2020年3月6日発売
世間が万博に沸き返る1970年、洋一郎が小学校2年生の時に家を出て行った父親の記憶は淡い。郊外の小さな街で一人暮らしを続けたすえに亡くなった父親は、生前に1冊だけの「自分史」をのこそうとしていた。なぜ?誰に向けて?洋一郎は、父親の人生に向き合うことを決意したのだが…。
老人ホームの施設長を務める洋一郎は、入居者たちの生き様を前に、この時代にうまく老いていくことの難しさを実感する。そして我が父親は、どんな父親になりたかったのだろう?父親の知人たちから拾い集めた記憶と、自身の内から甦る記憶に満たされた洋一郎は、父を巡る旅の終わりに、一つの決断をするー。
4年間の大阪転勤を経て、東京に戻ってきた小川。久しぶりにディケンズ先生が夢に現れると、彼は自分の生誕200周年を祝うために計画中だった。演奏者としての頭角を現す娘たちに刺激を受けながら、妻・秋子とともに音楽にのめりこみ、新しい友人も増えた。「50歳までに小説家になる」と宣言をした小川は、いよいよ執筆をはじめる。愉快なディケンズ先生の助言のもと、忙しくも充実した日々を過ごす。そこに思いもよらない危機が訪れ…。ハートフル・ヒューマン小説、第3弾。
音楽活動に精を出す一方で、小川は小説の制作を進めていた。相変わらずディケンズ先生は夢に姿を現しては、小川の人生相談に乗ってくれたり、自分の著作について語っていた。ひょんなことから小川はディケンズ先生に対して、数々の名作の普及のために貢献することを約束する。永遠の名作『クリスマス・キャロル』。小川は自分の小説の中で演劇化を試みるが、果たして成功するのか?連作中編ヒューマンドラマの続編。
内戦下のシリア。祖国を逃れた作家が一時帰還し、絶え間ない爆撃の下、反体制派の人々の間で暮らしながら、同胞たちを訪問し、それぞれの苦悩と挫折に耳を傾けた一年間の記録。語り伝えることを通じて、内戦という過酷な現実と向き合う試み。世界16か国で翻訳された記録文学の白眉!
亡夫の埋葬を終えた直後、ララは車で連れ去られた。驚いたことに、運転していたのは元恋人の富豪チーロだった。2年前、結婚間近の二人は借金まみれのララのおじに誘拐され、怪我をしたチーロをかばってララは許しを乞うが、おじは非情にも名家の老当主に姪を花嫁として売り渡したのだ。「僕は妻を必要としている。2年前の約束を果たしてもらおう」あまりに冷たいチーロの求婚に、ララは身を震わせた。真相を知らない彼は、いまも私を恨んでいるのだ。ララは結婚を承諾したー黒衣の下の純潔を隠したまま。
ロントンで質素な生活を送るキャットは、ある日、手紙を受け取り、指定された法律事務所に出向いた。そこで対面したのは、ギリシアの実業家で富豪のザック・カヴロス。彼が冷酷な祖父の代理人だと知り、キャットは怒りに駆られた。母は結婚に反対されて駆け落ちしたものの妊娠後に捨てられ、何の援助もなくイギリスで極貧生活を送ったあげく亡くなったのだ。それでも祖父が重病と知らされて心を揺り動かされ、キャットは提案されたギリシア行きに同意する。まさか旅の途中でザックに抱きすくめられて唇を奪われ、生まれて初めての熱いときめきを覚えることになるとも知らずに。
修道院育ちのピアは、旅先のNYで初めての恋におちた。エメラルド色に輝く瞳を持つ黒髪の優美なアレスに身も心も捧げ、帰国後、思いがけない妊娠に気づく。アレスの連絡先すら知らず途方にくれたが、おなかのふくらみが目立ちだす頃、彼が現れた。そして、アティリアの皇太子という身分を明かし、おなかの子が我が子ならばと求婚してきた。子供に父親は必要よ。でも、愛のない結婚なんて…。ロンドンでのDNA鑑定のため、彼の自家用機に乗ったピア。機内で眠り込み、目を覚ましたとき…そこは彼の王国だった!
こんなに美しくてセクシーな敏腕ドクターがいるなんて!3カ月前、ケイトは初対面の臨時勤務医フアンを見て、密かにときめいた。彼が現れると、女性スタッフはみな化粧直しに走るほどだったが、まじめで用心深いケイトはフアンからの誘いを再三断っていた。あと2週間もしたら彼はこの国を去り、また別の病院で働くのだから。わたしは遊びの恋ができるほど、器用でも大胆でもない…。だが刻々と別れの日が近づく中、フアンの医師としての能力の高さや、患者に接する態度の温かさを目の当たりにし、恋心は最高潮に達した。ある夜、フアンから不意にキスをされ、ケイトは理性も忘れて愛おしげに彼の首筋に触れたーまさか、その手を拒まれるとも思わずに。
孤児のマリーは里親家庭をたらい回しにされながら、奨学金で大学を卒業し、今は自らが支援を受けた慈善団体で働いている。ある日、マリーに思わぬ転機が訪れた。カンヌにある本部に呼ばれ、慈善イベントのマネージャーに抜擢されたのだ。一緒に仕事をする裕福な支援者ザンダーが現れた瞬間、優雅で自信に満ちたハンサムな彼を見て、マリーは息をのんだ。さる公国の王子で、亡き姉の幼い娘を後見する彼は慈悲深くもあった。好きにならずにいられない…でも、身分の違いを忘れてはだめよ。そんなマリーの気も知らず、ザンダーは彼女に豪華なドレスを着させ、“同僚”として次々と上流階級のパーティに連れ歩くのだった…。
結婚相談所に入会したペイトンは、大企業CEOギャレンの花嫁に選ばれた。彼は親友夫婦の忘れ形見の少女を守り育てるために妻を探していたのだ。だが実は、ペイトンの望みは結婚ではなく、彼の祖母アリスに近づくこと。彼女の父はかつてアリスに不当解雇され、一家は路頭に迷った末、病の母は治療を受けられず息を引き取ったのだった…。ところが、いざ夫となったギャレンは世界中の誰よりもハンサムで、親を失った少女を思いやる魅力的な男性と知り、ペイトンは胸が痛んだ。婚前契約により最低3カ月は結婚を続けなくてはならないけれど、彼らのためにも、なるべく早く離婚を切り出すべきね。このとき彼女はまだ知らなかったーわが心に芽生えつつある愛の重さを。
アイヴィが大企業の社長パクストンの秘書になって1年半。初めて会った日から、魅力的なボスに密かに憧れてきたけれど、じつは彼女の母方の一族とパクストンの一族はかつての敵同士だった。母方の素性を隠し、この恋は実らぬものと半ば諦めていたある日、舞踏会後にパクストンに誘われるまま、情熱の一夜をともにしてしまう。だが、翌朝ベッドに彼の姿はなく、アイヴィはひどく傷ついた。やがて妊娠まで発覚し、ボスの出張中に理由も告げず退職願を提出した。ああ、また一つ大きな秘密ができてしまったなんて…。独り切なく産婦人科へ通うアイヴィが妊婦用の薬を受け取っていたとき、強い視線を感じて顔を上げると、なんとパクストンと目が合った!
リゼットはウェイトレスをしながら苦学した末、法律事務所に就職した。大学を卒業できたのは、客だった余命わずかな老富豪のおかげだった。友情を築いた二人は、貧しい彼女の家族への援助と引き換えに、孤独な老富豪が最期の時を楽しく過ごすための“白い結婚”をしたのだ。だが彼の息子ジェイクは彼女を金目当ての女と責め、敵意を向けてきた。老富豪が亡くなって2年が経ったころ、リゼットは職場で上司から、新しいクライアントの世界的な大実業家を担当するよう告げられる。大抜擢に喜んだのもつかの間、紹介された相手を見て凍りついたーそこには、鋼のような瞳で彼女を見据えるジェイクの姿が。これまでずっと私を冷遇してきた彼が、いったいなぜ…?
カーラの双子の妹が“息子を取り戻して”と言い残して亡くなった。夫の忘れ形見である赤ん坊を、冷酷な義兄に奪われたという。妹の義兄は、裕福なイタリア人実業家ザンドロ・ブルネレスキ。意を決して彼の豪邸を訪ねたカーラは、案の定、門前払いされる。「死んだ弟も、君も、親として不適格だと言ったはずだ!」彼はわたしを妹だと思っている…カーラは誤りをあえて正さず、亡き妹のために、どれだけ息子を大切に思っているかを訴えた。あまりにもハンサムなザンドロに訝しげに見つめられ、体が震える。彼のまなざしにも、隠しきれない情熱が…いいえ、妹の子を奪ったザンドロ惹にかれてしまうなんて、絶対にだめ!
ある日、ローラは姉夫婦が死亡したという連絡を受け取った。知らせてきたのは義兄の親友で名門出身の大富豪アントン・ドヴィア。何度か会ったことはあるが、過剰なまでの男っぽさや尊大さに、ローラはつい怖じ気づいてしまい、ひどく苦手な相手だった。遺された姪サリーのもとに駆けつけると、そこにはアントンがおり、驚いたことに、後見人としてサリーを引き取ると言う。たしかに一介の秘書の私より彼に育てられたほうが幸せかもしれない。でも、両親を亡くして不安になっている姪を放ってはおけないわ…。ためらい、思い悩むローラを、アントンは嘲るように眺めると、有無を言わせぬ口調で言った。「君は僕と結婚しなくてはならない」
アビーは幼い息子と二人きり、孤島で暮らしていた。息子の父親で大富豪のダモンのことはずっと忘れようとしてきた。2年半前、アビーは事業拡大を目論む強欲な父親に利用され、結果として、愛するダモンの家族を破滅へと追いやった。彼は私が裏切り者だと固く信じている。決して赦しはしないだろう。それなのに、突然やってきて、子供のための結婚を迫るなんて!彼はアビーの父親から事業を奪い返し、息子のことを知ったのだという。アビーが父親の片棒を担いでいたと信じているダモンは、今すぐ息子を連れ、彼のシチリアの屋敷へ移るようにと命じた。息子の世話をし、夫のベッドを暖めることが、彼女の贖罪だと言って。
『クマのプーさん』と『プー横丁の家』を精読する!「正典」とされる二作品の各章の「あらすじ」を整理しながら各章ごとに鍵になるテーマを順に読解していく。また、「プー物語」の他の作品への影響関係などにも迫る!原作に書かれたテキストそのものに寄り添うことでしか見えてこない文学の悦楽!