2021年発売
デビュー3年で主に戦国武将が主人公の11作を刊行し、歴史小説に新風を吹き込む赤神諒氏が、伊集院静氏の休載期間中に日本経済新聞朝刊の小説欄に急遽抜擢され連載した本作は、赤神氏初の現代小説だ。 5カ月後に幕を開ける第二次世界大戦での枢軸国対連合国の戦いの構図を先取りしたスペイン内戦(1936~39年)が舞台。成立したばかりの共和国政府に対する軍部の叛乱を阻止しようと立ち上がった市民兵とともに銃を取った元米国軍人リックを主人公に、圧倒的に劣勢に立ちながら、徒手空拳で立ち上がった市民ひとりひとりをクローズアップして描くことで、ファシズムとスターリニズムから自由と民主主義を守る戦いと言われるこの「戦争」が、本当は何のための戦いだったのか、を浮き彫りにする。格差や分断が社会を揺るがす現在の私たちをも照射する作品に仕上がっている。 この重厚な物語にエンタテイメント性を加えるのが、主人公リックの設定である。著者が映画史上不朽の名作である「カサブランカ」の前日譚として着想し、映画でハンフリー・ボガード扮するリック・ブレインが本作の主人公という趣向。映画ではイングリッド・バーグマン扮するイルザ・ラントやほかの登場人物たちも登場させて、名ゼリフぞろいの映画へのオマージュとして編み出された創作だ。戦渦で恋する男女の洒落た会話にも磨きがかかり、キザなセリフ、スパイスのきいた皮肉も読みどころである。 加えて、新聞では戦渦の恋が終わるところで連載の幕を閉じたが、連載後にリックのその後が気になるという声が新聞の読者から多数寄せられた。単行本化にあたり文字通り「カサブランカ」の前日譚として、映画の設定の直前まで時間軸を延ばして大幅に加筆、新聞で読んでいた読者もさらに満足感を得られる内容になっている。 第1部 第1章 二つのスペイン 第2章 ヨーロッパの嵐 第3章 マドリードの鐘 第4章 カニャーダの花 第5章 ラス・ロサスの虹 第2部 第6章 マドリードの雨 第7章 グアダラマの雪 第8章 バルセロナの月 第9章 ブルネテの風 第10章 マドリードの夜 最終章 パリの空
日常に息苦しさを感じるあなたへ贈る物語。 「こんなところにいたくない」パート帰りの希和が見つけたのは、小学四年生の息子・晴基とそっくりの筆跡で書かれた切実なメッセージだった。本人に真意を問いただすことも夫に相談することもできない希和は、晴基が勝手に出入りする民間学童『アフタースクール鐘』で働きはじめる。マイペースな経営者・要や子どもたちに振り回されながらも、希和はいつの間にか自分の考えを持たない人間になってしまっていたことに気付く。周囲から求められるものでも、誰かからの受け売りでもない、自分自身の言葉を取り戻すためにひとりの女性が奮闘する、大人の成長小説!
五月二十九日、夜明け前。死病を患うミリアは痛みのあまり通りへ飛び出した。時を同じくして、自殺しようと窓から身を乗り出すミリアの元恋人、娼婦を求めさまよう精神科医の元夫、父親を探す少年と、獲物を探す元兵士。彼らの暗い運命は、誉れ高きゲオルグ・ローゼンベルク精神病院の記憶につながっていく…世界約50か国で翻訳される現代ポルトガル最重要作家による、狂気と怒りと愚かさを残酷に描ききる圧倒的代表作。
人形を思わせる色男の岡っ引き、佐七が次々と江戸の事件を解決していく推理劇。「銭形平次」をはじめとする“五大捕物帳”の一つで、横溝自身も格別に愛着を持っていたシリーズです。最新の研究であきらかにされた全180篇を、綿密な校訂のもと初めて発表順に完全収録しました。
「なぜ、朝敵と言われなければならないのか。我らに何の罪があるというのか」 幕末、火中の栗を拾うようなものと言われながらも、京都守護職を拝命した会津藩主・松平容保の弟である桑名藩主の松平定敬は、京都所司代として、兄と共に徳川家のために尽くそうとする。 しかし、十五代将軍・徳川慶喜は大政奉還後、戊辰戦争が起こると容保、定敬を連れて江戸へ戻り、ひたすら新政府に恭順。慶喜に裏切られる形となった定敬らは、恭順を認めてもらうには邪魔な存在として遠ざけられてしまう。 一方、上方に近い桑名藩は藩主不在の中、新政府に恭順することを決める。藩主の座を追われた定敬は、わずかな家臣と共に江戸を離れることに……。 朝敵とされ、帰るところも失い、越後、箱館、そして上海にまで流浪した男は、何を感じ、何を想っていたのかーー。 新田次郎文学賞&本屋が選ぶ時代小説大賞受賞作家が、哀しみを心に宿しつつ、転戦していく松平定敬の姿を感動的に描く歴史小説。
佐々木とピーちゃん(文鳥・ペット・賢者)は、今日も今日とて異世界と現代を行ったり来たり。理想のスローライフを求めて商売に精を出す。 現代では二人静の協力を得たことで、異世界の金品を現代の貨幣に変える手段を手に入れた。 魔法の鍛錬も進み、異能力者や魔法少女を相手に異世界の魔法で無双。 あとはたっぷり稼いで、悠々自適なリタイア生活を目指すのみ。 だが、彼らの行く手を阻むように各所では騒動が巻き起こる。 異世界では国王の跡目争いが本格的に勃発。 貴族に取り立てられて領地経営がスタート。 現代では連日のように異能バトルが発生。 魔法少女注意報、発令中。 そして、デスゲームに巻き込まれたお隣さんは、悪魔と共に天使の使徒たちから狙われることに。 いよいよ各界の交錯が始まり、佐々木の身の上が混迷を迎える、完全書き下ろしの第三弾!
三体文明の地球侵略に対抗する「面壁計画」の裏で、若き女性エンジニア程心(チェン・シン)が発案した極秘の「階梯計画」が進行していた。目的は三体艦隊に人類のスパイを送り込むこと。程心の決断が人類の命運を揺るがす。シリーズ34万部以上を売り上げた衝撃の三部作完結!
地球文明と三体文明、二つの世界の運命をその手に握る執剣者(ソードホルダー)が下した決断とは!?世界を圧倒した現在中国最大の衝撃作、想像を遙か超えるその結末を目撃せよ。
自分にとっての始まり、それは自分で決めてみるしかないのではないか。 読売文学賞を受賞した「かもめの日」と、京都水無月大賞を受賞した「明るい夜」。著者40代の代表作といえるふたつの作品に加え、初書籍掲載となる小説「バーミリオン」、書き下ろし自作解説、著作年譜を収録。 なんの関係性もなさそうな登場人物達が、実は微(かす)かな絆で繋(つな)がっていることを知るのは俯瞰(ふかん)映像で彼らを見ている読者だけである。物語はどんどん繋がってある方向に集約されてゆくのに、彼らは最後までそれに気付かない。 立ち止まっていた場所から一歩前へ進む登場人物達だが、彼らの孤独はきっと解消されない。それでいいのだと思う。その孤独は慣れ親しんだ、すごく当たり前のもののような気もするのだ。 小泉今日子 (「読売新聞」2008年5月11日掲載 『かもめの日』書評より 帯文に掲載) 明るい夜 かもめの日 バーミリオン * 重箱の隅を描けるだけの言葉 著作年譜
ベトナムでの軍事顧問としての任務を終えた、ソ連空軍のマーシャ・カルチェンコ大尉。本土でテスト・パイロットを務めたのも束の間、今度はエジプトに送り込まれることとなる。「大使館員夫人」というニセの立場でエジプトに降り立ったマーシャたちだったが、間もなく、ナセル大統領によるスエズ運河国有化宣言が出されて…。エジプト対英仏&イスラエルのスエズ運河を巡る動乱に、マーシャたちは巻き込まれてしまうのか?イギリスのスパイとのカーチェイス!動き出す第一次大戦期の戦艦!地中海上の航空決戦!そして、まさかの再会…!?マーシャは帝国(主義)の魔手から逃れられるのか!?
今から三十年前の夜、ある動物園のカピバラ小屋で一人の男の子が保護された。 その子の名前は……『おチビちゃん』 彼を置き捨てた母親から、そう呼ばれて育ったという。 カピバラを愛するおチビちゃんは養護施設で育てられ、名前は加比原譲二(かぴばら・じょうじ)と付けられた。動物のカピバラのことが大好きな本人の希望により、加比原という名字が付けられたのだ。 そして三十年の月日を経て、心優しい大人となった加比原譲二は、自分が保護された動物園の清掃員として働くと同時に、その隣にある小学校の用務員も務めている。 そんな加比原譲二は、子どもたちから「カッピー」と呼ばれ親しまれつつ、時にからかわれることも……。 なぜなら彼は、漢字を読むことや、足し算や引き算など計算をすることができず、空気を読むこともできない。心が5歳の時のままだから。 けれど、本当のカピバラのように心優しいカッピー。 一本のたいまつから何千もの火を分けても、そのたいまつの火は消えることがないように、生徒にも教師にも保護者にも愛を無限に分け与えてくれる。 見返りなどという言葉は、彼の中の辞書には存在しない。 関わる人の心の闇に光を照らし、それぞれにとって進むべき本当の道が見えてくる。 しかし、そんなある日、カッピーが命の危機を感じるほどの「いじめ」の対象になってしまうのだった。 さらには、一人のヤクザと出会ったことにより、殺人事件に巻き込まれてしまうことに? 愛とは? 家族とは? 本当の正義とは? ピュアな心を持つカッピーを通じて、人生で最も大切なことを教えられる感動エンターテイメントストーリー。 第一章 名前のない男の子 第二章 エコヒイキ 第三章 勝利の女神
死せる巨大魚(オールド・アン)は何を囁いた? 正義の天秤(スケール・オブ・ジャスティス)が傾き示す“裁かれし者”は誰なのか? 〈ロデリック・アレン警部〉シリーズの長編第18作にして、1955年度英国推理作家協会シルヴァー・ダガー賞作品。 オールド・アンの秘密 訳者あとがき 解説 横井司
名探偵の代名詞シャーロック・ホームズの知られざるモデルかもしれない人物、その名は「マクシミリアン・エレール」。推理小説史上、重要なピースとなる19世紀のフランス・ミステリが遂に邦訳。--北原尚彦(作家・翻訳家・ホームズ研究家) マクシミリアン・エレールの冒険 訳者あとがき 解説 北原尚彦
『古今集』採録の18首を解析し、小町歌成立の秘密に迫った『古今集小町歌生成原論』から10年。そのとき蒐集したメモ類をもとに、小町の出生から生長、帝との出会いを経て「夢の歌六首」の生成に至る歌人としての「小野小町」誕生までを描く伝奇小説。 序 章 山科盆地の地勢と、小説の登場人物 第一章 山科郷・小野屋敷の童女(私はだれ?) 第二章 小町の出生した天長四年(嵯峨・淳和と罪己の詔・地震・音楽会) 第三章 天長四年・淳和天皇日録(高志の祟りと群発地震/恒貞・道康・小町の出生) 第四章 禮子という女(小町、『篁物語』を読んで母を知る事) 第五章 『傳奇鶯鶯事』(私は鶯鶯なのです/篁の心配) 第六章 『傳奇鶯鶯事』つづき(小町、童女殿上/遣唐副使篁の休暇) 第七章 二年目の休暇(篁、三守と山科に遊ぶ/小町、『任氏傳』を読む) 第八章 『任氏傳』と『任氏怨歌行』(『任氏傳繪巻』を作る事/賀茂祭) 第九章 遣唐使の進発と遭難(月下の宴/遣新羅使・紀の三津) 第十章 遣唐使の進発と遭難・つづき(篁と、紀三津と張寶高の事) 第十一章 承和二年冬〜三年夏(小町と仁明/仁明の朝政と遣唐使) 第十二章 承和三年冬〜四年(篁の帰京/仁明の鷹狩/内宴…) 第十三章 承和五年 (朝廷と篁の攻防/小町の髪上・裳着) 第十四章 小野小町の誕生(「夢の歌六首」生成) 終 章 作中時代史年表 あとがき
戦争回避に全力を尽くしたアメリカ人の妻を持つ日本人外交官。 そして日米の血を受け継いだ子どもたちーー。 歴史の激流に翻弄された外交官一家の過酷な運命を描いた歴史長篇。 「加賀乙彦全長編小説」(全18巻)第一回配本。
英国(イギリス)からの指令(オーダー)-新たなチートスキルを回収せよ!火又との一件を経て、一躍時の人となってしまった元社畜冒険者の水樹了介。そんな水樹が取った次の行動は、壊れスキルを活かして冒険者ビジネスを立ち上げることだった!そして、キャロルと共にイギリス政府へ手を組む提案を行った水樹は、条件としてチートスキル『エクスカリバー』の回収を提示される。だが、チートスキルを求める者は彼らだけではなかったー。水樹を大守市へと左遷した上村敦美がダンジョンに現れ、事態は混迷を極めていく。そんな中、ついにたどり着いた『エクスカリバー』に異変が起き…?