2020年4月22日発売
飲酒運転中、何かに乗り上げた衝撃を受けるも、恐怖のあまり走り去ってしまった大学生の籬翔太。翌日、一人の老女の命を奪ってしまったことを知る。自分の未来、家族の幸せ、恋人の笑顔ー。失うものの大きさに、罪から目をそらし続ける翔太に下されたのは、懲役四年を超える実刑だった。一方、被害者の夫である法輪二三久は、“ある思い”を胸に翔太の出所を待ち続けていた。贖罪の在り方を問う、慟哭の傑作長編。
至高のAI『タイタン』により、社会が平和に保たれた未来。人類は“仕事”から解放され、自由を謳歌していた。しかし、心理学を趣味とする内匠成果のもとを訪れた、世界でほんの一握りの“就労者”ナレインが彼女に告げる。「貴方に“仕事”を頼みたい」彼女に託された“仕事”は、突如として機能不全に陥ったタイタンのカウンセリングだったー。
北九州の一家が三世代にわたって見舞われた不審死。時を超えて連なる事件に刑事・道原が迫る!北穂高岳を登山中、シングルマザーの門島由紀恵が落命した。鑑識の報告で何者かに殺されたことが判明し、松本署の道原伝吉は殺人事件として捜査を開始。現場付近にいた登山者への聞き込みで不審な単独行の男性が浮上する。さらに由紀恵の元夫・竹川実の姿は都内の住居になく、勤め先も辞めていた。疑念を胸に道原は二人の故郷・小倉へ。由紀恵の知人らの証言から、彼女の父親だけでなく、祖父までもが関門海峡近くで不審な死を遂げていたことを知る。三世代続けて遭った事件に関連はあるのか!?
専業主婦の美佳は、夫の大介がいまだにかつての友人たちと遊んでいることに不満を募らせていた。特にその中にいる吾妻智子の存在は、美佳の心をよけいに不安にさせていた…(「マドンナのテーブル」)。円満離婚が成立し、実家に戻った亜希子。ある日、同居中の母親の様子がおかしいことに気づき、病院へ連れて行くと、医者から告げられたのは母の「認知症」だった…(「夜の森の騎士」)。日常の中にある、男と女の微妙な関係性を描いた5編。
下町の駄菓子工場の女社長・万純(30)は、新事業もうまくいかず、恋人もおらず、愚痴を言えるのは幼なじみのマイナーサッカー選手の翔太(28)だけ。母から結婚を急かされるなか、翔太からプロポーズをされるが(「女社長の結婚」)。トランスジェンダー(MtF)の範之(27)は、実家の老舗旅館に戻って仲居の修業中。しかし女性の格好をする範之を、母である女将がなかなか認めてくれず(「若女将になりたい!」)。障碍者を多く雇用する会社に中途入社した翼(25)。同じ部署の障碍をもつ伊藤さんとどうコミュニケーションを取ってよいかわからなかったが(「わが社のマニュアル」)。働き方、暮らし方、生き方に惑う現代人に贈る、6つの“あと継ぎ”物語。
あらゆる人間が一瞬にして黒い塊となった世界。ヒトのままの姿で取り残された者の共通点は●●●だった…。崩壊していく日常の中で残された者が選ぶ選択とは?新進気鋭の作家が挑む衝撃のディストピア小説!
透明人間による不可能犯罪計画。裁判員裁判×アイドルオタクの法廷ミステリ。録音された犯行現場の謎。クルーズ船内、イベントが進行する中での拉致監禁ー。絢爛多彩、高密度。ミステリの快楽を詰め込んだ傑作集!
第二次世界大戦下、ビルマの山村地帯で兵站勤務に就く軍曹の西隈。現地の労務者をまとめてゆくなかで直面した、想定外の出来事ー。日本軍はペストの予防接種を進めようとするが、部落の長老は頑なに拒む。そんな長老に対し、軍医見習士官が演説を打つ。その内容は、ビルマ人にとってあまりに辛辣で不敬なものであったが…。「仏道に反して」。ビルマ人は労務でもロンジーをはく。肉体労働には適さない腰巻きのようなその衣服、そして長時間の昼寝。労務者から昼寝を取り上げようとする西隈に、部落長が放った言葉とは?「ロンジーの教え」。今を生きる私たちこそ、痛烈に胸を衝かれる五編。
十六の夏に出会ったイギョンとスイ。はじまりは小さなアクシデントからだった。ふたりで過ごす時間のすべてが幸せだった。でも、そう言葉にすると上辺だけ取り繕った嘘のように…(「あの夏」)。誰も傷つけたりしないと信じていた。苦痛を与える人になりたくなかった。…だけど、あの頃の私は、まだ何も分かっていなかった。2018年“小説家50人が選ぶ“今年の小説””に選出、第51回韓国日報文学賞受賞作。