2021年7月14日発売
不妊治療の末、夫が浮気相手と子どもを作り、離婚した塔子。帰った故郷で見つけた亡き祖父のトランクは、異世界への扉だった。魔力が支配する過酷な世界「亜ノ国」に飛ばされ、塔子は村の娘ムリュの世話係を任される。一目会ったときから、なぜかムリュに夢中になる塔子。六十年に一度城で行われる「六祝の儀」にムリュも参加するというが、それは少女達が競い合う、命がけの儀式だった。塔子はムリュを守り、生き残れるのか。すべての母と娘に贈る感動の物語。第54回野間児童文芸賞作家初の一般向け長編!
建築会社に勤める勝人は、コーヒーショップ店員の華と運命の出会いを果たす。一目で心を奪われた勝人は、彼女との距離を少しずつ縮めていく。ところが、それから勝人は奇妙な子どもの姿を目撃するようになる。自分以外の誰にも見えない幻影に苦しめられながらも、華の優しさに救われる勝人。一方、華の弟である星也は、突然様子が変わった姉が気に入らない。華の彼氏は、本当に信用できるやつなのか?血のつながらない姉にほのかな恋心を寄せる星也は、親友の葉月とともに、勝人のことを調べ出すが…。あのとき、「わたし」が黙っていなければー。見て見ぬふりの負の連鎖が忌まわしき悪夢を招く戦慄のサイコ・ホラー。
日本で二・二六事件が起きた1936年。中国の古都、西安近郊で、国民政府最高指導者、蒋介石に張学良の軍が叛旗を翻すクーデターが発生。蒋介石の命は絶望視され、日米の記者たちは特ダネを求め、真相に迫ろうとする。日本では陸軍参謀本部という秘密の匣の中で石原莞爾が情報を操っており、中国では西安事件の軍事法廷で、張学良は首謀者ではないとする証言がなされた。現代中国の起点となった事件の現場に起つ救世主は誰か。
わたしの宿り主、チノンソ。ナイジェリア、ウムアヒア郊外で養鶏を営む彼は、橋かけ飛び降りようとしていた女性ンダリを助けた。ふたりは恋に落ちるが、チノンソに学歴がないことを理由に、ンダリの家族は交際に猛反対した。彼女と結婚するために、チノンソは家や鶏を売り、キプロスの大学に入学する。しかし現地に着いたとき、手続きを仲介した旧友にだまされていたとわかる。金もなく、家もなく、ンダリからも遠く離れたチノンソを、さらに苦難が襲う。数百年にわたり人間に宿りつづけてきた守り神“チ”-わたしーは、徹界の法廷でチノンソの人生を語りはじめる。西欧の語りとナイジェリアのイボ神話を融合させた、現代の『オデュッセイア』と評される文芸長篇。ブッカー賞最終候補作。
私は自分の名前が大きらい!高校2年生の相川あけびは、果物の名前をつけた非常識な父親に腹をたてていた。でもそれ以上に、自分を捨てて台湾で女優をしている母親にはもっと大きな怒りを抱いていた。いらだちながらも書道の甲子園・国際高校生選抜書展に向かってがんばろうとしていたその時ー父親がとんでもない災難を拾ってきた。汚い袋やバッグをこれでもかと抱えたホームレスの老婆を自宅マンションに連れてきたのだ。言葉づかいがばか丁寧なこの得体の知れない老婆が、父の命の恩人なんだって?言葉巧みに騙されているだけじゃないの!?いらだちが頂点に達しようとしていた時、老婆のいる部屋からふしぎな声が聞こえてきた。それは、いるはずのない子どもがキャッキャッと笑っているような声だった…。生粋のアメリカ人女性が、5年もかけて、初めからすべて日本語で書いた渾身の感動作。
1989年、パリ14区に実在する老人養護施設“ティエル=タン”。そこに鋭い目つきの長身の老人がいたー。ジェイムズ・ジョイスとの友情など、事実を基にしたエピソードをちりばめて描かれる、ノーベル文学賞作家の人生最期の日々。記憶をたゆたいながら、諧謔と憂愁に溢れた声が響く。サミュエル・ベケットの強烈な個性を再現しながらも、死を待つ人間の普遍的な姿を浮き彫りにした著者の鮮烈なデビュー作。ゴンクール賞最優秀新人賞受賞。
外事一課の倉島は、「ゼロ」の研修帰りのエース公安マン。ロシア外相が来日し、随行員の行動確認を命じられるが、同時期にベトナム人の殺害事件が発生。容疑者にロシア人バイオリニストが浮かび上がる。一方、外事二課で中国担当の盛本もこの事件の情報を集めていることがわかる。倉島は、ベトナム、ロシア、中国が絡む事件の背景を探るが…。
外資系食料品メーカーの事務職として働く元地下アイドルの華美は、生活費を切り詰め株に投資することで、給与収入と同じ配当を生む分身の構築を目論んでいる。恋人の直幸は「使わないお金は死んでいる」と華美を笑い、とある人物率いるオンラインコミュニティ活動にのめる込んでゆく。そのアップデートされた物々交換の世界は、マネーゲームに明け暮れる現代の金融システムを乗り越えゆくのだ、と。やがて会員たちと集団生活を始めた直幸を取り戻すべく、華美は“分身”の力を使おうとするのだが…。高度に発達した資本主義、その欠陥を衝くように生まれる新たな幻影ー富に近づけば、死にも近づく。現代人の葛藤を描く羽田圭介の新たな代表作。
明日に挙式を控えた、信用金庫勤めの井東春香と、パン屋の息子でデザイナーの細井真平。ごくごく普通に暮らす二人が、偶然の出会いから愛を育み夫婦になる。家族で過ごす最後の夜、春香の両親と弟、そして祖母には、それぞれに伝えたい想いがあった。一方、新しい家族を迎える細井家でも、実の母を早くに亡くした真平に、今だからこそ話しておきたいことがあり…。結婚前夜を、当人たちとその家族の視点から紡ぐ感動の物語。
経理部に勤める歩美は、やり手でイケメンな副社長・桂馬の内緒の奥さん。諸事情あって交際0日の結婚のため一年間のお試し期間中なのだ。「大丈夫だから、そのままイッてみよう」桂馬は初心なカラダを夜ごと優しく愛撫するも一線は越えない…どんどん彼に惹かれていく歩美は、桂馬の誕生日に最後まで愛してもらおうと自分をプレゼントすることに!?
日本海軍はガダルカナル島の米航空基地を壊滅させるため、戦艦大和による巨弾砲撃を実施。奇襲攻撃は見事成功するが、極秘裏に造られていたマラバ泊地を見逃してしまう。そんな中、同泊地に一機のB17爆撃機が着陸する。一方、ガ島攻撃後、ムンダに向かう米艦隊の情報をつかんだ日本軍は、同島に戦艦大和、そして水上機母艦瑞穂を急行させるのだが、ガ島方面から飛来したB17爆撃機により水上母艦瑞穂が沈没してしまう。「ガ島の飛行場はまだ生きている」。そう考えた日本軍は潜水艦による偵察を徹底的に行い、ついにマラバ泊地を発見。ガ島攻撃部隊を特別編成し出撃するのだが…。
昭和20年2月、帝国海軍は珊瑚海海戦で米英連合軍艦隊に壊滅的な打撃を与え勝利する。勢いそのままポートモレスビー攻略に向かい米軍航空兵力の一掃に成功。マッカーサー軍は後退を余儀なくされる。その一報を聞いたルーズベルトは倒れ、トルーマン副大統領が政務を引き継ぐことになった。チャーチル英首相に日本との講和を助言されるも、あくまでハワイ奪還に固執するトルーマン。終わりの見えない対米戦に、帝国海軍は米本土空襲の準備を進める。一方の米軍は、ドイツ敗戦を受け米陸海軍の大兵力を太平洋に集結させるのであった。猛将対知将の最終決戦!日米大艦隊がついに激突する!
暗く切ない人間模様のなかにどこか親しみを感じる「あの路この路」、虚無感をいだく主人公とその友人の死を扱った「木椅子の上で」の2編と田畑文学の柱のひとつといえる「石ころ路」を収録。自身の病と私生活の苦悩から逃れるように三宅島へ赴いたひとりの男が主人公の「石ころ路」は、現地の風景や住民との交流をきっかけに、陰鬱としたなかに一筋の光を見つけるように少しずつ自身を取り戻していく姿が描かれます。