2021年2月発売
爬虫類を愛する学者の父と本屋を営む母の軋轢のなかで育った、数字がすべての若者が世界の真実に触れていく表題作のほか、車を吹きとばすハリケーンのなか、絶品のワインを供に過去の思い出深い男たちと邂逅する「ハリケーンの目」、深夜のウォーキングで目にする水族館の水槽のような近隣の窓景を描く「亡霊たちと抜け殻たち」、奨学金の受給停止をきっかけに、路上生活者となった女子大学院生の彷徨譚「天国と地獄」など、蛇やワニの危険に満ち、差別や格差が色濃く残り、亡霊たちがさまよう土地で語られる傑作短篇集。
夏の盛り、首都圏で不可解な遺体が次々と発見された。その遺体の共通点は、若者・歯がない・死因は心臓発作、というものだった。警視庁は捜査を進めるうち、被害者の部屋のくず入れに高頻度で、あるコンビニが販売しているデザートの包みが捨ててあることを突き止めたが…果たして、この事件は病気なのか、事故なのか。それとも殺人なのかー。
自称詩人のイサオは、放浪途中に訪れたポーランドの森の中である悩みを抱えた若い女性・エミリアと出会う。己とは何か、自分は何をするために今を生きているのか、これから何をすべきなのか…。宗教から社会・政治、心理学に至るまで、真正面から哲学的に語り合う二人の物語。新感覚の社会派“対談”小説。
とある国の政府転覆を命じられた機密工作員。潜入捜査の最中に、彼の過去にまつわる意外な事実が発覚する。ショックを隠し切れない彼は、このミッションを最後に工作員の引退を決意。過去を消し去り、永住地として南の島で暮らそうとしていた彼を待ち受けていたこととは…。運命に翻弄される一人のスパイの生き様と、彼を取り巻く人間愛、自然愛のすばらしさを鮮やかに描き出す。
キジル王に嫁ぐはずだった、青の王家の姫ぎみダリヤが殺されたー。村の踊り子ミランは、流浪の策士ユーシュンに拾われダリヤの身代わりとして西進の旅に出ることに。道中、持ち前の度胸とバイタリティで世直しを重ねるミラン。そんな彼女を飄々とあしらうユーシュンだが、実は密かな計略をめぐらせていて…。
奇抜な着想、軽妙なプロットで、短編を書かせては随一の名手。1963年には『未来世界から来た男』で創元SF文庫の記念すべき第一弾を飾ったフレドリック・ブラウン。その多岐にわたる活躍の中から、SF全短編を年代順に収めた全4巻の決定版全集。第4巻には「回答」「猫恐怖症」など著者の筆が冴える傑作68編を収録。
見習い介護士の青年グレゴワールが、老人介護施設で元書店主のピキエ老人に出会い、まったく無縁だった本の世界に足を踏み入れることに。ピキエ氏から朗読を頼まれ、彼の道案内にしたがって、さまざまな本に出会い、読書の魅力を知り、人々と出会い成長していく。本と友情、本と愛情、本と人生を描いた傑作。
時は慶応元年。薩長同盟成立に向けて奔走する坂本龍馬は、京でようやく西郷吉之介を説き伏せた。しかしこの重要な時期に、ともに上洛した長州藩士・小此木鶴羽が斬り伏せられ、下手人は逃げ場のない場所から煙のように消え失せるという奇怪な事件が発生する。尾張藩公用人の鹿野師光は、事件の目撃者だという龍馬に呼び出され、下手人の捜索を依頼される。師光が追うべきは、藩を超えて小此木と友誼を結んでいたはずの薩摩藩士だったーーデビュー作にして第19回本格ミステリ大賞を受賞した『刀と傘』前日譚にして、著者初となる長編ミステリ。
謎を愛し論理を貴ぶ読者の方々は、ここまでの文章を読んで事件の真相に辿り着いたでしょうか。解決に導くための手掛かりは、紙上の名探偵たち同様、皆様にも既に手渡されています。冷静な観察と論理的思考を駆使すれば犯人を、そして小説の向こう側にいる作者も出し抜くことができるかもしれません。推理する愉悦に、どうぞ存分に浸ってください。六人の推理作家から投げられる手袋はひとつーー犯人は誰か? 豪華作家陣が贈る犯人当てアンソロジー。
第12回日経小説大賞(選考委員:辻原登氏・高樹のぶ子氏・伊集院静氏)受賞! 鎌倉末期から南北朝時代へ移る混沌とした世の人間ドラマを、最新の研究成果を取り込みながら描き、まったく新しい足利尊氏、楠木正成、そして後醍醐天皇を造形。選考会では確かな歴史考察と文章の安定感、潔い作柄のまっすぐさが評価された期待の歴史小説の新鋭の登場だ。 「利生」とは衆生に神仏の利益をもたらすこと。上下の別なく、民が国を想う志を持ち寄って各々の本分を為せば、きっと日本は悟りの国になれるーー幾度も苦難にあいながら、北条得宗の悪政から世を立て直すため鎌倉幕府を倒した後醍醐天皇。帝と志を同じくした楠木正成と、鎌倉幕府の重鎮でありながらその志に共鳴し倒幕へと寝返った足利尊氏。三人は同じ禅宗の同門だった。そして彼らが共有した志とは、仏や菩薩が人々に利益を与えることを意味する「利生」という言葉が表す世を実現すること。理想の世をかかげた建武の新政が始まったが、公家もそして武家も私利私欲がうごめく政治の腐敗は止めようがなく、尊氏と正成の運命は引き裂かれていく。 序 法燈 壱 挙兵 弐 新政 参 決裂 四 湊川 終 利生
「スリルのあることって、それがもうこわくなくなって、 ようやくたのしめるようになったころには、 いつもおしまいになっちゃうんだなあ。」 (『ムーミン谷の冬』より) 1964年に日本に紹介されてから、ずっと愛され続けてきた、ムーミンたちの物語。 人気のひみつは、個性豊かなキャラクターたちが、自由に、自分らしく生きる姿にあります。 ムーミントロールは、勇気があって心やさしく、とってもロマンチスト。 ムーミン小説9冊のうち、7冊から、ムーミンの数々の名言を抜き出して、美しいヤンソンの絵と共に、ぎゅっとまとめました。 ムーミンが大好きなあなたはもちろん、ムーミンの世界を気軽に味わってみたい方にもぴったり。 プレゼントにもぴったりな、ちょっと特別な1冊です。 そして、気に入った名言が見つかったら、ぜひその場面が出てくる小説を読んでみてください。もっともっと、ムーミン谷が身近になります。 *オールカラー *ハードカバー 58ページ *左右173ミリ×天地195ミリ
島田荘司選 第13回ばらのまち福山ミステリー文学新人賞受賞作! 「できるなら過去に遡り君を守ってやりたい」 最愛の娘が大学のキャンバス内で自殺をした。薬学部教授の大日方敏夫(おびなた としお)は、娘の千佳(ちか)が死を選ぶはずがないと真相を探る。千佳は生前、母である優子に、付き合っている人がいると打ち明けていた。しかし、相手の詳細は知らされておらず、ミステリーの文学賞に応募していることだけを伝えていた。敏夫は付き合っていた相手が殺人犯だったのではないかと疑いを持ち、自身の遺伝薬理学の知識を使って犯人を特定することを思いつくーー。 密室殺人、理由不明の空き巣事件、犯人捜しの罠、ハウダニット的密室殺人、数珠つなぎに起きる事件にページをめくる手は止まらず、読み終えた後には家族の愛の物語に心を打たれる。
底辺女子が人生逆転!? 不遇な家庭に育った17才のユキが、子供を持ちたい人々と貧困女性を救う“代理母ビジネス”の賭けに出る。 義父の策略で、違法な代理母出産をさせられた17才のユキ。命がけで出産したにもかかわらず、報酬はすべて義父の手に。再び代理母をさせ稼ごうとする義父の手から逃げだし、ユキは自らの経験を逆手に取り、自分のような貧しい女性を救う大胆な〈代理母ビジネス〉を思いつく。ユキを支えるのは医師の静子&芽衣子のタッグと、ゲイのミチオ&一路。さまざまな事情を抱えた「子どもを持ちたい」人々が、最後の砦としてユキたちを頼ってやってくるが……日本の生殖医療の闇、貧困層の増大、妊娠・出産をめぐる負担など、現代日本が放置した社会問題を明るみにしながら、「代理母」ビジネスのタブーに切り込んだ問題作。
脚本家・唐沢燿子は古稀をむかえ、日に日に「老い」を感じていた。しかしSNSで年下の男と出会い、生活が一変する。男の言葉に一喜一憂するうちに、身も心も溺れていく燿子。人生後半から燃え上がる、大人の恋の行方は……。
深夜の横須賀どぶ板通り。米兵が複数箇所刺され、死亡した。「日米地位協定」によって捜査権は米軍側にあるが、危機感を募らせる神奈川県警に協力すべく“特別強行捜査局”の朝倉たちが捜査に向かう。目撃者を捜している最中、なんとSNSに米兵殺害の瞬間が公開されてしまう。その上、第二の事件まで!?各国の思惑と悲壮な事件が絡み合い、朝倉たちの身にも危険が及ぶー。元自衛官の警察官が活躍する「オッドアイ」第8弾は、世界の不均衡が生んだ“悲劇”の幕開け。
沢口涼也はある出来事の贖罪のため、街金融の支店長職を捨て、5年前に保護犬施設「ワン子の園」の運営を始めた。今では4人のボランティア仲間と心と体に傷を負った犬たちを癒やし、里親が現れるのを待つ毎日だ。しかし涼也は犬の幸せを願うあまり里親希望者の見極めに慎重で、断ることもしばしばだった。そんなある日、動物愛護相談センターで働く恋人の華へ、「犬を虐待し闇業者へ売りさばいているペットショップがある」という通報が…。心身傷ついた犬たちと様々な里親希望者…。虐待、飼育放棄、遺棄、殺処分ー犬と人間との共生が抱える闇と光を描く、動物愛あふれる感動長編。
相原孝之は一級建築士で、妻の貴美子と中学1年生の娘・美加、小学2年生で料理好きの息子・康文の4人家族だ。ある日、息子が車にはねられ意識不明の重体に陥るが、時を同じくして、孝之の不倫や娘が学校でいじめられていることが発覚し、家族は瓦解寸前に。そんなとき、認知症の老人が相原家の前に何度も現れ、孝之の心にさざ波が立つ。孝之には幼い自分と母を捨て駆け落ちした父親がいたのだ。一方、康文の意識が戻らない中、老人とのふれあいを重ねるうちに、貴美子と美加の2人は驚くべき事実に気づくことに…。不倫・いじめ・交通事故そして認知症老人の手料理ー。崩壊寸前の家族に訪れた奇蹟の13日間。