンタジー、待望の第2弾! 書き下ろし短編「精霊の加護」を収録!
タロットの秘密を求めてついに動き出すイレ皇子ー朱眼の青年アベルや学友たちと楽しくも忙しい学園生活を送っていた転生者の令嬢アリス。しかし最近、親友レティシアの様子が少しおかしい。彼女の実家に不穏な動きを感じたアリスたちは調査を開始し、それをきっかけに警備が厳重な教会に忍び込んであるアイテムを盗み出すことに…。一方、アリスを目の敵にするもう一人の転生者ガブリエラは、アリスとアベルに並々ならぬ関心を寄せるイレ皇子に接近していた…。恋より魔法!元アラサー女子の転生令嬢。
絵師歌川国芳の弟子たちと二人の娘の物語 明治六(一八七三)年、歌川国芳の十三回忌の施主はただ一人の遺族で〈一勇斎芳女〉と名乗る国芳の次女。だが直前に行方知れずになったりして、どこかつかみ所のない女だ。 追善書画会に顔を揃えた落合芳幾、月岡芳年、河鍋暁斎、歌川芳藤、そして三遊亭圓朝などの弟子たちは、それぞれ新しい時代の生き方を懸命に模索していた。 そして、彼らの心の中には、いつも師匠の国芳がいる。中でも暁斎は、仮名垣魯文と絵新聞を始めると意気盛んだ。のちに日本の漫画雑誌の嚆矢となるこの雑誌は、その名も『日本地(ニッポンチ)』。 結局、弟子たちの生きざまを見届けたのは昭和まで生きたという芳女(お芳)だった。彼女も絵を描いているが、名を残した作品は今のところ三枚続きの錦絵があるだけだ。主に春画や刺青の下絵、皮絵などを描いていたらしい。彼女が最後まで守っていた国芳の遺品とは? そして国芳に終生愛されながら早世した長女の登鯉が、最後に選んだ人生の選択とは? 自身も日露戦争時に『日ポン地』なる雑誌を出していた新聞記者の鶯亭金升は、お芳から話を聞き出していくうちに、思いもかけない〈国芳の孫〉の存在を知る。 【編集担当からのおすすめ情報】 著者の「国芳一門浮世絵草紙」シリーズ(全五巻)は、幕末までの国芳と登鯉、弟子たちの物語でしたが、本書は明治以降の国芳とお芳、弟子たちの物語になっています。 二〇一八年刊行『がいなもん 松浦武四郎一代』で中山義秀文学賞と舟橋聖一文学賞を受賞した著者の受賞第一作になります。
時代は戦後へ。傷ついた人々を音楽で勇気づけたいと奮闘する夫婦の物語、ここに完結! 不遇の時代を乗り越え、作曲家として活躍する古山裕一と、そんな夫を明るく支える妻・音。時代は戦争へと突入し、裕一は、命を懸けて戦う人々を応援するために曲を作り続ける。終戦後、戦意高揚のために作った自分の曲が人々を戦争へと駆り立て、恩師や親しい人たちを失う結果になってしまったことに深く傷ついた裕一は、音楽から距離を置くようになる。やがて音や仲間たちとのふれあいを通じて、音楽の力を再発見した裕一は、復興に向かう人々の心を勇気づけようと、新しい時代の音楽を奏でていくーー。数々の応援歌やヒット歌謡曲を二人三脚で生み出した夫婦の物語がクライマックスを迎える!
才能があり華やかに生きる禅、才能がなく地道に生きる賢一。幼馴染でありながら対照的な2人は、それぞれ異なる人生を選び、次第に征遠になっていく。数年後、久しぶりの再会を果たした彼ら。しかしこの再会には驚くべき思惑が隠されていた。
期待されながら伸び悩んでいる若手刑事たちの元に、警視庁本部から送り込まれる謎の男、向井光太郎。捜査中のミスに悩む女性刑事、有名な俳優の取り調べに苦戦する刑事、尾行に失敗した刑事。彼らそれぞれに適切な助言を与えるその男は、なぜ刑事課ではなく人事二課の所属なのか?経験を積み成長し、所轄署から本部に戻り出会った三人は、向井との関わりを語り合い、その過去を探り始める。そんな彼の過去と、三人の刑事が取り組む女子大生殺害事件が交錯する。堂場瞬一が描く刑事たちの光と影。
引き裂かれた世界の寓話 トルコとの戦争へ出かけた若き子爵メダルドは敵の砲弾で吹き飛び、体をまっぷたつに引き裂かれるが、奇跡的に一命をとりとめ、右半身だけの体で領地に帰ってきた。しかし、その性格は以前とは一変していた。メダルドの通ったあとには半分に切り裂かれた果実や作物、動物たちがちらばり、彼の開く裁判ではどんなに軽い罪でもすべて絞首刑に処された。お城の年老いた乳母は言った。「帰ってきたメダルドは邪悪なほうの半分らしいね」。人々は半分になった子爵が領内に落とす暗い影に怯えた。ある日そこへもうひとりの子爵、良いほうの半分が帰ってきた……。人間存在の歴史的進化を寓話的に描いた三部作《我々の祖先》の第一作『まっぷたつの子爵』を清新な新訳で贈る。三部作執筆の経緯を作者自ら解説したエッセー「一九六〇年の覚書き」(本邦初訳)を併録。翻訳権取得。
公爵家の五男に生まれたクレストは、家族内で肩身が狭く、幼馴染の婚約者には奴隷のように扱われていた。そんなクレストは、鑑定の儀で『ガチャ』という「スキルを獲得できるスキル」を手に入れた。これで家族内での立場が改善されると思っていた。しかし、使い方が分からず嘘をついていると思われ、魔物が跋扈する森に追放されてしまったーー。追放された先で魔物を討伐した時『ガチャ』を使用するためのポイントが手に入っていることに気が付く。そこでポイントを貯めて回してみると、生活に便利なスキルや戦闘に使えるスキルなどを獲得することができた。クレストはそれらのスキルを使い自由で快適な生活を目指すことに…!
ズバ抜けた防御力を持つジークは魔物のヘイトを一身に集め、パーティーに貢献していた。しかし、攻撃重視のリーダーはジークの働きに気がつかず、追放を言い渡す。ジークが抜けた途端、クエストの失敗が続き……。一方のジークは王都の門番に就職。持前の防御力の高さで、瞬く間に分隊長に昇格。部下についた無防備な巨乳剣士、セクハラ好きの怪力女、ヤンデレ気質の弓使い、彼女らとともに周囲から絶大な信頼を集める存在に!「小説家になろう」発ハードボイルドファンタジー第一弾!
恋人、仲間、そして自らの能力まで奪われてしまったクロムは、『闇』の能力【固定ダメージ】を手に入れ、 かつて自分を追放した者たちへの復讐を着実に果たしていくーー。 だがクロムを陥れた張本人、勇者ユーノもまた恐るべき力を手に入れていたのだった。 先史より続く『闇』と『光』の激突が、再び始まろうとしていた!! すべてを失い、すべてを奪われた男の復讐譚ーーさあ無敵<リベンジ>の始まりだ!
最年少にして、最強の魔王として君臨したグレンは、人族との和平に成功し、ずっと夢だった庶民としての暮らしを始めることにした。そのために人間たちと魔族が共存する街を作り、自分もただの冒険者として、そこで暮らすことに決める。低級冒険者としての、何でも屋のような暮らしも、戦いに明け暮れたグレンには新鮮なことばかりだ。街の人々と交流することで、幸せを感じている。そんなグレンだが、もちろん庶民の常識なんてない。メイドとして仕えてくれたエルフのグラシアヌに、日常生活のことは頼りきりだった。エッチなご奉仕も大好きな彼女は、グレンに毎日、いろいろなことを教えてくれるのだ。人族のお姫様であり、最強の姫騎士として魔族にも知られたエルアナや、旅の仙人娘チェンシーが家に押しかけたハーレムで、グレンの日常はいつのまにか「普通の庶民」からは、やはり離れてしまったけれど…。楽しい毎日だから、世界を平和にしたことに悔いはない。のんびり庶民生活を満喫しつつ、大満足な日常を送っていたグレンだが、せっかくの両族友好を害する企みに触れ、魔王としての力をふるう時が!?アフターストーリー「グラシアヌ&チェンシーとの夜」「エルアナとの休日」。
1970年代神戸からインドにおくられ、インドの祖父宅を家出した非行少年エディは、like a rolling stone-転がり落ちる石のようにーヒッピーにハシーシを売りながらインド各地や中東を経て北欧まで自分さがしの旅へ。しかし、ヘロインに手を出してからは、堕落は早い。犯罪、ヘロイン中毒の魔を手から人間復活のためにエディが選んだ道とは?おさななじみアキラとの交差が描いた稀有なる“追体験小説”。