小説むすび | 2021年4月22日発売

2021年4月22日発売

ホテルホテル

〈ボウエン・コレクション2〉全3巻 第1回配本! 20世紀英国文壇を代表する作家エリザベス・ボウエン。 1920-30年代という戦間期の不安と焦燥を背景に、 ボウエンならではの気配と示唆に浮かぶ男女の機微ーー。 本邦初訳の初期小説三冊を集成した待望のコレクション。 イタリア・リヴィエラ海岸のホテルはホリデー客でにぎわっている。医者になりたいシドニー・ウォレンは受験の疲れを癒しに、束の間ここにきている。彼女は倦怠感を漂わせる未亡人ミセス・カーに心惹かれる。ミセス・カーには20歳の息子ロナルドがいて、ドイツからここにやってくるという。ミルトン牧師、ロレンス三姉妹、第一次大戦の後遺症に悩む青年アメリングをまじえ恋がもちあがり……。イギリスの風習喜劇の雰囲気と1920年代戦間期の不安な心理を、地中海の陽光まぶしいひと夏に鮮やかに浮かび上がらせたボウエンの手腕、長篇デビュー作。 豊崎由美氏推薦! 「ボウエンは会話だけでなく、描写によってそこで何が起きているのかを示す。登場人物の行動、いる場所、そばにある物、聞こえている音、すべての描写を総動員させて、ボウエンは登場人物の発する言葉の背後にある気持ちや意味、それが発せられた理由となる過去を匂わせる。 だから、一行たりとも読み飛ばせない。丁寧に文章を追っていく読者だけが、ボウエンがそこここに仕掛けている小説の技巧に舌を巻き、物語全体の絵柄が浮かび上がってきた時の喜びを得ることができるのだ」(パンフレットより抜粋) 太田良子(訳者) 「エリザベス・ボウエンは1899年にアイルランドのダブリンで生まれ、1973年にイングランドのロンドンで死去した。文字どおり20世紀と共に生きたボウエンは、二つの祖国を持ち、300年間イングランドの植民地だったアイルランドの宿命的な独立戦争、世界を荒廃させた二度の世界大戦に関わって創作活動の根底に置き、長篇小説10篇と短篇小説約100篇を書いた。今回の〈ボウエン・コレクション2〉に入った『ホテル』は彼女の初めての長編小説で、先行の〈ボウエン・コレクション〉の『エヴァ・トラウト』はボウエンが完成させた最後の小説であり、ボウエンの小説全10冊が国内ですべて刊行されることになった。ボウエンの作品は21世紀の今、文学や歴史や世界観の新しい潮流を検証する意味であらためて評価が進む一方、ボウエンは緑の国アイルランドのホスピタリティと、美しい庭園を持つ荘園屋敷を受け継ぐイングランドの文化を愛して作品に籠め、移り替わる自然を、春夏秋冬、忘れられない美しいシーンにして数多く描き出している。白いモスリンのドレスの少女、断髪にして短いスカートでロンドンを闊歩する女は、それぞれに時代を表わし、ヒロインが運転するダイムラーやジャガーは、時代の先端を行く高級車である。小説や短篇のヒロインを通してフィクションが見せる広い世界の可能性を切り開いた点から見ても、エリザベス・ボウエンは他の追随を許さぬ作家である」(パンフレットより)

レースの村レースの村

発売日

2021年4月22日 発売

幽霊の世話をする人々、女性だけの村、姿が透明になる犬……。 とても不思議なのに、どこか懐かしい光景。 日本のどこかに、こんな場所がまだあるのかも、と思えてくる。 豊かな発想から物語を紡ぎ出す、新しい語り部の誕生だ! 松永美穂(翻訳家/早稲田大教授) 「ことばと」掲載の表題作を含む4編を収録。 <あらすじ> 大学の友人サクマの帰省に同行したぼくは、そこで幽霊と暮らす奇妙な村人たちと出会う…「幽霊番」。女性だけの村で育った卯月と、「騙されちゃ、だめよ」と云い、突然いなくなってしまったハルカ。サナさんの秘密の儀式を偶然目撃した卯月は、自分の知らない世界があることに気づいてしまう…「レースの村」。夫との関係はいつも少しずれていると感じる杏子はバイト先の店長とのふとしたはずみで起こった出来事により…「空まわりの観覧車」。透明になった犬の夢二、病気がちで寝たきりの姉綾子とともに過ごす日々はあの雪の日のように儚い…「透明になった犬の話」。綻びのできたレースのように繊細で不可思議な世界を紡ぎだす四編の物語。 幽霊番 レースの村 空まわりの観覧車 透明になった犬の話

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