2021年9月21日発売
カミーノ・アイランドに夏がやってきた。 直筆原稿盗難事件から数年が経ち、独立系書店の名物店主ブルース・ケーブルは相も変わらず精力的に書店を切り盛りしている。 そんななか、超大型ハリケーンの接近中に殺人事件が起こり、不審を抱いたブルースは犯人捜しに乗り出す。 その行く手に待ちうけるのは……?
昭和、平成、令和ーー時代は変わっても、実家から送られてくる小包の中身は変わらない!? 業者から買った野菜を「実家から」と偽る女性、父が毎年受け取っていた小包の謎、そして、母から届いた最後の荷物ーー。 実家から届く様々な《想い》を、是非、開封してください。
「あの味っこさ会えて、いかった」 青森県南部の葵岳登山口にあるレストラン。そのシェフ・登磨には亡き祖母との思い出の味があった。それを思い出させてくれたのは、意外な人物で……。
テロ・グループがMERS変異ウイルスを蔓延させた豪華客船“ヘブン・オン・アース”。アメリカの作戦によりテロリストは一掃されたが、乗船していた“サイレント・コア”原田拓海一尉の血液検査で意外な結果が出る。その頃、中国軍による南シナ海東沙島奇襲作戦に端を発した東シナ海の戦いは九日目を迎えていた。解放軍はこれまで数度のミサイル攻撃を仕掛けていたが、海上自衛隊のイージス護衛艦がこれを迎撃、飽和攻撃を撃退した。台湾軍とともに防戦に徹する日本、いたずらに死者を増やす中国軍。しかし、尖閣諸島をめぐる状勢は新たな局面を迎えようとしていた。
病に冒されながらも、最後までピアノを弾き続けた妻がこの世を去った。シューマン「幻想曲」の楽譜の間に、短くもあたたかい言葉を残してー。無慈悲な現実に立たされてもなお明るく生きた家族の物語。
近江国の戦国武将・浅井長政に仕える脇坂甚内安治。その後、浅井を離れ織田信長の部将・羽柴秀吉のもとで頭角を現す。本能寺の変を経て、賎ヶ岳の戦いでは敵の首を獲り、“七本鑓”の功名を立てる。大名となった安治は秀吉から水軍編制を命じられ、小田原攻め、朝鮮の役で奮闘。そして、一族の命運を分ける関ヶ原の戦いへー。戦国時代を豪胆に、かつ綱渡りで生きぬいた武将の生きざまを描く歴史長編!
プレオープン中に起きた銃乱射事件のため閉園に追い込まれたテーマパーク・イリュジオンランド。廃墟コレクターの資産家・十嶋庵はかつての夢の国を二十年ぶりに解き放つ。狭き門をくぐり抜け、廃遊園地へと招かれた廃墟マニアのコンビニ店員・眞上永太郎を待っていたのは、『このイリュジオンランドは、宝を見つけたものに譲る』という十嶋からの伝言だった。それぞれに因縁を抱えた招待客たちは宝探しをはじめるが、翌朝串刺しになった血まみれの着ぐるみが見つかる。止まらない殺人、見つからない犯人、最後に真実を見つけ出すのは…2021年最注目の俊英による廃墟×本格ミステリ!
友安小輪は、怯えていた。彼女と恋人の住むアパートに、ある日突然謎の老人が現われ執拗ないやがらせを始めたのだ。弱々しい老人相手にもかかわらずなぜか恋人は萎縮し、警察に被害を訴えてもまともに取り合ってもらえない。一方、都内の若夫婦が老爺に襲われ、夫が死亡し妻は襲撃者に略取され行方不明となる事件が起きる。幼い頃、姉を殺害されたことがきっかけで刑事となった佐坂湘は、くせ者ながら優秀さで知られる警視庁捜査一課の北野谷輝巳と組んで、消えた女性の行方を追うが…『死刑に至る病』『虜囚の犬』の俊英がストーカー犯罪を題材に描く衝撃作!
一族の闇、怨念、陰謀が渦巻く宮廷ーー 藤原道長の娘にして、一条天皇の后・彰子。 父に利用されるだけだった内気な少女は、いかにして怨霊が跋扈する朝廷に平穏をもたらす「国母」となったのか。 『天地明察』『光圀伝』の著者が、“平安のゴッドマザー”の感動の生涯を描く。 わずか十二歳で入内した、藤原道長の娘・彰子。父に言われるがままに宮中に入り、一条天皇を迎える最初の夜、彼女は一条天皇の初めての男児誕生の報を聞く。男児を産んだのは、藤原定子。夫である一条天皇は、優しく彰子に接するが、彼が真に愛した女性・定子の存在は、つねに彰子に付きまとう。 「透明な存在になって消えてしまいたい」--父・道長によって華やかに整えられた宮中で心を閉ざし、孤独を深める彰子であったが、一人の幼子によって、彼女の世界は大きく変わった。 定子の崩御により遺された子、敦康。道長の思惑により、十四歳の彰子がその子の母親代わりとして定められたのだ。戸惑いながらも幼い敦康を腕に抱き、母になる決意を固めた彰子は、愛する者を守るため、自らの人生を取り戻すために戦い始めるーー。 平安王朝を新たな視点からドラマチックに描いた著者渾身の傑作長編。
またもう一度選ぶならこの大学をわたしは選ぶ。本館前の芝生の中で、もはや学生は輪になって集わない。占春園の池のほとりで、もはや学生はギターを持って歌わない。それでも日本のやさしい春は、その襞の中に育んだあざみのけなげな一本を、校門脇のコンクリートの狭間にわずかな土を見つけて置いていった。もしもう一度選ぶならこの大学をわたしは選ぶ。(本書所収「もう一度選ぶなら」)より。東京教育大学は、1960年代末〜70年代初頭の学園紛争で唯一、歴史を閉じた大学である。半世紀を経て、かつての日々を愛惜込めて追尋する珠玉の小説群。主人公たちが求めた自治と自由と民主は、もはや色あせてしまったのか。大学は確かになくなったが、たたかいは思想を生み、仲間を繋ぎ、彼らの人生を支えた。
この上なき存在を突如失った時、貴方ならどうするか。不慮の航空機事故により、突如一瞬にして、最愛の許嫁を失った青年の精神的苦悩と、その立ち直りに至るまでの魂の彷徨を、欧州と京都を舞台に、美しい筆致で繊細に描く、感動と共感、究極のLove Story。
十六世紀の後半の南宮崎で、空砲を撃ち合う振りをするという、世にも珍妙な戦があった。この戦は「偽戦」と呼ばれている。現在の宮崎県日南市南郷町津屋野で大隅領主が日向の領主に持ちかけて行われたが、なぜか日向勢が実弾を使い大隅勢が全滅。これを率いた悲劇の武将・薬丸兼郷の物語。