2022年12月23日発売
俺は、歌い手になりたいと思ってしまった。2012年、就活が上手くいかない専門学校2年の岩垣涼介と、歌い手として成功することを目指し、ひたすら路上ライブと動画投稿を続ける中島友哉。ある日、友哉の路上ライブにふと足をとめた涼介は、一文無しになった友哉をしぶしぶ「拾い」、同居生活を始める。動画投稿サイト黎明期から活躍するライブプロデューサー・事務員Gだからこそ描ける、歌い手たちの葛藤と青春。
金褐色の髪と瞳をもつ皇帝ラシッドはある夜、側女の失態を叱責するために宦官長のイルハリムを呼び出した。皇帝の気性の荒さを知っていたイルハリムは恐怖に震えるが、いつしかその逞しい腕の中で快楽の渦に溺れていく。「駄目だ。余が満足するまで、今宵は寝かさぬ」獅子帝からの寵愛は、愛欲か執着か、それともー。許されない身分違いの蜜月。主従関係のふたりが織りなす、甘く切ない物語。『第一回fujossy小説大賞・秋』審査員特別賞受賞作!
「零士は…俺のだろ?」テレビでの公開告白や期間限定同居によって、零士との関係は“セフレらしくない距離感”へと変化していく。そんなある日、過去に慕っていた先輩・烈が帰国!喜ぶレキとは対称的に零士は敵対心を見せる。そして烈と出かけた日ー他の男の匂いをつけて朝帰りしたレキを、零士は冷たく突き放してー。大嫌いなαで、ただのセフレなのに、零士にだけは嫌われたくない。仲直りするためプライドを捨てたレキがとった行動は…。
ベッラは8歳のころから、ずっと2歳年上のルーカに片想いをしていた。しかし、無謀なスキーで雪崩に遭った彼女を助けたせいで、ルーカが重傷を負って以来、10年間彼とは音信不通になってしまう。たとえ憎まれていると知るだけになっても、一度顔を見て話がしたい。兄の結婚式に現れたルーカに、ベッラは勇気を振り絞って声をかけた。そして涙を流しながら、過去の自分の軽率な行動を謝った。ルーカはそんな彼女に、不可解な表情で自分の脚に問題はないと告げた。彼はいつもそうだ。私を友人の妹で、幼なじみとしか見てくれない。それを運命の恋だなんて勘違いをして。ばかね、ベッラ。だが失意の彼女が立ち去ろうとしたとき、ルーカに唇を奪われて…。
ハナにとって、一人娘のオリビアだけが生きがいだった。5年前、娘の父親ジャックとは、彼に妻子がいることが発覚して別れた。あとになって妊娠していると気づいたものの、非情にも、それを知らせる手紙は未開封のまま戻ってきたのだった。今、そのジャックが小児外科医として目の前に現れ、ハナは幼い娘とのささやかな幸せをかき乱されまいと、とっさに娘の年齢をごまかして別の人との子であるように装った。やがて改めてお互いを知るうち、当時ジャックはすでに妻と離婚し、しかも別れたあとに生まれた子供の存在を隠されていたことがわかった。元妻の行為に憤る彼を見て、ハナは娘が彼の子だと言いだせず…。
ルー・リヴシィ、25歳。花やハーブを育てながら、自分で修繕した古いコテージで、愛犬と穏やかに暮らしている。たとえ隠居した老婦人のような生活と思われてもかまわない。5年前、若すぎた結婚に大失敗して借金を背負わされたせいで、亡き父が遺した屋敷を手放さなければならなかったのだ。以来、ルーはもう決して男性に心を開くまいと決めていた。彼らが女性に言い寄る裏には、いつも何か別の理由があるのよ。隣に越してきたばかりの大富豪ニール・サクストンも同じ。「家政婦用に、きみのコテージが欲しい」いきなり強引に迫ってきて、ほかにも欲しいものがあるかのような目で、ルーをじっと見つめたのだ!
両親にほったらかされ、孤独な子供時代を過ごしたアリー。今、諜報員となった彼女は、カリフォルニアへ向かっていた。10年前から任務を離れている伝説的人物イーストを説得し、なんとしても復帰させるという密命を帯びて。だが初めて会った瞬間、アリーは心を奪われてしまう。わたしは彼を待っていた気がする。生まれてから、ずっと。冷静な判断力でこれまで任務に失敗したことのないアリーだが、今回は思った以上に困難なものになりそうだった。彼といると孤独が癒やされ、仕事さえ忘れそうになるから…。ところが、アリーがやってきた目的を知るや、イーストは彼女に憤然と命じた。「口を閉じてここから出てってくれ!」
意地悪な継母と異母妹たちの冷酷な仕打ちに耐えるカレンザ。継母に1ペニーもドレスの仕立て代をもらえず、年頃になっても社交界デビューもせず、病弱な父を支えてひっそり暮らしている。ある日、オースターフィールド子爵が屋敷に滞在することになり、現れた子爵の並外れた容貌に、邸内は色めき立つ。妹たちは着飾って子爵の気を引こうと必死だ。カレンザは古びた服で庭のばらを摘み、子爵に色目を使ったと継母と妹たちに心ない言葉を浴びせられてもなんとかこらえた。それを子爵に見られたのは、少し悲しかったけれど…。翌朝、散歩をしているとオースターフィールド子爵が小道に現れた。「僕と結婚してほしいんです。あなたを子爵夫人にしたい」
亡き伯爵の遺言状が、今まさに読み上げられようとしている。後継者のジャックは、12年前に勘当されて行方知れず。莫大な遺産は、いったいだれが受け継ぐのか?ざわめく人々を、伯爵の養女キャスは部屋の片隅でそっと眺めていた。“スクラップ”-厄介者と親類に呼ばれる彼女は、今日で屋敷を追われる運命なのだ。そのとき、ひとりの男が現れて、全員が息をのんだ。ジャック…放蕩息子は生きていた。遺産も爵位も彼のものとなる。ところが、驚きはそれだけでは終わらなかったー新伯爵はいきなり、キャスに結婚を申し込んだのだ!
ルイーズは、突然会社に現れたジャコモを見て驚いた。別居中の夫がなぜここに?離婚の手続きをする気になったとか?イタリア人富豪のジャコモは事故で1年分の記憶を失ってしまい、その時期に自分が結婚していたと知って、妻に会いに来たという。記憶を取り戻す手助けを頼まれ、ルイーズは迷った。二人はたしかに誰よりも惹かれ合い、夫婦の誓いを立てた。でも結婚後、なぜか急に冷たくなった夫を思い出すのは今でもつらい。ずたずたにされた心を守りたくて、彼女は条件を出した。「それなら妻としてでなく、家政婦としてでお願い」と。
結婚式を挙げた数日後、消えた夫が、 今、目の前にいるーー! ああ、まさかそんな! ターニャは息をのんだ。 乱れた黒髪、鋭い光を放つ瞳、無精髭の生えた精悍な顔。 なぜレオンがここに? 5年前の結婚直後、父親の訃報に接し、 ギリシアへ帰国した夫は、それきり音信不通になっていた。 「やっと会えたね。きみを連れ戻しに来た」 夫の美貌は冷ややかでひどく険しいのに、抱きしめられると、 愚かにも恋心のなごりがターニャの体内で脈打った。 やがてレオンは部屋の中にいる幼い女の子に目を留めた。 自分と同じ、カールした黒髪のーー。 〈戻るつもりはない〉ギリシアに帰国して1週間後、夫からのメールに記された言葉はあまりに残酷でした。想定外の再会に、ずっと忘れられなかった夫の魅力を否応なしに意識してしまいーー。人気沸騰中、ダニー・コリンズが綴るベビーが結んだ愛の再会物語!
18歳のミアは、両親が仕える屋敷の御曹司カルロスに恋をした。初めてキスを交わした夜、彼の母親に見つかり、“使用人の娘のくせに”と激怒され、親をくびにすると脅されて、彼女は逃げるように屋敷を飛びだした。あれから7年。こんな形で彼と再会することになるなんて。ミアの会社が取りしきる結婚披露宴に、カルロスが出席したのだ。「ミア!ミアなのか?」彼が驚きのまなざしで見つめている。全身が炎のように熱くなり、ミアの封印した恋が息を吹き返した。だがその直後、またしても彼の母親からひどい侮辱を受け、カルロスに婚約者がいることを聞かされて…。
ロンドンでの独り暮らしのために仕事が必要なテオドラは、建設会社の社長ジェイムズが秘書を探していると聞いて応募した。前任の秘書たちに色目を使われ辟易していたというので、髪を引っつめ極度に地味な姿で面接を受け、首尾よく採用になる。ジェイムズは噂どおり高慢なボスだが、抗いがたいほど魅力的。こんな外見のおかげで、彼が目もくれずにすんで助かったわ。だが、ある朝、テオドラはやむを得ぬ事情で出社が大幅に遅れ、すごい剣幕で住まいを訪ねてきたボスに素顔を見られてしまう。辞職を伝えるテオドラに、なんと彼は出張旅行への同行を命じ…。
テクストの多義的な複数性を求めて大学の官僚主義や順応主義を逃れ、フランス思想に大きな影響を与えてきた、コスモポリタン的な教育機関である高等研究実習院で、一九六八年から一九六九年の二年間にわたって開講された「サラジーヌ」に関するセミナーの記録。六八年の歴史的な出来事が排除され、後に刊行された書物版『S/Z』とは違い、それにより道筋が変えられ、その影響が垣間見られるセミナーでは、バルトが展開した知的な作業の概観をそっくり見ることができ、バルトの創造の舞台裏が、講義から書物へ、口述から筆記への移行だけでなく、草稿からテクストへの変容の道筋が明らかになる。
一九三九年ドイツのポーランド侵攻により第二次世界大戦開戦。ラドムに暮らすユダヤ人一家は、徴兵され、家を追われ、シベリアの強制収容所へ送られ散り散りになるが、それぞれユーラシア、アフリカ、北米、南米での迫害を乗り越え、再会を果たすまでの逃避行を描く迫真のノンフィクション・ノベル。
世界には二種類の人間がいる。-甚大な汚染事故、消費社会の猛威、情報メディアの氾濫、オカルトの蔓延、謎の新薬の魔手、いびつな家族関係、愛の失墜、そして、来るべき“死”に対する底なしの恐怖…。日常を引き裂くこの混沌を、不安を、哀切を、はたして人々は乗り越えられるのか?現代アメリカ文学の鬼才ドン・デリーロの代表作にして問題作、そして今なお人間の実存を穿つポストモダン文学随一の傑作が、より深く胸を打つ魅力的な“新訳”として装いも新たに登場!!
現代のアフロブラジル作家が描きだす“傷跡”の物語。言語の喪失、奴隷制の負の遺産、血に塗れたナイフ、すべてを知る精霊…20世紀後半、奴隷制が色濃く残るバイーア州奥地のアグア・ネグラ農場、この地で暮らすふたりの幼い姉妹は、祖母が隠しているナイフを見つけ、舌にあてがって…
授業中にクラスまるごと異世界のガルテラ王国に召喚されてしまった伊藤晴樹。召喚先でペアとなり後に結婚した伊藤静華、隣国から献上された聖女アリステラとともに、神の力「権能」を駆使して(主に性的に)充実した異世界ライフをおくっていた。そんなある日、オルタス王国に魔族が現れ非常事態宣言が発令される。各国の有力スキル持ちが魔族討伐のため集められ、晴樹達も招集され魔族達と対峙するのだが…。権能「斬り裂く者」で無双する物語、待望の第二弾登場!