2021年12月22日発売
大手新聞社を定年退職した夜、連れて行かれたショーパブで一人の女性と出会った鮎子。アサミと名乗る彼女はショーの演出を手がける立場で、出演ダンサーのオーディションを近々行うという。そのオーディションに立ち会って欲しいと、鮎子はなぜか頼み込まれる。禁断の出会いをきっかけにアサミに翻弄される鮎子。新宿、浅草、バリ島を舞台に、アサミに心身をとりこまれた先に体験したのは、想像を絶する「宴」だったーようこそ、世にもおぞましい“美食”の狂宴へ。
「60年前の団地生活を体験して500万円!」という企画につられて、リアリティショーに集まった二つの家族と番組制作者たち。古き佳き時代であるはずの昭和の生活は、思ったほど楽じゃないどころか地獄の格差社会。意外な人物たちも巻き込み、不穏な空気が漂い始める。次々と起こる事件は虚構か、現実か…。
第166回芥川賞候補作。高校の歴史研究部に所属するぼくは、ある日皆川城址で中年男に出会う。男はぼくが入手した旧家の蔵書目録を奪い取ると、映画監督の縁戚にあたる小津久足の著作を指さし、『皆のあらばしり』などという本はこれまで全く記録されていないと言う。「まだ世に出てないものだってことか」「もしそうなら大発見やのー」男は満面の笑みでぼくの肩に手を置いた。うさん臭さに警戒しつつ、ぼくは男の博識に惹かれていく。幻の書の新発見か、それとも偽書かー。高校生のぼくと怪しい中年男は、「謎の本」の存在を追う。歴史謎解き+スリリングな会話劇+ラストの大逆転。本をめぐる知的愉楽に満ちた三島賞作家受賞第一作。第37回坪田譲治文学賞受賞
陽気で如才なく、やがて地下出版に携わるイリヤ、繊細な詩人の感性を持つユダヤ人のミーハ、ピアニストを目指すサーニャ。三人の幼なじみを軸に、そこに三人の少女たち、正義感に溢れる優等生オーリャ、苦学の末に役人の妻となるガーリャ、ユダヤ人のタマーラが加わり、六人の人生が時に交錯して時にはなれる。1953年のスターリンの死から1991年のソ連崩壊へ。激動の時代を背景に、人を愛し、結婚し、子どもを産み、互いに影響し合いながら困難な時代を生き抜いた市井の人びとのドラマを、ノーベル文学賞候補にも目される女性作家が複雑な光沢と色合いで織りあげていく。人間への深い愛情に満ちた大河長篇。
東京都杉並区。古くからの住宅街の空き家に総勢十人の大家族が越してきた。カリスマ的なオーラを放つ六十代の女性を筆頭に、三人の娘とその連れ合い、そして孫の少女三人という女系家族だ。平安時代から神に仕える仕事をしてきたという一族は、不思議な磁力でたちまち地域の住民たちを取りこんでゆく。隣家に住む榊可南は彼らに警戒心を抱き、そのルーツを探ろうとするが、蔓延し始めた感染症がさらに思わぬ事態を引き起こしてゆくー。
息子を溺愛し、学校や近隣でトラブルを繰り返す母親。家から一歩も出ず、姿を見せない息子。最愛の息子は本当に存在しているのかー歪んだ母性が、やがて世間を震撼させるおぞましい事件を引き起こす。
大学生の玉城聖子が書店で待ち合わせているのは、警視庁の幹部と、座間味くんと呼ばれる中年の会社員の男性。世代も性別もバラバラだが、不可解な話を肴に時折酒を酌み交わす仲だ。浮気性の男が起こした傷害事件、若手起業家と空き巣の争い、猫がもたらした複雑な出会い、キャンプ場で一人テントを広げるスーツの女性、そして聖子の胸に淀む罪悪感…。杯を干すほどに推理は冴え、思いも寄らぬ真相が露わになっていく。酔いにまかせて油断しないで。世界はたった一言で変わるから。
ここは競天馬場。人々はペガサスのレースに熱狂して…-「天翔ける」、力みなぎるエナジードリンク。その力に頼りすぎると…-「Wolf」、やっと進んだ最終面接。でも社長の頭は三つあって!?-「会社の番人」…ヴァンパイアが、ミイラ男が、スライムまで!?古今東西のモンスターたちが現代社会で泣き笑い。どの話から読んでも楽しい全10編!現代ショートショートの旗手が贈る、シリーズ第4弾!
1967年生まれの理夏。アパレル業界に憧れて上京した19歳の頃バイトをしていたパン屋さん「アンゼリカ」が閉店すると聞き、30年ぶりに下北沢を訪れた。古いアパート「コーポ服部」で過ごしたバイト仲間の秋子、元住人・ちはるとの日々は濃く楽しい時間だったが、秋子に恋人ができ、すれ違い、三人はバラバラになってしまった。時を経ても消えることのない罪悪感を抱える理夏に、一通の手紙が届きー下北沢に実在した人気パン店「アンゼリカ」を舞台に、青春の輝きと苦みを知る大人のための物語。
十返舎一九、一世一代の野辺送り。「煙と共に灰左様なら」。お江戸の大火で、命からがら焼け出され、無一文のすっからかん。一九と娘の舞一家、涙と笑いの大騒動の巻。
遺書もなく自殺した双子の弟の携帯。同じ顔を持つ兄が顔認証を突破すると、礼文島行きの航空券を見つけた。そこに弟の「死」の答えはあるのかー。マルタ島、台湾、ロンドン、NY、南米、東京、青春小説の名手が紡ぐ「喪失と再生」の物語!
20世紀を生き抜いた女性たちに捧げる、21世紀を生きる女性たちからの温かな視線。『フィフティ・ピープル』『保健室のアン・ウニョン先生』のチョン・セランが贈る家族三代の物語。韓国で16万部を突破した待望の最新長編小説。
異世界『ワーゲン』の勇者として突然召喚されたタカヒロ。しかし、転生特典で貰ったのは『スティール』という他人のモノを盗むスキルだったため、召喚した王様から浅ましいスキルと卑下され、無一文のまま街に放り出されてしまう。やむなく『スティール』で日銭を稼ぎながら稼冒険者稼業を始めるが、異世界の魔物は予想以上に強く、盗んだスキルを多数持っていても全く歯が立たなかった。そこで、強い冒険者奴隷を買いパーティーを作ることを決断、さっそく奴隷商に足を運んだタカヒロは、ある鬼族のメイド少女と運命的な出会いをする。このメイド少女がタカヒロを真の勇者へと導いていく…。
パラオ滞在中に出会った島民の女性をユーモラスに親しみあるまなざしで描いた「マリヤン」、ある南の島に伝わったとされる昔話を題材に描いた「幸福」、そしてタイトルとなった「かめれおん日記」を収録。自身の望まぬ環境と喘息の持病に悩むある教師が、突然生徒から渡されたカメレオンを飼育することになる。その珍奇な小動物の観察から、「自身への呵責と省察」が思索的に展開し、現実と内面の世界を往還する。環境に適応できずに衰弱する「かめれおん」と何とか今の状況から脱却を試みる人間が鮮明に描かれる。